第119話 どうやら違ったようですね…
「とはいえ、その時まではこういった平穏な日々だった」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
『平穏に時を過ごせるのは今だけ、如何ほどで帰ってくるのか?』
『見当もつかないわけですか…』
『全くというわけではありませんよ?』
『というと?』
『籠城戦期間中に水鏡範囲内で新規建造され、
水鏡範囲外に送られた816個大艦隊、
ただの1個小艦隊も戻ってきていないのです』
『えっ?全く戻ってきてないのですか?』
『えぇ、出ていったまま帰ってきてません』
『それはそれだけの必要性がある…そういうことですか』
『水鏡範囲内の年産20個大艦隊、それを生んでいた設備群は?』
『原始惑星の灼熱の海に没したか、質量融合弾の雨に砕かれました』
『その状況下の中で如何ほど戻せるか?という話です』
『どれだけ反対側の戦線から引き抜けるか…ということですか』
『少なくとも正面40個本土艦隊、総数100個が確認されている本土艦隊に対し、
あちらは205個大艦隊を置いていきましたね?』
『その状況であれば…おそらくは援軍枠は200個大艦隊が最大ですか…』
『ところが結節点4346番星系から先の星系と連絡が途絶』
『そして、連絡を取ろうと送り出した艦や小艦隊は…』
『ゲートが閉じた後に連絡が途絶する』
『そして4年後以降には通常電波で順次各星系の…』
『そう末期の声が届き始めますね』
『それは気づきますよね…』
『そうゲート展開先を何故か知られていると』
『しかし667番星系だけは守り抜きたい…』
『となれば?』
『数で押すしかありませんね…』
『おそらくは?反攻時には全戦力を固めてくるでしょう』
『なるほど、それが引き抜ける最大量…』
『結果的に反対側の戦線状態と造船力が朧気ながら?』
『見えてくると…如何ほどなのですか?』
『反対側が優勢で制圧星系の殲滅に手間取っているだけの戦況で、
年90個大艦隊の造船力があるのなら…9年後に1000個大艦隊』
『…1000個ですか…』
『かなり我々にとって最悪な部類の可能性ですが、
遅滞準備方針はこの可能性を基礎にしています』
『だから…初手から…置いていくのですね…』
『そうです殆どの星系を原始惑星だらけの不毛な星系にしたのも』
『1000個大艦隊を支える兵站線を…』
『強襲独行艦で蹂躙する為です』
『護衛が付き始めたら…』
『そうです、本土艦隊で蹂躙します』
『厳しい…戦いになりますね…』
『そうですね、カーム、その時に私たちが見送る者達は…
高確率で帰ってきません』
『それでも…なのですね…』
『えぇそうです、それでも送り出さねばなりません』
『はい…』
『その時まで、しっかりと接していくのです』
『……』
「これが皇族として指揮官としての指導風景なのだ」
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
(ぴこん)
『ほう?来客ですか』
『っ!?はい!そのようです』
『この司令官舎に来るのはかなり限られていますが…』
『ミーリング・レッドストライプブラックキャットクラン准将ですね』
『あーなるほど、ミーですか、さては暇してますね』
『どうされます?お通ししますか?ノーアポですけど?』
『遠いところをわざわざ来てくれたのです、通してあげてください』
『執務中ですが宜しいのです?』
『少し話したら寝入るでしょうから構いませんよ?』
『では、お通ししますね』
(かちゃ)
(すぅー)
(しゅたたん)
『イーリン~きいてほしいみー』
『ミー?どうしたの?』
『また赤狐に負けたみー』
『ん?確かもう師団全員で?挑戦してやると?』
『挑戦したんだみー』
『ソレって師団同士の話よね?ミー?』
『………違うみー』
『じゃぁ師団と大隊?』
『………違うみー』
『…じゃぁ師団と中隊?』
『………違うみー』
『……じゃぁ師団と小隊?』
『………違うみー』
『………じゃぁ師団と分隊なの?』
『………違うみー』
『…………まさか……師団と……1人なの?』
『…………そうだみー』
『まって?なにがどうなってどうなったらそんなことになるの?ミー?』
『ミーたち大隊1波単位でフェイクムーン波状攻撃を仕掛けたみー』
『まって?全員で?』
『そうだみー徹夜で考案し猛訓練で編み出した必殺戦術の筈だったみー』
『ねぇ?1人を相手に?なのよね?』
『そうだみーいかに奴といえどもーこれならーと考えていたみー』
『それでどうやって負けるのよ…ミー?』
『全ては奴の手の平の上だったのだみー』
『泣かないのミー、こっちいらっしゃい』
『うぅぅ、ありえないみー、マナ転化許容量制御しきって全部返されたみー』
『大隊正規兵…600人は超えてるわよね?』
『そうだみーあいつほんとに人類なのかみーそこにそんな着弾差はなかった筈みー』
『600本超の三日月…返されたの?』
『あんなでっかい光熱剣…躱すの無理だみー…どうやってあんな大きくしたんだみー』
『他の9大隊も?』
『猛訓練の成果だみー3秒で10波まで切り込めるようになったみー』
『凄いわね…よく頑張ったわねミー』
『けどみーけどみーあいつ笑いながら全部返してみーんな薙ぎ払ったみー』
『ねぇ?ほんとにソレは人類なの?』
『もうわからないみーありえないみーもうねるみー』
『そうね、おやすみ、ミー』
(Zzzzzz)
『司令…今の話…』
『えぇ、ローン大佐の秘蔵っ子、プリサイスの話よ』
『俄かには信じ難い話でしたが…』
『確か見れた筈ね、履歴から』
『見てみましょうか?』
『そうね、見てみない事には』
『出ました、映像出しますね』
(ぶぅん)
”『赤狐ー勝負だみー!!』
”『ふむん?なるほどそうか…』”
”『師団のみんなーやるみー!!』”
”始め”
(((((((((((しゅたっ)))))))))))
(((((((((((ふぉん)))))))))))
”『ならば…こう!!する!!までよ!!』”
(ぱっきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃぁん)
(ふぉぉぉおおおおををををぅん)
”『みぃぃぃぃぃ!?なにそのでっかい光熱剣!!ミー知らないみー!!』”
”『ふはははは!!さぁ躱して見せろぉぉぉぉ!!』”
(ごっばぁぁぁぁああぁああぁあああぁああぁああぁぁぁぁぁぅぅぅぅん)
”『ふぎゃぁぁぁ!!第10大隊のみんながぁぁぁぁなんてことだみー!!』”
(((((((((((しゅたっ)))))))))))
(((((((((((ふぉん)))))))))))
”『いまさら?止まれまい?』”
(ぱっきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃぁん)
(ふぉぉぉおおおおををををぅん)
”『あぁぁぁぁ皆とまるみー!!』”
”『ふはははは!!その技!!固めすぎだ!!』”
(ごっばぁぁぁぁああぁああぁあああぁああぁああぁぁぁぁぁぅぅぅぅん)
”『みぃぃぃぃぃ第9大隊のみんなぁぁぁぁぁぁ!!』”
(((((((((((しゅたっ)))))))))))
(((((((((((ふぉん)))))))))))
”『くくく、だがその信念悪くない』”
(ぱっきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃぁん)
(ふぉぉぉおおおおををををぅん)
”『みぃぃぃぃぃぃみんなぁぁぁぁ!!』”
”『ふはははは!!そうか退かぬか!!よかろう!!』”
(ごっばぁぁぁぁああぁああぁあああぁああぁああぁぁぁぁぁぅぅぅぅん)
”『ふぐぅぅぅぅぅ第8大隊のみんなぁぁぁぁぁぁ!!』”
(((((((((((しゅたっ)))))))))))
(((((((((((ふぉん)))))))))))
”『くくく、己の鍛錬信じ貫き通す』”
(ぱっきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃぁん)
(ふぉぉぉおおおおををををぅん)
”『あぁぁぁぁそんなみぃぃぃぃみんなぁぁぁぁ!!』”
”『ふはははは!!それでこそだ!!その上で!!
一切合切薙ぎ払ってくれるわ!!足りぬとなぁぁぁぁあ!!』”
(ごっばぁぁぁぁああぁああぁあああぁああぁああぁぁぁぁぁぅぅぅぅん)
『えっプリサイス…人類じゃなかったんですか?』
『どうやら違ったようですね…』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
「人の筈だ…人類の筈なのだ…その在り様はもう人でないかもしれんが…』




