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第71話 名称だけでおなか一杯になる狂気度だな…

『雑木林50号が今、跳んだわ』

すでに作戦中?跳んだの50号だし。

『今のところ、直後に襲撃されたフネは出ていないか…』

『やはり…第1便0.1M級はガス雲に直接転移したのでしょうね』

『転移先立体魔法陣の斥力フィールドで…』

『ガス雲にーあなーあいたー』

『のでしょうね…』

『それでリプレース待ちされたのだろうな…』

「直後に襲撃されたのは…」

「そういうことだったのか…」

「ガス雲まじ厄介」


『デコイの投射の方も問題ないようだな』

『リプレース後にデコイを低Gで切り離し』

『デコイの影に隠れたまま』

『電磁波吸収を起動』

『その後にデコイに加速をかけながら』

『デコイも電磁波吸収を起動させる』

『時間にして5秒の遅延』

『2隻同着の差だと判断してくれるとよいのだけど』

「雑木林本体の侵入をごまかそうと?」

「コマインにとっては2隻同着すら始めてだから?」

「細々と細工を重ねてるなぁ」


『我々は暫くはこのまま待機か』

『ここは667番星より6光年、転移所要時間は17時間』

「転移先魔法陣の展開時間はできるだけ?」

「短くしたいか?けども5光年以内となると?」

「コマインも一度で跳んでこれるんですよね?だから?」

「うむ、6光年だ」

カルイザワ中尉とクロカゼ中尉にナカニワ中尉による、

連携解答での正解か。


『デコイが3光日公転まで到達するのに48時間』

『迎撃射第1波がデコイに到達する2.5光日公転まで72時間』

『われらが転移システムを起動し、

転移先立体魔法陣を構築する時間まで72時間か』

『そして89時間後には跳ぶわ』

『これほど跳びたくない転移は初めてだな…』

『えぇ…そうね…』

「めっちゃテンション低い…」

「そうとうに嫌そうですわね…」

「そんななるほどの場所あるか?」



『デコイは全艦無事に3光日公転を横断したわ』

つまりは先ほどより48時間経過と。

『雑木林も全艦無事に観測点に辿り着いたか』

『あとは迎撃射第1射を待つだけね…』

『そうだな…』

「48時間たってもテンション低い…」

「喜ばしい進捗も…喜べないほどに…ですね」

「ふむ、検証公はどんな場所へ?」


『デコイ1号Aが迎撃射第1射を観測したわね…』

さらに24時間経過か。

『…そうか…起動しよう』

『転移システム起動…』

『あと17時間後ね…』

『そうなるな…』

「なんなんです?この超絶低テンション…」

「すっっごい起動したくない感だけが溢れてますぅ」



『デコイ425号Bが墜とされたわ、残存955隻ね』

『半日0.25光日距離で2割近くか…1光日まで2.5日』

さらに12時間経過と…あと5時間で跳ぶのか…

「12時間で197隻も墜とされたのか…」

「回避行動してないんですかね?」

「有人とはいえ、囚人…自由意思ではないでしょうし…」


『教官が操作してコレか…』

『1光日公転までいけるのはごく僅かか』

「検証公が遠隔操作して…この結果なのか…」

「まさに鉄壁の迎撃陣」


『教官の読み通りか…』

『やはり…コレは必要だった』

「支給された特殊装備?」

「検証公はこうなると読んでいた?」


『デコイ達の観測情報から算出される襲い来る砲弾の、

その最大同時着弾数は毎3000秒100射分で2000億、

12時間で2兆8800億ね』

『第1射を回避できたデコイは3隻のみ…

第1射からデコイ一隻あたり140~144億…初撃で決めにきてる』

『初撃から100個大艦隊全部を使ったか…』

『指し手と検証公…痛み分けね』

『だな、全部墜とすつもりだった指し手、もう少し抜けるつもりだった検証公』

『どちらも不本意といったところね』

「200万隻全力射撃…」

「桁がとんでもないことになってますね…」

「これ270Mtの数なんですぅ…」


『水鏡の反応は?』

『こちらも大忙しみたいね…

星系中に砲弾に負けないくらい大量の微小次元震が観測されているようよ』

『やはりか…迎撃が的確かつ早すぎたからな…』

『ほぼ全てが固定軌道のモノっぽいらしいがな』

『この星系に限り、通信速度にさほどの差はない…そう考えるべきね』

『主星付近にない事を祈るばかりだな』

『見られた時は水鏡が教えてくれるわ』

「監視小惑星みたいなのが…」

「大量に設置されているのか…」

待ち伏せと的確な射撃の主犯か…


『いま、コマインはデコイの迎撃に100個大艦隊全てであたっている』

『観測に予測に修正に集弾に射撃に戦果確認に…と大忙しなわけだ』

「そりゃする方は大変だろなぁ」

「光日級の遠距離射撃だもんなぁ」


『その中で我らは跳ぶ』

「どこへ?その答えか」


『そこは前人未到の地…であった場所』

「前人未到?」

ふぇ!?まさか?


『転移公の作品がいくら光り輝こうとなんら目立たぬ場所』

「えっ?まじ?」

「ん?どうした?」

えっ!?正解なの!?


『転移公の作品を遥かに凌駕する光で全てが輝いてる場所』

「えっ?ウソですよね?近いだけですよね?」

「どこかわかったのか?」

辿り着いたか…ナカニワ中尉…気持ちはわかる…


『転移先魔法陣のフィードバックからシステムが警告する場所』

「自殺行為ですよー?システムの警告通りですよー?」

「なんだその反応は…そんな場所なのか?」

あとはどこまで近いか?


『そこは30G近くもある重力の井戸の中であると警告される場所』

「近いです…それは近すぎる値です…」

「何に近いというのですの?」

え?その数字は…もしかして…


『そこは約5800Kもの気体とプラズマの中であると警告される場所』

「そこもう中じゃん!表面ですらないじゃん!!」

「まさか…そんな…ありえないでしょう…」

「なんだ?ドコの中だ?」


『G2V主系列星667番星そのコロナの下、彩層の下、その光球の表面下』

「「「「「「「は?」」」」」」」

「恒星の中だぁ!そこはもう恒星の中だぁ!!」

「その外は希薄とはいえ100万Kを!軽く超えるコロナもあるんですよ!!」


『我らはーそこにー跳ぶーあと5時間だー』

「そこなら!!絶対に見られないけど!!」

「作りますか!!そんな狂気的なものを!!」

「えっ?」「おい…」「中?」「恒星の?」「667番星の?」「中に?」「直接?」


『恒星表面下直接転移突入シールド外装』

『この仕様を見て…』

『狂気を感じぬ者は…』

『なかなかいないわね…』

「名称だけでおなか一杯になる狂気度だな…」

「普通は思いついても実行しない…ですわ…」

「近くなだけじゃ…駄目だったんですかぁ…」


恒星表面下直接転移突入シールド外装

電磁波吸収フィールドの対象を気体とプラズマまで拡大した、

拡大版吸収フィールドである。

電磁波吸収の吸収プロセスは電磁波にのみ限定して、

異空間に転移させることでマナ消費を極端に抑えた、

常時転移フィールドであるが、

この限定を気体とプラズマまで拡大し、

恒星からの熱遷移を遮断する遮熱フィールドである。

開発にあたり空間歪曲方式とマナ転化方式、本方式が検討されたが、

マナ転化方式はマナ転化累積許容量の問題で持続時間が短すぎ、

歪曲方式はコマインの歪曲シールドのように、外部に対しては歪曲できても

内部に対しては歪曲しきれない点が問題視された、

フィールド自体が淡く発光するため、

それに照らされた艦体が見えてしまう、

その隠蔽性の欠陥を改善するレベルのフィールドは、

あまりに効率が悪かったため、

本方式で開発されたものである。

その見た目は細長い卵である

表層は薄い外板であり遮熱フィールド外部の為、

突入後に恒星の熱を受けて支持部も含め蒸発する。

これは転移時に遮熱フィールドをフネの内部と世界に認識させ、

遮熱フィールドを展開したまま転移を行う為である。

そしてフィールド展開用の空間5mを空けてシールド外装本体がある、

本体は支持材と耐磁束防護材に覆われた内部にそれを実行しうる量の

遮熱フィールドジェネレーターと重力専用スラスタが敷き詰められている

風林火山専用に開発された本シールドは、

完全な対恒星遮熱と磁束耐性に重力スラスタで30Gの

追加加速出力を与えてくれるが20PWもの希薄マナを常時消費する。

この為、転移前の立体魔法陣マナチャージング中に、

希薄マナでは起動できないために、

転移直前、マナクリスタルで起動する必要がある。

転移後は希薄マナで常時起動状態を維持しなければならない。

そして艦体を丸々覆うその形状の為、恒星離脱後は邪魔である。

そのため離脱後は細かく切り離され恒星に向けて投棄される使い捨て装備である。

この時の為に外装材自体が電磁波に対し極めて低反射率のモノとなっている。

なお、開発にあたり349回の実証試験に失敗したが、

一度成功した後は連続50回成功している。


『狂気…その点に関しては信頼と実績のある…』

『帝国工廠開発第五部の開発だものね…』

「…350人目にして…連続50回生還された方は?」

「しっかりと他に転用し、ちゃんと執行されたぞ?

そこに帝国の慈悲はないからな」

「「「「「「「「「………」」」」」」」」」

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