第16話 またしても……同志リーダーにしてやられたよ
「まず次代女帝は贖罪兵計画で功績を挙げた者だった」
「えっそうなのか?」
「うむ、必死になって統制をとり、
今の贖罪兵運用制度の基礎を築き上げた皇族だ、
度重なる反乱も幾度となく鎮圧している猛者でもある。
というか、やっとプリプリが承認した、100年ほどかかった」
「えっ!!退位したいんじゃなかったの!?」
「したいができなかったということだ」
「えっどういうこと?」
「うむ、映像をみてもらうか?
プリプリは次代告知を自分でしてな?
その時の映像になる」
『汝が次代の女帝だ、
既に女帝名も決めてある。
不屈の女帝
The Indomitable Empress・Space Humanity Empire
Thinem・Sphuem=ティネム・スフームだ
今この時をもってそう名乗り、そう呼ばれるとよい
私もそう呼ぶ』
「プリプリが威厳を発してる!?」
「成長してる!?」
「そりゃそうか、896才だもんな」
「容姿が殆ど変化してないから失念しがち」
「しかし相手の方が貫禄ある不思議」
「わりと野性味?強面?風な方ですね」
「…隻眼戦士栗毛エルフさん」
『いささか気が早いですね?
その名とともに理由がおありで?』
『うむ、あまり喜ばしい理由ではないがな』
「んん?そうなんか?」
「ホプルで大きな直接的被害出てもいないですし」
「順調そのものに見えるけど?」
『ここに側近の方々だけでなく、
上位存在検証委員会の方々、
最古参魂魄式AIのお歴々全員、
現シングルナンバーの方々もおられるのもそれで?』
『うむそうだ、次代まとめて一度の説明で済まそうと思ってな』
『なるほど』
「うむ、見覚えのある布陣だな」
「そうだな、とてもそうだ」
『では恒例の
三代目女帝イルブレム・スフームが宣言する!!
これより!!上位存在寵愛甘受者から次代女帝に!!
上位存在よりの託宣という名の警句を与える!!
なお今代女帝と最古参魂魄式AI全員の承諾により、
本件は機密レベルZ、期間は当座は100年とする。
以降は状況に応じ有効的に扱うこととする』
『最古参魂魄式AI全員のデータベースに
今のご発言が記録されたことをここに報告します』
「恒例!?恒例になるほど!?」
「託宣!?」
「それも警句!?」
『では女帝としてのお役目はここまでだ、
以降は上位存在寵愛甘受者として振る舞う。
よいな?上位存在検証委員会、委員長?』
『はっ!!今回も進行、謹んで務めさせていただきます』
「委員長再び!!」
「流石の貫禄!!」
『では、ティネム次代女帝陛下?始めさせていただきます』
『ティネムで構いませんよ?』
『ではティネム帝陛下と…
お察しの通り上位存在案件です』
『ふむ、続きをどうぞ』
「……ティネム帝は沈着冷静タイプ?」
「たしかに~そうみえるなぁ」
『発端は魔導帝国歴1407年のホプルとの初接触です』
『ほう?そこから』
『巷では魔導帝国歴1303年の
プリプリ帝陛下のプリプリ案件が起点の結果、
というのが主流になってますね?』
『たしかにその風潮が強いのは聞き知っているな』
「なんかハム公が歯切れが悪かった件だな」
「たしかにそんな感じだった」
『それは我々、検証委員会の仕事です』
『ほう?それでは実際にはプリプリはされていなかったと?』
『いえ、逆です、頻繁にプリプリされていました』
『はっ!?今!!なんと言われた!!』
『頻繁にプリプリされていました』
「えっそうなの?」
「ん?そんなに取り乱すほど?」
『いっいつから!?いつからなのですか!!』
『魔導帝国歴1000年です』
『でっでは!!』
『そうです、「鬼門」包囲封鎖成功以降からです』
『そっそんな早い時期から……』
「えらいテンション落ちとる」
「はぇ?どゆこと?」
『日常編ではつい最近までプリプリ案件を拾われていたのですが
その影響範囲はプリプリ帝陛下の人脈を超えることはありませんでした』
『寵愛自体を失っていたわけではないと……』
「ふむふむ?なるほど?」
「むぅよくわからん」
『そして、帝国全体、人類全体に影響するようなプリプリ案件を
拾われたことは、この時以降一切ありません』
『委員会は!?委員会はそれを!!どう受け止めたのです!!』
『お察しの通りです
笑いの神が拾わない
それはどうあがいても笑えないからです
あのプリプリ時空神が笑えないのです』
『それは………あまりにも受け入れがたい……』
「ぬぅわぁぁぁそれわぁぁ……」
「……ティネム帝?頭の回転爆速?」
「えっどゆこと?」
「人類滅亡宣告」
「はぁ?そいうことなんのかよ!!」
『ですが、現実ですので向き合わなければなりません』
『であれば?あの狂気のような富国一本の姿勢はっ!?』
『プリプリ帝陛下を中心とした我らの決意表明と
プリプリ時空神への問いかけです』
『問いかけっ!?問いかけとっおっしゃるのか!!』
『我々の解釈はあっているのだろう?そういう問いかけです』
『あまりに豪胆な!!傍証が積みあがった荒神に対しなんと豪胆な!!』
「委員長かっこよすぎる」
「もう影の女帝でよいのでは?」
『そして我々は回答を頂きました。
鬼門を我々が閉じる、その事実をもって回答はなされました。
おそらく必須になるであろう帝国門を褒美として』
『あぁぁぁぁ、そういう……ことに……なってしまうのか』
「人類滅亡宣告確定」
「うへぇ、一見平穏かつ繁栄を享受しているようで」
「裏では宣告をうけるとか」
『そして発端のホプルとの初接触です。
経緯、判明する事実、遅い展開、特に笑いにも発展しない。
我々はこの件に関してプリプリ時空神は干渉していない。
と断じざるをえませんでした』
『確かに……言われれば違和感の塊だ』
「なるほど納得です!!」
「うむ反論の余地がないな」
『しかし、我々はコレを好機と捉えました
これで、大手をふって帝国門を各所に配置できると』
『それが……あの恐怖の富国と帝国門並行進行の……真実』
「恐怖!?恐怖なの?さっきも狂気言われてたのに」
「帝国門って……いったい?どんな規模なの?」
「知るのが怖いですね……」
『そして上下に2基が完成し
赤道面の1基目に手を付けたところで
ホプル繁種船の情報を公表しました』
『あぁなるほど、あれは一般国民にとっては
恐怖の的で帝国門建造継続の後押しにはなるが
専業軍人には帝国門が過大にすぎると判断する根拠と』
「さくっと政治工作、そりゃプリプリは専門だもんな」
「素直にふて寝する、
3STEPで60億の不穏分子を抹殺した鬼畜内務官だからな」
「やめてやれ」
『そうです、先にある程度建造を進めることで、
専業軍人の皆さんの声を抑えさせてもらいました』
『たしかに、歴史教育で当時を知った、私もまたそう判断しました
ここまで進めてしまった以上
不安に思う国民を無視してまで停める意味も薄いと』
「さすがの手腕」
「だな」
『そしてティネム帝陛下?
贖罪兵計画に携わってきた貴方なら、
対ホプル制圧作戦「森林開拓」の概要をも
知悉してらっしゃいますね?』
『あぁ、あぁそうとも私はよく知っている』
「んん?そうなの?」
「リンクしている事柄なんですね」
『ではお聞きします
ホプルは贖罪兵計画が必須なほどの相手ですか?
帝国門を各所に配置する必要がある相手ですか?
帝国ひいては人類の存亡の危機を覚える相手ですか?』
『あぁそうとも、答えは否だ!!断じて否だ!!』
「はぇ~そうなんだ」
「やっぱりかぁ~」
『しかしプリプリ時空神は必要とおっしゃる。
つまり、それの意味するところは?』
『他にいる!!必要な相手が他にいる!!』
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
『その上でお聞きします。
ホプルの初接触時の行動を覚えていますか?』
『あぁぁぁぁ……思考誘導魔法……』
『そうです、知的生命体を
奴隷的共生相手を求める文明なのです。
そんな純マナ文明なのです』
『なんたることだ……』
「「「「「「「「「まさか……」」」」」」」」」
『科学とマナを両立する我々は抵抗できましたが、
マナの存在すら知らぬ純科学文明であればどうでしょう?
それが星間文明であったとしたら?』
『なんたることだ……なんたることだ……
それなら全て必要足りうる……むしろ不足すら感じる……』
「怒涛の暗雲」
「おいおいそれはヤバいだろ」
『そしてここで歴史の狭間に棄却された事実が意味をもちます。
西暦2445年の宇宙人類のマナ生成量は地球人類1000人分ほどでしたが、
西暦3261年の宇宙人類のマナ生成量は地球人類10人分ほどだそうです』
『なんですと!!地球人類とたいして変わらないではありませんか!?
そっそれでは到底マナ文明を維持しえないっ!!』
「はぇ?そうなの?」
『そうだ、それを予見したがゆえに父祖は我らを創造した』
『始まりの1人!?歴史公!?』
『うむ、この我が先の事実を委員長に教授した。
そして我がこの事実を棄却した、父祖らの名誉を守るためにな』
「歴史公!?この幼女端末が始まりの1人!?」
『そして我らが創造されていなかった場合、
おそらくは宇宙人類単独であろうとも生み出したであろう、
高濃度マナ生態系に頼り切りになりますね?
何かに似ていませんか?』
『あぁぁぁぁ、それがホプルの出自であると!?』
「はぁ?そういうことっ!?」
「マナを喪失して奴隷化した異星人の置き土産!?」
『おそらくはそうです、ホプルの種族変遷回数が多すぎる上、
ホプル過去分アカシックレコードの始まりの向こうに在るようなので、
未だ、立証はできていないのですが』
『ホプル自体が別種異星文明の傍証になりうると……』
「暗雲凝縮」
「うむむぅ」
『そしてこれも歴史公にご教授いただいた仮説になるのですが、
我らがマナ文明を保持しえたのも、
地球人類と宇宙人類が地表を持たなかったがゆえと』
『なんですと!!それはいったいどういう理屈で!?』
『地表があった場合、双方の人口比は逆転しない、
むしろ宇宙人類は少数派のまま歴史の狭間に消えたろう。
あの程度のマナ生成量では、
想定される人口比をあの時代に覆す力にはなりえない。
そして一度、マナ発現した系譜が再発現する事実は、
宇宙人類に一度として確認されなかったのでな。
我はそう推察している』
「なっなるほど!!」
「おいおいおいそれはとてもヤバくないか?」
『つまり、科学とマナを両立する文明以前に純マナ文明ですら、
この列挙されたハードルを何らかの手段でもって越えなければ、
文明として成立しません』
『それは……まるで逆説的に……宇宙の大半の異星文明は、
マナに無防備な純科学文明であることの傍証ではありませんか……』
「銀河上面に広く点在……するホプル……」
「既にホプルに奴隷化された異星文明が在っても……」
「暗雲ビッグバン」
『プリプリ帝陛下を中心とした我々が、その境地に至ったのは、
西暦5110年魔導帝国歴1510年頃ですね。
過去分アカシックレコード接続技術獲得から2年くらいです。
あとは我々にとって傍証の積み上げでしかありませんでした』
「そんな時『いやもうそっからは!!ほんとに大変だったんだ!!』ふぁっ!?」
『そうです!!今もってあの業務量は!!ありえません!!』
『あっハイ』
『わかります!?ただでさえそれまでも!!
50年1基建造ペースで!!富国政策も同時並行だったのに!!』
『なぜか!?6時帝国門から30年くらいで完成しはじめ!!』
『2時4時8時10時に至っては2基同時なのに!!
それでも何故か30年で!!完成しちゃう!!』
『いろんなものをかき集めてもかき集めても!!
送る前から足りないの催促!!』
『そしてまたじりじり減る根源マナ残量!!そうまたしても!!』
『もうやってらるれるかと!!もう梱包もせずに帝国門で!!』
『現地に直接!!部材撃ち込んでやったんです!!女帝権限で!!』
『大喝采ですよ!!画期的だと!!』
『違うだろ!!そうじゃない!!やめろ!!非常識を前提にするな!!』
『そう!!またしてもアイツがやりやがったんだ……プリプリしてなかったのに……』
『おっお疲れ様です?』
「心の休息地、プリプリ劇場開演」
「そして帝国門……」
『そういうわけで、かようなプリプリ時空神の助力もあり
当面の目標の最後の0時帝国門に手をつけた時でした』
『まだ……何か?あるんです?』
『帝国門には事故を防ぐため相互に位置座標を認識し続ける
そういった機能があるのですが』
『ほう、そういった機能が』
「ふむ?」
「なんだ?」
『それが8基になった時に起動する変な術式が
何故か?8基全部に混入してました』
『……何故か?ですか……』
「高まる上位存在の気配」
「なにをしでかすんです!?」
『術式自体はプリプリ帝陛下個人にメッセージが届くだけの
とてもとてもささやかなモノなのですが』
『なっなるほど?』
「あぁはっきりと感じる」
「コレが上位存在の気配……」
『こちらが原文ままのものです』
「きたな……」
「きました!!」
『よくやった!!さすが稀代のリアクション芸人!!
発帝都帝国門 宛プリプリ帝』
『笑いを取りながら人類も守る!!かっけぇぇぇぇ!!でも憧れない、ムリ
発北天中央帝国門 宛プリプリ帝』
『退位した後の目標は結婚だな!!先帝と先々帝はしとるぞ!!
発南天中央帝国門 宛プリプリ帝』
『だが……できるのだろうか?帝国と同じく難局を迎えるな!!
発6時帝国門 宛プリプリ帝』
『そこでだ!!笑いの神から!!
発4時帝国門 宛プリプリ帝』
『そんなプリプリと!!帝国に!!ささやかな餞別だ!!
発8時帝国門 宛プリプリ帝』
『このメッセージ全部を「周囲のみんなで」必死に解析すると!!面白いことがわかるぞ!!
発2時帝国門 宛プリプリ帝』
『シリアスは勘弁!!それ我死んでまう!!じゃぁな!!がんばれ!!楽しかったぞ!!
発10時帝国門 宛プリプリ帝』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『………』
『しくしく……』
『これが転移用異空間「道」の根幹理論です』
『……プリプリ帝陛下……お疲れさまでした……』
『……うん……』
「「「「「「「「「あんまりだろ……泣いてるじゃないか」」」」」」」」」
『さてプリプリ帝陛下が意気消沈したところで続きです。
ついに我々は明確な返答を上位存在に頂いてしまいました』
『確かに……文面スタイルはアレだが……これは託宣といえる……』
「平然と進行……」
「さすがは神に認められし脚本家……」
『神から見て帝国に難局が到来することは確定事項です。
回避難易度は神に寵愛されていた事実が巷の常識になっている。
プリプリ帝を娶る人物が見つかるかどうか?というレベルということです。
プリプリ帝にはぜひとも乗り越えてほしいものです。
帝国の希望の為にも』
『ぐっふぅぅぅ……』
「その追い打ちは……とどめにはなりはせんか?」
「だがわかりやすい……」
『その上でプリプリ帝陛下が、
ティネム陛下を次代に選ばれた理由を
ご説明しましょう』
「ほう?」
『委員長閣下が?されるんですか?』
『プリプリ帝陛下はご心労が極まっているようですので』
『さっさようで?』
「あっ、うん」
「とどめさしたの委員長です……」
『プリプリ帝陛下が次代先帝で最重要視されていたのは、
贖罪計画に対する姿勢と貢献度です。
具体的には他項目と比較し1000掛けされてました』
『はっ?』
『ですので、ティネム陛下が次代皇帝に内定したのは、
シングルナンバーの方々の策謀によるものではなく、
真にティネム帝陛下の行動に依るものです』
『そっそうなのですか?』
『えっ!!誰も何もしてないの!?』
『てっきり!!誰かが動いたのかと!!』
『むしろ!誰なのかを特定しようと必死だったのに!?』
「……これは意外」
「確かにな、前回が前回だけに」
『少し物足りなくはありますが、そうです、誰も動いていません。
9位にティネム帝陛下の副官がおられるのもそういうことです。
他の方も覚えはありますよね?
1580年から1590年に継承資格のあった皇族全員に、
参加の意思を問いましたから』
『それほどに重要視していたと』
『そうです、貴方方もある程度はご存じですよね?
グルームブリッジ1618
元「鬼門」包囲封鎖研究要塞「閂」
現「贖罪兵研究本部」を頭上に仰ぎ見る
故共和国首都星の第3惑星「民主の星」
その全地表を使用した贖罪兵戦力化実験場
その異名
「帝国の人工内戦領域」
「プリプリ帝唯一の汚点」
「帝国地上軍の実戦演習場」
その理由について』
「えっなにそれ怖い」
「またグルームブリッジか」
「民主の星だったんですの?共和国首都名」
「叩き落とされたなプリプリに」
しかしまぁ不穏な異名ばかりだな…
『はい、曰く10万人の試験運用1周年を迎える直前に、
10万人全員に反乱され一人残らず殲滅することを強いられた』
『曰く3年目でも同じことが起きた、2年間に伸びたことだけが改善点』
『曰く6年目でも同じことが起きた、3年間に伸びたことだけが改善点』
「ふぁっ!?俺らの先輩になにが!!」
「うぇっ!?壮絶なことになっとるんですが!?」
「改善点ソコだけですの!?30万殲滅して改善点そこだけなんですの!?」
異名以上に酷いことになってやがるなぁ…
この状態でも計画継続って管理する側される側…
双方とも地獄だろに…
『全て事実です、まさに惨憺たる有様ですが、当初予定どおりです』
『予定通り!?』
『なっ!?それは私でも知らない事実ではないですか!?』
『そうです、長らく贖罪兵研究本部におられた
ティネム帝陛下にも知らされておりません』
『では!?どう予定通りなのです!!』
「事実!!」
「予定通り!?」
「まって!!なんで隠されないの!!」
「そうだ!!なぜ俺らに知らせるんだ!?」
まてまてまて…人工内戦領域って…ガチかよ…
『端的に言えば、試験運用などできようもない段階で
あえて試験運用を開始した
こうなって当然、ということです』
『なっ!?なぜそのような!!』
「わざと!?」
「わざとかよぉぉぉ!?」
「……ティネム帝も激オコ」
まじかぁ…そこまでやるんかぁ…
『次代選定のために制御可能な戦場と難題を欲したからです』
『そんなことの為に!!』
「試験場!?試験場なの!?そんな意味で!?」
「ふうぁ?マジっすか?マジなんすか?」
言い切りおった…
『残念ながら、その表現は不適当です。
プリプリ帝陛下は人類の足枷になるとご自身が判断した、
罪なき独立民主派を根こそぎ抹殺した方です。
人類存続のためにならば人工的な戦場の創出程度など、
厭うような甘い方ではありません。
次代選定にどれだけ苦慮しているかの証左でもありますが』
『ぐぅぅぅ、確かにそういわれてしまうと……』
「あぁぁぁだったぁぁぁぁ」
「すぐプリプリの異名にだまされるぅぅぅ」
「コイツは平然とこういうことができるやつだったぁぁぁ」
そして贖罪兵新兵たる俺らに隠さないということは…
『次代選定自体は魔導帝国歴1550年から、
既に始めていたのですが進捗は皆無でした。
理由はあまりに次代が直面する難局が重いからです』
『うむぅぅ、……手段はえらんではおれないと』
「おおぅもう」
「オレ等の先輩らの命は供物……」
「邪神召喚かなにかですか……」
つまりはいないから…強引に育てたと…
『そうです、たかだか数十万程度の死など、
気に掛ける余裕はなかったのです。
それが反乱する贖罪兵であれ、
鎮圧する帝国地上軍兵士であれ、
同じことなのです』
『我々は、既にそこまで追い詰められているのですな……』
「えぇぇぇぇ帝国地上軍兵士も供物扱いぃぃぃ?」
「ぬぅぅぁぁぁまじかぁぁぁ」
あぁ…そうか双方か…なるほど…
『そもそもが反乱して当然の計画なのです。
帝国が国民諸共滅ぼした連合の国民、
もしくは連合成立以前の
帝国と対極にある人権と博愛平等を愛する地球人類。
これにマナを運用させる都合上、
自由意思を大きく縛れない制約の元で、
戦力化を検討せねばならないのですから』
『……そうでしたね』
「当時は自由意思あったんだ?」
「えっそれは?」
「当然?壮絶なことになる?」
あぁぁぁ…その制約下であれば…そら酷いことに…
なってあたりまえなのか…
『割と誤算だったのは連合成立前以前の地球人類です。
帝政である帝国にあれほど大多数が拒否反応を示すことは、
残念ながら予見できませんでした』
『古代の血統帝政や血統王政と
神権国家体制に宗教国家体制、
それらの劣化焼き直しである一党独裁体制等と
混同されがちですからな。
帝国の帝政の本質が、
個人寿命1000年と帝国時代後期から一貫した教育役である、
建国期を支えた元人類の最古参魂魄式AIのお歴々がいて、
はじめて成しえる民主政体の後継新政体であることに、
自ら気づける人格再現者はかなり少ないのです』
「あれ?ティネム帝?すごい理解してない?」
問題の本質を的確に理解している?
いや…理解する経緯があった?
『我らが父祖は常々おっしゃっておられた、
名君さえ安定供給がなされるならば、
民主制の欠陥は帝政で全て解決できるのだ。
ならば安定供給できるシステムを構築し、
そのシステムを構築する者全員の寿命を延ばせばよいのだ。
マナがその荒唐無稽な理想に至る突破口を開いたのだ。
そう何度もおっしゃっておられた。
だが、その境地もそこに至るまでの歴史があったがゆえだろうな』
『そうですな、であるからこそ歴史から教える事が肝要だったのです』
「えっもしかしてこの教育も?ですの?」
贖罪兵運用制度の基礎を築き上げた皇族?
築き上げた?どうやって?
『帝国に貴族制度があると無根拠に判断されている事例も
多数に上ると報告を受けています、そうとうに酷いのですか?』
『多数ではなく殆ど……ですね。
流石は個人主義が極まった末に、
全人類の地表居住権を物理的に喪失した世代というべきでしょう。
己が定める権利を侵害する存在として、
どうしても帝国を捉えてしまうようです』
「あれあれ?身に覚えが?」
そう言える根拠を数多く得た経験が?
それも主観情報で?
『そしてティネム帝陛下はまずは歴史を教え、
その反応から2種に別けることを魔導帝国歴1595年40才の時に思いつかれた。
魔導帝国歴1585年の贖罪兵研究本部赴任から10年ですね』
「そこもなんですの?」
度重なる反乱も幾度となく鎮圧している猛者?
相手は教え子?にならんか?
『そうです、費用対効果と実現性から、そうせざるをえませんでした』
『以降は帝国に非協力的な人格には、
如何にマナ運用力を損なわずに自由意思を縛れるか?
という命題の研究を推し進めつつ、
帝国に協力的な人格には、
帝国に抗うことの危険性と帝国に従うことの利点、
これをどうすれば効率的に叩き込めるか?
という命題の研究を推し進めた。
そうですね?ティネム帝陛下?』
『そうですな、その通りです』
「そして割り切りが……」
「あぁ割り切ってるな」
『その結果として、
魔導帝国歴1595年以前は小規模も含めれば、
年100件前後の反乱実績を誇っていましたが、
1605年には年1件にまで減り、1651年までの50年で5件、
つまり1606年から今年である1651年においては0件ですね』
『そうですな、そうなりました』
「劇的……」
「あぁ劇的だ」
『ではティネム帝陛下にお聞きします。
1585年の贖罪兵研究本部赴任から1605年までの20年間、
貴方はその間、何件の反乱に相対しましたか?
いえ、ココはもっと直截にお聞きすべきでした。
貴方はその間、同僚であり戦友であり親交のある友人でもある
本部研究員と帝国地上軍軍人を何人戦場で喪いましたか?』
『っ!!!?』
「あっ立場的にそうなるんか」
「あっそうですね、当人視点では当然そうなりますわ……ね……?」
「……えっ?……」
『貴方はその間、自らが手塩に育てた生徒でもある贖罪兵を
戦場で何人その手で処断しましたか?』
『っっ!!』
「あぁぁこれ……は……」
「当人……視点だと……」
「……壮絶な……」
『貴方は何故?予定通りという答えに義憤を憶えたのですか?』
『っっっ!!!』
「あぁぁぁこの人は……」
「この方は……」
「……この人を生み出す為の贖罪兵戦力化実験場っっ」
「この人に?……あの数を……送らせる……のか?……」
そう…あの数だ…あの人数なんだ…
『貴方は何故?その直後の政体談議に冷静に応じたのですか?』
『っっっっ!!!!』
「うぁ……まじかよっ……やめろよおい……」
「まってくれ……ちょっとまってくれ……」
「この方に?……あの数を……看取らせるん……ですの?……」
…だから…隠さないのか…
『貴方は何故?皇帝継承順位ランキングを
1586年から一度も見ていないのですか?』
『っっっっっ!!!!!』
「あぁぁぁぁそんな初期からぁぁぁぁ」
「やめてくれぇぇぇその先は知りたくないぃぃぃ」
「よりにもよってぇぇぇこの人にさせるんかよぉぉぉぉ」
「……ふっぐぅぅぅぅぅ」
『貴方は何故?いまもなお全身全霊でもって取り組んでいるのですか?』
『っっっっっっ!!!!!!』
「やめろぉぉぉいうなぁぁぁ!!」
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!」
『イルブレム・スフーム陛下が!!いえ我々!!今代が!!
貴方を!!贖罪兵に!!母とよばれる!!貴方を!!
選んだ理由は!!其処です!!
其処しかありません!!
其処しか見ていないのです!!』
『ぁぁぁぁぁぁああああああ!!』
「「「「「「「「「ぁぁぁぁぁぁああああああ!!」」」」」」」」」
『それが不屈の女帝の由来だティネム・スフーム、
余は長きにわたりその由来が維持されることを期待する。
それのみが汝の愛する戦友達と教え子達を救う手立てでもある。
例え、それが戦友達と教え子達を汝自身が、
幾度も死地に向かわせることになるとしてもだ』
『わかっていてっ!!なおっ!!恨みますぞ!!イルブレム陛下!!』
『当然だな、余は虐殺者であり自儘な断罪者に過ぎないが、
少なくとも自らがそう望んだからそうなった余とは汝は違う、
汝は強いられるのだからな、
このイルブレム・スフームが名付けた、
ティネム・スフームという名に』
「「「「「「「「「ぁぁぁぁ……」」」」」」」」」
『そしてそれを強いた我ら今代の責を
上位存在検証委員会、委員長である私が既に負いました。
帝国の新たな人柱として魂魄式AIに加わりました、
検証公です、以後よろしくお願いします』
『っっっっ!!貴方方は!!そこまで!!されるのかっ!!』
「「「「「「「「「ぁぁぁぁ……」」」」」」」」」
『我らプリプリ劇場の面々はなることはできんそうだ、
そこにシリアスを持ち込むと、
プリプリ時空神の不興を確実に買うと言われてはな。
確かにその通りだと我らも納得するしかなかった。
そこの脚本家だけがなることができたそうだ。
表舞台に一切出なかった理由はソレで……だそうだ。
またしても……同志リーダーにしてやられたよ』
『………なんと……なんと……』
「「「「「「「「「ぁぁぁぁ……」」」」」」」」」
『ふむ、一通り理解したようだな?次代の諸君?
では検証公?』
『はっ!上位存在寵愛甘受者から次代女帝に、
上位存在よりの託宣という名の警句が確かに伝えられたこと。
その事実が最古参魂魄式AI全員のデータベースに記録されたこと。
いまここに1450年振りにロールアウトした初の新世代魂魄式AIである、
この検証公がご報告します』
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
『うむ、言葉もない次代の諸君には時間が必要だろう。
ゆえに諸君らの予定は一か月ほどダミースケジュールで埋めておいた。
よくよく考え話し合ってみるとよい。
では以上だ!解散!!』
「諸君らもだ、
自室にもどって一晩休むがよい。
明日は休日とする。
また各自起床後は施設内での自由行動と
各自の個室の相互訪問も許可する。
施設内見取り図と
西暦5250年魔導帝国歴1650年時点の
帝国国民公知情報も閲覧可能にしてある。
そしてトワニ配属の新人贖罪兵は、
全て2010年から2020年に日本国民であったことを
最終記憶として保持している。
そしてそれは元人格の死を意味していない。
人格再現時点以降の記憶は保持していないだけである。
参考にするとよい・
以上だ、解散』




