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第67話 そういうことだ

「………白兵戦至上主義者………伝染するのか?」

「……しない筈だ……しない筈なのだ……染まるだけだ」

「……同じことじゃないのか?」

「……決定的に違う」

「……どういうことだ?」

「……適性が無ければ染まらん…事実…風林火山ではウタだけだ」

「……そういうことか」

「……そういうことだ」


『ウタ、融合弾撃ちきったようよ』

『累積残64%ー128PJーおもったよりーよゆうあったー』

『風林火山高度15000mまで上昇する、

各自、あとはいつもの流れだろう』

「ついに…」

「撃ち尽くしてしまったのか…」

「ん?いつもの?」

つまり恒例行事?


『えぇ始まったわ、

コマイン残存約4万機全機散開、真夜中の決闘外へ逃走を開始したわ』

「あぁ、このコマイン達にとっては初めてになるからか」

「そりゃ情報発信を優先するということですね」

なりふり構わず通信可能位置へ向け大脱走なわけか…


『主砲、艦首砲、副砲全門投射砲に』

『あぁ充填できしだい始めてくれ』

『了解』

「ん?なんでまた?」

「いまさら、何を?」


『ウタは使い魔ボットを展開して予定の調査を開始してくれ』

『あいよー』

『火球封鎖射撃開始』

「そりゃその門数と火力なら封鎖できるだろうけども…」

「そのサイズの火球でやるのですか…」


『シン、外の様子はどうだ?』

『いまんとこ外にこっそり抜けた奴はいないみたいだ、

新たな電磁波源は見当たらない』

『ふむ、今回も報告に向けるリソースまで主戦線にまわしたか』

「完全に手慣れている…」

「作業感が出ていますわね…」


『報告に50%もリソース向けられた時は…』

『本当に面倒だったな…』

『まぁアレ以降は報告リソースは主戦線転用対象だから良しとしよう』

「そらまた面倒な…」

「都度、解答が違うのですね…」


『今回のコマインの解答はかなり楽な部類だったな』

『内容的にも地上軍が喜びそうね』

『地上兵力威力偵察としても上出来だったな』

『追加ボーナスだーコレはー期待できるー』

「これで…楽な部類なんですか…」

「この先輩等ヤバすぎひん?」


「とまぁかような任務を行うのが強襲独行艦だ」

「偵察というわりに…えらい派手派手しい任務があるんだな?」

クロカゼ中尉の当然の突っ込み…


「うむ、それは威力偵察といった側面が強いというのと、

いざ、現物の確保や詳細調査が絡む場合に、

現地敵性戦力の誘引と殲滅を必要とするからだな」

「誘因と殲滅?」

クロノ中尉の当然の追加説明要求。


「さきほどの風林火山であれば

見た目は派手派手しくはあるが、

その実、入念かつ繊細な戦術行動を行っている」

「そうなのか?」

「ノリと勢いだけに見えたが…」

クロカゼ中尉とカルイザワ中尉に激しく同意する…

太陽に向かって突っ込んだしな…


「誘因を担当するウタが、

当初、瞬時氷結粉砕ランスと粘性質量加速砲に

ナックルガードしか使っていないのは、

調査対象の周囲の施設への被害を極限するためだ。

言わば火砲縛りで襲撃をかけているわけだ」

「あぁっそうか、ノリでやっているんじゃなく」

「それを強いられていたんですのね」

えっそうなの?絵面じゃないの?


「まぁその為に開発されたのが瞬時氷結粉砕ランスだしな?

アレ、誘爆するはずのモノも誘爆させずに粉砕するからなぁ…

そも周りの被害を考えないのであれば投射砲で済むことだしな?」

「辻斬りの多機能砲でも投射砲は1発400TJか…」

「96kt相当の融合弾相当になりますわね…」

「やろうと思えば数千機単位で吹き飛ばせたのか…」

うっわ…それが10秒ごとに2発撃てるのか…辻斬りって…

地上兵器として考えるとバカ火力機になるんだな…

宇宙では空気扱いで超高機動砲艦より遥かに火力低いのに…


「誘因に成功したウタが迅速に山地に移動したのもそうだな、

アレをすることによって自身を狙う攻撃が、

調査対象に被害を及ぼすことを抑止しているわけだ」

「確かに…躱してはいるとはいえ…」

「その数、秒間ん万発だもんな、周辺は消し飛ぶもんな」

外れた弾は周囲で自然に対して猛威を撒き散らしてたわ…


「そして調査対象付近からの釣り出し、

融合弾射撃の誘引に成功したウタは、

その状況を固定し融合弾の射耗を達成すべく、

辻斬りを囮にし続けたわけだ」

「確かに、コマイン側はかなり前進し続けていましたね」

「なるほど、調査対象から大きく引き離していたわけだ」

「そして融合弾を周辺に影響の少ない空中で無駄撃ちさせると…」

あの火球祭りにそんな意味が…やりたかっただけじゃないのか…


「そして融合弾を射耗したコマインが

次に起こす行動を想定し、

上昇した風林火山の火球封鎖射撃時に、

まとめて吹き飛ばせるようにも事前に調整してあったわけだ」

「あっ…たしかにあの位置は…」

「あぁぁぁ…コマインの最終位置…」

「封鎖時の主砲の火球の位置にモロかぶりだったな…」

「主砲の火球…ひと際大きいから目立つんだよな…」

「そして…あれでまとめて消し飛んだのか…」


「うむ、あとは使い魔ボットの調査中、火球封鎖を維持し、

調査を終えたらコマインの解答結果とその理由、

そして存在するかもしれない高隠密型発信専用個体の可能性を

同じく投射砲でまとめて消しとばして7号の起動を停止する。

そういう流れになるわけだ」


「たしかに…入念かつ繊細…」

「それも過剰と言えかねないほどに…」

「徹底していますね…」

「ノリに騙されましたぁ…」

マキバ中尉と同じく俺もまんまと騙されたよ


「とはいえ、風林火山は強襲独行艦でも、

歴代中10指に入る程の武勲艦でもある」

「あぁやっぱりそうなんだ」

「ですよねぇ」


「うむ、検証公インパクトのおかげで、

戦没艦の絶対数は劇的に減ったが…

待ち伏せ襲撃の難易度自体は跳ね上がったからな?

基本的には待ち伏せ襲撃は死を意味する」

「あぁやはりそうなのかぁ…」

「普通はこうも上手いことやれませんよねぇ…」


「そして辻斬りを運用できるような15M級20M級といった艦は

この待ち伏せ襲撃を生き残ったという証左でもある。

通常の依頼だけではなかなか届かん功績ポイントだからな?」

「生き残れば…自ずと武勲艦…」

「そこには…それだけの激戦が…あったということですのね」


「帝国が諸君らの先輩の偉大な成果の少なくない割合を

検証公謹製リストの運営に使っているのもソレが理由だ、

ソレをするだけの戦略的価値が充分以上にあるからだ、

映像で見てもらったとおり、生き残った者は破格の実績をあげてくれる」

「たしかに…コマインの戦略に甚大な影響を…」

「ガツンと与えていたな…」


「そして、その彼等にもそうなろうとするだけの理由がある」

「そうなのか?」

「どういった理由が?」


「艦の仕様は、ある程度方向が定まれば、

それに沿って完成度を上げていくわけだが、

当然、それには技術的な限度があるわけだ?」

「ふむ、たしかにそうだな」

「ナイものは載せられないもんな」


「だが、依頼報酬は下がるどころか上がるばかりだな?」

「たしかにそうだな、使いどころがなくなるな」

「最終的には溜まるばかりになりますわね」


「名誉退役申請5,000,000点、

当人同意の元の他者による申請を制度化」

「「「「「「「「「あぁっ!!」」」」」」」」」


「そういうことだ」

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