第57話 まさに苦悩苦心奔走の集大成と…
「これ…大騒動になったんじゃないか?」
「うむ、コマイン、帝国ともにな?」
「そりゃそうだろ」
「破格の戦果」
「…ほぼ完全勝利」
「だが帝国側はすぐに鎮静化した」
「ほう?それはまた」
「どういうことですの?」
こういう面に喰いつくなぁ…
第5分隊長イクサバ中尉と第3分隊長オオトリ中尉の2人は…
「検証公よりプラン風林火山の看過できぬ問題点、
それを纏めた見解資料が流されたからだ」
「大成功したのに?」
「それを当人が否定すると?」
「うむ、資料曰く、
マナドライブテイクダウン、つまり被弾強制瞬間減速だな?
コレを0時第2帝国門要塞をずっと見ていた筈の
コマインが知らなかったのは、
レーザー戦艦にそれまで迎撃されたことが無かったからだ」
「わりと長い間、戦場になっていた星系なのに?」
そうなんだよなぁ…
「理由は簡単だ、唯一、マナドライブ中を迎撃できるレーザー戦艦だが、
それは3光秒以内で0.25光秒以下まで減速した後になる、
レーザー戦艦の2.5光秒以内にタッチダウン、
普通はしない、実際なかった、ゆえにそれまで知られていなかった」
「そして思い知らされた…」
そりゃ科学的考えれば…ありえん動きしてるからなぁ…
下手に通常減速シーケンスは知ってたろうし…まさか被弾したら、
亜光速からいきなり通常速度に瞬間減速するとは思わんもんなぁ…
「そして思い出す、
数多に見てきたタッチダウン位置をな?
そしてテイクダウン位置との違いについて検討すれば?」
「風林火山も懸念していたタッチダウン直後の集中射か…」
いわゆる即死コースだったな…
「そこに辿り着くのは容易…と資料には示されていた」
「今後はもう単なる自殺行為であると…そう示されていたのですね」
「うむ、そしてまだまある、資料曰く
魂魄式AI、その禁足事項については、
魂魄式AIの判断行動の結果責任を人がとる。
その上で欠員補充であれば通せる。
逆にそうでなければ通せない。
つまり戦闘中の欠員が前提だ」
「欠員から始まる戦闘プラン…」
「奇襲はよいとしても…常用は…」
「ないな…」
「さらに資料曰く
あまりに長時間魂魄式AI演算能力を占有する
帝国の運営に深く根差している魂魄式AIをな?」
「国がまわらなくなる…」
「そうだ、少なくとも効率は大きく落ちるだろう」
「そして資料曰く
肝心の4号も魂魄式AI演算能力を占有した上での運用」
「まったく同じ問題が出る訳か」
「そう、プラン風林火山はたった一度だけの
心理的奇襲プランにすぎなかった訳だ」
「確かにそれなら鎮静化しますね」
「うむぅ納得の展開だ」
「じゃぁコマインは?」
「どうなったんですぅ?」
「…ソレは…検証公インパクト…そう呼ばれている」
「盾ナグールと同格扱いじゃないですか…」
「風林火山はどこへ…」
「主犯はどうみても検証公だからな?
風林火山の面子は、その巻き添えになっただけだからな…」
「ぁぁ確かに…」
「そうだな…そうだ」
狙い通りトラウマになったわけか…
「これ以降、コマインは苦心苦悩奔走した結果を
帝国に示し続けてきた、時系列順にいこうか?」
(((((((((こくり)))))))))
「まず艦隊布陣が変わった、
艦隊中心が戦列砲艦からレーザー戦艦に移った、
つまりはレーザー戦艦を守る位置に戦列砲艦だ」
「艦隊戦列戦で一番いらない子が…」
「王の位置にいますぅ…」
「そうなる程に刻まれたと…」
レーザー戦艦がいないと…もう落ち着けないのか…
「艦隊運用も変わった
それまではそれなりにあった、
数千規模戦隊分派を全くしなくなった、
戦術最小単位は偵察艦と突撃艦数十隻のままだったが、
次の戦術単位は間を全部とばして小艦隊になった」
「最低限それだけ揃えていないとですのね…」
「星系内を動き回ることもできないとはな…」
「そう刻まれたんですね…」
4号に刻まれたトラウマか…非制式兵器の上…
正式名称が漢は黙ってコブシで威光だというのに…
「強襲独行艦に対する待ち伏せ襲撃の頻度が大きく減った。
当然だな、最低でも小艦隊だ、その仕掛けも大掛かりになる。
まぁ実際に襲撃された際の生還率は大きく下がったが」
「本来目的の部分か」
「あとはオマケの筈なのですが…」
「オマケの方がえらい事になってそうだな…」
「戦列砲艦が被弾後に、
暴走事故を起こす事が散見されるようになった、
4号対策の為、フェイルセーフを極端に緩くした結果と思われ、
実際に現物を調査した結果もそうであった」
「多少の事故は看過してるですぅ…」
「まとめて置物にされるよりはマシだと…」
「そう刻まれたのか…」
安全性改悪を4号に強いられている…
「レーザー戦艦の後継候補と思われる同種艦
それらが幾多も、そして今も散見されているが、
いまだレーザー戦艦の後継はできていない」
「意外ですね?できていないんですか?」
「歪曲フィールドも無い紙防御なのに?」
「戦列戦中は戦列砲艦の影にいればよい、
機動性もソレができれば良い、
タッチダウン直後の強襲独行艦を消し飛ばせればよい、
ゆえにコスパ的に現行のレーザー戦艦を超えられていないようだ」
「たしかコマインの歪曲砲は…」
「そうだ、距離減衰がある」
「…なるほど…苦悩しつづけていると」
「威力偵察艦、定期便だな?
コレの開発に長年をかけ、ようやっと本運用を開始した。
コレはコマインなりの強襲独行艦の模倣であり、
帝国の強襲独行艦に対するカナリヤだ」
「あ~だから天敵が強襲独行艦なんだな」
「あえてそうしていると」
その星系に強襲独行艦がいるかどうかを知りたいと…
「そうだ、帝国の強襲独行艦の戦力評価に
極端な幅があり、警戒すべき対象がさして多くない事に
気付いたコマインが、その対象の有無を確認する、
それも偵察目的の一つであると推測されている」
「なるほど、いれば侵攻優先度は低くなるんだ」
猛者がいないかどうか犠牲覚悟の漢探査活動…
「そうだ戦略的な理由がない限り、
いたら、その星系は敬遠される」
「いたらわかるのか?」
「強襲独行艦について、コマインは個艦識別をしている、
それも執拗なほど詳細に、そう判断されている。
実際、ハリボテの砲塔や艦体パーツが有用で、
例のリストに擬装部材が大量に載っているほどだ」
「もう1艦1艦憶えているということですか」
「常に過去の戦闘詳細をチェックしているってか」
…もうマニアか専門家じゃねぇか…
「そういうことだな、
そして、その矜持を曲げてまで開発したのが、
超大型高機動突撃戦艦なわけだ、
これは早い話が突撃艦にある程度ついていける、
硬いレーザー戦艦役でもある訳だ」
「なるほど、突撃中の突撃艦に4号ぶち込まれないようにか」
「そうしないと突撃できないということですのね」
そもそもが強襲独行艦対策だったのか…
「そして格闘艦なわけだ、
距離次第ではあるが数で押せば、
強襲独行艦を正面から墜とせる」
「まさに苦悩苦心奔走の集大成と…」
「それが格闘艦…」
「さて、強襲独行艦のひとつの側面である、
通商破壊戦について解説したが、
次はもう一つの側面、探査についてだ、よいな?」
(((((((((こくり)))))))))




