第21話 足りなかった、まったくもって足りなかった、何もかもが桁が1個足りなかった
「さてティネムがこの宣言をした理由がわかる者はいるか?」
「事前粛清」
「そうだ第8分隊長、それだ」
「まじっすかぁ……」
もう帝国のお家芸だよな…第7分隊長カルイザワ中尉よ
「このため軍関係者と皇族には事前に根回し済だ」
「ですよね……」
この帝国の常識は受け入れ難いよなぁ…第4分隊長ナカニワ中尉…
「当然、多少は漏れるが、
むしろそれを検証公率いるオレ等の後輩達が制御し、
一般国民にそれとなく情報を流布していた。
曰く、プリプリ帝最初にして最後の託宣だと。
効果は絶大だったな」
「あ~まさに効果的な活用と……」
「結果として10年間ほど雨後の竹の子のごとく、
不穏勢力が生まれたが、須らく小規模に留まり、
世情が大混乱したにしては不穏分子として殲滅された者は、
1000万人を超えなかった」
「それでも1000万……」
第4分隊長ナカニワ中尉のように絶対数としてはやはり多く感じるようなぁ…
まぁ当時総人口が8800億人って考えると少ないんだろうが…
「そしてここに国家総力戦体制は整った。
あとは踏み出すだけだ、西暦5751年」
「「「「「「「「「んんっ」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴501年
0時方向第三次接触計画
「0時第二帝国門」計画始動
「女帝の盾」進捗(進捗100%)
ホプル繁種船撃墜数905642
エルフ総人口4400億
獣人総人口2200億
ドワーフ総人口3200億
ハイヒューマン総人口5500万人
地球型環境植民惑星690
フォーミング中惑星0
マナ産出内部海天体数5987
植民星系1094
人類圏重要非植民星系1014
到達星系12023
マナ日産量8兆8074億
「おぉ~まさに準備万端で踏み込んだのか~」
「こんだけ時間と労力と努力に覚悟で臨めばな~そりゃ~」
「オレらもそう思っていた、西暦5761年」
「「「「「「「「「ん?」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴511年
敵対的純科学自己学習型AI文明との接触
「Coasting Machine Intelligence Civilization」
=「Comainci」=「コマインンチ」=略称「コマイン」
第三次生存戦争「惰眠むさぼる機械知性との闘争」開戦
0オクロックセカンドゲート星系(1987光年G5V)
「0時第二帝国門」建造進捗30%
「0オクロックセカンドゲート星系から150光年離れた星系、
旧零時2群348番星系、現イグニッション・ポイント星系、
で帝国はついに出会った、その時のティネム達の映像だ」
『状況は?』
『はっ!、10分前にファーストコンタクト、
場所は零時2群348番星系』
『この時期に見つかったゆえに近いだろうとは思っていましたが、
そんなに近いとは、0時第二帝国門から150光年とは』
「近いのか、感覚的に近いと感じる数字なのかよ」
「不思議な感覚だよな」
第2分隊長クロカゼ中尉に第7分隊長カルイザワ中尉と同じくだよ…
150光年だよ?普通に考えて遠いよね…
『さらに悪い情報もたくさんありますよ?ティネム帝陛下?』
『検証公……聞きたくはないが聞くしかないのがツライですな
続きを副官』
『はっ我が方は当然ながら探査独行艦群司令部隷下の
探査独行艦ゴーイングマイウェイです』
『……その艦名はホントに聞きたくなかったものだ』
「その名をなぜつけたし……」
「……例の連中?」
第10分隊長オトナシ中尉?あぁ~ハム公が毛嫌いしてた連中か?
『お察しの通り、盾上がりです、戦場上がりではありません』
『なぜ探査独行艦群司令部隷下に?』
『艦名の通りです、哨戒独行艦群司令部隷下でさえ窮屈と』
『流石は盾上がりですな、とはいえ帝国の英雄様が無配属とはいきませんか』
『で、今に至ると、そういうわけです』
「あぁ~そういうこと~?」
「そりゃまた厄介な」
第2分隊長クロカゼ中尉も気付いたか~
ホプル繁種船ばかりを一方的に狩っていた面々と、
相応に戦死者を出してるホプル星系殲滅戦に従事していた面々か…
そりゃ経験できる内容が違うわなぁ。
『続きを本当に聞きたくないですな、副官続きを』
『相手は概算5万隻の船団、おそらくは艦隊です』
『ファーストコンタクト時点で相手は艦隊と……』
こっちは単艦で相手は5万隻の艦隊かぁ…
「暗雲」
「ほんに」
第8分隊長クロノ中尉も第3分隊長オオトリ中尉も呆れ気味と
『現在、彼我の距離は約2光秒です』
戦列戦15光秒からするとかなりの近距離?
『となると、つまりは待ち伏せということですか……』
『単独行任務艦群艦隊総司令部より優先制御権の事前使用申請が届いています』
『仕方がないでしょう、サインしておきました』
このタイミングで女帝のサインがいる申請って…
「不穏なワードが」
「ですね」
『目的は鹵獲でしょうが……しかし、なぜこうも見事に待ち伏せを?』
『ゴーイングマイウェイの近年の行動ログに、
電磁波吸収フィールドジェネレーターの起動は確認されませんでした』
……全く無警戒で探査活動していたと…
『……なるほど、検証公?』
『知っての通り、まだ我々の数は足りませんよ?
全ての艦を視るのならばですが』
あぁ…事後に即時調査確認したから…確認されませんでした…か
「あっまだ足りてないんだ」
「ここでも苦労してるんですのね」
『経緯としては348番星系最外惑星調査のためにゴーイングマイウェイが、
周回軌道へのアプローチ中に惑星地表下に潜伏していた、
約5万隻の不明船が一斉に地表を離脱。
この時点より断続的にレーザー照射を受けています。
現在先頭は55G加速でゴーイングマイウェイを追撃中、
ゴーイングマイウェイは反撃を控え逃走中』
突如として地表から一斉に飛び上がってくる5万隻…
ん?反撃を控える理由あるか?パニックになっているだけでわ?
『ゴーイングマイウェイの加速性は?』
『標準の30Gです、居住設備優先タイプに分類されてます』
逃走性能に追加変更は無しと…ということは…
『ゴーイングマイウェイの生還の見込みはゼロということですか』
「おおぅ南無ぅ」
「すでに確定なんですね」
『単独行任務艦群艦隊総司令部も同じ見解です。
いま、現時点で敵前使用していない、
兵装の使用とマナドライブ等の使用が全面ロックされました。
マナ転化フィールドジェネレーターのみ累積上限10%で許可されています』
「「「「「「「「「はっ?」」」」」」」」」
何もせずに死ね命令強制っ!?
『ここに至っては仕方ありませんな、
最後の頼みの綱マナドライブも交戦中とあっては使用不可能でしょう。
ならば相手に渡す情報は少なければ少ないほどよいのですから、
彼らもそれは承知の上で探査独行艦群司令部隷下にいるのでしょう?』
「「「「「「「「「ぇぇぇぇぇえええ!?」」」」」」」」」
承知の上!?そんな命令が想定されるような任務!?
そんな覚悟のあるような面々なんだろうか…ゴーイングマイウェイ…
『えぇ彼らはしっかりと聞き、その上でマナサインしてますよ?
当事者意識は希薄でしたが』
「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇ……」」」」」」」」」
『ならば法的にも問題ありませんね、現実的な問題はどうなりそうです?』
『探査独行艦群司令部隷下の盾上がりは4割に上ります、
彼らはおそらくは任務拒否または忌避の姿勢を示すでしょう。
この問題を解決するには2年ほどを要すでしょうね』
『こればかりは事が起こってからでないとどうにもならないと結した問題でしたね』
「「「「「「「「「おおぅ…」」」」」」」」」
4割とは結構な割合になるなぁ…組織人事上の問題かぁ…
『初っ端からとなった事がどう影響するかは今後次第となるでしょう』
もうしょうがないから出たとこ勝負と…
『しかし55Gですか、やはり主観情報は誤差が大きいということですかね』
『おそらくは、40G以上?と推定していたアレでしょう』
そうか…情報の出元が植物の主観情報だもんな…
『ゴーイングマイウェイの彼等には申し訳ないが、
今暫し粘っていただいて人類の礎になっていただきましょう。
後続の探査独行艦は?』
『既に志願した戦場上がりの4隻が新発したようです』
『探査独行艦群司令長官には暫く苦心頂くことになりそうですね』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
この司令部の司令…苦労したんだろうな…
『それを承知の上で赴任してますからティネム帝陛下は気にせずによいでしょう」
事前覚悟完了済の司令ですか…
『……副官、呼称を予定通り、今まで軍内部で使っていた仮称を
そのまま正式にあてるように手続きをたのむ』
『はっ!』
「これからたった1年後だった、西暦5762年」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴512年
コマイン艦隊0時第二帝国門襲来
5光年級転移技術500光年/年保持確定
0オクロックセカンドゲート星系第四第五惑星(無人)への奇襲降下制圧
「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」
「やられた、完全にしてやられた、その時のティネム達の映像だ」
奇襲降下!?帝国門建造中の星系で!?
『何が起きたっ!?』
『はっ!強襲独行艦と戦偵巡を
イグニッション・ポイント周辺の監視に駆り出した隙をつかれました!!
0オクロックセカンドゲート星系に既に5万隻のコマイン艦隊が侵入してます!!
星系主星を帝国門からみて右手60度の方向、帝国門公転軌道上です!!
現在も増勢中とのこと!!』
ここで盾組み4割減の影響が直撃して抜かれたのかぁ…
『あの100万隻の艦隊は全部が陽動か!!』
相手は見せ餌に100万隻を配分できるのか…
『コマイン戦総司令部も同じ見解です!!
既に該当のそれらに帰還命令を出してます!!
帝国門防衛の10個本土艦隊に迎撃出撃命令でています!!』
星系全力出撃じゃん…
『帝国門の防衛は!?』
『建造支援中の300個防人艦隊を全部残してます!!
南天から援軍30個艦隊を投射中!!
全戦力投射に120時間を見込んでます!!』
うへぇ~バタバタ展開だぁ~
『初戦威力偵察に10個本土艦隊を投入する羽目になるとは!!
まったくもってホプルとは違うな!!』
『はっ!!状況に変化あり次第、再度ご連絡します!』
『頼む!』
「そして翌日」
『何があった!?』
『星系主星を帝国門からみて左手60度の方向
帝国門公転軌道上に新手です!!』
『なんと!?では右手も陽動か!!』
うわぁ…初戦からめっちゃ振り回されてる…
『コマイン戦総司令部も同じ見解です!!
しかし、左手の迎撃は見合わせるようです!
迎撃艦隊の迎撃結果を待つ構えです!』
『業腹だが、それしかあるまい』
「そして半日後」
『どうなった!?』
『端的に言って状況は最悪です!!
左手の新手の目標は
現在、帝国門から見て主星の向こうにある第四第五惑星です!!
迎撃艦隊は挟撃の懸念のため左手の迎撃は不可能です!!
その右手も左手との合流を狙って動いています!!
迎撃艦隊は常に挟撃の危険を孕んだ艦隊運用を強いられています!!
増援は今いる分を投入してさえ間に合いません!!』
『ぐぬぅぅ、まさかファーストコンタクトから一戦もせずに、
橋頭保を掠め取られるとは!!』
単純な奇襲じゃなく…艦隊運動で振り回されて奇襲降下に至ったのか…
『コマイン戦総司令部は迎撃艦隊に帝国門への帰投命令を!
同時に南天の通常地上軍2億と
贖罪地上軍2000万の投入を決定しました!』
初戦から奪還地上戦とはなぁ…
『コマインは相当な戦巧者なようですね、由々しき事態です』
『検証公!?それに艦隊公に猟兵公も!?』
新顔魂魄式さん2名追加と
『そこの置物ハム公に呼び出されました、
無理もありませんが』
『どう思われます?』
『いやぁ?こんだけ詰将棋染みたことしておいて?
終着先が泥沼の消耗戦?
相手は相当に物量に自信をお持ちのようだ、ね?』
発言からしてこの金髪インテリエルフが艦隊公?
『地上戦はその為の餌だぁな、だが食いつかねばなるまいて』
となるとコッチの白銀髪武闘家エルフが猟兵公?
『……やはりですか』
『この指し手相手に?下手な小細工は?隙を作るようなもん?』
『小細工好きの艦隊公から、儂と同じく全力で真っ向から殴れ。
なんて結論が出てくる日が来るとは思わなんだ』
正解だったか。
『お二方にそう言わせるほどですか……』
はぇ~そこまで読むんんだ…
名は体を表すというわけかねぇ
『各種増産計画策定の概案と検討メンバー推薦リストです。
ご一読の上、ご裁可を』
『いえ、今ここでサインしておきます、事態はかなり深刻ですからな。
このまま進めてしまいましょう』
『では、そのように』
『コマイン総司令部より反攻計画の提案が届いています!!
ご一読の上、ご裁可を!!』
『40個本土艦隊と300個防人艦隊の
集結が済み次第、出撃と……艦隊決戦ですか、
帝国門防衛には北天より10個本土艦隊で、
出撃日時は4日後、決戦予定日は6日後の元日の0時ですね。
よいでしょう、サインしておきます』
『はっ!』
あっという間に対策案が策定実行されよる…
『なんとも気の重い年明けになりそうですな』
『覇道の幕開けだな』
『星間国家総力戦だな?』
『開戦劈頭から佳境ですね』
「といわけで挽回すべく、西暦5763年」
「「「「「「「「「んん」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴513年
0オクロックセカンドゲート星系防衛戦
帝国展開兵力定員
本土艦隊10個艦隊(増援南天30個艦隊)
防人拠点艦300隻
通常地上軍2億
贖罪地上軍2000万
「ここからも映像で見てもらおう」
「「「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」」」
『陛下、そろそろ皇宮第一戦訓研究解析システムへ』
『では着座に向かいましょうか』
「諸君らにはまだ教授していなかったが、
帝国の指揮統制は仮想空間上で行われる。
思考加速機能もあるのでな」
はぇ~仮想空間上とはいえデッカイ指令室空間だなぁ
『ティネム帝陛下も来られましたか』
『帝国の今後を左右する一戦ですからね 検証公』
『確かに?大きく左右する?一戦だろう』
『艦隊公も各員の反応を見に?』
『まぁ?大事なことだろう?』
『さて彼我の距離15光秒直前ですね』
『我が方8万隻、彼の方100万隻』
『お互い退かず、始まりますね』
『艦隊指揮官は0時第二帝国門第一艦隊
その旗艦座乗のヘネウス大将です』
『では、彼の奮闘を黙して見届けさせて貰いましょう』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『さぁ連中に思い知らせてやるぞ!!15光秒の壁の高さをな!!
後ろの星間航法関係と思われるデカブツは置いておいて
まずは艦隊主力と思われるその他大勢からだ!!
戦列戦打ち方用意!!
高機動戦隊と超高機動砲艦並びに憑依式は所定の位置で待機!!
さぁ始めるぞ!!戦列戦始め!!』
エルフ?なんだよなぁ…猛将顔でらっしゃるから…耳でしかわからん…
『第1射33640線全弾命中!!敵艦!!消失っ!?
いえっ!!反応が8倍に!!
小規模な反応が8倍に増えてます!!200m級ですっ!!』
えっ?増えた?
『!?そういうことか!!全艦思考加速10倍!!』
『思考加速オン!!』
『戦列戦第2射は発砲中止!!
第3射以降は4門でまとめて消し飛ばせ!!
敵の全艦についてるサイドエンジン状のモノはおそらくアレだ!!
800万のアレが突っ込んでくるぞ!!
戦列戦は分離の終わってない母艦ごと4門で葬れ!!
憑依式は迎撃前衛!!
高機動戦隊は迂回中衛!!
超高機動砲艦は最終防衛ライン!!
魂魄式AIは各自踏ん張れ!!標的選定が肝だ!!
さぁ始め!!』
あっ拡大映像に出てるヤツか!
細長い船体にX状に2個ずつくっついてるの、
アレ全部ミサイルなのかよ!?
全長200mのミサイル…どんなミサイルなんだろ…
『第3射33640線全弾命中!!敵艦!!今度はしっかり消失!!
はぁ?敵艦っ!!全艦が分離!!おそらく全艦です!!
集計が!!間に合いません!!』
『だめだっ!!標的選定がっ!!到底間に合わん!!』
えっ?いきなり全弾一斉射したん?相手?
戦闘開始から1分も経ってないだろうに?
『えぇぇい、戦列戦!!各個自由射撃!!
アレの殲滅速度を優先しろ!!』
『敵艦!!おそらく全艦加速!!大半が55G加速です!!』
『やはりぃぃぃアレかぁぁぁあ!!アイツを近づけるなぁぁぁああ!!』
『現状の殲滅速度での0.1光秒到達率予測25%です!!』
ちょっ!!200万発到達予測とか!!
『戦列陣!!陣形維持しつつ全力逆進だ!!
遅い敵母艦は放置だ!!アイツを優先しろぉぉぉ!!』
『0.1光秒到達率予測20%です!!』
うはっwまだ160万発だwまじかw
『高機動戦隊も迎撃砲戦開始だっ!!
仕様外距離射撃で叩き落せ!!』
『0.1光秒到達率予測15%です!!』
うそぅwこれでも160万発も残るってw
『憑依式は敵母艦を気にせず距離を詰めろ!!
主砲だけでなく副砲も使え!!』
『0.1光秒到達率予測5%です!!』
『くぅぅぅこれでもゼロにならんのかぁぁぁああ!!』
損害上等でも40万発とか…これはシャレにならん…
「そして艦隊戦中盤」
『っっ!!憑依式にアレが直撃したぞ!!
推定1088PJ!!
260Mtの核融合反応だ!!
戦列戦艦クラス以外は消し飛ぶぞ!!』
ふぁっ!?とんでもない弾頭が載っとる!!
たしか広島型原爆が16Ktだぞ…16000発分超えてんな…
『くそっ!!あいつ等血路を開くために!!
要所の艦に奇襲飽和攻撃仕掛けてるぞ!!』
『高機動戦隊!!混乱しています!!』
えぇ…もしかしてミサイルが艦隊機動や編隊機動してんの?
『敵に進路を譲ってでも殲滅速度を優先しろ!!
高機動戦隊はアイツの前には出るな!!
戦巧者すぎるだろうが!!
白兵戦至上主義者どもとは比べ物にならんぞ!!』
脳筋ではなく…知略系策士なんか…コマインって…
「そして艦隊戦終盤にさしかかり」
『55G艦残余80万隻!!1光秒内に到達!!』
多っ!!
『中央右翼拠点艦アリゾナ、コロラド、アイダホ、
カンサス、ミズーリ、アイオワが前進してます!!』
えっ?USA地名艦?USA出身集約の艦?
『中央左翼拠点艦広東、山東、福建、河北、江西、江蘇も!!』
こっちも中国本土地名?うちと同じ?
『そんな命令はだしとらんぞ!!』
命令無視で前進?えっマジで?
『各艦信号旗揚げてます!!
我ら此れで贖罪を成す!!
我ら此れで贖罪を成す!!』
えっ?玉砕行動?えっ60kmの巨艦が?
えっ人員ごと?えっ?あの2国出身ばかりなのに?
『各拠点艦!!マナシールド展開!!』
『くっそ、あの阿呆どもの意地を無駄にすんな!!
近距離迎撃戦全力をあげろ!!』
『……副官、諸君らの献身に感謝する、諸君らに地球を、以上だ』
『はっ!!』
「「「「「「「「「ティネム帝……」」」」」」」」」
『アリゾナに30000隻が殺到!!』
260Mtが3万発て…うそだろぅ
『うちつづけろぉぉぉ』
『アリゾナ隷下超高機動砲艦!!
最終ラインで体当たりを敢行し始めてます!!』
USA人が集団カミカゼ…
『ダメです!!直撃弾10000!!全防御力場消失!!
右舷上部外殻が消失してます!!
続けて直撃弾2000!!芯部消失!!全外殻脱落!!
その全外殻にさらに直撃弾!!アリゾナ消失!!
至近で迎撃戦闘中だった隷下艦も!!』
全長60kmの巨艦が一瞬で消失…
『左翼でも広東が!!』
『右翼左翼とも多数の拠点艦が!!前進してます!!』
『各艦信号旗揚げてます!!
我ら此れで贖罪を成す!!
我ら此れで贖罪を成す!!』
えぇぇぇうそぉぉぉぅ
『泣いてる暇はない!!撃ち続けるんだぁぁぁぁあああ!!』
『……副官、彼らの名を後でリストにしてくれるか?
おそらくは地上軍から転属した私の教え子たちが、
遺して逝ったあいつらの教え子なのだろう。
彼らの名を私の墓標に刻まねばならん』
『はっ!!』
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
「このリストは後にティネム帝霊廟記章と言われる。
地球の海洋上を漂流する故ティネム帝の霊廟に、
名を刻むことを許されたものに与えられる」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
『敵先頭!!前進した拠点艦群を突破!!』
『中央左右の第9第10艦隊!!
各艦信号旗揚げてます!!
我ら人類の礎とならん!!
我ら人類の礎とならん!!』
『第10艦隊旗艦に6000隻が殺到!!』
『第9艦隊旗艦にもです!!』
『狙いどころがっ……的確すぎるだろうがぁぁぁあああ』
『……副官、彼らの名も後でリストにしてくれるか?
彼らの献身に応えた者たちだ。
彼らの名も私の墓標に刻まねばならん』
『はっ!!』
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
「そして……」
『敵55G艦残余ゼロ!!殲滅です!!』
『っっ!?後方のデカブツに動きありっ!!』
『この反応は……ゲートです!!ゲートを開いてます!!』
『ゲート方向に潜伏している戦偵巡より報告!!指向性電波発信を確認!!』
『ゲート向こうと通信してます!!』
『推定5光年の星間航法と超空間通信はコレです!!』
『ふざけるなぁぁぁ!!全艦仕様外距離射撃!!
あのデカブツを消しとばせぇぇぇぇ!!』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『……ふぅぅぅぅぅ……我々はまだ甘かった……これはその報いなのでしょう』
『贖罪兵に助けられたな?
あそこで拠点艦が盾にならなければ?
拠点艦より遥かに撃たれ弱い戦列戦艦群は甚大な被害?
母艦群の迎撃もままならなかったろう?』
『……検証公、各所が情報を受け止め終え次第、会議としましょう』
『暫し時間がかかるでしょうが、その時間は必要でしょう』
『この戦闘は詳報として国民にも公開しましょう』
『賢明なご判断かと』
『あといくつか法令の素案を』
『どのような内容です?』
『系譜の人類レコードの閲覧のみであれば大してマナはいりませんでしたね?
遺族にのみ戦死者の死の直前の人類レコードの閲覧を許可しましょう。
贖罪兵であれば遺された戦友になるでしょう。
今回の会戦にあたり、非戦闘要員や予備役に訓練兵は、
帝国門に残してきたようですし、こういった機会も増えるでしょうから。
全体としても仔細は詰めるべきところが多いでしょうが、
これが一つです』
『……なるほど……良いのですか?』
『我々はもう引き返せないのですからな……
あと一つ、以前より贖罪兵より要望の強かった地球の件ですが、
具体化を進めましょう、反対する者も激減するでしょうから』
『……そうですね……それがよいでしょう』
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
「そして、西暦5764年」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴514年
0オクロックセカンドゲート星系防衛戦
帝国展開兵力定員
本土艦隊10個艦隊(増援南天30個艦隊)
防人拠点艦300隻
年間撃沈損失率20%
質量比キルレシオ 1(帝国):100(コマイン)
通常地上軍2億
贖罪地上軍2000万
年間戦死率25%
質量比キルレシオ 1(帝国):100(コマイン)
贖罪地上軍大増員計画始動
防人拠点艦大量建造計画始動
本土艦隊大量建造計画始動
独行艦大量建造計画始動
コマイン戦戦訓研究司令部設立
「「「「「「「「「えぇぇぇ……」」」」」」」」」
「足りなかった、まったくもって足りなかった、何もかもが桁が1個足りなかった」
「「「「「「「「「うそぅ……」」」」」」」」」
「結果として激戦は制したが、西暦5769年」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴519年
「0時第二帝国門」建造進捗35%
第一次0オクロックセカンドゲート星系防衛戦勝利
帝国兵力損失
本土艦隊40個艦隊分8万41隻
1000万人
防人拠点艦611隻
611万人
地上軍戦死者数
通常地上軍2億5000万
贖罪地上軍5000万
独行艦によるコマイン勢力圏調査計画「第一次大航海時代」始動
「初戦の攻防戦にしてこの激戦と大損害だ、まさに惨憺たる有様だ
その中にはヘネウス大将まで含まれている」
「キルレシオ1:100の優位で!?」
「この損害なんですかっ!?」
「あぁそうだ、まさに悪夢だ、帝国は当然ながら
流血しながらも現状維持しつつ原因追求と対策を進めた、西暦5801年」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
魔導銀河帝国歴551年
「0時第二帝国門」建造進捗50%
「第一次大航海時代」により
太陽起点3000光年以内のコマイン調査完了
5000万年前に存在しコマインを生み出した後に
コマインに滅ぼされた有機生物異星文明がコマインの起源と判明
休眠から覚醒したコマインの勢力下星系は4000を超えることも判明
勢力下天体は何れも高度に要塞化されていることも判明
以上をもって「第一次大航海時代」終了
コマイン戦戦訓研究司令部成果物
既存主力空間戦闘火砲「空間歪曲砲」を基礎として
「時空泡歪曲式反物質投射砲」の完成
地殻破砕ドクトリンの完成
超人化術式の完成
個人携帯マナクリスタルの完成
個人携帯マナ送受システムの完成
超人化ドクトリンの完成
次元震観測システム理論の完成
タウ星系
タウ星系起点半径5000光年次元震観測システム「帝国の水鏡」建造開始
4時6時8時方向500~1000光年星系テラフォーミング計画始動
第三次生存戦争「惰眠むさぼる機械知性との闘争」
展開戦力定数
本土艦隊100個艦隊2500万人
防人拠点艦4000隻4000万人
通常地上軍10億
贖罪地上軍10億
帝国兵力累計損失数
本土艦隊60個艦隊分12万541隻1500万人
防人拠点艦2021隻2000万人
独行艦2万0051隻
地上軍累計戦死者数
通常地上軍20億5000万
贖罪地上軍10億5000万
贖罪地上軍大増員計画進捗
定員10億に対し延べ20億5000万の配属
防人拠点艦大量建造計画進捗
定数4000隻に対してのべ6000隻の配属
本土艦隊大量建造計画
定数100個艦隊に対してのべ160個艦隊分32万隻の配属
独行艦大量建造計画進捗
6万隻の配属
エルフ総人口5200億
獣人総人口2400億
ドワーフ総人口3100億
ハイヒューマン総人口12億(1人当たりマナ0.5)
地球型環境植民惑星690
フォーミング中惑星0
マナ産出内部海天体数5987
植民星系1094
人類圏重要非植民星系1014
到達星系24023
マナ日産量8兆8930億
「まさに血で贖った成果だ」
「宇宙軍も地上軍もめっさ溶けてる……」
「帝国門の進捗が息してない……」
「さてここに至り我ら帝国と敵たるコマインは
各々に対し第一次適応を果たした
近年コマインは第二次適応を見せつつあるが
その点も含め、そろそろ諸君らにも教授すべきだろう
諸君らの敵についてな?
そして帝国が誇る帝国門と時空泡歪曲式反物質投射砲についてもな?」
「お~ついにっ」
「知る時が来たのですね!!」
「帝国門知りたいっす!!」
「ふむ、ではまずは帝国門からいくか」
「帝国門」
「「「「「「「「「んんっ」」」」」」
帝国の本土領域と帝国防衛縦深領域を繋ぐ流通と防衛の要である。
投射式一方通行型異空間ゲート跳躍(最大跳躍距離3000光年)
帝国門双方向接続異空間ゲート跳躍(最大跳躍距離制限なし)
の2種の跳躍方式を瞬間的に切り替えつつ実行可能。
直径3000kmの球状をしているが、
中心部は直径300kmの空間になっており、
その疑似重力無干渉空間にてゲートが存在固定されている。
進入口は直径300kmの縦穴が3か所、進出口も3か所となっている。
表面は泊地設備、第二層は港湾設備、
第三層は整備設備、第四層は造船設備、
第五層から下は大気があり1G環境である階層高さは各々10kmである。
第四層までは大気もなく本来の低重力環境であり階層高さは各々100kmである。
なお第六~第八層は第二シリーズ帝国門から構築されており、
第一シリーズは最下層第五層は居住区(諸々の官民街と駐留施設含む)
第二シリーズは第五層は地上軍駐留設備、
第六層は軍属家族居住設備、第七層は民間市街地、
第八層は各司令部群に各省庁となっている。
「帝国守護宮」には戦時皇宮も第八層に存在している。
第二シリーズの特徴として、
艦載兵器の延長上の武装しか持たなかった帝国門に、
星系防衛の切り札として専用武装が搭載されている、
それがゲート空間維持基礎構造体全体を使って、
一つの天体規模魔法陣が構築されており、
巨大な時空泡歪曲式反物質投射砲を丸々マナで編み、
全方向に必要な口径と射距離(口径1500m時の射距離168光時)で、
射撃することが可能な「帝国門要塞主砲」である。
第一シリーズへの搭載は再建造とコストがさして変わらないため見送られた。
帝国門1門当たりの建造時間は非戦場星系であれば30~50年ほど。
逆に建造進捗30%時点でコマインとの戦端地となり、
以降完成まで常に激戦地となった「0時第二帝国門要塞」は、
建造期間150年、
本土艦隊編成74個艦隊分約15万隻喪失、
贖罪兵拠点艦約3500隻喪失、
独行艦約4万隻喪失、
総戦死者36億超、
を必要とした。
第一シリーズ
魔導帝国歴1303年西暦4903年「帝都帝国門」
魔導帝国歴1458年西暦5058年「北天中央帝国門要塞」
魔導帝国歴1508年西暦5108年「南天中央帝国門要塞」
魔導帝国歴1538年西暦5138年「6時帝国門要塞」
魔導帝国歴1568年西暦5168年「4時帝国門要塞」
魔導帝国歴1568年西暦5168年「8時帝国門要塞」
魔導帝国歴1605年西暦5205年「2時帝国門要塞」
魔導帝国歴1605年西暦5205年「10時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴元年西暦5251年「0時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴52年西暦5302年「北天6時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴101年西暦5351年「北天4時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴101年西暦5351年「北天8時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴153年西暦5403年「北天2時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴153年西暦5403年「北天10時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴201年西暦5451年「北天0時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴201年西暦5451年「南天6時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴251年西暦5501年「南天4時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴251年西暦5501年「南天8時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴301年西暦5551年「南天2時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴301年西暦5551年「南天10時帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴351年西暦5601年「南天0時帝国門要塞」
第二シリーズ
魔導銀河帝国歴651年西暦5901年「0時第二帝国門要塞」
魔導銀河帝国歴651年西暦5901年「帝国守護宮」
魔導銀河帝国歴901年西暦6151年「10時第二帝国門要塞」建造進捗50%
「「「「「「「「「直径3000km……」」」」」」」」」
「意外に小さいだろ?拠点艦50隻分に過ぎんぞ?」
「「「「「「「「「その理屈はオカシイ」」」」」」」」」
「体積も10万半ば倍くらいだぞ?小さくないか?」
「「「「「「「「「数字がオカシイ」」」」」」」」」
「とはいえ、さすがに建造には骨が折れるのは確かだ」
「よくこんなに作ったもんだ……ほんと」
「なるほど、プリプリ帝とその側近が悲鳴を上げるわけだ」
「第二シリーズはロマン砲搭載?」
「そうだ、0時第二帝国門要塞は施設群を優先した、
というより、必要部材の生産が間に合わずそうなったんだが、
長らく、この砲が使用できない状態だったのも、
悪夢を誘発した要因だった」
「確かに悪夢みたいな数字ですわね」
「そして悪夢に勝利するために生み出したのが」
「時空泡歪曲式反物質投射砲」
「「「「「「「「「んんっ」」」」」」
マナトリガー仕様
対コマイン決戦兵器として魔導銀河帝国歴551年(西暦5801年)に完成した、
帝国主力艦載砲である。
バレル端チャンバー内に構築した、
空間歪曲次元泡(外径に対し内径は1/100)内に、
対消滅励起した反物質を充填し、
射撃時に目標位置にまで「引き伸ばし」たあとに目標位置もしくは接触位置に、
「球形に戻し」て「崩壊」させ充填した反物質を開放する。
その開放した反物質対消滅反応で破壊する火砲である。
砲身自体に1度以内の射角調整機能がある。
「引き伸ばし」と「崩壊」までは瞬間的なためほぼ弾着所要時間が皆無である。
充填された反物質は空間歪曲次元境界泡内部表面に、
薄く分布し一定以上厚みを持たないため、
威力は充填する反物質量=空間歪曲次元境界泡内部表面積=直径^2に依存する。
射距離は「引き延ばし」圧力に依存するため、
直径を下げることで圧力を高め射距離を一時的に延ばす事が可能、
仕様口径での絶対必要射距離は艦砲サイズによって規定されている。
射距離一例
戦列戦艦艦首砲口径1500m砲身長15000m
最大出力900EJ:15光秒(450万km)
戦艦旋回砲塔主砲口径15m砲身長150m
最大出力90PJ:10光秒(300万km)
巡洋艦旋回砲塔主砲口径5m砲身長50m
最大出力10PJ:8光秒(240万km)
駆逐艦旋回砲塔主砲口径1m砲身長10m
最大出力400TJ:6光秒(180万km)
なおどのサイズの砲も最大出力反物質充填時間は、
ブーストしない限り1000秒を要すが、
ブーストした場合の最短充填時間は10秒である。
「崩壊」後に通常空間復元圧力残滓で放電するため、
アーク放電光線痕が短時間残る。
真横からみると放電線に見え、
直近からみると前後とも遠ざかる放電塊に見える。
当然ながら対消滅反応個所は大きな光球となる。
なお、そのバレルと一部仕様を流用して、
空間歪曲砲、実体弾加速砲、粒子加速砲、汎用カタパルトとしても、
バレル内口径が許す限りは「そのまま」使用することが可能である。
空間歪曲砲モードであれば秒間1射が可能である。
「うはっ威力が1000倍になっとるわ」
「絶対に近づく前に墜としてやるという執念を感じる」
「確かに決戦兵器ですね」
「だろう?帝国門要塞主砲もこちらに設計変更された、
充分間に合うような段階までしか進捗してなかったからな。
さてその執念を生み出してくれた
コマインの紹介といこうか」




