第47話 …まぁ検証公だからなぁ
「そんな彼らの次の作戦行動だ」
『ウタ?事前定点観測の結果は?』
『第3衛星に厚い雲ができてるよー』
「えっ?岩石衛星の方に?」
「なんでまた」
『第4衛星じゃなくか?』
『あと輪もできてるーその上ー輪になる過程のー
厚い宇宙塵が第3衛星を取り巻いてるよー』
「えっ防壁なの?」
「防壁にしたの?」
『艦隊は?』
『支援艦艇はー第3とー第4の間をーせっせとー』
『前回の第4から吹き上がったモノを流用したか』
「有効?利用?」
「有効かどうかは怪しいかもしれんが」
『戦列砲艦は第3からー少し離れた位置にー』
『突撃艦は?』
『いないように見えるー』
「不穏」
「不穏すぎる」
『どうする?駆け抜けるか?』
『いや、駆け抜けさせたいように見える…
予定通り減速プランだ』
『むー残念ー』
『シンのアンテナの為だぞーウター』
『むーがんばるー』
「班長の責務は…重い」
「班長がんばってる」
『罠はあるとしてコマインは第3と見たか』
『まぁあちらからすれば本命は第3とみるよな』
「えっ第3じゃないんですぅ?」
「えっじゃぁ何を攻撃するんですの?」
『まさか落下する第4が目標とは思うまい』
「えっ?なんで?」
「第7に落ちるんですよね?」
『ナナキ、射点までは?』
『あと600秒よ』
『暫し待機だな」
「えっどうゆうこと?」
「わからんわからん」
『そろそろよ、同時着弾射撃シーケンス開始10秒前』
「始まっちゃった」
「始まっちゃったよ」
『3、2、1、開始』
『定点アンテナ観測開始、第1定点展開』
『主砲艦軸線合わせ、質量融合弾揚弾開始』
『オートカウンタースラスト起動、艦姿勢制御の砲術リンク起動』
『第1定点消滅、第2定点展開』
『諸元修正開始』
『第2定点消滅、第3定点展開』
『主砲実体弾投射モードで起動、連続装填開始』
『艦0G固定モードに移行』
『第3定点消滅、第4定点展開』
『諸元修正完了、自動艦軸合わせ起動』
『第4定点消滅、第5定点展開』
『主砲射撃開始』
『第5定点消滅、第6定点展開』
『主砲第10波まで射出完了、射撃は継続中』
『カウンタースラスト問題なし、艦0G』
『第6定点消滅、第7定点展開』
『主砲第20波まで射出完了、射撃は継続中』
『第7定点消滅、第8定点展開』
『主砲第30波まで射出完了、射撃は継続中』
『第8定点消滅、第9定点展開』
『主砲第40波まで射出完了、射撃は継続中』
『第9定点消滅、第10定点展開』
『主砲第50波まで射出完了、射撃は継続中』
『第10定点消滅、第11定点展開』
『主砲第60波まで射出完了、射撃は継続中』
『第11定点消滅、第12定点展開』
『主砲第70波まで射出完了、射撃は継続中』
『第12定点消滅、第13定点展開』
『主砲第80波まで射出完了、射撃は継続中』
『第13定点消滅、第14定点展開』
『主砲第90波まで射出完了、射撃終了』
『第14定点消滅、第15定点展開』
『艦姿勢制御の砲術リンク終了』
『第15定点消滅、第16定点展開』
『艦姿勢-180度、減速準備姿勢に移行開始』
『第16定点消滅、第17定点展開』
『減速準備姿勢に移行完了』
『第17定点消滅、第18定点展開』
『さて結果はどうなるか?』
『第18定点消滅』
『同時着弾射撃シーケンス終了ね』
『よし、減速自動航行開始だ、着弾前まで各自ゆっくりしてくれ』
『『『『『あいあいさ~』』』』』
「全部撃ち出しちゃった…」
「これ、全部第4衛星に?」
「4500発も?」
あっ時間とばされたっぽい…
『今回は迎撃無しか当然だな』
『やっぱりー1光時以遠ではー見えてないねー
第3付近のー支援艦艇の退避ーそこらへんからー』
『見えてない態を装う必要もない状況だしなー』
『見えてないかー暫くはコレで通商破壊することになりそうだなぁ』
『固定目標に対してはー超有効的だー』
「迎撃できていないですものね」
「そして、あの威力だし」
『半面、艦船には無力よなぁ』
『前回レーザー戦艦が大量に巻き込まれたのは、
無理な迎撃によるものでしかないからなぁ』
『ド低速の戦列砲艦でさえ余裕の退避だからなぁ』
「たしかに艦船には通用しないのか」
「かなり極端な攻撃戦術になるわけですね」
『そろそろ第1波着弾の光像が届くわよ?』
『今回は前回の反対面に着弾だったな?』
『そうだ、後ろから蹴り上げる格好だ』
「えっ?蹴り上げる?」
「なんで?」
『どこまで地殻が耐えられるかが勝負どころ』
『第4衛星くんーふんばれーがんばれーたえろー』
『俺らのアンテナの為に!!』
『3、2、1、着弾』
『衛星軌道速度+0.3%だ!!』
『地殻はー無事だーたわみも1m以下だー』
『予測よりも加速が鈍いな』
『内部海に吸収されてる?』
『第2波着弾』
『同じく衛星軌道速度+0.3%だ!!計+0.6%!!』
『地殻はー無事だー同じくたわみも1m以下だー』
『まぁもう見ていることしかできないんだがな』
『そう、何が起きたとしても』
「えっ加速させんの?」
「落とすんじゃない?」
「えっ?えっ?」
『第20波着弾』
『衛星軌道速度+0.3%だ!!計+6%!!
よく耐えた!!第4衛星さん!!落下は回避したぞ!!』
『第4衛星さんーよく耐えてるー地殻がーおかしくなっても耐えてるー』
『たわみが共振し始めてるな、すこしマズいか』
『反対面から雲が流れてきたわね…
+0.5%予定の内の行方不明の0.2%は…』
「えっ?天体規模マッチポンプなんですの!?」
「叩き落して蹴り上げるの?衛星を?」
「はぁ?正気か!?」
『第40波着弾』
『衛星軌道速度+0.2%!!計+11%!!
頑張れ!!頑張るんだ!!第4衛星さん!!』
『ふぁいとーふぁいとー泣きながらでも耐えろー』
『やはり地殻が割れて噴き出してるか』
『共振も一部では10m級の撓みを…』
「着弾の度に垣間見える雲向こうがむちゃくちゃだ…」
「第4衛星がどんどんボロボロに」
「可哀そうですぅ」
「だがソレは直径2500km級の氷結衛星だ」
『第60波着弾』
『衛星軌道速度+0.1%!!計+14%!!
耐えろ!!耐えるんだ!!あと1/3だ!!第4衛星さん!!』
『ふぁいとーふぁいとー全身傷だらけでも耐えろー』
『地殻がそろそろ一体性を失いつつあるな…』
『それにつれたわみが波に変化しはじめてる…』
「なんかこれ地殻破砕ドクトリンより酷いことに?」
「なるんじゃ?」
「ないかなぁ?」
『第80波着弾』
『衛星軌道速度+0.0%!!計+15%!!
あと10回だ!!第4衛星さん!!それを耐えれば!!戻れる!!』
『ふぁいとーふぁいとー全身血だらけでも耐えろー』
『地殻は既に氷山の塊だな…』
『100mくらいの波に揺られてる…』
「緩やかに地殻破砕されとる…」
「破砕どころかクラッシュアイスに…」
「まだあと10波あるんですのよ…」
『第85波着弾』
『あぁぁぁぁ!!1か所吹き飛んだ!!
第4衛星さん!!質量1%損失!!なんてこった!!』
『さよならー100%第4衛星さんーこんにちわー99%第4衛星さんー』
『ついに地殻を抜けたな…』
『内部海で連鎖融合したのならそりゃそうなる…』
「ついに…地殻破砕ドクトリン超えちゃった…」
「天体質量減量ドクトリンとでも…」
「なんでこんなことに…」
『第89波着弾』
『ぬぁぁぁぁ!!今度は5か所吹き飛んだ!!
第4衛星さん!!質量15%損失!!あと一回だ!!』
『さよならー90%第4衛星さんーこんにちわー85%第4衛星さんー』
『今のでだいぶ…』
『地殻面減ったわね…』
「どんどん小さくなる…」
「吹き飛ぶたびに元地殻の巨大氷山が流れ込む地獄絵図」
「そしてどんどん水面が剥き出しに」
『第90波着弾』
『ひぃぃぃぃ!!うそぅぅぅぅ25か所吹き飛んだぁぁぁ!!
第4衛星さん!!質量40%損失!!けど!!生きてる!!』
『さよならー85%第4衛星さんーこんにちわー60%第4衛星さんー』
『天体としては…残ったな…』
『かなり危うかったわね…』
「うぉぉぉギリギリだぁ」
「どう見てもギリギリですぅ」
「マジで消し飛ぶかと思ったぞ」
「元は直径2500km級の氷結衛星だったんだ…ソレは、
この同時着弾後は直径2100km級の海洋衛星になった、今は氷結衛星だがな」
『これ?どうなんだ?成功なのか?』
『オーダーは…
第4衛星を「必要最低量で」一回叩き落した後に「残り全弾で」蹴り上げて衛星軌道に戻せ
…だから…成功?』
『コマインから見れば…
計算ミスって第4衛星を第7惑星に誤って叩き落して、
慌ててなんとか衛星軌道に戻そうとしたら、
地殻どころか天体質量4割も吹き飛ばした慌て者?
結果的に良いアレンジになったのでは?』
『そうなのか…そうなるのか…』
「良アレンジ…そうなるのか…目的に、より、沿うのか…」
「たしかに…そうだけども…」
「惑星地殻破砕ドクトリンを許容してない事を示す為に…」
「衛星であれ天体をいたずらに消失させないことを示す…」
「…というのはわかるけども」
「…全弾で…というオーダーの時点で…」
「…手段がソレを超える天体質量減量ドクトリンなのはどうなんだ…」
「…まぁ検証公だからなぁ」




