第87話 ついに…ついに…この時がきましたね
『ついに始まりますね?
コマイン戦総司令改め、
アングリス・アドマイヤー667番星系侵攻軍総司令部長官殿?』
『あぁ始まるな、まったくもって不本意極まりないが始めるしかない』
『少し長いですね…』
「ここにきて呼称の危機…」
「お名前判明直後に危機迫る…」
『好きに呼べばよいだろう…まったくいつまでも変わらんな貴公は』
『ふふふ、ではアングリス司令と、
確かにアングリス司令としては不本意極まりないでしょうね?』
「悲喜劇は回避された…」
「司令の名誉は守られた…」
『戦闘不能者数が3割で全滅、そう教えられてきた身だからな?
不本意極まるに決まっておろう…下手すれば展開全軍で…
損耗率が100%を軽く超えていくような戦争計画なぞ…
最低極まりないだろう…』
「そうか、立案指揮…つまり送り出し…」
「見送ることを強いられる立場…」
「そりゃぁきっちい…」
『盾ナグールと強襲独行艦が暴いてきた情報で、
なんとか1000%を超えずに済む目算が立ちましたね?』
『あぁ、本当に…本当に心から感謝しておるよ、
日々もう心から拝んでいると言ってよい程だ』
「そうか…この方にとっては…」
「救いの手…にみえて…」
「当然な訳だ…」
『一時はそれはもう絶望的な空気の司令部でしたからね』
『どうあがいても1000%を下回れなかったからな…
その上、これ以降は時と共に悪化する見込みと来た…
あれはもう本当に最悪な気分だった…』
「それはまた…」
「なんとも…」
「最悪な立場だ…」
『えぇ、そうでしたね、それでもココで出なければ守勢にまわり圧し潰される』
『その未来しか出てこなかった…まったくもって理不尽なものだ』
「逃げられない…」
「どうなるのであれ…」
「するしかない…」
『とはいえ、我らは出ます』
『あぁ、打って出る、不本意なれどコレしかなかった』
「だから…始めると…」
「今できる最上が…そうであっても始めると…」
『アングリス司令と麾下の司令部員の作戦計画…
結果としてだいぶ奇抜なものとなりましたね?』
『まったくだ、まさに帝国門投射頼み1本の計画だ、
敵の要衝を攻略する時間を稼ぐために、
3000光年先に侵攻発起点を置き、
侵攻と破壊をしながら制圧しつつ、
その要衝まで遅滞戦闘をしながら侵攻発起点とともに撤退する、
そんな作戦なぞ聞いたことも見たこともない、
そんな敵地深奥から侵攻しつつ敵地で焦土作戦なぞ夢物語だ』
「立案者代表が…」
「ここまで…」
「こき下ろすほどに…」
「常識ではありえないと…」
「たしかに…常識ではありえない…」
「まさに夢物語…」
『だが実現しなければならない…そうですね?』
『あぁ、少なくとも損耗1000%超の戦争計画を遂行するよりは…
そう、だいぶ現実的だ、そうだった筈なんだが…
損耗1000%超の作戦遂行…わりとできそうになってきておるな?』
『えぇ、そうですね、わりとできそうな感じになってきてますね』
「話題のわりに…?」
「会話にゆるみが?」
「出てきましたね…」
『貴公の暗躍分は如何ほどだ?』
『これが驚いたことに2割もいかないのですよ?』
『ほう?それは驚きだな?』
「あれ?思ったより?」
「暗躍してない?」
『時空神もこの展開には驚愕されているのですよ?』
『彼の荒神もか?』
『ウタのファンクラブ栄えある第1号は彼の神ですよ?』
『くははははっ!!ソレは面白い話だ!!
先に逝く連中への良い土産話になるな!!』
「まじかぁ」「そこらへんもチェックしてるんか…」
「これは召喚の儀遊びは…」
「シャレにならないかもですぅ…」
『”現人が白兵戦至上主義を
体現するだけでなく昇華までするとは…
サイコーのエンターテイメントだ”
だそうですよ?』
『なかなかの高評価じゃないか!
それはそれは地上軍をあれだけ魅了するわけだ』
「あっそういうのも愉しめるんだ…」
「わりと守備範囲広いのか?」
『彼の神の配下の方々も熱狂されているそうで』
『言っておくが再戦だけは勘弁だぞ?』
『現世ではしてないそうですよ?』
「あれ?」「んん?」「えっ?」
『まて…してるのか?再戦…を?』
『しれっと戦技教練実習機の相手に混じってるそうです』
『まてまてまて、そこでやっとるんか!自由すぎるだろ!!』
「……教練相手が…」
「実は…白兵戦至上主義者…」
「(本人)」
「それが…」
「ありうると…」
『いまのところウタが無敗を継続中なのだそうです』
『そんなに強いんか!!』
「クッソ強いのか…」「そんな域に在るんですか…」
『機械神もどきはどうもウタの全力を引き出せていないようで』
『あの娘…本気で武神なのか…』
『どうも神の配下がそう認めるほどの傑物のようです』
『20M超級強襲独行艦16隻に入れといて正解だったか…』
『あの娘が城門をこじ開けてくれるでしょう』
「なんという信頼感…」
「城門って…」
「あの化け物レーザーか…」
『100G体現艦全10隻…辻斬り運用艦全6隻…
うち1人は神の配下が認める武神か…』
『我らが鬼札を全て投入するのです』
「うぁ、100G艦…」
「体現者…60人って…10班だったのですね…」
『そうだまさに全力だ、そしてあの16隻には好きにやってもらう』
『賢明ですね?アングリス司令』
『非常識は常識人には推し量れんだろう?当然の運用だ』
「なんかすごい懐深い?」
「ふんまんふんまんしてるわりに?」
『なんだかんだと憤懣しながらもローン大佐を御しただけはありますね』
『ふん…そのローンだが…円卓には応じてもらえんかったな…』
「円卓?」
「なんだろ?」
『彼もまた、アリゾナの生き残り…その矜持があるのでしょう』
『アヤツが魂魄式AIのリスク程度で怯むわけもないだろうからな…』
「魂魄式AI化儀式の事?」
「なんかそんな感じだな…」
『第4424拠点艦ツーソンを後進に譲り、
第15945拠点艦ピオリアで指揮をとっています』
『その艦番…そういうことか…』
『えぇ…そうです、そういうことです』
『なんと…心打たれる生き様であろうか…』
「えっ?どういうこと?」
「艦番が何を意味するのだろう?」
『アングリス司令はどうするのです?』
『私はもう疲れたよ…残る気概は…その時にはもうあるまい…惰弱と思うかね?』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『ふふふ、そんなわけありませんよ?他の誰が成せたのです?
貴方は必要あれば1000%超を実行に移したでしょう?
そう憤懣この上ない顔をしながらも?
きっと1000億の兵士に死んで来いと号令をかけたでしょう?
いませんよ…それができる唯一の方だからこの要職についてもらったのですから』
『ふん、全くもって理不尽だ』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『さて時間です、次は我らが理不尽になる番です』
『そうだな、あの機械神もどきを永眠させてやらねばな』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『ふふふ、次々とリプレースしていきますね…
ついに…ついに…この時がきましたね』
『貴公にとっては…1300年の尽力…その到達点…』
『えぇ、えぇ、えぇ、えぇ、そうです、1300年積み上げ続けた末の集大成です』
「そうか…」「検証公にとっては…」「そうなるのか…」
『踏み砕かねばな…』
『いえ、必ずや踏み砕くでしょう、
幾多の献身の上で、
彼等はそれができるようになったのです、
彼等ができないとは私にはとても思えませんよ?
必ずや踏み砕いてくるでしょう』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」




