第93話 悪戦苦闘しているのか…
『ウチの全パッケージ!!段取り無視!!もう降下展開したやね!!』
『地上兵!!各個機動でトゥーロンに取りつきます!!』
「コンテナがバラバラに…」
「あぁ…身一つで…」
「飛び出したな…」
「そして……ワラワラいるな……」
「これ…誤射が…」
「それどころか…接触すら…」
「そうだ、超高機動砲艦ですら迂闊に近寄れん、
高機動戦隊においてや、もう邪魔なだけだ」
『既に2種も召喚してやす!!』
『他艦のパッケージも同様や!!』
『主攻は後部の模様!!』
『前部は断念してやす!!』
「宙間機動できるの?」
「地上を飛行できるのだ、そちらの方がより高度だ、とはいえ、
各所に高機動戦闘用の姿勢制御慣性兼重力スラスタは追加している」
「けど、超高機動砲艦で加速した結果…の速度では…?」
「そうだな、軌道修正くらいしかできんな」
「…減速は?」
「見てればわかる」
『むぅ、あとは見ている事しかできんというのが…』
『内外攻防戦…今までに一度も…』
『そや…この状況で勝利したことは…』
『…ないでやす』
『付近の艦とも連絡をとりますかぁ』
『そうねぇ、今のうちに分担をきめてしまいましょうかぁ』
「それほどに戦況が…」
「悪いというのですか…」
「時間にして60秒も経っていないのにか…」
『方面軍司令部…トゥーロン非戦闘員に退避命令発令や』
『非戦闘員の新米が…あの場にいても邪魔なだけか…』
『素直に聞いてくれれば…』
『生後半年がその面ではプラスになるとよいのでやすが…』
『まぁ厳しいでしょうねぇ、すでに彼らは家族でしょう』
『地上軍志願者がまた増えるわねぇ』
「…半年…」
「…私たちと…」
「…一緒なのか…」
「けど…思考加速込みで…半年…」
「そうだな、座学も各種教練も思考加速は常にだ」
「…半年は?」
「この作戦開始以降、今日に至るまで常に半年以下だ」
「以下…」
「この半年は諸君らの先輩等の尽力により、
与えられた貴重な時間ということだな?」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
『格闘6脚!!布陣が概ね固まったようや!!』
『突入箇所は前部側60か所の模様!!』
『後部に取りついた連中は防衛線を張るつもりでやす!!』
『くそっ!!やはり鉄板戦術か!!』
「鉄板?」
「そうだ、鉄板だな、コレもみてればわかる」
『艦内地上軍配置移動中!!ですが!!』
『だめでやす!!隔壁開閉でもたついてやす!!』
『前部の艦内地上兵!!水際防衛断念!!』
『中央部に向けて移動中や!!こっちでももたついとる!!』
『前部側転移装置!!方面軍司令部で使用停止!!
遠隔爆破処置も行うと!!』
『これで!!艦内援軍速度4割減でやす!!』
「それは…」
「この戦況で…それは…」
「なんて…致命的な…」
「元々、艦内移動用だからな?
艦内を防衛できなかった分だけ、そうなる」
「だから…鉄板…」
『地上兵!!マナ転化にタッチダウン!!』
『前部に移動中の格闘6脚と各所で!!白兵戦開始!!』
「おいっ…あの速度のまま突っ込んだぞ…」
「見てればわかるって…わかるけど…あんまりだろ…」
「マナ転化に止めてもらう…」
「つまりは砲弾扱いされてるじゃないですか…」
「コレが一番早いんだよ…仕方ないだろう?」
「これ…兵装のマナ…吸われるんじゃ…」
「そうだ…直前に全部切る…止めてもらったあとは…
対象外になる…そこで再度だ…」
「相手も…格闘戦のみ…」
「あぁだからできる…」
「むちゃくちゃな…」
「そうでもしないと間に合わんのだ…仕方ないだろう?」
『地上兵第一波100隻分!!400万タッチダウン完了!!』
『本来は3波分やった400万や!!
本来後詰の第2波400万が5分後や!!』
「本来は…」
「その予定だったのか…」
「そうだ、全てを混戦にして破城行動を阻害、
内部を固めつつ、後詰でトドメを刺してまわる、
それが従来の攻城戦模様だ、
そしてそれがごく短時間の兵力不足でできなかった」
『っ!!前部右舷上部!!超高機動砲艦発進口!!』
『ぐむぅ!!もう破られたか!!』
『あそこは湾曲ハッチだものねぇ』
『平面ハッチに比べるとどうしても長くなるからなぁ』
『その分増えた数十機で同期かつ共振まで使ってやすからねぇ』
『破壊されない方がおかしいよね?まずいよねぇ』
『内部にも開閉隔壁はありますが…』
『あぁ、構造材や不動隔壁、
今突破された最外ハッチよりは…薄い…』
『その先は格納庫…そして艦艇入出路中央付近…』
「弱点…なのか…」
「攻城戦においてはな?砲戦ではたいした違いはない」
「そしてここでも艦艇入出路中央…」
「ある程度…攻城戦を意識した設計になっとるからな…」
「そうなのか?」
「不要かとは思ったんだが…俺以外の皆が…そうすべし…
設計当時にそう言うのでな?アレは英断だった…」
「…そうだな…」
『っ!!左舷下部も入られた!!』
『なんやと!!右舷でもう始まっとる!!
右舷艦艇入出路前部ハッチで破城攻撃や!!』
『いくらなんでも早すぎるだろ!!』
『あかん!!こりゃいくらなんでも間に合わんでやす!!』
「加速度的に…」
「戦況が…」
「悪化してゆく…」
『艦外地上軍!!防衛線突破を断念!!』
『後部の殲滅後に一時的に手隙になった中隊や!!
ソレを艦艇入出路後部ハッチに集めとる!!』
『ここまで悪化したことないぞ!!』
『練成半年で実戦は始めてでやす!!』
「これが攻城戦の速度なのか…?」
「300万対400万以上の集団戦なんだぞ…?」
「スポーツの試合じゃないんだぞ…?」
「残念ながら、これが攻城戦だ」
『ちょっ!!なんでや!!艦艇入出路後部ハッチが!!』
『なんで!!開き始めてる!!上下左右!!隔壁も!!中央まで全部!!』
『拠点艦班長は!!歴戦の猛者の筈だ!!』
「ここにきて…」
「またアクシデントなのか…」
『うそやろ!!前部右舷上部!!もう格納庫前まで!!』
『後詰が!!来る前に!!中央攻防戦が始まるからかぁ!!』
『そうでもしないと…艦内再配置も間に合わない…そういうことですか…』
『中央部を除き後部側の隔壁が全部…開いていきやす…』
『英断だな…』
「それが英断…」
「そう言われるほどに…」
「状況は危機的だと…」
「まだ5分も経っていないのですよ…?」
『後部側からのコロニーへの緊急通路もや…』
『あぁ、それがありましたかぁ』
『盾ナグールはなんとか飛べますねぇ』
『そして格闘6脚は通ることすらできませんなぁ』
「忘れらていた…」
「そんな通路まで使って…」
「悪戦苦闘しているのか…」




