第122話 まさに見ればわかるというやつさ
「かように平穏な日々を送っていたわけだが?
勿論、全てがそうであるわけもない、
当然だ、我らの戦争は種の存亡を賭けた殲滅戦争なのだから」
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
『強襲独行艦司令部より作戦通達です』
『拝見しましょう…あぁアレを3か所同時でやるのですか』
『多少の犠牲は覚悟の上…ですか…』
『仕掛け役は10M級1隻、残りは2.5M級以下99隻…
それが3群…出ない筈がありませんね…』
『つまりは3個小艦隊ですか…相手は…』
『”ついては想定射耗分の追加調達願う”ですか』
『追加調達については問題ありませんね』
『初回直後に増産を依頼しておいて正解でしたね』
『エンデュア強襲独行艦司令部長官も苦渋の決断でしょうね』
『2.5M級、強襲司令部麾下では新人ですが…』
『本土艦隊や防人艦隊ではトップエース級ですからね…』
『そう易々と補充できる人材ではありません…』
『しかしそれでもなお…』
『それだけの価値があるとのご判断でしょう』
『彼方此方で行われている通信ゲート展開に対する対応…』
『それも含めて今しばらくは強襲独行艦が支えねばなりません』
『せめて通信ゲートだけでも肩代わりできないのでしょうか?』
『厳しいでしょうね…彼らはいちど宇宙軍の”盾”で懲りてますから』
『そうでしたね…そうでした』
『とはいえ、今後は母数が大幅に増えます、
それがゆえの決断でしょう』
『そうですね、そうなりますね』
『カーム、作戦前後の予定、開けてもらえますか?』
『特に問題はありません、喫緊の問題もありませんから』
『では、人類の防人、その最前列…見ておきましょうか』
『…はい』
「アレで呼称されるもの…」
「不穏すぎる…」
「まぁ見ればわかるぞ?」
「2.5M級が多いの?」
「うむ、侵攻にあたり、だいぶ増員をおこなった、
特に強襲司令部の要請に防人艦隊が協力し実現した、
かわりに防人統合艦隊の歴戦班がだいぶ減ることになったがな…」
「それ大丈夫なのか?ただでさえ拡充で薄くなってるんだろ?」
「正直にいえば、全くもって大丈夫ではなかったが、
転属を侵攻直前まで待ち、練成にギリギリまで尽力してもらうことで、
まぁなんとかギリギリのラインにもっていけた」
「それで実戦経験班が3班しかいないトゥーロンのような事に?」
「そうだ、籠城戦期間中は宇宙軍に、
それほど実戦機会がなかったことも大きいがな?」
「そうか、実戦経験がある…それは生き残った者…」
「そうだ、その者はその時点で概ねトップエース級なのだ」
「その人たちの艦は?」
「2.5M前借艦を用意させられた…」
「2.5M前借…どんなだ?」
「この追加変更内容で用意させられた…アヤツに…
50G耐機動性艦殻スラスターセット500,000点
巡洋艦(8光秒)級極小ゲート生成式測位アンテナ1基100,000点
電磁波吸収フィールドジェネレーター4基1200,000点
巡洋艦級艦首砲1門200,000点
駆逐艦級連装旋回砲塔2基200,000点
各種実体弾保管庫+300%追加300,000点
以上で2.5M功績ポイントだ」
「50G機動か…」
「これまでの経験でなんとか量産できた…
が、やはり戦偵巡の5倍のコストがかかる」
「電磁波吸収時も50G機動か…」
「ここは大揉めになったが、他を諦め最終的に生存性をとった」
「1門だけ艦首砲…」
「妥協の産物だ、だがわりと出番も多くかなり有用だったようだ」
「旋回主砲より駆逐級副砲と弾薬庫…」
「通商破壊戦での戦訓だな」
「そしてアンテナ2本か」
「単独任務でその差はあまりに大きいからな」
「今も前借できるのか?」
「可能だ、生存性が違うからな、
殆どの者がこの前借艦から始めるな」
「そうなのですね」
「生存性が違うからな」
『司令、お時間です』
『そうですか、では見るとしましょう』
『こちらです、もうすぐ始まる筈です』
『彼らの星間航行手段』
『転移公曰く、あまりに強引な手段』
『光秒単位で広がるその手段』
『我らの転移がまだ幾分は控えめなのだと教えてくれる手段』
『ゲート生成転移航法」
『始まりましたね』
『そして…やはり変わらず大きいですね』
「ほんとに大きいな…」
「やはり艦隊用ともなると…」
「地上兵器降下用とはやはりサイズが…」
『作戦開始ですね』
『まぁ厳密にはコレが閉じてからな訳ですが』
『電磁波吸収が剝がれてしまうのでしたね』
『そういうことです』
『転移公の再現で?』
『えぇ、確認がとれています』
『厄介なことですね』
『この時点で近づければまだマシなのですが』
『それは不可能だと』
『どうにもならないようです』
『とはいえ?』
『そうです、時間と場所がここまで判明しているのなら』
『相応に準備ができますね」
『それがコレから見る戦いの前準備時間でした』
『人類の防人、その最前列…その戦いな訳ですね』
『カームは始めて見ますね?』
『…はい』
『気をしっかり持つのですよ?』
『…はい』
「そう言われてしまう程…」
「過酷な作戦なのか…」
「それでもしなければならない作戦…」
「そうだ、この作戦を行うに足る理由、それは在る」
「それは?」
「まさに見ればわかるというやつさ」




