第123話 彼らにとってはここからが本番だ
『さて3か所同時でしたね?』
『そうです、中継は第1伏撃隊です』
『では、音声は隊内通信としましょう』
『はい、仕掛け役はこの種の任務を得意とする、
10M級強襲独行艦"アンブッシュシーカー"です』
『では…人類の防人、その最前線…確認させてもらうとしましょう』
『はい…』
”『こちらシーカー、ウルフ1から99へ閉じた瞬間から作戦開始だ、暫しまて』”
『出てきましたね』
”『こちらシーカー、敵は全てゲート天頂方向だ、まだだ』”
「あの中央の黒い球状の表面からでてくるのか」
「そうだ、球の表面自体がゲートそのものといえる、
入る時も出るときもソコだ、中ではない」
『そろそろですか』
『閉じ始めましたね』
”『こちらシーカー1、想定+10秒だ修正して減速を開始する、
全ウルフも減速開始点を再計算し順次減速せよ』”
「減速?」「えっ?じゃぁ加速は終えてる?」
「そうだ、シーカーはすでに8光秒は切っている、その速度は0.01光秒だ」
「そこからさらに減速?」
「そうだ、0.001光秒までな」
『作戦開始ですね』
『シーカー1の初撃に全てがかかっています』
『40分ほどですか…』
『えぇ、シーカー1の幸運を祈りましょう』
「えっ?そんなに?」「潜伏したまま?」「何処に出るんだ?」
『そろそろですね』
『…はい』
”『こちらシーカー1、もうすぐ予定点だ、
全ウルフの最優先目標は照明だ間違えるなよ』”
「ん…なんか聞いたことがあるフレーズだぞ…」
「最優先が照明?」
「え?対策されてるんじゃ?」
”『こちらシーカー1、さぁ始めるぞ!!4号起動!!』”
『思考加速入れましょう、うまい位置につけました』
『はい、照明の大多数が戦列砲艦の影ですね』
『すぐには撃てませんでしたね』
「は?」「近っ!」「すぐ傍じゃん!!」
”『全ウルフ!!姿を現せ!!射撃開始だ!!』”
『初撃は成功…』
『次の正念場です、ここでシーカー1の未来が決まります』
「うわっ!囲んでいたのか!!」
「またこれは派手な戦闘に…」
”『ぐぅぅ!!やはりきちぃぃぃ!!4号起動!!』”
”『ふんばれ!!シーカー1!!70隻は落とした!!あと1130隻だ』”
『やはり…再起動が早い…』
『だいぶ精度は落ちているようですが』
『シーカー1マナ転化許容量30%もってかれましたね』
「うわぁ…」「めっちゃ狙われとる…」「照明全艦が狙ってる…」
”『ぬぅぅくそっ!!もたん!!4秒間隔を3秒間隔にするぞ!!ウルフ覚悟しとけ!!』”
”『まじかぁ照明は墜としきっても突撃艦がぁ!!』”
”『照明がないだけマシだろ!!弱音を吐くな!!』”
『其処を改善してきましたか』
『これはまた厄介な…』
「コマインもわからないなりに…」「試行錯誤を重ねているのか…」
”『3秒間隔でもか!!だがギリギリもつぞ!!』”
”『ふんばってくれシーカー1!!2秒間隔じゃ残りすぎる!!』”
”『しかたあるまい!!ふんばってみせよう!!』”
『なんと3秒でもですか…』
『こうなると…』
「その試行も…」「的確なトコを突いてくる…」
”『ちぃぃぃ!!戦列砲艦の射線軸合わせ!!微々たぁいえ!!やれているじゃないか!!』”
”『戦列砲艦もか!!相変わらず!!的確だろうが!!』”
”『おまえらも!!よくよく!!場所は選べよ!!』”
『まさか戦列砲艦までも…』
『そんな…』
「まじかぁ…」「あのサイズのシステム3秒内に…」「起動してくるんかぁ…」
”『だが!!できていないな!!』”
”『ああ!!そうだできていない!!』”
”『ならば続けるまでよ!!』”
『やはり、そこは短縮化できなかったというわけですね』
『つまりは…今後もコレを続ける価値があると…』
「なにができていないんだ?」「これをするだけの価値がソレに在る…?」
”『いまだ!!通信の!!発信!!ないな!!』”
”『ああ!!どいつもこいつも無言だ!!』”
”『はっはー!!無言のまま!!沈むがいい!!』”
『最優先と考えて当然で、なおできていないのは単純化が厳しいのでしょうね』
『通信ともなるとどうしてもやり取り量が増えるからですか…』
「あぁ…そのためか…」「4号で通信を阻害する為なのですね…」
「そうだ、すべてはその為だ」
”『ほう!!撃ちおった!!』”
”『2隻だ!!たいして狙えてない!!』”
”『そんなもん!!副砲16基のシーカーには通じん!!』”
『多いですね…ほんとなのですか?』
『はい…標準主砲2基の副砲16基です…』
「ハリネズミじゃないか…」「どんなコンセプトだよ…」
”『よし!!安定してきた!!』”
”『残り!!520隻!!』”
”『そろそろ!!ウルフ99と98は!!準備に入れ!!』”
『峠は越したようですね』
『ですが次は……』
「まだあるのか山場…」「何をする気ですの?」
”『ふぃぃぃぃ!!さすがに!!しんどかったぞ!!』”
”『ウルフ99と98!!待機領域に向けマナドライブテイクオフ!!』”
”『だが!!なんとか!!乗り切れ!!そうだ!!』”
『ここまでくれば、彼等でも出来る筈です』』
『全員生還…して欲しいです…』
「ん?離れたぞ?」「2隻で?」
「彼らにとってはここからが本番だ」




