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第11話 人類史上、もっとも成功した虐殺者の誕生だ

「さて次はだれかな?ん…第3分隊長だな」

おっこちらも初発言だな。


「あら、ありがとうございます、ではお聞きしますわ?

この共和国の件はどこまで作為的なものだったんですの?」

ほう?お嬢様枠できたか…

見た目はほんわか天然系なのに切れ味が高そうな…?


「ふむ……そう聞かれたならこう答えるべきか?

対地球人類戦経験者の子育て期終了の西暦3200から、

共和国滅亡の西暦4450年まで、が作為的な期間だな」

「は…い?」「ぅえ!?」

「最初の数字4じゃなくて3なの!?」「「「「「「……」」」」」」


「当然だろう?人類種存続の危機が芽生えたわけだからな。

人類種存続を至上命題とする帝国が放置するわけがないのだよ?

そんなわけで対処案は幾重にも用意してあったのだが……な?」


「でっでは、なぜあのような歴史に……?」

うんうんそれはすごい気になる……


「あ~なんだ?全部プリプリが悪い?

いや、そう仕向けたのはエメスルと側近にオレ等ではあるのだが……

あぁも突き抜けたのはプリプリ自身だからなぁ……」

「えぇぇぇどういうことなんですの……?」

ついにプリプリに略された3代目……


「最初はな、先達だけでなく同世代にもこの問題を

考えさせてみようと誰かが口走ってしまったんだ……」

「それ自体は真っ当な話ですわね…」

うんうん


「でだな、プリプリの前後10年分くらいの皇族は、

割と一般国民同世代に接する機会が増える配置にしたんだ、

特にプリプリはこの問題を監視把握する部署に、な?」

「なにもおかしいところはない……筈ですよね?」

うんうん


「オレ等もそう思ってたんだが……ギャップが大きすぎた……」

「……プリプリ?激おこプンプン丸?」


「そうだ、第10分隊長、そうなったプリプリは周囲の同志を纏め上げ

あの計画を練り上げて提出してきたんだ……

爛々と目を濁らせて言ってきたんだ…

ほらその時の映像だ……

『これで!!帝国は1600年後も戦えます!!

なんなら3200年後も戦えます!!

同じことを!!1600年後もすればいいんです!!さぁご決断を!!』

『わかった!わかったから落ち着け!!

今渡しただけで見る時間を渡してないだろうが!?』

『なら!!さぁ早く見てください!!そしてすぐサインを!!』

『ご決断の部分を勝手に略すな!?』

プリプリご本人だ……

実際、突き抜けてたとはいえ非の打ちどころが一切なく、

最も効果的な案だったからな?エメスルもオレ等もGOサインしたんだ。

怖かったし……」

「そっそれは……おつかれさまです?」

……いいのか?ハム公?初出の女帝像がプリプリで……

「なかなかない恐怖体験だったよ」

そんなに怖かったのか……

確かに全周囲に表示されたVR映像からは狂気を感じたが……

迫られるハム公視点だったしな……


「それであの歴史に向けて暗躍をはじめたと……?」

流れ的にはそうなるよな?

「普通はそうだよな?ところがそうはならなかったんだ……」

「えっ?計画GOサイン出てるんですよね?」

「うん、出した出した筈なんだ……

俺らも訝しんで進捗会議開いて聞いてみたんだ?

その返答がこちらだ。

『彼らには特に何もする必要はありません。

予算と人員と時間の無駄です。

ご心配でしたら?そうですね、この星系がいいでしょう。

今後はグルームブリッジ1618に彼らを固めておいてください。

あとは…星系政府総督として私が赴任しましょう。

むしろ殲滅手段の準備の方をお願いします。

魔導帝国歴840年までに、

目途がついておけば問題ないですよ』

そう言い残し数日後にグルームブリッジ1618へ出立していった……

それが西暦4390年魔導帝国歴790年プリプリ45歳の或る日だ」

「独立宣言の10年前……」

うぅぅん……熱意のわりに…?

てか美形だな?銀髪スレンダー正統派エルフ?普通にしてると…


「オレ等としてもよくわからんなりに、

ほんのり移住誘導政策だけして様子見してたんだ、

プリプリもほんとに見てるだけで殆どなんもしなかったんだが、

5年も経てばその理由も判明した」

「……何が起きたんですか?」

んん?わりかし早いな?


「いくつかの思考派閥が急に連鎖的に融合し該当世代国民の大半が

一つの民主独立派に変貌を遂げたんだ」

「……それはまた」

おぉぅそれはまた危機的な状況に見えるが……


「その糾合振り急成長振りにはオレ等も脅威と捉え流れを調査したが、

少なくとも萌芽時点では作為的な流れはなかったんだ、

これが歴史の流れか……と戦慄したことを覚えているよ」

「つまりは予見していたと?」

「そうだプリプリは感覚的だが確信的に予見していたらしい

慌てて今後の指針を議題にする会議で堂々とプリプリは言ってのけた。

『特に問題ありません、このまま見ているだけでよいのです、

既にグルームブリッジ1618には帝国唯一の公的選挙制度、

総督諮問会議選挙制度を790年に発布し2度目の選挙を終えてます。

彼らは必ずこの撒き餌に食いつくでしょう』

そう……オレ等は失念していた帝国には永らく選挙制度がなかった。

全く欠片も存在してこなかったという事実を…な?」

「えっそうだったんですの?」

「いっいつから?」

「なんだってそんなことに!?」

「欠片も!?」


「オレ等も意図してた訳でなくてな?慌てて確認したら?

西暦3251年帝国歴501年頃にはどのレベルであっても、

もう存在してなかった…」

「1100年超えっ!?」

「結局、帝国は皇族と魂魄式AIが民意を察し手早く先手をうつからな……

知らず知らずのうちに存在意義を失い単に不要物として、

民意の元、廃されていたらしい。

なんか所属していると虚無感に包まれるらしい?

当然、皇族と魂魄式AIも関与してなかったから、

機械的に受理していただけでな?

気づかぬうちに民主制の根幹たる公的選挙制度が絶滅してた?」

「「「「「「「選挙制度絶滅……」」」」」」」


「そんなわけで、たった1本の法発布でグルームブリッジ1618は、

民主独立派の聖地になったわけだ。

むしろコレがあったから民主独立派が生まれたのかもしれん。

そしてプリプリは民主独立派からすると、

帝国で史上もっとも民主的な総督に見えると」

「「「「「「「うっわぁぁぁ」」」」」」」

「なにより恐ろしいのが作為はそれだけなんだよ?

もう作為的無作為?後は全て彼らの自由意思に基づくというのがな?」

「「「「「「「ひぃぃぃぃぃ」」」」」」」

「理解ある総督の振りをしながら、ただ見ているだけ?

あとは独立宣言に至るまであっというまだったな」

「「「「「「「こっわぁぁぁ」」」」」」」


「で穏便に帰ってきたプリプリの最初の会議発言がコレだ、

『滞りなく第一段階は終了しました。

第二段階は根源と文殊が肝要です。

平和条約交渉中は人道に配慮し帝国と同様の扱いをし帝国が無償で担う、

としておきましょう、その上でこの点で延々ともめ続けましょう。

第二段階ですることはコレだけです。

いや、帝国国民にも全ての交渉経緯を公開しておきましょう。

むしろ娯楽情報の一種として活用しましょう。

帝国国民に民主制の現実を叩き込むよい機会です。

殲滅手段の準備の方はどうですか?

ふむ、間に合いそうですね』

オレ等は戦慄した……時代の申し子現ると!?」

「「「「「「「……」」」」」」」


「あとはもう水が流れるように、な?

最初の20年で希望に満ち溢れた民主独立派が

帝国中から民族移動のように移住してきてな?

人類の該当世代の8割がグルームブリッジ1618に集った」

「「「「「「「あぁぁぁぁ……」」」」」」」


「そして建国の熱狂が鎮まりを見せるとともに、

見えてくる現実たち、不慣れな民主制による諸々の弊害、

その責任を帝国に転嫁する政治家、

その麻薬のような言葉に酔い先鋭化する民意、

その矛先は根源と文殊の交渉に集約されていく、

その醜態を見せつけられる帝国国民、

そしてこの民主制で国を運営していた、

地球人類と宇宙人類の評価が帝国国民内では爆上がり、

共和国内では正当性を堅持するため必死にこき下ろす、

まさにプリプリの思惑通りだった」

「「「「「「「………」」」」」」」


「西暦4440年魔導帝国歴840年頃になると、

帝国民と共和国民という意識は双方にだいぶ確立してな?

綺麗に人類を割ってしまったんだ」

「「「「「「「綺麗に……」」」」」」」


「そしてその年に共和国政府は致命的な主張をしてしまう、

『人類の正当なる担い手は地球人類宇宙人類より優秀であり、

であるからこそ地球人類宇宙人類が使いこなせなかった民主制を

使いこなせることを証明している共和国である。

ゆえに帝国は共和国に発展的吸収されることが、

歴史的必然であり、それに先駆けて文殊と根源の制御権を

共和国に託すことが帝国のとるべき行動である。

その点、帝国は如何にお考えであろうか?』

プリプリの作為的無作為という悪意が結実した歴史的瞬間だな」

「「「「「「「おぉぉもぅ……」」」」」」」


「これに大沸騰したのが帝国国民だ」

「「「「「「「当然……」」」」」」」

「このようなやりとりを5年続けて、

帝国国民が瞬間湯沸かし器になった頃合いで、

オレが通告したわけだ?いま映像だそうか?


『貴国は種族的に地球人類宇宙人類より優秀であり、

民主制であるがゆえに帝政である帝国より優秀であると、

その認識は貴国にとって絶対的なものであると、

そう帝国は認識してよいのですね?』

『そうです!!今まで幾度となく申してきた通り、そうなのです!!』


『なるほどなるほど、

ではこれまでの非礼は詫びなければなりませんですね』

『そうです!!』


『ふむ?根源も文殊もない時代に、

曲がりなりにも星間植民を果たした後期帝国より優秀とは素晴らしい」

『素晴らしいでしょう我が国は!!』


『さらに?マナクリスタルもない時代に個人のマナを結集して、

必死に火星と地球のテラフォーミングを成し遂げた前期帝国よりも優秀と?』

『当然でしょう、我が国なら造作もない事です!!』


『ほうほう?では貴国と同じ政体でありながら、

地表住環境もなく?貧弱なマナ所有で迫害され?

結果的に地球人類から霊長類の長の座を奪い取らされ?

人類種の存続を願い我々を創造し共に戦い?

我々にその座と未来を託して歴史の狭間に消えた宇宙人類よりも?』

『当然です!!我が国ならばそのような事態になど陥りません』


『となると?貴国と同じ政体の集団でありながら、

マナすらなく先代の残した負の遺産で地と海の底に押し込められながらも?

苦難の末、宇宙進出を果たし?

盛り返したうえで?宇宙人類の萌芽を迎え?

先代霊長類の長たる意地を見せた地球人類よりも?』

『そうです!!比較になどなりません!!あんな原始人とは!!』


『なるほどなるほど……これは非礼を詫びて、

行動を改めねばなりませんね』

『ほう!!やっと!!わかっていただけましたか!!』


『えぇ、そういうことだったんですね?

貴国の荒唐無稽な主張を字義通り捉えすぎていたようです』

『はっ?』


『つまりは貴国は一時的に星間文明から星系文明に後退しても、

なんら問題にならず、そう遠くない時期に星間文明に返り咲く。

だからその非礼な施しは要らぬ。

そういう意味での遠回しな主張だったのですね?』

『えっ?いやっ?』


『きっとご覧になっている陛下も痛切に反省されていることでしょう。

既に貴国の主張通りの指示を出していることとおもいます。

いやもうこれ以上の言葉は無粋ですね。

星間文明国家同士として再会し再度交渉できることを願って、

私もお暇しましょう、では』

『はいっ?えっ?どういうこと?』


こうやって見返すとわかるだろ?

これ帝国国民向けの内容なんだ?プリプリにも直撃したけどな?」

「「「「「「「あぁぁぁっ!?確かにっ!!」」」」」」」


「この10分後にオレは地表を出立してな?

その瞬間から共和国籍の

根源と文殊の使用権を一斉に剥奪したんだ」

「そっそれは壮絶な混乱に陥ったのでは?」


「もちろんその壮絶な情景を実況するために各所に、

帝国の威光計画の産物である起動後に遠隔無人稼働が可能な

無色透明の使い魔式敵地潜入偵察ユニットを仕込んでいてな?

通告直前から以降5年に渡り、

帝国国民向けに常時実況中継したんだ」

「えぇぇぇ実況中継するんですかぁぁぁ」

「「「「「「「………」」」」」」」


「プリプリ曰く、

『ふむ、ようやっと第三段階です。

念のため、共和国内の全マナインフラと

共和国籍星間船のマナ術式ユニットを遠隔自壊させましょう。

これでマナクリスタルがあっても使えません。

1200年ほど文明後退ですね。

さて彼らの主張を証明してもらいましょう。

国民とともに帝国が証人となるのです』

だそうだ……」

「「「「「「「………」」」」」」」


「5年間、毎日ありとあらゆる醜悪な悲喜劇が大量生産されてな?

あげく帝国民に対する恨みつらみが積みあがっていくわけだ?

場合によってはそれが親族であったりするわけだ?

そりゃもうおなか一杯なわけよ?

そこに帝国国民向けには隠棲していた総督としてプリプリが登場。


『帝国国民諸兄よ!!

私は地球人類と宇宙人類に深い敬意を捧げる!!

何故ならば!!あのような政体で!!あれほどの過酷な難局の数々を!!

見事に乗り切ってみせたからだ!!

流石は先代霊長類の長たる我らが誇るべき父祖だ!!


翻って!!彼らはどうであろうか!!醜悪!!あまりに醜悪!!

私と帝国は!!彼らの主張に証明の機会を!!

しっかりと!!与えた!!筈なのだ!!その結果が!!これである!!

今や帝国の敵!!いや人類の未来を後退させる人類の敵!!

彼らは今!!そうなり始めていないだろうか!!

あまりに慙愧に堪えない現実だ!!

だからこそ!!私は責任を取り主張する!!

帝国の至上命題はなにか!!

先代霊長類の長たちから託された人類種の存続である!!

ならば!!人類の敵は殲滅すべきである!!

彼らはもう殲滅されるべきである!!』

人類史上、もっとも成功した虐殺者の誕生だ」

「「「「「「「「「………」」」」」」」」」


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