第77話 平和は…麻薬…
『次は
・第4の戦痕調査
になるわね』
『コマインの活動は一切見られないのに、
荒涼とした大地の地表全面に拡がる、
数多の戦痕が刻まれた人口構造物群を持つ、
直径1.1万km級の無大気岩石惑星、第4惑星』
『その戦痕の調査か』
『えぇ…』
『ではいこうか』
『『『『『あいあいさ~』』』』』
「なんというか起源文明滅亡経緯調査みたいになってるな…」
「しかし実利実害がある以上は…」
「やらねばならないと…」
『…これは…戦痕…なのかしら…』
『そう捉えると違和感しか抱かないな…』
「たしかに…紛争戦争の痕と言われると変な感じが」
「なにが違うんでしょう?」
『市街地を抉ったかと思えば中心地ではなく郊外…』
「そうだな、確かにそうだ」
中心を狙うべき…そうだよなぁクロカゼ中尉。
『資源地帯を狙ったのかと思えば…単なる平原…』
「なぜ、そうしたのか…」
カルイザワ中尉の指摘どおり理由がわからん…
『極め付けはコレだな…』
『クレーターの横に同サイズの都市が丸々残ってる…』
「うむ、意味が解らん」
呆れるイクサバ中尉…
『これは所謂…事故痕だな…そう考えるとしっくりくる』
「あぁ~」「……すっごいしっくりする」
『歴史公?それはどういう?』
『簡単だ、起源文明人は第4のインフラはコマインから守れた…
だが、すでにもう彼らはそれを管理できなかったのだろう、
だから、全部地表に堕ちた…ということであろう』
「うわぁ」「そう考えると…」「そうなるのか…」
『この数がか…』
『そうだな…ざっと100万か所と少し…当然暫くは厚い塵に覆われたのだろう』
「おふぅ」「その数が一時に堕ちれば」「そりゃそうなるわな」
『生き延びた起源文明人は…』
『ひ弱な原始人となったのであろう、
軌道上施設と宇宙艦船をもう単独で飛ばせなかったのだ、
パワープラントや各種製造施設も使いこなせなかっただろうからな』
「ひ弱な原始人…」「そうなる程に…」「長年依存していたと…」
『コマインは…』
『厚い雲が落ちきるまで待ったのだろう、
その状態では大気回収は困難だからな』
「あぁ成程」
『では…あの各所で見られる元泥濘地跡は…』
『降り積もった塵が雨で流れたモノだろう』
「あの特殊な地形は…」「それが原因と…」
『では…ソレに残る無数の足跡は…』
『4足歩行の獣のモノだな、風紋が見られぬゆえ、
コマインが大気をゆっくりと取り上げたのだろうが
その時、この星の最後の支配者は4足歩行の獣だったようだな』
「ひ弱な原始人は…」「野生動物に…」「敗れ去っていた…」
『となれば…この星は…』
『風化を受けるには充分な時間が経過しているだろうな、
初期に降った雨もまともなモノではあるまい、
この星は我らにとって無価値だ』
「無価値…」「第3とは…」「大きく違う結果に…」
『そうか…依頼は?』
『現時点で完了でよい、これ以上は時間の無駄だろう』
『…了解』
『次は…
・第4と第5の間の小惑星帯の年代特定調査
・第4と第5の間の小惑星帯の造船能力調査
・第4と第5の間の小惑星帯の星間輸送量調査
となるけど…』
『だいぶ…難易度が跳ね上がるな…』
「禁足地どころか…」「コマインの戦力の源泉…」
『あまり無理はせんようにな、だが年代特定だけは頼んだぞ?』
『自分の依頼だけは譲れないと?』
『重要なことだからな』
『了解…』
「興味優先なのか…」「実利でそうなのか…」
「どちらもそうだと言われそうです…」
『おおいーおおいーおおーいーよー』
『覚悟はしていたが…とんでもない数があるな…』
「多すぎてキモい…」「どこ見ても…」「見渡す限り…」
『ウタ…もう概算でいいぞ…時間の無駄だ…』
『戦列砲艦造船所だけでー10万くらいあるー』
「うへぇ」「どんだけあるんですか…」
『そうか…もうそれだけでいいぞ…その下は数え切れんだろ…』
『どうせ指し手の事だ…大艦隊構成比に合わしてあるだろ…』
『適当に建造状況照らし合わせて、
戦列砲艦1隻の建造期間だけ算出頼む』
「あ~それがわかれば」「だいたいの目算はたつと」
『おおいーおおいーおおーいーよー』
『星間輸送の方はもうゲート実況映像を水鏡班に投げてやれ』
『あとはあいつ等が喜んでやってくれるさ』
『ついでに造船所の方も実況映像で送ってやれ』
「これが…コマインのゲート…」
「しっかりSFしてるわね…」
「そして派手派手である…」
「転移公の作品より確かに派手だ…」
「戦列砲艦が通れそうなゲートの穴に対して…」
「歪んで光り輝き雷光が走る部分が…」
「惑星くらいの…おおきさありますね…」
『おおいーおおいーおおーいーよー』
『あぁ、完成した小艦隊がドンドン跳んでいくなぁ』
『日産5個小艦隊くらいか…』
「日産が…その数字かぁ…」
「もう狂気的な生産力…」
「周囲はゲートだらけですぅ…」
『水鏡班によると向こう側向けらしいぞ?』
「あっそっちにまわしてるんだ」
「この生産力をまだ、帝国に向けていないと」
『だいたい年産10個大艦隊か…』
『たぶんそれーあってるー1隻ー180日くらいだー』
『いくら起源地だからとはいえ、集約しすぎだろう…』
「うへぇ」「年間10個大艦隊を屠らないと」「減らないとか…」
『ふむ、やはり向こう側は激戦もしくは大きく浸食中か』
『思っていたよりも…だいぶ廻していたようですね』
『二人ともきたか…まぁあんな感じだ』
「激戦であればいいけど…」
「勝ちすぎてそうなっていたら…」
「そして確かめる術はないと…」
『この偵察のおかげで水鏡の観測値と、
戦力比の照らし合わせ精度がだいぶ向上しそうですよ』
『そいつはよかった、こちらも助かるな』
「あぁなるほど、実際に通ったモノと」
「その時の次元震が」
「しっかりと対照合わせできるのか」
「すっごい重要ですぅ」
『その水鏡からの報告ですが…
水鏡範囲内での造船能力割合はココが5割…
だそうですよ?』
『ほう…そいつはまた…』
『えぇ…随分と偏ったものです』
「そんなに集中してるんだ…」
「効率優先の指し手が?」
「たぶん不効率気味の集約量ですよね…」
『ココはコマインにとって特別なのか…』
『そのようですね』
『ふむ…造船所と星間輸送の件が終わったら…
ここらを見てみてくれないか?』
「ここで名探偵動く」
「何かを見つけた?」
『ん?小惑星帯の端も端…
まるでゴミのように乱雑に置かれてるあたりか…
警戒すべき戦力もないようだし構わんが…』
『興味深いことがわかるとおもうぞ?おそらくな』
「なんだろ…?」
「コマインにとって無価値っぽいが…」
『これは…いろいろとひしゃげ、熱で溶けてはいるが…』
『うむ、都市構造体だな』
「高層ビルっぽいのやら巨大施設っぽいのやらが…」
「分厚い岩盤に挟まれていますぅ」
「まるでサンドイッチだな…」
『ここら辺にあるのは元は惑星地殻部表面か…』
『そうだろう、本来の第5惑星の名残だな』
『本当に砕いたのか…』
「まじで砕いてた…」「住民ごと砕かれた元居住惑星…」
『そのようだ、そしてソレは地殻破砕ドクトリンではなかった』
『どういうことだ?』
「そういえる根拠なんだろ?」
「けっこうな確信的推察のようですけど」
『地殻表面の構造体がこれだけ残っている、
サンドイッチ状になっているとはいえ…だ』
『確かに破砕されてはいないな…』
「そうか残っている…」
「いまもこうやって見れる…」
『これは地殻津波を被ったことによるものだろう、
つまり破砕箇所は一点集中だったのだろう、
そしてコアを撃ち抜いたのであろう、
だが、ソレでここに在る地殻はふきとんではいないのだ、
そうなる手段を我らも持っている』
「あるんだ…」
「同じことができると…」
『そうか…質量融合弾同一箇所連続着弾射撃…』
『我々が大規模天体を砕くときに使う手段であるな』
『だったな…質量減損が少なく手間も少ない…』
「そういうことか…」
「同じことができるから…」
「こうも確信的と…」
『しかしこれで見えてきたな…やはり作業…なのだな』
『そういうことですか…では事前許可も?』
『第4の顛末を見るに…そうだろうな…見抜けなかったのだろう』
『それは…どういう?』
「なんだなんだ?」「名探偵結論に至る?」
『なに簡単なことだ、全ては起源文明人に許可された作業だったのだよ』
『作業?許可?』
「作業?許可?」
「この凄惨極まる悲劇的な経緯が?」
『第2は大気補充作業、ただし補充量は無記載裁量で』
「えっ作業ってそういう意味?」
『第3は温暖化低減調整の為の大気回収作業、ただし回収量は無記載裁量で』
「あれが?作業?」
『第4も第3と同じだな』
「結果は違えどコマインのしたことは変わらない?」
『元第5は採掘量向上作業、ただし作業内容は無記載裁量で、
まぁ効率主義者の指し手のことだ、第3第4と同じく大気回収もしてるだろう』
「砕いたのも作業?」
『インフラの取り上げも名目は保守点検あたりだろうな、
期間無制限あたりの語句を使ったのだろう』
「あれもこれも全部…」「全ては作業…」
『それでは…滅亡のサインをしたのは…』
「えっ?そういうこと?」「ふぁっ!?」「ちょっ!?」「おいおい」
『形式上は起源文明人自身になるであろうな』
『そんなことがありうるのか…』
「全部無許可ではない…」「許可案件だと…」
『諸君らにも見てもらってきた遺構には武器兵器の類が皆無』
『…あぁ確かに皆無だった』
「そういえば…」「見たモノ全部…」「そうだった気がする…」
『実に素晴らしい事だ、外敵もいなければ内敵もいない。
すべてはコマインにまかせれば争いもなく緩やかに、
第1のコアを掘りつくすほどの長きに渡り繁栄を享受できたのだ。
さて?起源文明人?その状況でコマインの提案を疑えるかな?
コマイン無しにはひ弱な原始人でしかない起源文明人がだ?』
『………無理だな』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『おそらくは全ての地で全ての作業許可が、
得られてから始めたのであろう、
どれくらいの期間をかけたかは…
いまや指し手のみが知りうる事柄だろうがな』
「平和は…麻薬…」
「ティネム帝は…」
「そう言ってましたね…」




