第63話 結局は主犯なホシであった
『スラスタ配分慣性50重力50
出力上限62.5%慣性28G重力7G計35G』
『電磁波吸収ジェネレーター環境迷彩モードよし、
7号即時起動準備よし』
『風林火山降下準備よし』
『辻斬りー降下準備ーよーし』
『風林火山エレベーター降下開始』
『辻斬りーエレベーター降下ー開始ー』
「降りるんだ…」
「風林火山も一緒に降りるんですの…?」
「球形だから?球形だからですか…?」
「宇宙戦でいえば数百kmは至近距離…なわけか…」
「7号を使うなら降りた方がマシだと…」
「水平線という自然の防壁がある…ということですか」
『さて、どう仕掛けてくるかな?』
『7号自体は何度か見せている』
『常に前後の中心にいるのが強襲独行艦』
『これは知られている筈だ』
外からは何度も見ているコマイン…
「容疑者は強襲独行艦」
「ホシは風林火山」
『だが中でのことは見られていない知られていない』
『有線であっても7号は通さない』
最終的に結果は見られても…
途中経過は見られない…
「完全犯罪」
「密室事件ですね」
真犯人は辻斬りなのにな?
『そして最終的には投射砲で痕跡は』
『全て吹き飛ばしてきたからな』
「超有罪」
「結局は主犯なホシであった」
犯人は犯人だった…
『突撃艦は?』
『無い、それをつくる能力も伏せる地形もない』
『それは確かで疑いようもない』
『地下200kmまでソレがないことは』
『新人たちの偵察結果が証明している』
『この星系は事実上、もう帝国の星系』
『艦船サイズの艦隊規模のモノはもう隠しようもない』
『その存在を隠せない』
いまや偵察艦単艦がようやっとの宇宙戦力単位…
「強襲独行艦だけで1星系奪取か」
そうだよなぁ第2分隊長クロカゼ中尉、
そう考えるとスゴイ戦果だよなぁ
「そして、だから風林火山も降りられると」
軌道上からの奇襲はもう考えにくい…
第4分隊長ナカニワ中尉…そういうことよなぁ…
『ならば…紛れる…か』
『…だろうな』
『既存構造物に…』
『紛れる』
『純水保管区画』
『言うなればタンクだ』
『高さ20m、直径1kmのタンク内壁』
『そこにいるのならば…紛れられる筈だ』
『調べたいからこそ残している…』
『だからこそ、ソレを盾にしての…』
『…小火力継続飽和攻撃か』
「つまりはそのサイズ内のモノが?」
「いると…いない筈が無いと?」
「それも…いっぱいいると」
あくまで狙いは風林火山自体の筈だから…数がいる…
『問題はいつ動くのか?だ』
『見つかるのは?』
『使い魔ボットだ、環境迷彩が無いからな』
『使い魔ボットをいつ?どこで?どこに?出すか?』
「あっキッカケはそこになるんだ」
「たしかにあのサイズにいろいろ詰め込んでそうです」
『辻斬りで要所の直接試料採取』
『ひとまずは…出さずに最低限の調査を行う』
「使い魔使わなくてもできるんだ」
「最低限というくらいですから」
「効率は悪いんだろうなぁ」
『しかる後、アレだ』
『その後に残ったモノを使い魔ボットで詳細調査か』
『その方が早いだろう』
「気になるアレ」
「不穏なるアレ」
『自爆戦術の可能性は?』
『おそらくはないだろうとのことだ』
『相手にとって主体は強襲独行艦…そう見えている筈だ』
『まさか、半ば地上兵器が主体とは思ってはいまい…』
「中の様相を知らなければ…」
「確かに対艦戦を想定するよなぁ」
「地上戦をするのに母艦まで普通降りないもんだろうしなぁ」
『ということなのだろうな』
『突撃艦級の弾頭であろうと直撃でなければ』
『墜とせないのは明白か…』
『風林火山が堕ちるほどの自爆規模であれば』
『そもソレを隠すこともできないと』
『むしろ一桁二桁小さいサイズの直撃こそを警戒すべきか』
『だろうな』
「なるほど、たしかに無警戒ではいられませんね」
「33PJ、約8Mtの融合弾相当か…」
『というわけだ、ウタ』
『使い魔くーん暫しおやすみー』
「そして調査中の一幕だ」
『ん-やっぱりー5000万年前とー』
『その次は補修メンテ更新らしき2000万年前』
『最古区画中心部のソレら以外』
『拡張されたのであろう領域は』
『うんー全てがー魔導銀河帝国歴380年以降ーのものだー』
コマインの基地施設ですら2000万年も変化がなかったと…
「つまりはコマインにとってもこの方面の出会いは…」
「帝国が初めてなんだな」
『コマインとの開戦前…』
『不意遭遇開戦を避けるべく…』
『長きに渡りその数を変えなかった…』
『人類到達星系12023…』
「たしかにそういう話はあったな…」
「そうでしたわね」
『ソレと監視小惑星との最短距離は…』
『わずか50光年に過ぎなかった…』
『水鏡班が見出した戦慄する事実…』
「そうか、そんなに近かったんだ…」
「出会う前からすでにそんなに近かったと」
つまり50年で光は届くわけだ…
『非人類圏到達済星系への独行艦全配備計画…』
『「帝国の耳目」計画…』
『その始動は魔導銀河帝国歴301年…』
『見られていたのは…』
『やはり、盾上がりだったか…』
「「「「「「「「「あっ!!」」」」」」」」」
『あの初戦…131年も作戦準備期間があったのだな…』
『そしてまた歴史公の推察の傍証がひとつ積みあがったな』
「うわぁ、それを見られていたからなのかぁ…」
「ゴーイングマイウェイが艦隊待ち伏せされたのも…」
「そんな前から準備されていたからかぁ…」
「そしてその状況でも先手を打たなかったのか…」
『けどー新しいのー9割8分がー魔導銀河帝国歴513年以降ー』
『コマインも帝国の実力を大きく見誤っていたのだな…』
『指し手にとっても衝撃だったのだな…あの初戦は』
「その割合…たしかに必死感がスゴイする」
「えぇ…とてもしますわね…」
『ふっ、あの時に散って逝った戦友たちに良い土産話ができたな』
『よくある雑魚星間文明…そう見られていたらしい帝国は』
『お前らの意地によって』
『遅滞戦闘と厭戦喚起戦略を許容するほど』
『脅威とみなされたらしいぞ?とな』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『さて、あいつらに良き土産話もできたことだし』
『あぁ、もう充分だろう』
『アレの用意を始めよう』
「準備?」
「準備がいるの?」
『風林火山は予定の位置』
『残した4割の外縁中央点から200km』
『最古区画の中心点たる微小次元震位置から100km』
『そのランドマークの線上における、その位置』
『そしてウタ?辻斬りが向かうべき場所は?』
『残したー4割のー外縁ー中央点ー』
『辻斬りが到着次第、始めよう』
「その配置…」
「なんですか…その配置…」
「中心点を挟んで?二手に?」
「…風林火山1隻と…」
「辻斬り1機しかいないだろ…」




