第31話 ……あの2億はそういう数字だ
「そして帝国は見つけた、『西暦5901年』」
魔導銀河帝国歴651年
「帝国守護宮」完成
「0時第二帝国門」完成
コマイン起源惑星「コマイン・オリジンプラネット」(2189光年G5V)特定
「第二次大航海時代」終了
コマイン起源惑星制圧作戦「帝国0時辺境前進計画」始動
第三次生存戦争「惰眠むさぼる機械知性との闘争」
展開戦力定数
本土艦隊100個艦隊2500万人(50年+0)
防人拠点艦16000隻1億6000万人(50年+10000隻)
通常地上軍10億(50年+0)
贖罪地上軍10億(50年+0)
帝国兵力累計損失数
本土艦隊74個艦隊分14万8423隻1850万人(50年+4個艦隊100万人)
防人拠点艦3535隻3535万人(50年+400隻400万人)
独行艦4万0052隻48万人(50年+10000隻12万人)
地上軍累計戦死者数
通常地上軍23億(50年+1億)
贖罪地上軍13億(50年+1億)
エルフ総人口6800億(50年+800億)
獣人総人口2800億(50年+200億)
ドワーフ総人口3400億(50年+50億)
ハイヒューマン総人口16億(50年+2億)
地球型環境植民惑星690(50年+0)
フォーミング中惑星200(50年+100)
マナ産出内部海天体数6947(50年+510)
植民星系1394(50年+200)
人類圏重要非植民星系1214(50年+100)
到達星系27042(50年+1010)
マナ日産量9兆2902億(50年+2146)
「ついに見つけたんですね?」
「あぁ…見つけたな」
「0時第二も守護宮も?」
「あぁ…完成したな」
「拠点艦も10000隻増やした?」
「あぁ…増やしたな」
「水鏡のおかげで宇宙軍損失数もだいぶ減った?」
「あぁ…減ったな」
ハム公のテンションが低すぎる…
「……地上軍だけが…減ってない…のは?」
そんななか…よくぞ聞いてくれた…第4分隊長ナカニワ中尉
「…この50年はその2億の地上軍に集約されている。
そう……すべてをその2億の地上軍戦死者を出した
20億の地上軍が支えた」
「えっ地上軍が!?」
「はぁ!?んな…どうやってだ!!」
「普通はそんなことできないですわね?」
「つまり、普通じゃないんですね?」
「それは、水鏡と監視小惑星の情報を受けて
コマイン戦地上軍司令部、
コマイン戦艦隊司令部、
コマイン戦総司令部、
強襲独行艦司令部、
星間物流管理庁、
根源マナ管理庁、
地上軍造兵局、
宇宙軍建艦局、
贖罪兵本部、
帝国財務省、
帝国経済省、
帝国技術庁、
艦隊公、
猟兵公、
探検公、
徴税公、
転移公、
殲滅公、
検証公、
が連続72時間議論した上で最終的に提案された」
「多いっ!?多いよっ!?」
「連続72時間!?」
「殲滅公…何した人か?字面だけでわかってしまう不穏さよ」
「徴税公もわかるけど…殲滅公がいる不穏…」
「ティネムには検証公が説明した…
…その時の映像だ」
『見直し案が纏まったと聞きましたが?』
『えぇ、纏まってしまいました。
地上軍司令部のこの案を他全ての面々で…
叩き伏せようと総員全力を上げましたが…
負けました』
『っ!?……そうですか、……そうなりましたか』
『どうぞ、ご確認ください』
『では、覚悟をもって拝見しましょう』
「えぇぇぇ出だしから不穏さがヤバいんだが」
「その方向で総員全力をだしたんですか…」
「どんな内容になったんだよ…」
『…彼らは本気なのですか?』
『はい、帝国籍軍人と贖罪兵1種の分隊員にまで至る、
全員のマナサイン同意書付です』
『宇宙軍贖罪兵に感化されましたか…』
『故郷たる拠点艦を身をもって守る彼等と
共に過ごす機会が多すぎたようです』
「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」
自発的に集団カミカゼする宇宙軍贖罪兵に感化って…
『戦略目標
全ての準備が整う50年後まで、
監視小惑星を放置したまま、
最も帝国に負担の掛からない防衛戦の継続』
『目標自体はそうなりました』
「自然な目標の筈なのに…」
「入りが不穏すぎて怖いだが」
『手段として、
帝国の内乱の演出のため、
一時的に駐留艦隊を20個艦隊にまで減勢する。』
「えっ!?」「はぁ!?」「なんでっ!?」
いきなり最前線を戦力1/5に…
『その後、連星である第四(直径5000km岩石惑星)
第五惑星(直径3000km岩石惑星)を敵に確保させる』
「そこを渡すの!?」
「あの数が戦死した地を!?」
「いやさ!渡せるのかよ!!」
これ…ホントに渡せるなら…とんでもないことだぞ…
俺の知るあらゆる国家はおそらく絶対に渡せないぞ…
『その上で、駐留艦隊を40個艦隊まで増勢し、
星系制宙権を確保する』
「全部戻さない!?」
「そんな中途半端な数だけ!?」
今までの艦隊戦列戦映像を見るに…
数的優位がとんでもなく大きな要素っぽいのに…
全戦力をあえて戻さないのか…
『かかるのち、従来通り互いに潮汐固定連星である
第五惑星の裏に地上軍降下とするが、
従来の降下戦力5億に対し6000万とする』
「はぁ!?すっくな!!少なすぎるだろ!!」
「いやいやいやいや縛りすぎですわよ!!」
こっちはもう1/10近い減らし方…
『静止衛星軌道上に初編成の
防人統合艦隊3個を置き、その作戦拠点とする』
「ちょっ初編成がそんな作戦って!!」
「まったまった、ちょっと待とう」
艦隊戦ではなく泥沼の地上戦支援…
『降下後、橋頭保を確保した後は、
可搬型小型転移装置により、
静止衛星軌道上の拠点艦との連絡線を維持』
「まってまって、そんな彼らの休養地を拠点艦にするの?」
「あかんあかん、それはあかんて~」
ベトナムやアフガンの悪夢を思い出す士気直撃戦の予感が…
『その橋頭保を大深度100kmまで地下要塞化し、
防備が整った段階でコマインが最も嫌う、
腐食性ガスの生産と大気放出を継続実施、
大深度地下要塞への侵攻を誘発する』
「たしかにさぁ極上の餌だろけどもさぁ」
「厭戦感情を煽りたいもんねぇコマインはねぇ。けどもさぁ」
「それを自分から言い出しちゃうほど感化されてるんですの?」
第3分隊長オオトリ中尉のいうとおりだわ…
『以降はその籠城戦を必要な時期まで継続する
……ですか…』
「はぁ!?」「えっ?ウソですぅ」「…継続っ!?」「目標籠城戦!?」
最初っから数十年泥沼地上戦してやんよと…当人たちが主張する…
『はい…対案は全て、この案に屠られました』
『全てはコマインの指し手に一敗くれてやるためですか?』
『地上軍も宇宙軍に負けず劣らずに…ということです』
「「「「「「「「「あぁぁぁ……」」」」」」」」」
『つまりは慌てて80個艦隊を引き』
『そうです、コマインにはそう見えます』
「そりゃ後方で何かあったと…」
「そう見るよなぁ」
呆れる第7分隊長カルイザワ中尉…
『奪われたらまた慌てて戻すも以前ほどの数ではない』
『そうです』
「つまりは問題は解決していない?」
「と見るよなぁ」
そりゃそうだけど感満載の第2分隊長クロカゼ中尉
『その上、投入される地上戦力に至っては1/10に近い数字』
『そうです』
「待ちに待った厭戦感情の盛り上がり?」
「に見えますわねぇ」
目を覆いたいとばかりの表情の第3分隊長オオトリ中尉
『そして取る手段も長期戦を承知した迂遠な搦め手』
『はい、コマインにはそう見えます』
「後方がてんやわんやで?」
「打って出るなんて状況ではない?」
「に見えるですぅ」
第6分隊長マキバ中尉 にもそうみえてしまうと…
『分隊員に至るまでこの作戦を知っている点は?』
『問題ありません、これまでの地上戦により、
コマインにも威圧結界が有効であることが判明しています』
「突然のファンタジー要素……」
「SFの常識が崩れる……」
そうだった…魔法があるんだ…だから結界もあるんだ…
『鬼軍が運用していたというアレですか?』
『はい、活動体に対してのみ、その保持マナに反比例して
荷重をかける、あの術式です。
あれを第五惑星全域に展開します。
転移公ご自慢の立体魔法陣で、
出元が大深度地下要塞とコマインにも明瞭にわかるデザインで』
「鬼由来…なんだ」
「…たぶん邪神だよな…笑いの神…」
「転移公内心歓喜?」
『アレは天体重力に依らないのでしたね?』
『そうです、宇宙空間で這いつくばる羽目になった屈辱の術式でしたから』
宇宙空間で這いつくばる…どんな状況でどんな表現なんだよ…
「当時世代の検証公の表現が…」
「相当に曰く付きの術式なんか…」
『今回であれば?』
『展開領域を優先し最大荷重100kgの予定です。
コマインは当然マナを持たないため素通しです。
これで浸透が懸念される微小偵察体を無効化します』
「あ~ナノマシンとか微動だにどころか潰れるんかぁ」
「100kg背負って動けるサイズしか行動をゆるさないと」
あぁ見せ餌だけでなく防諜策でもあるんか…
スパイボット封じというわけか。
『此方に付いては?』
『固有マナをキーに対象外処理とする予定です』
「なるほど、すり替わり防止か」
「基本はマナを絡めて対処と」
こういう魔法には対抗不可能だもんな…純科学文明は…
『支作戦として表記してある、
強襲独行艦通商破壊戦については?』
字面からしてコッチもやべぇ作戦案っぽいなぁ
『守勢に偏りすぎては意図が読まれる恐れがあるとして
強襲独行艦司令部が急遽ねじ込んできました』
『…なるほど、建前は充分にあるぞ、ということですか』
『そうです、彼らは最後の最後に地上軍司令部についた裏切り者です』
「言い方…」
「総員全力で負けたからなぁ」
「ですぅ」
『……そして彼らは艦内白兵戦に等しい
地下要塞内白兵戦を50年間絶え間なく行い続けると?
本来ならば、する必要もないのに?』
『我らがコマインにとっての鬼となるのだ、とのことです』
『……そうですか……わかりました……その案承認しましょう』
「……あの2億はそういう数字だ」
「重いわ」
「重いな」
「重すぎます」
「感化されすぎでしょうに…」
「…ハム公のテンション納得」
「ですぅ…」
「ティネム帝…」
「…不屈」
「うむぅ…」
「……だろう?」




