第29話 諸君らの先輩の偉大な成果だ。
「多少なりとも、21世紀前半の民主制法治国家と
帝政人治国家である帝国の価値観の違いにも触れたことだし
そろそろ本筋に戻すぞ?」
(((((((((こくこく)))))))))
「純然たる民間領域の解説が終わったということは
以降は全て軍事領域というわけだ?
『帝国開拓領域』」
タウ星起点10時0時2時方向500~1000光年星系
旧防人屯田兵制度対象領域
帝国門を除き軍属入植許可領域
帝国門を除き民間人入植禁止領域
コマイン戦前は防人艦隊による半自弁自治による初期開拓が行われていたが、
コマイン戦開始以降は戦力集中のため、
星系管制を管制独行艦に、
経済活動は民間委託。
開拓資産に関しては功績点制度の功績点として充当し、
軍が一括買い上げの上で民間委託しているが、
民間人の一時滞在は認められても入植は許可されていない。
軍属の入植も管制独行艦内居住区に限定されており、
準縦深領域扱いとされている。
「独行艦司令部領と揶揄される領域だ」
「そこまで言われるほどなんだ」
資金源もってると強いよなぁ…第7分隊長カルイザワ中尉
「うむ、収益の殆どを司令部予算で消化しきっているからな」
「どれくらいなんだ?」
そう言われる程だもんなあぁ…気になるよなぁ…第2分隊長クロカゼ中尉
「魔導銀河帝国歴201年から、
魔導銀河帝国歴451年にかけて、
配備された拠点艦1014隻が、
魔導銀河帝国歴551年まで、
延々と開拓作業してた領域だ、
年200隻の拠点艦を建造できるな」
「それはまた相当なもんだなぁ」
50年で1万隻…膨大と言えてしまうなぁ…
「ん?どうやって予算として消化してるんですか?」
「そういやそうだ?数が多いといっても?」
「運用してるのは巡洋艦に?」
「ミニ卵くらいなんだし?」
「ここの司令部がいろいろ言われるのは、
そこが理由なんだよ……」
「なかなか闇深な言い回しだなぁ」
とはいえ…そんだけ膨大な予算権限だしなぁ
「贖罪兵が多数所属する強襲独行艦の為の
独行艦運用システムの維持拡大のための予備予算。
といわれたら他所はとても手が出しにくい……わけだ?」
「あぁぁ……それは確かに厳しいハードルですわね」
なるほど…たったそれだけで聖域化できちゃうわけだ…
第3分隊長オオトリ中尉のいうとおり…厳しいな…
「それが10%も使っていないとしてもな?だろう?」
「では残りの90%は?」
「翌年に繰り越さずに他所に融通するんだよ?
心理的貸しを代価にな?」
「うわぁえっぐい」
軍閥化浸透戦略というべきか?
「拠点艦建造は女帝の私兵贖罪兵枠なんで皇宮予算、
本土艦隊建造は宇宙軍予算、
諸研究開発なら軍官民問わずに彼方此方でな?」
「それ大丈夫なんですか?」
合法だけど…絶対将来的に良くないよなぁ…
「法的にはきっちりと名分つけてくるからなぁ?問題ないはず?
それぞれの痒いところに手が届くので?一定の感謝もされている?
そう問題はない筈なんだが?」
「納得はしてなさそうだな?」
「まぁだから割りたいんだよ?
これは組織をダメにする流れに感じるからなぁ
それを察して民に食い込み始めてるのもな?
個人としてはもう不穏予備軍ではあるなぁ」
「そっそのレベルでも立場でも認定するんです?」
えっ?人類の敵認定前なの?完全に合法なのに?
「だからこそ?だな、悪影響が大きくなりがちだから
早めに取り除くべきであるからな?
という情報を周囲に流布する程度には危険視しとるなぁ」
「それもうほぼ黒認定じゃないですか……」
えっ?もう処す流れなの?
「かように帝国籍軍人でもな?皇族についてこれない事も多々あるんだよ。
どうも戦場を経験をせずに管制独行艦で実績を上げてきたようだから、
そうなるのも無理はないんだがなぁ?
が、それを勘案してやるほど帝国は皇族は甘くないということだな」
「反逆されません?」
だって合法だよ…
「むしろして欲しいな?というかたぶんする。それも銃を取らない方法でだな」
「それ一番やっちゃいけない方法ではないのですの?」
うわ…暗殺する気なんだ…
「ここまでくる時点で皇族の事を真に理解してないことの証左だからなぁ」
「逆説的に……だからやってしまうと?」
つまりは…皇族と魂魄式にっとっては当然の処置であると…
だから人治国家なわけか…合法不法など些末事で…
人類の生存に資するか否かだけが重要であると…
「皇族の覚悟を目の当たりにする機会が今までなかった、
幸運な奴がここまできちゃったってだけの話でもあるわけだ」
「知ってさえいれば、理解してさえいれば、する筈がないと?」
自覚もなく足を引っ張るヤツは問答無用で処する…わけか…
「そういうことだな。いやしかしまぁ、
制度的な問題でもあることはもう間違いないなぁ、
そろそろ検証公に回すべき案件かもなぁ
これでもう4人目だからなぁ?」
「ええぇぇ?4人目なんですのぅぅぅ」
第3分隊長オオトリ中尉も驚愕の恒例行事発言…
「帝国が銃を取らないものを公表せず処すのはこういう側面もある。
制度構造上の問題の有無の検証に都合が良いのだよ?
それが後々にとっても役に立つんだ?」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
人類の敵も実験サンプルとして有効活用…
「……この年齢になっても度々おもうんだよ?
知らない、理解できないって怖い事だなぁ、とな」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
「彼はここに至るまでに周囲の彼を思っての
讒言と忠言をまるで妄言のように扱ったよ……
怖い事だなぁと、な?」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
…想像以上に帝国暗黒面はヤバかった…ここまでとは…
「とまぁそんなわけで、ここの領域は
制度的に根本から問題を抱えているが
それも長くてあと150年だ。
そもそもが念のためにと、万が一の面倒を避けるために、
入植を規制してるだけだからな?
この領域が必要になる時期も次々代か、さらに次だ。
あげく初期開拓まで概ね終わってるからな?
すぐにテラフォーミング開始できる状態ということだ。
現状維持できていれば概ね問題ないということだな。
諸君らの先輩の偉大な成果だ。
ここがこのトワニを含め年百隻を下らん拠点艦建造と
強襲独行艦を支えている事実は揺るぎようもない。
誇ってよいぞ?」
(((((((((こくこく)))))))))
「では次に移ろうか?
『帝国防衛縦深領域』」
タウ星起点1000~2000光年星系
防人屯田兵制度対象領域
帝国門を除き軍民入植禁止領域
コマイン戦後に防人艦隊配備予定領域
ただし戦中は非戦場星系に限り哨戒独行艦のみ配置
の方針となっている。
軍属民間ともに入植も滞在も許可されていない。
滞在を許されるのは軍人と冒険者のみである。
準戦場星系扱いである。
「帝国門を除き?」
「そうだ、南天北天ともに0時~10時帝国門各々6基は、
この領域に存在するからな?」
「あぁそういえばそうか」
南天と北天は位置的に出城みたいなもんだもんな。
「それに地球とタウ星系から見て
天の川銀河中心方向0時はコマインの領域だからな?」
「特に0時は戦闘がないだけで最前線であることに変わりはないと?」
あぁコマイン側は赤道方面も確かにそうなるのか。
「うむ、そして帝国門第一シリーズには第五層の居住区があるからな?」
「それで帝国門だけが例外と」
自衛自活できるからこその例外植民許可と…
「そういう事になるな、過密状態を嫌う冒険者の連中も寄港する。
周囲に他に寄港できる場所無いからな」
「なるほど、哨戒独行艦も?」
既知星系を監視している連中だったな。
「いや、彼らは交代時には守護宮まで帰るぞ?
最寄り帝国門から投射してもらうだけだからな?」
「えっ?じゃぁなんで冒険者の方は?」
未知星系を探査してる連中だったな。
「外縁に戻るのが面倒になるからだな、
以前ほどではないとはいえ、
帝都帝国門も守護宮も多少は待つからな」
「あぁそういう方々なんですのね」
任務が趣味なかんじなんかなぁ…
「うむ、あいつら北天6時から南天0時に跳んだりと
帝国でもっとも帝国門活用してる連中だからな?
そんな感じなんだ」
「なるほどですぅ」
第6分隊長マキバ中尉もご納得の文化っぽいなぁ。
「では他にはないか?……では次に移ろう。
『ホプル戦域』」
タウ星起点北天4時6時8時方向2000光年以上星系
西暦5701年魔導銀河帝国歴451年以降より、
人類圏外ホプル制圧作戦「実戦演習」の作戦領域である。
損耗率がとても低いながら敵性星系が犇めいており、
練兵の最終仕上げとして専ら活用されている。
「活用してるんですのね……」
「うむ、中々に効果的な使い方だと自負している」
初陣相手にはちょうど良い敵なのは確かだけども…
「ん?マナコア回収があるなら地上軍も?」
「そうだ、諸君らが参加するのは星系世界樹ステージ3か4の星系だ、
地上軍も当然参加するぞ?」
初陣から共同作戦とは…
「贖罪兵2種も?」
「うむ、諸君らは戦場で駆ける彼らを見ることになるだろう、
実際に直接目にすることはないだろうがな?」
地上と宇宙だもんな…モニター越しか…
ん?拠点艦内では見れないのか?
「あ~待機中は専用船でコールドスリープするんでしたね」
「そういうことだ、帝国籍地上軍軍人には会うことになる」
第4分隊長ナカニワ中尉はわりと細かいところを憶えてるなぁ、
知識自体は俺にも刻まれてるはずなんだが…
「ふむ?それはどういう?」
「拠点艦1隻に1個師団の贖罪兵2種を除く7392名が、
作戦参加中は駐留するのが恒例となっているからな」
「えっ?そうなの?」
「帝国人と会えるんだ?」
「名誉退役するまで会えないとおもってた」
ファンタジー人種セットとは初陣の時に会えるのか…
「これもそれも諸君らの先輩の実績とティネムの遺志と……
検証公の黒い思惑によるものだ、感謝するといい」
「まって?最後なんかおかしくない?」
「では最後になるな」
「えっスルー!?」
「『コマイン戦域』」
タウ星起点10時0時2時方向1500光年以上星系
西暦5761年魔導銀河帝国歴511年以降より、
対コマイン戦場領域である。
帝国、コマイン双方ともに小規模迂回戦思考になっており、
頻繁随所で小規模遭遇戦や威力偵察戦が行われている。
その結実先として数十年スパンで大艦隊決戦が行われている。
この為、元からほぼ自己完結している防人艦隊が、
戦力継続性、運用コスト面、汎用性から有用であり、
戦域展開戦力の主軸となっている。
その損耗程度は一時期よりだいぶ落ち着いたとはいえ、
年100隻前後の拠点艦が沈んでおり、
定数充足を目的に戦力化された防人艦隊の投入が長期的に続き、
結果として防人艦隊は全てこの戦域に投入されている。
また本土艦隊は予備戦力、決戦戦力として運用されているが、
その出撃頻度と損耗率も低くはなく、
年20個艦隊は後方にて要再編状態に追い込まれている。
帝国はその後方に1000個艦隊を既に持ち、
さらに1000個艦隊を追加しようとする程度には、
過去の悲惨な戦訓を重く捉えている。
「ん?年20個艦隊要再編?戦没艦よりだいぶ多くない?」
「おっよくソコに気が付いたな?
そうなんだ戦没艦よりだいぶ多いんだよ?
戦列戦艦の損傷艦がなぁ、
沈まないまでも、もうズッタボロにされるんだよ」
「あぁ~あの戦列砲艦の砲火でかぁ?」
「そう、当然被弾箇所はだいたいが艦首なわけだ、艦首砲はまず使えん」
「えっ?じゃぁ……まさか狙ってる?」
「そうだ、コマインの戦列戦目標は艦じゃない砲だ、
小破であったとしてもだいたいはもう使えんからな」
「えぇぇぇ?じゃぁ砲が使えなくなったと判断したら次へ?」
「いやさらに行動は早い、目標群を丸ごと第2射は変えるんだ、
そして第3射までに1射目の戦果判定して3射目の標的選定に反映するんだ?
結果、艦首をズタボロにされた戦列戦艦が大量に量産される。
たまに運悪い艦が轟沈はするがな?
つまりは、あくまで突撃艦を支援するのが戦列砲艦なわけだ」
「大艦隊との会戦は去年は2回?それで4個艦隊要再編?じゃぁ他は?」
「拠点艦の救援に赴いた結果、向こうの増援小艦隊とな?
こちらも丸々1個艦隊ではなく分艦隊だったりでな?
積もりに積もって結局はそんくらいになってしまうんだ」
「あぁ~1on1じゃないんだからそうなるのか~」
「相手は毎回どのレベルでも超有能指揮官だからなぁ、これがきっついんだ」
「うぬぅ、なるほど、たしかに厄介に過ぎる……」
「まぁ、それに気づけるようになったというのも
ティネムの努力の成果というわけだ?アイツには感謝しとくといい」
(((((((((こくこく)))))))))




