第60話 あぁ…とてつもなく…地味だ…
「そんな存在であれば…」
「当然、敵中隠密地表調査にも駆り出される」
「なるほどなぁ」
ちっちゃな強襲独行艦みたいなもんでもあるしなぁ。
「まぁ多少の問題になるのが、
強襲独行艦からの出撃と帰還だな」
「というと?」
「どちらか電磁波吸収を切らんとならんからな?」
「存在が露見すると?」
別個のフィールド同士は干渉しちゃうのか?
「少なくとも上下の監視小惑星のどちらかにはな?
どちらにも見られない位置というのは些か希少だ、
それだけに待ち伏せされやすい位置でもある。
なので監視小惑星にソレを見られることは甘受するわけだ、
なので1か所の作戦期間は30日が限度だ、
そこを過ぎれば地表上軌道上で見つかっていなくても、
小艦隊以上がやってくるからな」
「輪や衛星は?」
第8分隊長クロノ中尉が言うように隠れる場所は多そうだが?
「基本的に使わない、どんな罠があるか
知れたものではないからだな?」
「ん?となると見通しの良い位置?になるのか?」
「そうだ、調査対象が惑星であれば衛星軌道を
衛星であればその衛星に対する周回軌道を
というのは読まれるので避けて、
位置保持がかなり非効率な領域からランダムに選ぶ」
「対象を2光秒圏内におさめられる位置?」
「うむ、それができる見通しの良い位置からになる」
「それ見つからん?対象付近のコマインに」
「うむ、見つかるな、そしてそれを甘受することになる」
「それは厳しくないか?」
「そうだ厳しい、ゆえに開発されたのが、
電磁波吸収フィールドに穴を開ける追加術式だ
これで、コマイン戦力不在面側に穴、
つまり出撃帰還口を向けて、
辻斬りも電磁波吸収フィールドを起動したまま、
出し入れすることで露見を防いでいる
フィールド同士が干渉することで術式破綻するのだから、
干渉しなければいいじゃないかという発想だな。
副次的に電磁波吸収フィールド使用中の辻斬りは、
母艦のアンテナに頼って行動するしかなかったのが、
多少の隠蔽性を犠牲に単独でも動くことができるようになった」
「それは監視小惑星に対しても?」
「上下の監視小惑星に対し、
自身の影ができる位置で、
かつコマイン戦力不在面。
この条件が満たせるならばそうだ、
辻斬りが見つからない限り調査が可能だ
満たせない場合は作戦期間は30日が限度だ
なお、辻斬りが見つかった場合、
もしくは交戦した場合はその時点より、
小艦隊以上がやってくる」
「コレがいる、なら母艦もいる、なら小艦隊以上を」
「そういうことだな」
「調査能力は?」
「使い魔ボットがソレ専用でな?
機体にも必要充分以上にあるぞ?」
「回収能力は?」
「2m×2m×4m封印コンテナ4だ、
よほどの大物でないかぎり問題ない、
そしてこの機動力だからな」
「見つからない限り…」
「いくらでも往復が可能だ」
「なるほど…」
「ふむ、では実際の調査風景をみてもらうか」
(((((((((こくり)))))))))
『ウタ?準備はいいか?』
『いいよー』
『発進路評価グリーン』
『フィールド開口開始…開口終了』
『艦首ハッチ開口開始…開口終了』
『辻斬りリフトオフ』
『辻斬りフィールド展開位置ー』
『辻斬りフィールド展開…展開終了』
『辻斬り発進ー………でたー』
『艦首ハッチ閉口開始…閉口終了』
『フィールド閉口開始…閉口終了』
『じゃーいってきまー』
『おう、たのまー、ナナキもフォローよろしくなー』
『えぇ、いってくるわ』
「発進はこんな感じだ」
「評価グリーン?」
「うむ、上下の監視小惑星に見られない
かつ、付近のコマイン戦力にも見られない
という意味だ」
「他は?」
「オレンジとレッドだな」
「だいぶのんびり?」
「フィールド干渉事故を起こさなないようにだな、
そもそも宇宙戦をするわけでもないから
急ぐこともない」
「ハッチは艦首?」
「うむ、彼らは色々悩んだ結果、艦首にした」
「なぜ?」
「開口面積が小さくなるのが前後方向、
フィールド形状が単純なのが艦首
コマイン戦力不在面に向けるのが逃げやすくなる艦首
これらの理由によるものだ」
「なんというか…地味?」
「うむ、恐ろしく地味だ、
なにせ見えなくなってから出る訳だからな」
「ウタ大尉とナナキ大尉?」
「そうだ、主にこの二人が辻斬りを使っている、
ウタは辻斬りの操縦適性が高かったためメイン、
ナナキは総合力の高さで支援が中心のサブだ、
そして行ってくるといっても体はCICの座席シートだ、
何処にも行っていないからな?」
『ウタ?遺構直上、第5惑星自転速度に同期完了よ』
『おけースラスタ配分慣性0重力100ーエレベーター降下開始ー』
『ココまでは前も来たのよねぇ』
『前回もーだったけどー』
『ほんとにコマインの姿…』
『影もー形もー見当たらなーいー』
『あぁ15光秒圏内においてさえ、やはり見当たらない』
『どういうことなのかしらね?」
『今まで見つかった遺構のある天体』
『全てに共通する特徴よね』
『何かわかればいいんだがな』
『それに限らず多少でも何かしらの発見ができれば』
『功績点1Mポイント』
『そしてーボーナスもー超マシマシー』
『まぁ最低必要装備が辻斬りだからなぁ』
『報酬で釣らないと…なかなかねぇ』
「エレベーター降下?」
「見ての通り第5惑星はそれなりに大気のある岩石惑星だ、
降下中に大気を摩擦加熱した結果生まれる航跡は、
電磁波吸収フィールドの対象外だ、
慣性スラスターのマナ残光は消せても
フィールドを抜けたあとの加熱後残光までは消せないからな、
つまり隠密時大気圏降下は大気が摩擦加熱されない速度で、
とてもゆっくりとした垂直降下で行われる。
その姿は見ての通りだ」
「あぁ…とてつもなく…地味だ…」




