第32話 その境地に至ってしまったんだ
「だがなぁ、オレがテンション低いのは…
それだけじゃないんだよなぁ?」
「ん?どゆこと?」
「また気になるセリフまわしでアピールしてきたなぁ」
納得してない感満載ハム公…
「ふむ、まずは地上軍について説明しておこう、
『通常地上軍』」
超人化術式
個人携帯マナクリスタル
個人携帯マナ送受システム
この3点装備を備えた戦闘装具を着用した、
超人化ドクトリンに基づく歩兵を主力とした地上軍。
歩兵で空陸海を制する超人集団。
前衛に獣人種
支援にエルフ種
過酷環境にドワーフ種
と基本的には役割分担している。
超人化ドクトリン以前は、
質量比キルレシオ 1(帝国):100(コマイン)
だったが以降は、
質量比キルレシオ 1(帝国):100000(コマイン)
まで向上している。
基本的には大隊が最小作戦単位である。
師団編成は下記が基本
分隊=8名
小隊=4分隊32名
中隊144名=降下艇兼移動兵舎内本部8名4歩兵小隊1衛生分隊
大隊1,024名=降下艇兼移動倉庫内本部16名4歩兵中隊1火力中隊1工兵中隊1補給中隊
師団10,272名=降下艇兼作戦本部32名10大隊
軍102,784名=軌道上作戦本部64名10師団
軍団1,027,968名=軌道上作戦本部128名10軍
軍集団10,279,936名=軌道上作戦本部256名10軍団
「なぁハム公?キルレシオ間違ってない?バグってない?」
なんで桁が4桁も増えてんだよ…
自身の100倍の重量でも相手できる時点でおかしいのに…そこから4桁…
「バグってないんだ…間違ってないんだ…
あいつら個人で突撃艦を叩き落したこともあるんだ…」
「どうやってだよ…」
「突撃艦にヘッドオンで体当たりしてぶち抜いた……」
兵士だよな?兵士なんだよな?ロボット機動兵器じゃないんだよな?
「ありえんだろ…」
「当然そやつは260MTの光球に呑まれて消えたんだが…
そやつの個人戦果最後は突撃艦1なんだ…」
「なんでそんなことできるんだよ…」
あまりのことに第2分隊長クロカゼ中尉しか突っ込めてない…
「理論上はできる、それができる3点装備の戦闘装具だからな?
そう、知ってはいた、する奴がいるとは思わなかったが」
できちゃうんだ…
「できちゃうんかよ…」
ついに第2分隊長クロカゼ中尉も諦めた…
「最初はそうじゃなかったんだ…
こっちとさして変わらなかったんんだ…
『贖罪地上軍』」
帝国に敵対的思考パターンの再現人格ハイヒューマンの優先配属先
長年に渡って研究完成された「処置」にて反乱を防止しつつ、
超人化術式を備えた1点装備の戦闘装具を着用した歩兵を主力とした地上軍。
その戦闘力は、
質量比キルレシオ 1(帝国):10000(コマイン)
である。
その性質上単独運用は不可能であり、
通常地上軍歩兵小隊第二~第四分隊に、
通常地上兵ではなく贖罪地上兵24名を充てる編成を執っている。
なお分隊長には敵対性が相対的に低く、
「処置」が軽めで済んだ贖罪兵を充てている。
地上軍一般師団は基本的にこの混成編成である。
このため贖罪地上軍の実働部隊には、
分隊長までしかおらず編成も分隊しかない。
その上で定員は10億人である。
つまり1億2500万の分隊である。
なお防人艦隊からの転属者である贖罪兵1種は少数に止まるため、
3点装備の戦闘装具を支給の上、
全員がそうである特殊歩兵中隊として編成され、
同じく全員が帝国籍軍人である精鋭歩兵中隊と同様に、
戦時増強大隊編成時によく用いられている。
「こっちも大概だが?」
不屈の第2分隊長クロカゼ中尉である。
「2万トンの突撃艦をぶち抜くのと、
100トンの緑の実を落とせても200トン赤の実はなかなか落とせない
そういったレベルの差だぞ?結構な差だぞ?」
「うむぅ、確かに言われたらそうなんだが…」
「そもそも比較対象がおかしいのでわ?歩兵なのですよね?」
第3分隊長オオトリ中尉も突っ込みに参戦。
「うむ、マッハ2で飛べるし、深海にもいけるが、歩兵だ」
「歩兵の常識が崩れるだろが…それ歩兵じゃないじゃん」
もう搭乗型ロボット機動兵器だろ…どう考えても…
「いや歩兵だ、立って歩いて走ってる時が、一番戦闘力が高いからな」
「そういう認識の仕方なのか…すでにそこで大きな齟齬があったとは…」
「歩くから歩兵じゃないですぅ…」
「歩いてる時が一番戦闘力が高いから歩兵なんだ…」
歩兵の常識自体が変更されてた件…
「そんな彼らの戦闘を実現するのが戦闘装具だ、こんな感じだ?」
「見た目はなんだ?割と太ましい全身鎧?いや着ぐるみか?」
「アメフトに近しい感じ?全身スッポリそんな感じで覆われてるけど?」
「なんかこう……ダサ可愛い感じに…なってますね?」
「あぁ頭身が5頭身くらいになってるから…そう見えるんですのね」
「加えて手足も太ましく覆われてるから…余計に」
どうみても搭乗型ロボット機動兵器のサイズ感ではない…
等身大ハム公比較映像を見る限りパワードスーツサイズだな…
マジか…
「オレの分隊端末を構築しているマナ受容体を
戦闘用に改良したモノだからな?」
「あぁ~関節部もしっかり覆われてるからか~そう見えるのは~」
「着用者には動きやすいと好評だ、そして子供にも好評だ」
「あ~たしかに~」
装具自体が不定形体なんか…
「ちなみにこっちが元になった戦闘装甲服だ、少年に人気あった」
「こっちは順当に全身装甲のパワードスーツ的な?」
「ちゃんと兵士感ありますね…」
「ですです、着ぐるみ感はないですぅ」
こっちはモロにパワードスーツだな。
「どっちにも動力はついてないんだがな?」
「えっ!?ないのっ!?」
「後者とかモロついてそうな外観なのに!?」
あ~だから装具なのか。
「むしろ着用者本人が動力源だからな?」
「そうなのっ!?」
「うむ、個人携帯マナクリスタルも送受システムも、
着用者へのマナ供給用であるからな」
「着用者がエンジンなのか……」
「そうだ、超人化術式も、
個人用文殊接続超空間通信システムも、
その他諸々の戦闘支援システムも着用者のマナで動く」
「パワードスーツ的な機能はないのか…」
憧れるよな?第7分隊長カルイザワ中尉。
「うむ、着用者本人がマナ身体強化するなりすれば良いからな?
超人化術式もそれらを増幅するものであってソレそのものではない」
「ふむ、それが合理的になるほどマナが有用と」
人体自体がそもそも高性能兵器であるということか…
「うむ、まぁ映像で見てもらった方が早いか
いまから見せるのが大深度地下要塞籠城作戦の一つ前の
第五惑星第6次奪還戦時地上戦の様子だ」
うぉっ…いきなりの荒野戦場風景…
視点は…?
『よぉぉし!第1分隊!!マナ機関銃で掃射しつつ前身!!
第2第3第4分隊はそれの支援だ!!行くぞ!!』
あぁ指揮官さん?の視野視点か?
「赤い着ぐるみが両手にでかいガトリング銃?2丁?持って走ってるんだが?」
「あぁ回転6銃身タイプの制圧用マナ機関銃だな、重量が150kgある。
使っているのは土火風の複合魔法”貫通弾”だな、
マナ効率はとても悪いが単位時間あたりの攻撃力がとても高い」
『っ!!第1分隊!右の新手のデカいのに集中射!!』
「あれ魔法なんですか?」
見た目SFなのに魔法…バグる…
あぁ重厚なメカがあっという間に…
「そうだぞ?赤い着ぐるみは帝国籍軍人だからな?
マナクリスタルでマナが豊富に使えるから、
マナさえあれば弾薬不要の武器を使うぞ?」
「確かに出てきた多脚戦車みたいなのが
一瞬でズタぼろになったもんな」
弾薬不要はデカいよなぁ。
『ちっ後続もいるか!第1分隊目標はデカいの!!
第2第3第4分隊は周囲の雑魚だ!!』
「赤がそうであれば、青で光線銃?みたいなのを持ってるのが?」
「そうだ、諸君らが初めて目にする贖罪兵2種だ、
使っているのは熱光線銃だ、チャージング時間で威力が変わる、
火光の複合魔法”熱光線”だ、マナ効率と命中率に射程がとても良い」
ビーム兵器じゃないんだ…魔法兵器なんだ…
「…マナクリスタルを持っていないから?」
「そうだ、贖罪兵は0.5マナで戦わなければならないからな?
とはいえ、それを前提に青い着ぐるみは造られているから、
無茶な機動に攻撃と防御をしなければ24時間問題なく動くぞ?」
「超省エネタイプなんですのね?」
「うむ、着用者当人の身体強化のマナコストまで下げるからな」
あ~枠としては幻想RPGの装備・装身具枠なんか…
マナある限りステータス強化や消費効率改善とかの極致な感じか…
『っしゃぁ!!第1分隊!!この場で周囲の残敵を掃討!!
第2第3第4分隊も登ってこい!!
中隊本部!こちら第2小隊!目標到達!!次の指示を!!』
しかしまぁ…敵の数が多いなぁ…無双ゲーみたいになってる…
「とまぁ、こんな感じだったんだ」
「山のように出てくる人型ロボット?
や多脚戦車みたいなんを除けば、まぁわりと普通だな」
「あれらはコマインの地上戦戦闘機械どもだな、
数がやたらめたらに多い、あいつら現地生産されるからな?」
「それを別にすれば戦い方?戦術?は
私たちが知っているものと、そう大差はないですね」
確かに俺らの知る現代戦の延長線上にある未来的戦場風景だな…
ただし魔法は除く…
「だろう?そうだったんだキルレシオも青の2倍程度だ、常識的だったんだ…」
「なにが彼らに起きたし」
いやほんと何があったんだよ…
「25年も経つと彼らはもう至ってしまっていた、
その境地に至ってしまったんだ」
「どんな境地?」
「見てもらおう、地下要塞内戦闘の映像だ…」
格納庫的な空間?要塞内部の防衛戦陣地か?
視点はドローンカメラ的な視野だな…使い魔視点ってやつか?
『第2第3第4分隊!!いつもの支援だ!!
さぁ第1分隊諸君…恒例の!仁王立ち口上からだ!!』
『『『『『『『応っ!』』』』』』』
『『『『『『『『我ら!!』』』』』』』』
(ぺっかぁ~)
「…えっめっちゃ光ってる」
「…えぇ、光っておられますわね」
まって…なんで敵前で演出付きポージング口上してんの…
『『『『『『『『第2小隊!!』』』』』』』』
(どががががががどかがががが)
「…めっちゃ撃ち込まれてる」
「…親の仇と言わんばかりの集中射くらってるな」
あたりまえじゃん!!撃たれて当たり前じゃん!!
『『『『『『『『突貫!!』』』』』』』』
(ひゅっ、どががが~ん)
「…はぁ?8人全員敵中に?」
「…突撃?いえ…これは体当たり?」
えっ?なにこれ?いつから特撮ヒーロー番組に?
(ぼぼぼぼぼぼぼぼっこ~どががががががが~ん』
「…えっ肉弾戦?肉弾戦してる?してるよね?残像しか見えないけど?」
「…そうですぅ、残像は…どうみても殴ってますぅ」
「…うむむぅ、どうみても残像は蹴ってるな」
「…そしてすごい勢いでコマインが溶けてるな」
「…どこもかしこも残像だらけですもんね」
「…吹き飛ばされた後に動いてるのだけ熱光線撃ってるな」
『『『『『『『『成敗!!』』』』』』』』
「えっ?終わったの!?」
「あっ終わってる!動いてるの居ない!」
「…彼らが帝国地上軍最初の白兵戦至上主義者だ…」




