第38話 帝国は覚悟の差で彼らに負けたのだ
「有効的なのはよくわかりましたが…」
「しかし、どうやってるんですの?」
そうなんだ方法がわからない…
第4分隊長ナカニワ中尉と第3分隊長オオトリ中尉も
不思議に思っているようだ。
「あの状況でも使わないってことはさ?」
「地上軍軍人には同じことができないんだろ?」
第7分隊長カルイザワ中尉と第2分隊長クロカゼ中尉も、
同じ結論か…通常地上軍が使えるなら使わない筈がないもんな。
「うむ、そうだ、地上軍軍人にはできないな?
意志薄弱な2種だからできる事だった」
「欠点を有効活用?」
根源と接続する為のマナ送受システムを使えない理由…
それを有効活用したわけか…
「そうだ、中隊贖罪兵管理システム、
これを最初に思いついた贖罪兵は、
日常の中で思ったそうだ」
「なにをです?」
「日常の中でか」
「拠点艦内の移動に使ってる、
地上軍戦地駐屯地との行き来に使ってる、
この近距離転移装置は何故?両方いるのだ?
なぜ帝国門のように投射できないのだ?」
「なるほど、それは当然思いますよね」
「自然に思う疑問だな」
そりゃできない理由を確認するわな。
「そして大多数の者がコレらを聞いて納得し
それ以上を考えることを止める」
「そのコレとは?」
つまりは根本的にどうしようもない問題か?
「他者を転移させる場合、
たとえ当人が受け入れていたとしても
その魂魄意思が発するマナの為、酷く効率が悪い
当人のマナを防壁と世界が判定し処理するためだ」
「どのくらい悪いのです?」
ここでも魂魄意思か…
「地球人類なら1000マナ必要だ、
そしてハイヒューマンなら5000万マナになる」
「たった一人の移動に5000万…」
「あれ?えっ?じゃぁ艦船星間転移や日常で使ってる奴は?」
そんな量を日常的に使ってる筈がないし…
何かしら工夫をしている筈…
「アレらは術者当人と術者の持ち物と
世界に判定させているんだよ、
それであれば、気軽に使える現状のレベルになるからな?」
「世界を騙してるんですか?」
他者を転移させるのではなく当人が転移する形式に擬装している?
ということか…艦船とかだと複数人数いるから
共同発動でもしているという態で擬装?
「転移陣が肥大化する大きな理由の一つだな」
「出てきてない帝国門は?」
あっちは瞬間的らしいしな…
「あれはそもそもからして原理が違う、
無数の対消滅ジェネレーターが発する、
膨大な希薄マナを注ぎ込んで、
上位世界同然の程度にまで
存在の格を上げた入り口を常に維持しているんだ。」
「上位世界級の扉…」
「だからあんな事故が起きると」
「基礎研究施設は鬼門現界顕現時に全部消し飛んだがな?
そして希薄マナであるデメリット面は、
強引に格を上げた結果による、
世界間虚空マナ誘因で帳消しにしている。」
「やはりマナ的エコなんだ」
一時的に希薄マナで強引に格上げすれば、
以降は勝手に存在固定されるのか。
「でだ、出口は膨大な希薄マナを使って
目標座標にちょいと干渉してやれば
上位世界同然の圧力でそのまま物理的に繋がるんだ」
「まったくの別物なんですね」
なるほど…半ば上位存在のように容易に干渉可能になるのか。
「うむ、鬼門元となった事故施設は、
そこら辺の理解を進めるための基礎研究施設だったからな?」
「逆に言えば即時投射はそれほどのレベルが必要と」
まぁ扉の形をした上位存在を生み出すようなモノだしな…
「そうだ、だから艦船搭載の転移システムは時間がかかる、
転移先に球形立体魔法陣を構築することで
その問題を回避しているからな」
「だから近距離転移システムは入口出口両方あると?」
あ~マナだけなら投射できるのか?
それで出口にも魔法陣を構築して擬装しているわけか…
「そうだ、転移先に魔法陣を構築すること自体も
それなりに膨大なマナを必要とするからな?」
「確かにコレを知れば止めますね…考えるのを」
「けども?」
「そう、そいつは考えるのを止めなかった。
まずは問題となっている2種にできれば良いのだと、
そう考えたそいつは思いついた」
「なにを思いついたんですかね先輩は?」
「嫌な予感がしますね」
「召喚獣っていないな?そういえば?と」
「うっわ…まじかっ先輩…」
「手段を選ぶ気ゼロな気が」
たぶん最初は深く考えてない思い付きだろう…
「そしてそやつは現界生物無生物を問わず、
召喚獣にできないか模索し始めた」
「その方向性ですか…」
「確かに言われればそういう使い方だけども…」
あ~召喚と送還の魔法ということなのか?
「この発想は転移公、文殊公、根源公にはできなかった。
そして幾多の個人実験の末、
ついに召喚獣第一号が世界に認められた。
効果は劇的だった、
マナ生態系の一種の苗木にすぎないとしても、
その意味は絶大だった」
「えっ?認定されたんですか?世界に!?」
「うそん」
新規2名含む名が体を表す空間系魂魄式3名が、
思いつけず実現できなかった新たな枝か。
「認定された、そう考えてよいほどに世界からの扱いが変化した、
そして再現方法を明記した論文を皇宮に出した」
「提出できるほど再現できると…」
「それをみた文殊公と根源公は狂喜した…
即座に転移公と生態公を巻き込み、
そやつの個人研究が行われていたワンルーム住居に、
4公の分体端末が住み着いた」
「いろいろとヤバそうな面子になりましたね…」
あ~アイテムボックスと言えなくもないからか…
生態公まで巻き込んでるし…
「そして研究が進み予算や施設が必要になってくると
あいつら名分もなく予算と権限と役職を
押し付け始めた、そやつもノリノリで受け取った」
「うわぁ…」
完全に暴走してるなぁ…
「そしてついに気づかれた…検証公に…よりにもよって」
「あっちゃぁ」
「あいつら4人は懲罰任務を言い渡されたが、
それでも奮闘した、なんでもするから助言枠には入れてくれと」
「検証公もあいつら4人の潜む狂気を鑑み渋々許可しつつ、
正式に召喚獣術式研究所を
拠点艦の1隻の一角と皇宮の一角に設立した」
「じゃぁその方が所長に?」
「いや、あいつら4公と同類と認定されたそやつは
皇族4人全員が上司となり
4交代24時間体制で管理することになった、
所長はその4人の直属上司になる高齢皇族がついた。
肝心のそやつは一人研究主任として好き勝手させることにした、
皇宮の方はその再現試験と結果の編纂だ」
「日頃の苦労が垣間見られる手慣れた布陣感…」
魂魄式4人で培われたノウハウなんだろうなぁ…
「そして、研究は進み召喚獣認定条件と
その効果が判明した、それがこれだ」
認定条件
・現界の住人、存在ではないこと
・居住している世界に疑問を思っていないこと
・魂魄をもつ生命体であること
・現界への顕現は召喚によって主になされること
・期待される個体存在時間がトータルで780年を超えること
・召喚時送還時に意識が覚醒していないこと
・居住している世界において最低限度の
精神活動を行っている個体であること
効果
・召喚送還の範囲は現界における
異世界・異次元・異界のキー座標から半径0.2光秒圏内
・召喚送還に伴うマナ消費は
居住世界の周辺の世界間虚空マナでなされるため、
召喚者送還者側では標準的1属性魔法程度の
ごく軽い消費量程度が負担になる
・召喚送還される側が、自身の持ち物と判断しているモノは
自身の体積の20倍までは付随物として扱われる
「まって?なんか色々オカシイ」
「認定条件がいろいろオカシイですぅ」
「効果が凄いのはわかるけども」
「えっ?この認定をどうやって2種が満たしてるのです?」
「うむ、それを説明する前に言っておこう、
宇宙軍贖罪兵だけがコレを推進した、
地上軍、各司令部、皇宮、果ては贖罪兵本部に至るまで、
軒並み関係者は強く反対したが、
論戦に勝ったのは宇宙軍贖罪兵だった、
帝国は覚悟の差で彼らに負けたのだ」




