第84話 歴史に刻まれる星の名は…
『陛下、そろそろですよ?皇宮第一戦訓研究解析システムへ』
『そうですか…』
『えぇ…ついに始めます』
「これから始まる戦場、そして終わらせる戦場」
『籠城戦地上軍司令部隷下
6個軍集団
61,679,616名
60,234隻
撤退及び拠点艦よりの移乗完了しました
0時第2帝国門に向けたマナドライブ起動まであと5分です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
籠城戦地上軍全軍撤収済か…
「其処を最後に去るのは彼等だ」
『667番星系侵攻軍総司令部隷下
第1第2第3防人統合艦隊
汎用術式ユニット同期完了
急速惑星軌道変更術式の起動まであと約10分です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
あの恨むべきか悩ましい先輩達が最後に去るのか…
「弔砲はコレだ」
『0時第2帝国門要塞主砲
歪曲砲高収束連続射撃モードにて起動準備完了です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
ついに出番か…
「そして彼等もまた次の戦場に旅立つ」
『667番星系侵攻軍総司令部隷下
40個本土艦隊
0時第2帝国門投射待機陣形構築完了です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
次の戦場に撃ち込まれるのを待つ、
在帝国門40個本土艦隊…
「そして帝国0時辺境前進計画…
その先陣はこの司令部が担った」
『哨戒独行艦司令部隷下
600m以下級星間航行戦略偵察巡洋艦16808隻
その全艦のリプレースまであと約30分です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
哨戒独行艦まで駆り出したのか…
「第2陣は彼等だ」
『強襲独行艦司令部隷下
参加強襲独行艦42000隻
その全艦のリプレースまであと約60分です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
当然、強襲独行艦も…
「第3陣が本命だ」
『667番星系侵攻軍総司令部隷下
60個本土艦隊
157個防人統合艦隊
20M超級強襲独行艦16隻
その全艦のリプレースまであと約70分です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
20M級16隻…
「そして第4陣だ」
『667番星系侵攻軍総司令部隷下
20個軍集団
205,598,720名
200,780隻
その全艦のリプレースまであと約80分です』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
そして侵攻軍か…
『順にいきましょうか』
『では、籠城戦地上軍司令部に』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『魔導銀河帝国歴601年から…
かれこれ50年…成ったぞ…我らはあの機械神もどきに…』
『えぇ、そうです、
そのデータベースにしかとトラウマを刻み付けました』
『あの百層を埋め尽くす地上兵器群…』
『えぇ、そうです、あれが機械神もどきの貴方方への評価であり賛辞です』
『アレの八割が…』
『えぇ、そうです、ここ50年で新造されたものです』
『水鏡範囲内、地上兵器の99%が…』
『えぇ、そうです、あの百層に集約されています』
『俺達はあの星に居ながらにして…』
『えぇ、そうです、見事に陽動し、戦力誘引に成功しました』
『俺達地上軍は1万層を蹂躙し底を踏み砕く…』
『えぇ、そうです、ただそれだけの戦場です』
『あの機械神もどきの得意な小細工は…』
『えぇ、そうです、あの中でだけで取れる手段に限られました』
『っくぅはっ!!っくははっ!!くははははっ!!そうだなっ!!
あの機械神もどきは!!俺達に怯えるあまり!!
引き籠りおったのだ!!俺達がそれをこそ望んでいたとも知らずに!!』
『えぇ、そうです、ナイル・ブラックウルフチーフテン籠城戦地上軍司令官殿』
『実に痛快な気分だ!!検証公!!あの星で散った2億に!!
これ以上ない餞別だ!!俺達の奮戦はしかと刻まれたのだ!!
ならば!!さらに刻み込んでやろうではないか!
どれ、引き籠りおった機械神もどきの分体をちょいと殴りに行こうじゃないか!』
『えぇ、そうですね、ちょうど時間です、全艦マナドライブに入りますよ?』
『むっそうか…あの星ともコレで最後か…』
『いろいろありましたからね』
『いろいろあったな…
最後は俺達の戦友にまかせるとしよう、
さらばだ第5惑星、俺達が戦い抜いた戦場よ』
『マナドライブテイクオフ』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
万感の転戦…
『籠城戦地上軍司令部隷下
6個軍集団
61,679,616名
60,234隻
たった今、マナドライブテイクオフしましたよ』
『この50年…戦い抜いた彼らに…教えられました…』
『そうですね、イーリング』
『これほどに…これほどに過酷な戦場であったとは…』
『そうですね、そしてこれから赴く戦場にて彼らは散ります』
『なるほど…ローン大佐に全員が論破されて当然だった』
『そうですね、当然でした』
『私は人類の防人でいられるのだろうか…』
『当然です、彼らの背中を見続けた貴方がそうならない筈はないのです』
『そして、その私の背中を後に続く者たちに見せつけるのだと?』
『そう望むのでしょう?イーリング?』
『確かに…そうだ…そうだな…成程…これが人類の防人の気概か…』
『そうです、贖罪兵が我々に見せつけ続けたモノです』
『なるほどなるほど…コレでしたか…私が解らなかったのは…』
『そうです、ソレです』
『得た今ならば納得ですね、なるほど死をも恐れぬわけだ』
『えぇそうです、ソレが我らの戦争には必須なのですよ』
『なるほどなるほど…実に爽快な気分だ!』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
見送る側も…
『さぁ時間ですよ?』
『そうだな検証公、始めようじゃないか!
防人統合艦隊!!
第1!!第2!!第3艦隊!!拠点艦全艦!!
さぁ弔砲を迎える準備を始めるぞ!!
同期中の汎用術式ユニットで!!
急速惑星軌道変更術式を起動だ!!
第5を第4に落とすぞ!!』
「「「「「「「「………」」」」」」」」
なんて壮大な…介錯…
『全艦!!起動!!』
『第5で1G加速始まりました!!』
『第5の影から出るなよ!!こんなところで墜とされたんじゃ!!
後に続く者に示しがつかんからな!!』
『第4のコマイン!!第5の挙動に気付きました!!』
『砲台全基を稼働させる模様!!』
『全艦曲射砲撃戦開始!!弾種は空間歪曲中和弾だ!!』
『全艦射撃開始!!』
『コマイン砲台全基発砲!!目標は第5です!!砕くつもりです!!』
『はっ!!いまさら遅い!!砕く時間なぞ与えてやるものか!!』
『第5!!3G加速まで増速!!』
『さぁご自慢の歪曲フィールドを試してやろうじゃないか!!」
『コマイン第5方向に歪曲面集中させてます!!』
『無駄だ!!』
『中和弾弾着まで10秒!!
…………5!!
…4
…3
…2
…1
弾着!!』
『砲台火箭2%消失!!』
『ふははは!!どうだ!!抜いたぞ!!』
『コマイン!!至急報を打電開始してます!!』
『ふははははは!!それを受け取るのは何年先になるのだろうな!!』
『砲台火箭4%消失!!』
『コマイン中和弾の迎撃を始めてます!!』
『第5への火箭は!?』
『第5への火箭当初の44%に減少!!』
『はははは!そんなことをしている暇があるのか?コマイン!!』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『砲台火箭75%消失!!』
『第5!!歪曲面に到達!!』
『第5!!急減速!!』
『第5の地表が歪曲面に削られてます!!』
『くくくく、届いたな!!』
『はっ!!第5は届きました!!』
『0時第二帝国門は?』
『主砲歪曲砲高収束連続射撃モードは起動済です!!』
『口径1500m出力100%にて即時射撃待機中!!』
『歪曲面の縮小を確認!!』
『弔砲を迎える準備は成った!!
全艦汎用術式ユニット停止!!
地殻破砕射撃位置へ移動開始だ!!
砲台はまだ残ってるぞ!!
墜とされるなよ!!』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
そしてついに実戦使用…
『歪曲面!!当初50%を切りました!!』
『全艦地殻破砕射撃位置に到達!!』
『全艦!!投射砲充填開始だ!!』
『歪曲面!!急速縮小を確認!!』
『45%!!』
『ついに!!その時が来たな!!』
『35%!!』
『20%!!』
『歪曲面消失!!』
『0時第二帝国門主砲発砲!!』
『歪曲砲到達!!第4貫通せず!!』
『0時第二帝国門!!第1層の動力供給停止!!主砲出力150%に!!』
『第4!!未だ貫通せず!!』
『0時第二帝国門!!第2層の動力供給停止!!主砲出力220%に!!』
『第4!!貫通!!スライス始めます!!』
『0時第二帝国門!!第3層の動力供給停止!!主砲出力290%に!!』
『第4!!スライス速度500%増速!!』
『0時第二帝国門!!第4層の動力供給停止!!主砲出力360%に!!』
『第4!!スライス速度5000%増速!!』
『0時第二帝国門!!第5層の動力供給停止!!主砲出力430%に!!』
『第4!!スライス速度50000%増速!!』
『さぁ、まずは1枚だ!!』
『0時第二帝国門!!第4の1stスライスに成功!!』
『第5接触面幅500km分が分離!!』
『分離片が落下します!!』
『第5もそれに追随!!』
『分離片が崩壊していきます!!』
『0時第二帝国門!!第4の2ndスライスを開始!!』
『さぁ我らも参加するぞ!!
目標!!第5の地殻!!目に映る地殻を!!全てマグマにしてやれ!!
地殻破砕射撃開始だ!!』
『全艦発砲!!』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『0時第二帝国門!!第4の9thスライスに成功!!』
『分離片が落下します!!』
『ふむ、これで何一つ残らんだろう』
『えぇそうです、いかにコア採掘まで実現しうる技術を持とうと』
『その時間が50年に渡ろうとも』
『えぇそうです、こうなっては何一つ残りません』
『わざわざ星を10枚にスライスして別の星を捻じ込んだのだからな』
『えぇそうです、その上でさらにこれから表面を全て焼いていくのです』
『そう表面がすべてマントルとなるまでだ』
「その為にか…」
「ここまでするのは…」
「…その為…」
「…必要ならば…」
「…自領の星系天体であっても…」
「…切り刻んだうえで…」
「…粉砕し…」
「…原始惑星…」
「…それにすると…」
『しかし困りましたね…』
『そうだな…』
『その名…どうしましょうか?』
『もう第4第5元連星…とでもしておけばいいんじゃないだろうか?』
『ふむ…それは意外に良案ですね、採用しましょう』
「採用されたな…」
「歴史に刻まれる星の名は…」
「守られましたね…」
「守ったのは…」
「イーリング・リバーブレイト准将」




