第169話 わかるヤツにはわかるんです!!わからんヤツにはそもそもできないんです!!
『ショウヤさん、結局は指揮を執ることになりましたね』
『あーまー仕方ない、またミーにあんな顔させたくはないしなー』
『…爆撃艦4隻ともベイを発進完了です』
『あいつら元砲台組にはやることがあるからな』
『1番艦勢にあいつらは託されたんだ』
『それを成すまで!!死んでもらっては困ります!!』
『その面倒を見るなら生き残った俺達だろー』
『そうです、あんな無様な目には合わせません、私たちが』
『そう俺達が未然に防ぐんだ』
『…この鈍重で前線に出ていけない…爆撃母艦を選んだのは』
『このフネがこの別府第1爆撃戦隊の旗艦だからだ』
「指揮を執ることにしたのか…」「それも第1戦隊…」
『そして選んだ公転軌道は半径600光秒傾斜角73.5度ってな』
『公転周期87日0.0005光秒秒速150kmです』
『…襲撃起点としては考えにくい位置群中で…最も候補数の多い集団』
『そのなかから!!無作為抽出した軌道です!!』
『時間です爆撃艦4艦、使い捨て襲撃機動に向けて加速開始します』
「なんかもう小細工を思いつく限りしてそうだな…」
「それだけの経験をしたってことなのでしょうね…」
『それじゃー3交代で太陽炉周辺をモニタリングするとしよー』
『最初は私とショウヤさんですね』
『じゃぁ頼むわ班長』
『…お願いしますマイさん』
『あっ班長、教練実習機に火入れ頼みます』
『さぁ!!今日も特訓です!!』
『おぅおつかれー』
『いってらっしゃい』
((((しゅしゅん))))
「しれっと6人で3交代って難易度が高いような?」
「代わりができるってそういうことですよね?」
『さてっと太陽炉周辺はっと』
『今は4個戦隊が襲撃中のようです』
『狼群戦術っていうんだったなー』
『そうです、五月雨式にバラバラに攻撃してます』
『潜航哨戒艦も各自バラバラな位置に布陣してるなー』
『この為、例の影絵射撃戦術は控えられてます』
「一網打尽にされないようにか」
「そうして当然ですわね」
『あれ、相当な物資喰らいなんだって?』
『そうみたいです、砲弾、アンテナ、演算で』
『撃つのもゲート開くのも考えるのもタダじゃないからなー』
『相応な戦果があげられないと常用は厳しいようです』
「むちゃくちゃ強引な策だったもんな」
「もう影しか見ないって勢いでしたぁ」
『とはいえ犠牲も皆無ではないんだろー?』
『襲撃間隔が短い戦隊がいくつか…浮上直後をです』
『はーたまらんなーどんな誘導手段使ったんだ?』
『複数の戦列砲艦の影にレーザー戦艦と小型艦をです』
『あーなるほどー隙をつける位置に罠が待ってたと』
『浮上したらソコは融合弾とEMP弾の嵐ということですね』
「うへぇーそんなことまでされてるのか…」
「次元潜航の怖いところですよね…」
『いやだねーそんなんっと…ふーん…コレどう思う?』
『強襲独行艦速報ですか…そろそろ隠密爆弾…ですか』
『最近あった出来事と言えば歪曲砲戦艦だなー』
『帰ってきてまた去った輸送担当100個大艦隊が置いていきましたね』
『数として1万隻程度とはいえ質量融合弾は実際に使えなくなったなー』
「やはり使えなくなったんだな…」
「無誘導砲弾ですからね…」
『今はまだ隠密爆弾は全弾命中し続けていますが…』
『マイ、爆撃艦の全襲撃軌道の履歴を全部表示してみてくれ』
『出しました、何かありますか?』
『んー俺にはわからんな…すまんが皆を呼び戻してくれ』
『わかりました、ココに集合してもらいます』
「ほう、出ていったばかりの面子を呼び戻したな」
「それほどのことなんでしょうか」
『どう思う皆ー?』
『…絶対に忘れちゃいけない…30秒で展開される5光年アンテナ』
『逆に忘れていいのが、ガス雲だな、4343星が近すぎる』
『隠密爆弾は太陽炉に!!めっちゃ刺さってます!!』
『ついに建造進捗が微量ながらマイナスになるほどだ』
「あっ隠密爆弾自体は成功してるんだ」
「当たるなら破壊力は抜群だろうからなぁ」
『通商破壊戦隊よりも対策急務と考えているでしょう』
『なるほど…動機の問題だったんだなー』
『具体的な手段はアノ時も誰も事前にはわからなかったな』
『…相手には200個大艦隊分の…演算力があるという信頼』
『必ずや策を見出してくるという実績』
『中身は!!問題じゃなかったんです!!』
「強襲独行艦から連綿と紡がれる基本思想…」
「たしかにそうだったな…」
『そのうえでウチの爆撃艦行動履歴はどうだー?』
『例えば!!隠密爆弾の最終突入軌道と速度が!!見えていた!!』
『そうだとしても、爆撃艦の軌道は予測できないように使い捨てだ』
『そこから俺たち母艦の公転軌道も捉まれないように細工している』
『…爆撃間隔も…意味なく変更』
『アノ時、南天の1割組だったから生存できたのです』
「思いつく対策は常にしていると」
「戦訓が生きてるなぁ」
『だがアノ時参加したのは100個戦隊、つまりは拠点艦5隻分だなー』
『…そうだった…全員じゃなかった』
『残り5隻分の100個戦隊は参加してないな』
『1番艦勢74隻を喪った俺らより数は遥かに多いな』
「そうでした、参加してたのは半分だけでした」
「そういやそうだったな」
『…私たちは…別府の40隻いた哨戒艦は…22隻しかいなかった』
『うち1番艦は私達含め2隻だけだったです』
「そうだったのか…」「ミー准将もさぞや…」「確かに1割…」
『俺らのトコロの元砲台班は半分は転属で入れ替わった』
『残った班員は元砲台組が10班に私達ともう1班だけでした』
『爆撃艦で28班足りず、追加される母艦でさらに10班足りない』
「編成がスカスカだ…」「骨格すら危うい状態に…」
『流石に母艦には掃討艦の班を8班まわしてもらったー』
『そして元砲台組には各々爆撃艦1番艦になってもらった』
『…残る30隻の…爆撃艦の班員は…生後半年から1年未満の1年生新兵』
『反攻以後に別府艦内で養成され始めた訓練生だ、それも砲台配属相当班だ』
「あっ欠員補充の仕方って…」「こういうことなのか…」「人員も現地調達だった…」
『とてもとてもハム公達らしい判断だったな』
『そんな俺達だからあんなメンドーなこと出来る訳だーじゃー非参加組は?』
「思い知らされた者と何も知らない新兵だけだからこそか」
「新兵ならそれが最初ならそれが普通と思いますぅ」
『非参加組は転属もなく入れ替わらず、補充も母艦分10班のみです』
『50班中40班が13年生だなぁ』
『…哨戒艦での初陣はなく…爆撃艦での初陣』
『非参加組と交代する前に哨戒艦運用が頓挫したもんな』
『まるでアノ時以前の私達です』
「あぁなるほど…悪い意味で慣れてしまっていると…」
「ふむ、それはそうだろうな、どうしようもない」
『私達は全員1人でこの船をある程度動かせます』
『アノ時以前の俺達には到底無理な芸当だ』
「あれからできるようにしたと…」
『俺たちは全員が襲撃軌道の創出と作戦立案がある程度できる』
『…アノ時以前の私達には…到底無理な芸当です』
「全員でそれができるようにしたと」
『そうだ、今の俺達にはできても過去の俺達には絶対にできなーい』
『6人がかりで!!毎回組む!!襲撃軌道創出と作戦立案!!
それも以前と常に被らないように!!そんなもの簡単なわけがない!!』
「そうしないと生存圏に届かないことを知っていると…」
「そういうことなんだな…」
『いやまぁちょっと自信が持てなくてな?見た感じできていなんじゃないかなーと』
『できてねぇ』『できてません』『…できてない』『できてないな』
『だめだめです!!』
『複雑だよねーこう見る立場が変わるとー』
『これ忠告しても命令しても意味が無いやつだな?』
『精神論じゃないけど、心構えとか覚悟とか状況認識論的な?』
『…そう敵に対する認識…その違いからくるもの』
『なるほどですね、だから”隠密爆弾そろそろ”なのですね』
『わかるヤツにはわかるんです!!わからんヤツにはそもそもできないんです!!』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」




