第76話 其処にはもう…何も残ってはいない…か…
『…ココだな…』
『だな…』
『円柱最寄りのクレバス』
『その円柱側側壁の裏』
『広さ10km×2kmの岩棚』
「またそんな秘境位置に…」
「死角も死角」
「いまもあるんだろうか…」
「遠い未来に観光名所になりそうですぅ」
「そうして見せたいものだな」
『ココで切り離し作業を行おう』
『あぁこの広さなら問題ない』
『低重力下環境でも切り離しは行える』
『その為のマナ供給ケーブルは用意されている』
「準備はしてあった…」
「つまりはこのパターンも想定していた…」
『やっとか…』
『あぁやっと脱げる』
『迷彩モード無し』
『戦闘力無し』
『思ったよりも堪えたわね』
「敵地のど真ん中で…」
「その制約はきついよなぁ…」
『ウタ、アンテナを2本コッチに回してくれ』
『あいよー』
『さて、時間はたっぷりある』
『ゆっくりと地下探検といこうじゃないか』
「5000万年前の遺構だものな」
「壮大な歴史探検ですわね」
『そうだ、そこの亀裂だ』
『その先に円柱の壁面が見える筈よ』
『む…この角度では通らんか』
『少し下がって回しましょう』
『そうだな、しかし感覚はもう』
『懐かしきは車庫入れの感覚ね』
「あぁたしかに見てて思ったわ」
「そうだ、それだな」
「それも超せまーい駐車場ですぅ」
マキバ中尉は苦手だったようだな…
『こんな宇宙の果てで』
『このサイズの宇宙艦で』
『味わう羽目になるとはな』
『よし、通るぞ』
『やっとね、おつかれさま』
『よくやったぞ』
「すごいシンパシーを感じる…」
「規模が遥かに大きいだけに…」
「よりお疲れ様感が…」
『よし、右舷上部切り離し自体はされたぞ』
『右舷上部重力スラスタ独立駆動…よし浮いた…少し上昇させるぞ』
『いいぞ、ケーブル長はまだ余裕がある…あと200mは動かせる筈だ』
『下部をすぐ横に置くわ…あと70mは離してちょうだい…そう…そのあたり』
『よし、岩棚に降ろすぞ…接地した…右舷上部重力スラスタ…停止』
『よし、ソフトタッチダウン成功だ…』
『岩棚の方にも変化はないわ…』
『さぁあと3回だ』
「なんかもう、どこぞの工事現場感すら漂ってるな…」
「実際、もうコレ工事みたいなもんだよな…」
「全ては重力スラスタのせいですわよ…」
「なんかもうクレーン感覚ですぅ…」
「…アンテナで…現場監督」
「浮遊ボット作業員」
『ふぅ、ひとまずは脱げたな』
『えぇやっと脱げたわ』
『そしてまたココから』
『がんばって車庫出しといこうじゃないか』
『『『あいあいよ~』』』
「車庫出し…」
「5000万年の歴史感が…」
「台無しですぅ」
『よし、そろそろ電磁波吸収を』
『電磁波吸収展開開始……………展開終了』
『そして』
『電磁波吸収迷彩モード』
『やはり…』
『安心感が違うな…』
「断熱だと真っ黒のままだもんなぁ…」
「こういうとこだと逆に目立つという」
「第3の時も第3の影に潜んでましたわね」
「ここに入る時も夜でしたー」
「その差は大きいですよね」
『さぁ、あの亀裂を再度』
『そうだな、車庫出しの時間だ』
「その表現…敵地潜入中の緊迫感が…」
「台無しですぅ」
『よし、クレバスからも出たな、第1から7光秒の位置に戻ろう』
『これでひとまずは安心ね』
『あぁ、やっと56Gだせる』
『武装も使えるわ』
『辻斬りも出せる』
『長かったな…』
『『『あぁ…』』』
「既に潜入からひと月は経過しているだろうからなぁ」
「長いですわよねぇ」
『ウタ?どんな感じだ?』
『あと1日くらい?』
『了解だ、その間に次の依頼の検討に入ろう』
『次は第2ね
・第2の軌道エレベーター状の構造物の年代特定調査
・第2の軌道エレベーター状の構造物の生産物調査
2件あるわ』
『1件目は我の』
『2件目はコマイン戦総司令部ですよ』
『歴史公に検証公…そんなに気になるのか?』
「また急に来た」「またも突然会話に混ざる」
「一瞬前までいなかった筈なのに…」
『当然だろう?アレはおそらく第3にあった4本だぞ?』
『コマインの指し手の制約…重要な戦略情報ですね』
『生産物も少しは気にかけてやれ…』
「めっちゃ気にしてる」
「ソレも各々の視点でな…」
「そしてソレを隠しもしないのですね…」
『タケルーこの軌道でー』
『おうよー』
『よろー』
『第2…金星よりよっぽど大気濃いじゃないか…』
『この数値…約4倍よね…金星の…』
『まさか…第3第4第5の大気を…』
『まとめて突っ込んだのか…』
「なんて乱暴なことを…」
「大気を抜かれたのと…」
「民主の星も含めどれが一番に凄惨なんだ…」
「優劣がつけられんな…」
「どれもいやですぅ…」
『667番星の光を使って大気の分光分析かけてるのよ』
『まずもって間違いはあるまい』
『それを成したのがあの4本』
「めっちゃでかい…」
「思ってたよりも…遥かに大きいですね…」
「そりゃ第1のコアも枯れるよな…」
『傘の部分は半径2000kmはあるな…』
『高度も10万kmね…』
『エレベーター部の構造物…長いわね…』
『1万kmはありそうね…』
『ケーブル本数…ゆうに1000本はありそうだな…』
『上下している籠部…高さ10km…半径2kmはあるんじゃないか…』
『それが1000基…ある…』
「数字にされると半端ない…」
「ほんとうに巨大ですわね」
「科学マナ両立文明…もしかして超エコ文明なんでわ?」
「純科学文明…星間文明に至るまでにこんなんなるんだな…母星系…」
『あの篭1つでどれくらいの大気を回収するんだろな』
『常圧下体積比で500分の1以下にできる液化回収だろうな』
『外観体積の半分の容積としても…』
『あれ1個で高さ10km半径44km以上の常圧大気を回収可能ね…』
「そうか、それを4000同時に使えば…」
「第3のようになるのか…」
『これが第3にあった…軌道エレベーターであり』
『おそらくは慣性航行宇宙船でもあり』
『惑星環境改造装置でもあり』
『軽量原子分子類の精製貯留施設でもあり』
『大量虐殺兵器でもあると』
「最後…」
「惑星環境改造装置を…」
「虐殺兵器として使用したと…」
『うむ、そのとおりだ、見る限り5000万年変わらずに運用していたようだ』
『たしかに大きく改造されたような形跡は見られないな』
『年代測定結果も補修部分と籠部を除けば大体が5000万年経過物』
『そして既存の武装が施されていない…』
『宇宙艦船係留施設も最大500mのまま…』
「変えられない?」
「リサイクルもできない?」
「補修までしている?」
『なるほどなるほど』
『やはりそういうことらしい』
『ココの依頼は?』
『大気の成分分析が終わり次第終了で良いだろう』
『あの厚い雲の下には何も残ってはいないのでしょうからね』
「そうか…たとえ在ったのだ…としても…」
「其処にはもう…何も残ってはいない…か…」




