第36話 オレらはアイツらの覚悟をまだまだ甘くみてたらしい
「現地地上軍と300隻の拠点艦には、
そう時を置かずに将来予想される戦略目標と自分たちの役割を知らされた」
「となれば?」
さらなる…だよなぁ。
「憔悴しきった上層部は別として痛快な勝利をあげ、
自分たちが生み出した盾ナグールに自信を深めた彼らは、
さらなる目標に邁進し始めた」
「ふむ、具体的には?」
先輩等は何を選んだのだろう?
「盾ナグール自体はコマインの回答待ちとも言え、
おそらくは近々でこれ以上弄りようもないことがわかっていた」
「つまりは盾ナグール自体ではなく?」
「そうだ、まずは改善すべき点は?ついていけなかった贖罪兵2種だ」
「確かについていけてなかったですわね」
「途中で帰されていたもんな」
戦力外通告されたもんなぁ…
「うむ、ムリについていこうとさせてマナ枯渇寸前にまで追い込まれた」
「ということは?ついていけるように?」
普通にかんがえたらそうだよな?第4分隊長ナカニワ中尉
「いや、そもそもついていく必要があるのか?
という点からあいつらは検討し始めた」
「それはどういう?」
んん?どういう意味だそれ?哲学か?
「そもそもが歩兵小隊第2~4分隊が贖罪兵2種であるのは
死傷率の高い正面戦力の水増しの為だった」
「ふむ、生み出された理由からも妥当ですね」
速成養成可能で戦死による社会負担低減できる兵士だからなぁ…
「が今や、火力中隊や工兵中隊にもついていけない立場だ」
「たしかに」
そう表現されると…より深刻に感じるな…
「だが出番が無いわけではない、むしろ増えた」
「というと?」
どういう状況だ?その出番は?
「元々、三点装備の戦闘装具は自マナを殆ど使う必要すらなかった、
各種術式駆動を根源マナを制御し代替させることで成し得ていたからな?
逆に根源マナを自身のマナにもできないんだがな?
魂魄意思が馴染まないもんでな?
無理して行えば酷く体調を崩すんだ」
「それって?盾ナグールの稼働時間と戦闘装具の稼働時間は?」
そうか…戦闘装具は根源マナを10マナ以下を
自身のマナで制御して使っているんだったな…
その表面を覆うマジックシールドである盾ナグールとは…
「そうだ、別勘定だ、自マナで大きな根源マナを強引に流す仕様上、
そこだけは限界がある、実際、戦死の理由はソコに絡むものが大多数だ」
「なるほど、そこを守る戦力は確かに欲しいですね」
盾ナグール以外にも自身のマナは使うし一時的に枯渇もすると…
その時に守る者が必要であると。
「だが行軍についていけない、
ついていけたとしても、ろくに行動できない」
贖罪兵2種は0.5マナで全てをやりくりしてるもんなぁ…
激しく動き回られると身体強化あたりでだいぶ持ってかれそうだな…
「そこで?そもそもついていく必要があるのか?ですか?」
「そうだ、あいつら贖罪兵本部も巻き込んで研究を重ね……
それを完成させた……オレらはアイツらの覚悟をまだまだ甘くみてたらしい」
「……なにを完成させたのですの?」
…なんで覚悟のほどを再認識してるんですかね?
他人の為に集団カミカゼする先輩等相手に…
「映像でみてもらおうか…地表戦のある一幕だ」
うわっ…全天煙たい戦場になってる…
見た感じは丘陵防衛戦っぽいなぁ。
『小隊長!!雑魚が邪魔です!!』
『くっそ!!雑魚が機械巨兵の盾になりやがる!!』
『このままでは!!盾ナグール活動限界が!!』
「ピンチですね…いきなり」
「なんか15mくらいの人型がおる…それも力士みたいな…」
「それでも盾ナグールで殴られると多少は?吹き飛ぶんですね…」
「そして群がる2mくらいの人型?無双ゲーかなにかですか?」
『ちっぃぃ!!ならば仕方ない!!』
『いいんですか!!かなり死にますよ!!』
『宇宙軍贖罪兵が!!そうしろと!!言ったんだ!!
俺たちの為に!!ならば!!そうであろうと!!』
「不穏なワードが…」
「たしかに不穏」
『あぁ!!そうでしたな!!あいつらの覚悟に負けるわけには!!』
『そうだ!!我らは死体を積み上げて!!前に進むのだ!!』
「不穏も積みあがる」
「なにしたし先輩たち」
『さぁぁぁぁぁ来い!!第2小隊!!第2第3第4分隊!!』
(ぱぱぱぱぱぱぱしゅん)
「「「「「「「「「はっ?」」」」」」」」」
『白兵戦装備の第2分隊は第1分隊の直協につけ!!』
(どさっ)(だだっ)
「はぁ?いきなり現れたぞ!!そして其処に行かせるの!?」
「そりゃかなり死ぬよ!?」
『熱光線銃装備の第3分隊は雑魚をけん制しろ!!』
(どさっ)(ざざっ)
「いやいや牽制も何も!!敵中だよ!!」
「狙わんでも当たるよ!!いっぱいだよ!!」
『空間歪曲砲装備の第4分隊は雑魚を蹴散らせ!!
第2分隊と第3分隊が持ってきた!!
予備の弾倉マナクリスタルを拾い忘れるな!!』
(どすっどすっ)
「はぁぁ?そんなもん持たせてんの!?」
「敵中で重砲ぶっぱ並みの蛮行!?」
2種が使えない筈のマナクリスタル…
専用弾倉化して無理やりコレだけでも使えるようにしたのか…先輩たちは…
『いくぞ!!コマイン!!我ら第2小隊の!!これが!!全力だ!!』
「うっわぁ個人携帯空間歪曲砲?
掃射するとえげつない…扇状に真っ二つじゃん…」
「牽制ってその第4分隊守るためかよ…」
「第2分隊は必死になって、
第1分隊に群がる雑魚をインターセプトしとる…」
「結構しっかりと戦力になっとる…」
いろいろと反乱防止処置されてるとは思えないほど有能なんだが…
「中隊贖罪兵管理システム、こう呼ばれている、
そしてこういった使い方もされている」
えぇぇ…いきなり平原でデッカイ多脚戦車と大乱戦…
やはりこちら側のサイズ感がオカシイ…
明らかに小さすぎる…
『中隊長!!そろそろ!!』
『本土艦隊の砲台制圧射撃は!!』
『こんだけ間断なく雷光に照らされてんだから!!
そりゃ継続中ですよ!!』
「うん…頭上を引くくらいの数の紫色の雷線が走っとる…常時…」
「コマインの砲台よく耐えてますね…あんなのに」
『いつまでだ!!って話だ!!』
『あと12時間っすよ!!』
「あぁなるほど?」
「あれが12時間ですか?びっくりですね」
『3時間だ!!どこか籠れそうな場所は!!』
『あるわきゃないでしょう!!』
「肉弾戦しながらだからか?」
「言葉が荒くなるんか?」
『チッ!しゃぁねえ、発起点に戻って防衛戦にまわんぞ!!』
『工兵隊の御謹製の塹壕に籠るんで!!』
「御謹製とか言われてる」
「本業でも有能と」
『ああそうだ!!くっそ!!鬱陶しい硬いだけの多脚が!!沈め!!』
『中隊長ふぉろーいるっすかぁ!?』
「ノリは割と軽いですぅ」
「超激戦中なのですけども」
『いらんわ!!大隊本部!!こちら第3中隊!!
盾ナグール活動限界!!どこに下がる!!』
『第3中隊!!こちら大隊本部!!ウチの担当は5番陣地だ!!
そこにいる第4中隊と変われ!!第4中隊の2種が既に半分逝った!!』
「またも暗雲」
「なにが起きたし」
『くっそ!!迂回奇襲か!!相変わらず!!』
『そうだ!!2種の装備は白兵戦仕様にしとけ!!塹壕内白兵戦だ!!』
『了解!!』
「さすがのコマインの指し手」
「やはり有能ですね」
『帰還時にできるだけ盾ナグールで後続を蹂躙しとけ!!多いぞ!!』
『ありがとよ!!右翼から突入する!!以上!!
おらっ!!おまえら!!盾ナグール無しでの塹壕内白兵戦が待ってんぞ!!』
『くっそ!!最悪だ!!』
『マジかよ!!勘弁してくれ!!』
「おおぅたしかにそれは最悪だ」
「ホントにな」
『中隊贖罪兵管理システム!!全分隊白兵戦仕様に!!時間は!!』
『3分』
『始めろ!!さぁお前ら!!3分でできるかぎり蹂躙するぞ!!
5番陣地の右翼からだ!!行くぞ!!』
『『『『『了解!!いくぞおまえら!!』』』』』
「えっ?兵装転換もできるの?」
「どんな理屈で?」
そして無双ゲー3分後…
『中隊長!!右翼突入口確保!!』
『第1分隊!!贖罪兵から得物を受け取れよ!!忘れんなよ!!』
『『『『『了解!!』』』』』
「配達もついでに?」
「えらい便利だな」
『第1小隊が右!!第2第3小隊が左!!
第2分隊が前衛で第1分隊は支援に回れ!!
第3第4分隊は後方警戒後詰戦力予備だ!!
盾ナグールは要所で使え!!ココから端まで制圧しろ!!
そのあとは塹壕内持久戦だ!!いいな!!
残りはココで防衛戦だ!!』
『『『『『了解!!』』』』』
「わりと慣れてる?」
「活動限界慣れ?」
『来い!!第1小隊第2第3第4分隊!!』
((((((((ぱしゅん))))))))
『第3第4分隊!!その手荷物は置いていけ!!
さぁ右翼だ逝ってこい!!』
『了解!!』
「まじで便利だな」
『次だ!!第2第3小隊第2第3第4分隊!!』
((((((((ぱしゅん))))))))
『第3第4分隊!!その手荷物は置いていけ!!
おらっ左翼だ逝ってこい!!』
『『了解!!』』
「ホントに便利ですね」
『最後だ!!第4小隊第2第3第4分隊!!』
((((((((ぱしゅん))))))))
『おらっ全員で荷物を運びこむぞ!!
楽しい楽しい簡易陣地構築の時間だ!!
気合を入れろよ!!』
『『了解!!』』
ふへ~まさに幻想兵士の真骨頂だなぁ。
たしかについていかなくてよい訳だ…
必要な時にすぐに呼べるんだからなぁ…
「他にも使い方はあるぞ?」




