第91話 わりと上手く機能している…だから生き残った…
『司令?見えてきやした』
『見えてきたなぁ』
『アレが第8惑星とその第2衛星やね』
『壮観だろうとは思ってはいたが…ここまでとはな』
『アレが汎用マスドライバー術式ということ?』
『そういうことよねぇ、もう滝にしか見えないわねぇ』
「こらまた…」「ほんとに壮大だな…」
「衛生から打ち上げられ惑星に流れ落ちる…」「氷の滝…」
『まぁ小から大に落とすんだぁ、だいぶ楽な部類だろうさぁ』
『元は大から小へ…そういう代物でやしたな』
『そやね、マナ牧場用の氷衛星や氷惑星を造る為やったらしい』
『テラフォーミング時に水が不足した時にも使うらしいな』
『私たちは使うことが無かった術式ね』
『水が豊富な星系だったものねぇ』
「元はそういう方面の術式か…」
「たしかに有用そうですね…」
「機械設備群が一切不要だものな…」
「割と土木業務してますよね…」
「彼らが侵攻方面軍の主役
第161防人統合艦隊3番艦第221拠点艦でっかいどう、
その班長班だ」
『作戦開始後60日でぇ、
術式運用開始後31日のぉ、
襲撃開始後30日でぇ、
襲撃回数が120回のぉ、
陥落したのが15隻かぁ』
「でっかいどう班長のヒル・アンドウ贖罪兵大佐だ、
天然ではない、養殖昼行燈だ、ゆえにこの容姿なのだろう、
天然であるコモンズ・デイライト哨戒独行艦司令部長官を
とてもリスペクトしている」
「……派閥は?」
「もちろん検証派だ…」
「…そうか」
『多いのか少ないのかは…まだわからないわねぇ』
「副班長のトゥォン・ナンバ贖罪兵少佐だ、
組織ナンバー2のロールが大好物だ、
その為か、マネジメント面を一手に引き受けている」
「…ロール…」
「そうだ…ロールだ…」
『次の襲撃予定は5時間後やね、
30分前に第120回襲撃が殲滅されたようやわ』
「レイ・ウナバラ贖罪兵少佐だ、
頼れる助言役、電子の女王を目指し影で日々研鑽を積んでいる、
そのエセ方言は個性が足りないと後天的に獲得した、
当然、担当はその方面だ」
「…研鑽…」
「…後天的…」
『次の同時着弾射撃の到来が合図でやす』
『ヤス・クサバ贖罪兵少佐だ、
下っ端刑事ロールが大好物だ、
レイの補佐をしながら内務も担当している』
「…下っ端…」
「…内務担当少佐が…」
『そう、襲撃と同時着弾…合わせてくるのね…』
「ヨミ・トキマ贖罪兵少佐だ、
共に戦い解説するヒロイン、それになろうと日々足掻いている、
この映像時はクレバー独白タイプを模索中だった、
担当は艦首砲と汎用術式ユニットを除く艦の全てだ」
「…クレバー独白タイプ…」
「…模索…」
『そういうことか…6時間毎に…か』
「ケント・タダノ贖罪兵少佐だ、
彼だけが素だ、他の5人に主人公役に設定されている
常識溢れる人情家であり努力家だ
担当は艦首砲と汎用術式ユニットに麾下艦艇の戦術指揮だ」
「…素…」
「…1人だけ…」
『司令?我々の今後の予定は?』
「麾下艦艇の班長班員は拠点艦班長を
だいたいにおいて司令、そう呼ぶ、
同じ班内でもそう呼ぶのはわりと少ない」
「…そうなのか…」
『ひとまず合流してぇ、
転移装置リンクを最優先で構築かなぁ?』
『そうか…まずはソレをせねば…』
『…そういうことね…援軍が…』
『…これないんだな…』
『そういうことだよねぇ、こわいねぇ』
「1艦で400万相手は…」
「確かに怖い…」
『了解した、麾下艦艇の方は?』
『戦偵巡は方面軍司令部直下に召し上げだってぇ』
『…その総数…64000隻超…』
『そうか…そこで統合運用すると…』
「あぁだから、4346番星系に42000隻を集中できるのか」
「なるほどですぅ」
『他はシフト表が来るまでは特1種艦内待機だねぇ』
『奇襲対策…まずないとわかってはいるけど…怖いわね…』
『…了解した、それまでは盾ナグール着用したまま、
地上軍と共に籠城戦配置のままだな、
レイ?奇襲の警報は?』
「えっ…宇宙軍でも着るんだ…」
「対艦攻城専用機が確認された以降から、
艦内攻城戦の為の配備と訓練を始めている」
「そうか、俺達も使えない訳がないもんな…」
「班員が戦死した班が地上軍に行くのはよくある話だ、
家族に補充を受け入れずに復讐を成す唯一の方法だからな?」
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『第5近傍には常時1000隻超の戦偵巡がおるんや、
そしてその使い魔が光秒距離を踏破して内部に潜入してるんや、
水鏡が検知する30分前には警報がでるというわけやね』
『ゲート装置前にある射出機…加速に30分もかけるもの…』
『なるほど、コマインの効率主義が自身に禍したわけか』
「そこを見られているとは思ってないからか…」
「そりゃそうですよね、そこは9100層以下なんですから…」
『ヤス?奇襲はまずないとの事だが?何故なんだ?』
『簡単でやす、通称5光年アンテナの露見を避ける為でやす』
『そうか…まだ知られていないと…そう思っているからか』
『そうでやすな、ゆえに我らもその行動に制約が付くのでやす』
『つまりは…お互い知ってても…』
『お互い知らないふりをするという事でやす』
「監視小惑星と…」
「おんなじ状況のわけか…」
『面倒な…これを強襲独行艦は50年も続けたのか…
副指令?艦内非戦闘要員の業務は?』
『本人が盾ナグール着用して戦闘配置についているのだものねぇ、
当然、全部署休業よぉ』
『…地味に辛いとこですね…』
『えぇ、ほんとにそうなのよねぇ、
転移装置リンクが終われば主目標にならない限りはぁ、
全員着用まではせずに済むのよねぇ、
待ち遠しいわぁ』
『それまでは非番時に飲みにも行けないとはな…』
『地味に辛いトコよねぇ、円筒コロニー無人だものねぇ』
『しばらくは…このまま待機するしかないか』
「ん?なんかおかしくないか?」
「会話の主導権が…」
「ケント少佐に?」
「ありますわよ?…どうみても…」
「それがこの班だ…ケント以外は脇役に徹する…
勿論、各自の職責は果たした上でだ…」
「よく…生き残れましたね…」
「わりと上手く機能している…だから生き残った…
結果論から言えばそうなる…」




