第130話 最初から叩き込むにはということですかねえ
「ともあれだ、帝国本国軍人の士気は常にして問題なかった
だが通信封鎖戦術の都合上、本土艦隊に暫く出番がないことも確かだった」
「それはそれで…問題では?」
「そう…まさに大問題だった…
だがそれは即応戦力…徒に動かすわけにもいかない…」
「だよなぁ」
「そしてそんな存在は667番星系にもいた」
「うん?」
「風林火山含む16隻の20M級独行艦」
「あっ!?」「確かに!」「ちょー影薄い」
「そして続々と増えるが要塞ブロック投入待機中は暇している拠点艦16000隻超」
「そうか…地上戦は常にブロック投入が起点になるのか」
「ということは戦闘自体の生起を決める主導権は帝国にある…」
「ならば?激戦を都度戦い抜いている地上軍の為にも?」
「そうだな…合間を空けるな…」
「そして地上戦中の拠点艦の任務は?」
「砲弾迎撃と地上軍支援ですわね」
「この3群をどうするか?この3群の特色を考えればすぐに答えは出た」
「新兵ばかりの拠点艦…」
「防衛戦闘ばかりとは言え歴戦の本土艦隊…」
「単艦で20Mの功績ポイントを敵中で叩き出した猛者…」
「そうだ、教練だ、教練実習機を用いたあらゆる状況の教練だ」
「なるほど、普段ならばその3者が揃って時間が空くことは…」
「そうそうあることではないですね…」
「特にコマインとの戦闘に知悉している16隻だ」
「普段なら多忙ですものね…」
「アグレッサー…教導役として最高の人材だな…」
「その教練、規模状況に違いはあれど概ね共通した点がある」
「それは?」
「参加する20M級がまずは二手に別れる」
「というと?」
「コマインの艦隊を指揮するのが一方、
そしてもう一方がその他全部だ」
「20M級が手本をみせるのか?」
「そうだ、新兵ばかりの拠点艦は当然、
歴戦の本土艦隊も寡兵での戦闘はあまり経験はない」
「なるほど、本土艦隊にも得られるものがあると」
「遅滞戦本番になれば強襲独行艦との連携が不可欠になるからな、
彼らの流儀に慣れるのも目的だった」
「あ~かなり癖が強そうだもんなぁ」
「本番までにソレに慣れると…」
「ウタの地上戦教練対応と違いCICの機能で可能だからな」
「あー新たな手間も全くかからないのか」
「次はその1幕を見てもらおう」
『ほぅ?風林火山がアグレッサーか?武神殿も?』
『おられるみたいですよぅ?』
『これは幸運でしたね』
『なんでいるんですかねぇ…門番長に次席3席…』
『司令、申し訳ありません…たまには見せろと…』
「いるのかよ…」
「門番長…」
『かかか!我らが寝床の安全?確認すべきだろ?
そうは思わんか?なぁ昼行燈?』
『はぁそう呼んでくれる貴重なお人ですからねぇ、
普段使ってない6席もありますから好きにどうぞぉ?』
「そうなのか?」
「あぁ拠点艦のCICは12席あるからな」
「なんでまた?」
「規模が規模だからな?一時的増強枠としてそうしている」
『恩に着るぞ?しかし手狭だな?とても拠点艦のCICとは思えん』
『これが我が家の流儀というやつですよっとぉ』
『元々は何なのだ?』
『我らの生前に在った、作戦指揮所というものですなぁ』
『指揮所?のわりにはあまりに幅がないが?』
『往時の航空機に設置されていたモノですからねぇ』
『なるほどな?あの細い機体に押し込めばこうもなるか』
『おや?ご存知で?』
『参拝時の再現戦場で何度かな?』
『あ~そこですかぁ納得ですねぇ』
『では空いてる席に陣取らせてもらうとしよう』
「これは?」「単に各班の趣味だな」
「VR空間だからか…」「そしてコレを選択したと」
『さて、我々の記念すべき初模擬演習の要点をまずは副指令?』
『では、プリサイス准将がおっしゃられた通り哀しいお知らせですよぅ、
ウタin風林火山が相手です、最悪ですねぇ、
あの巨砲を撃つのがウタです、ほんと最悪ですねぇ』
「あー射撃の名手でもあったかぁ」
「これはまた…」
『実に哀しいお知らせだねぇ、ではレイ君?』
『ほな、逆にこっちは嬉しいお知らせやな、
味方の強襲独行艦は”龍虎同眠”や、
100G体現先駆者、ハム派のみならず強襲のトップエースやな』
『有名ですし数字も知っていますが…
どうしてそんなことできるんですかねぇ?』
『あまり目立ちたくないんか?
過去の実況映像閲覧制限かかってるんよ?』
『100G体現艦は全班そうなんですよね?』
『せや、全艦がそうなっとる』
『となると?』
『せや、初公開になるんや』
「ハム派なの?」
「そうだ、辻斬りは検証派、100G体現艦は私の教え子達だ」
「ほぇ~」
『まぁそれは実際に見せてもらうとして、こちらの編成は?ケント君?』
『はっ!こちらは第5本土艦隊を基幹に我が第161防人統合艦隊です』
『ふむ、それだと我らが前衛で本土艦隊が後衛になりますかねぇ?』
『おそらくは、麾下艦艇は逆になるかと』
「拠点艦が盾に?」
「最も防御力が高いからな?とはいえ?
隙間を縫い後衛の戦列戦艦を狙ってくるんだがな」
「結果的に分散するんですね」
『争奪戦中期の頃からの鉄板配置ですからねぇ、では相手は?ヤス君?』
『3個大艦隊でやす、特に留意すべき特色はないでやす…数以外は』
『2個じゃなく3個でくるとはねぇ、厳しいよねぇ』
『初回からでやすから』
「戦力比でも1.5倍相当ということか」
「寡兵戦闘訓練というわけですのね」
『最初から叩き込むにはということですかねえ、ではヨミ君?状況は?』
『撤退戦…です、12時間後に来援する6個大艦隊…その到着までに、
目前の3個大艦隊を…殲滅し…緊急転移…しなければ…』
『つまり6時間で3個大艦隊を殲滅して?逃げろということですかぁ』
「遅滞戦本番の訓練か…」
「そういうことだな」




