第34話 盾ナグールインパクト…
「起きてしまっては致し方ない。
では、どうするかだ?その模様がコレになる」
(こくり)
『皆さん、地上軍司令部の惨状についてはご存じですね?』
(ざざっ)
「おおぅ」「スクリーンまみれ」「お顔がいっぱいですぅ」
「まぁこの人数ともなるとこうした方がな?」
仮想空間上での会議か。
『では事後の戦略見直しを始めましょうか、総司令部長官?』
『はっ、この盾ナグールインパクトにて、
帝国の地上軍についてのコマインの戦力評価は大きく変化します』
「盾ナグールインパクト…」
「亜種かな?」
「終だからな、亜種だな」
なんかもう必殺技になりそうな事件名だな…
『どの程度になると思いますか?』
『5倍から10倍といったとこでしょう』
「ふむふむ」「ほぅほぅ」
『帝国としては?』
『7倍から8倍あたりになるかと』
「そのあたりになるんだ」
「劇的な変化だなぁ」
『コマインの評価想定に幅があるのは?』
『贖罪兵2種についての評価次第になります』
「そこか」
「たしかにですね」
贖罪兵2種は変わってないし置いてかれたしだからなぁ。
『なるほど、つまりは?』
『現地籠城戦力は帝国としてみれば4.2億から4.8億人の戦力にでき、
コマインとしてみれば3億から6億人の戦力に見えることでしょう』
「あぁ~そこでもか~」
「なるほどですわね」
そうか…元々の奪還必要戦力が5億だから…超えて見えてしまうと…
『では、やはり?』
『コマインとしては攻勢よりの状況から、
守勢よりの状況に変化したと捉えるでしょう、
籠城戦の継続は不可能です。』
「納得」
「…妥当」
『では、戦略目標の再検討は必要ですか?』
『戦略目標
全ての準備が整う25年後まで、監視小惑星を放置したまま、
最も帝国に負担の掛からない防衛戦の継続。
これについてはコマインの反応次第といったところもありますが、
おそらく再検討は不要にできるかと』
「おっそうなの?」
「うむぅできるのか?」
『ふむ、どうやってですか?』
『籠城戦ではなく表側で地表戦を行えば宜しいかと』
「できるんかな?宇宙軍おるのに?」
「表側ってどうなっているだろな?」
本土艦隊や拠点艦が地表を薙ぎ払えない理由がいるなぁ…
『なるほど、戦場と戦況が変わっただけということですか』
『宜しいですか?総司令部長官?』
『どうぞ、検証公』
「おっ検証公だ」
「なんだろ?」
『6度に渡る奪還戦ではだいたい5億人の投入でしたよね?その点は?』
『第4第5惑星双方の表側に建設されているであろうコマイン砲台に頼ろうかと』
「ん?そんなのがあるんだ?」
「そこを勘定して?」
5億人相当戦力で奪還しきれない理由もいるからなぁ…
『なるほど、占拠後ながくても翌年には奪還戦を始めていても?』
『はい、アレらには宇宙軍と共に頭を悩ませられましたから』
「あっ苦労させられたんだ」
「なるほど、それほど短期間でも苦労したと」
奪還しきれない理由として活用できそうだと…
『25年も経った今となれば相応に期待できると?』
『はい、流石の盾ナグールもその規模であれば無力な筈です』
「いつでも止められる理由として対艦隊砲台が必要…」
「なるほど…教訓が生きていますね」
エース用ロボット機動兵器みたいなスペックだからなぁ…
『ふむ、宇宙軍としてはどう見ます?艦隊司令部長官?』
『地殻破砕ドクトリンはまだ秘匿しておきたい、
その認識で問題ないですよね?』
「…字面が不穏を通り越して終末感満載」
「…それドクトリンにするんだ…」
…唐突に帝国暗黒面が…溶岩惑星化ドクトリン…
『ふむ、そうですね、打って出るまでは秘匿すべきですね』
『であるならば、25年も時間を与えた、あの連星間砲台には、
正面からはあたりたくはないですな』
「艦隊司令部がこう言う程なんだな」
「そこまで厄介であると」
『15光秒距離での砲戦は?』
『反物質弾頭を用いれば簡単ですが、
それは地殻破砕ドクトリンの露呈に繋がります。
実質、同じことになりますから、
帝国ができることは知っていても、
すでに許容しているとは思っていないコマインに、
それを示すわけにはいかないでしょう?』
「もう許容してるんだ…」
「しちゃってますぅ…」
『そうですね…では空間歪曲砲は?』
『空間歪曲砲だと面制圧力が足りないのです、
この場合、砲台の殆どは擬装を解かずに、
伏したままやり過ごすでしょう』
「そうなんだ」
「方向性が新旧でだいぶ違うんだな」
徹甲弾と炸裂徹甲弾みたいな感じかな?
『ふむ、実体弾加速砲は?』
『おそらく千日手になるかと、
前回奪還戦でも相当な数の迎撃陣地でしたから』
「単純には陥せないということかぁ」
「これまでの苦労が偲ばれますね」
つまりは奪還しきれない理由として有望なわけだ。
『当然、1光秒圏内は?』
『左右から十字砲火は喰らいたくはありませんな。
おそらくはいくらか隠し持っているだろう突撃艦に対しても、
対応時間が充分に取れません』
「おおぅソレはコワい」
「ゴーイングマイウェイの二の舞は…そりゃ嫌だ」
『つまりは、自殺行為と、であるならば総司令部長官?』
『はい、第5惑星裏より防人統合艦隊より実体弾加速砲で、
光学兵器減衰塵を詰め込んだ特殊弾を第5惑星表側に曲射し』
「ほぅほぅ?」
「裏から煙玉なげるって話ですよ~」
「なるほどです~」
わかってもらえましたか、第6分隊長マキバ中尉
「拠点艦忍者説」
『露呈した迎撃陣地を本土艦隊15光秒で空間歪曲砲で狙撃、
再度実体弾加速砲で特殊弾を曲射し迎撃が途絶え、
減衰雲が形成されたら、地上軍進軍』
「ふぇ?」
「窓を開けて~バルサン投げ込む~
煙が立ち込めたら突入~ってはなしですよ~」
「ほう!」
なんとかご納得いただけた…
「バルサン中に突っ込む突入隊とは一体…」
「簡略化の苦労が見受けられる」
『第4惑星側の砲台が頭を出したら間断なく空間歪曲砲で狙撃しつつ、
実体弾が投射されたらコレを全力で迎撃、地上軍への射撃を防止します。』
「モグラ叩きしながら~ネット際でブロックですよ~」
「ふむふむ」
よしよし。
「「「「うんうん」」」」
『結果として、地表であるがゆえにトコトン増強されているであろう、
敵の防御力場を空間歪曲砲では抜けないことを演出します』
「地上でお祭りはできたけど~花火大会は継続で~す」
「なるほど!!」
いけたいけた。
「「「「うんうん」」」」
『これにより、双方にとって頭上を気にしないで済むであろう
第5惑星地表戦の環境が短時間ながら生まれます。
その状況下で第5惑星側砲台を探してる素振りを見せれば…』
「なるほどコマインとしても可能になると」
「乱戦になればさらに…ということですね」
拮抗した地上戦演出が可能になると…
『なるほど、地表戦が可能になると…腐食性ガス放出はどうします?』
『光学兵器減衰ガスへ切り替えで宜しいかと』
「まぁそうだよなぁ」
「もう邪魔だもんなぁ」
『攻勢の演出にも必要ですか…威圧結界は?』
『結界はそのままでよいかと、
おそらく今後の地表戦でも継続的にお世話になるでしょうし、
何れにしろコマインも盾ナグールに対する適応で大型化するでしょうから
大きな問題にはならないかと考えます』
「なるほどこちらは必要と」
「そして今後も使うと」
「転移公大歓喜」
『ふむ、大筋では問題ないと思いますが…
本案のデメリットを指摘できる方はおられますかな?』
『宜しいか?』
「おっだれだろ?」
「即反でしたね」
ずっと待ってた感…
『どうぞ、強襲独行艦群司令部長官』
『では述べさせて頂く、考えられうる大きなデメリットとしてはですな、
盾ナグールのさらなる詳細がコマインに知られる、
ということですな』
『ふむ、確かにそうですね』
「あ~確かに?」
「さらに知られちゃいますね~」
『その点に関しては総司令部でも懸念事項として挙がりました、
その為、現状以上の改善は慎む方向で考えております』
『通常であればそうですな、そうするしかないでしょうな』
『ほうぅ通常であれば…ですか』
『ふむ、腹案がお有りのようですね?』
「なんだなんだ?」
「えらい思わせぶりな?」
『現在部内で検討中の案でありましてな?
些か情報共有には早いかと思いますが、
現時点で話しておいた方が宜しいかとも思いましてな?』
『ふむ、どのような話ですか?」
『コマイン検知術式の可能性について…になりますな』
「不屈のティネム、最終試練の登場だ」
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」




