第69話 どれにもーなーいーかのうせいー
『依頼内容はこうだ
目標、零時2群667番星系遺構探査。
戦術目的、コマインに一切悟られず起源文明首都星を特定しろ。
戦略目的、来る大侵攻の際の最優先確保目標は其処だ。
禁足事項1、特定した首都星6光秒圏内への一切の科学物理的侵犯を禁ずる。
禁足事項2、特定するまでは主星以外の全天体についても同じく禁ずる
補足事項1、調査にあたり、純マナ調査装備を支給する。
補足事項2、潜入にあたり、特殊装備を支給する。
補足事項3、潜入にあたり潜入支援特務艦に搭乗する、
強襲独行班576班がその支援を行う
以上だ』
「禁足と補足が…」
「多いな…」
『目標はわかるわ』
『あそこしかーのこってーないー』
『コマインの対帝国複合要塞星系』
『コマインの周辺最多の艦隊駐留星系』
『水鏡が特定した最初の末端通信ハブ星系』
『未だ強襲独行艦が1光日以内に到達できない星系』
『あまりに縁起が悪すぎて連番を1つトばして名付けられた星系』
『そうだ、667番星系だ』
「コマインの防衛要衝で…」
「艦隊の数も最多で…」
「情報重心で…」
「鉄壁で…」
「名称…」
『目的も…だいたいあたりはついているのよね?』
『そうだ、1光日以遠の観測データである程度絞られている』
「250波も回避して肉薄したのち散華までして得た成果か…」
「重いですわね…」
『純水の主生産地であり、その衛星が保管施設となっている、
直径4.9万km級の巨大氷惑星、第8惑星、
直径5.2万km級の巨大氷惑星、第7惑星』
「燃料基地か…」
「重要施設だけども…」
「ソレではないよな…」
『14.5万km級の巨大ガス惑星、
その衛星120が全て100個大艦隊の艦隊泊地となっている第6惑星』
「100個大艦隊…」
「そこには200万隻の戦列砲艦が…」
「いるんですかぁ…」
『通信ハブ星系にのみ存在する監視小惑星直通ゲート通信由来と、
そう推測されている微小次元震発生個所が、
地下3000kmに存在する直径1.6万km級の無大気光沢惑星、第5惑星』
「地下3000km…」
「光沢惑星って…」
「金属人口構造物で覆われているんですの…?」
「帝国門より規模が…」
「大きいじゃないですか…」
「ふむ、明らかにコマイン禁足地ではないな」
『元は惑星だったのであろう、
不自然なほど整然とした小惑星帯に在る、
大規模な製造施設群に造船所群』
「採掘の為に…」
「砕いたのか…」
「そして当然、コマイン禁足地ではない…」
『コマインの活動は一切見られないのに、
荒涼とした大地の地表全面に拡がる、
数多の戦痕が刻まれた人口構造物群を持つ、
直径1.1万km級の無大気岩石惑星、第4惑星』
「無大気?」
「遺構が全面にあるのに?」
「けど禁足地っぽい?」
「5000万年も残るような戦痕があるのに?」
『コマインの活動は一切見られないのに、
荒涼とした大地の地表全面に拡がる人口構造物群を持つ、
直径1.2万km級の無大気岩石惑星、第3惑星』
「戦痕すらないのに…」
「無大気…」
「不穏」
『主成分二酸化炭素の大気を持ち、
おそらくは炭素採集プラントなのであろう、
半軌道エレベーター状の衛星軌道施設が複数存在する、
直径1.3万km級の有大気岩石惑星、第2惑星』
「暴走温室効果か…」
「どうゆうこと?」
「太陽系の金星みたいになった…」
「もしくはそうされた…惑星ってことだな」
「…第3と第4…は無大気」
『人工的に作られたのであろう巨大クレーター内の
永久影に巨大な採掘プラントがある
直径0.7万km級の無大気岩石惑星、第1惑星』
「こっちは大きめの水星か…」
「なかなか乱暴な惑星改造…多いですね…」
『そして有機生命体ハビタブルゾーンに在るのは…第5から第2だ』
『可能性のある対象は4つね』
『第5はーコマインのー要塞かー』
『第2と元惑星の小惑星帯は…』
『何らかの理由でコマインが立ち入れるようになった…か』
『第4と第3が有望だが…無大気なのか…』
『なるほど…確かに詳細調査が必要なわけだ…』
『何れにもある可能性もあるが…』
『どれにもーなーいーかのうせいー』
「第3と第4が元々無大気な筈がないもんな…」
「コマイン禁足地であろうにも関わらず…」
「おそらくは何らかの手段で無大気にされた…」
「そういうことだもんな…」
『禁足事項については…あの悲劇の教訓ね…』
「ソレを強いるに足る理由か…」
「悲劇か…」
『そうだ、932番星系第4惑星の衛星軌道上からの遺構調査を
遂行しようとアプローチしていた0.5M級が待ち伏せに遭い、
生存の可能性に賭けて電磁波吸収を切り』
『最大加速でコマイン禁足地であった筈の
第4惑星に逃げ込もうとした』
『そしてあと5光秒の位置を超えた瞬間』
『進入を回避しようと減速していたコマインが』
『以降、進入を回避する素振りを一切見せなくなり』
『そして逃げ切れなかった』
『その理由と、その後の状況を確認するために』
『0.5M級20隻と1M級3隻を喪った』
『得られたのは…』
『コマインの禁足地に我らがいると科学物理的に知られた時』
『そこはコマインの禁足地ではなくなる』
『そういうことだったな…』
「なるほど…だからか…」
「同種の理由で第2と元惑星も?という懸念ですか…」
『補足事項については…』
『わからーんーこれーわからーんーよー』
『どうも今回の依頼は強襲独行艦司令部で
史上最も大掛かりな偵察作戦になるらしい』
「また、非常識なこと…」
「するんですねぇ…」




