第118話 そうだ、置いていく、これはそういう話だ
『司令、4115番星系より方面第4統合艦隊87番艦”台南”
もうすぐリプレースです』
「ん?拠点艦が出張っていたのか?」
「なんでまた…」
『遅滞戦闘支援施設の設営、多少は慣熟訓練になればと
歴戦艦定置で新設艦に輪番で任務を与えましたが』
『思いのほか効果的でしたね』
「あぁ、なるほど、ただ待っているわけないよな、そりゃ」
「そうだ、この時間はしっかりとした代償を支払っているからな」
「寸暇も無駄にはできないと…それはそうですわよね」
『よくよく考えれば、新設艦には星系開拓経験も』
『そうですね、教育目的はあれど実用目的は希薄でした』
「そうか、時間がないものな…」
「だからか…」
『リプレース10秒前、隠蔽剥がれます』
『遮光結界設備の設置、手間ですが…続けねばなりませんね』
「あいかわらず派手だな…」
「ほんとうに…」
『最終段階での姿を隠さねばなりませんからね…』
『この状態ならまだしも…』
「下手な恒星より輝いてる…」
「閃光で直径、元の何倍になってるんだ?50倍くらい?」
『この状態ともなると些か問題がありすぎます…』
『艦隊単位の隠蔽は厳しいのがツライとこですね…』
『ひとまずは要所に拠点艦単艦用を
その後は広範囲に強襲独行艦単艦用を優先して設置していきましょう』
『…恒星間遠隔無人設備方式…実用化できたがゆえにですね』
「見られていない利点…大きかったもんな…」
「そりゃ、隠せるなら隠す努力しますよね…」
『まぁ新規開発実用化というより、必要に迫られていないがゆえに」
『創られていなかっただけともいえますね』
「あぁなるほど、必要とはしていなかったからか」
「基本、防戦でしたね、そういえば」
『固定軌道、つまりは有人側で無人側の位置算出ができるなら』
『文殊通信を接続可能にできる、
技術的にはわりと簡単に実用化されたみたいですね』
「つまり、艦船には適用できないのか」
「わりと影響ある制約だよな」
『とはいえ、その制約は大きかった』
『希薄マナでは実現できない、紛糾したそうで…』
「「「「「「「「「あー」」」」」」」」」
「帝国は万年マナ貧乏だからな」
『さすがに根源マナでの運用は厳しいものがありますからね』
『通信周りとマナトリガー起動用のみとはいえ、設置数を考えると…』
「相当数設置するのか…」
「たしかにあるとそれだけ選択の幅拡がるでしょうね…」
『ゆえに世界間虚空マナ収集装置、体積あたり出力効率は劣悪なれど』
『帝国に与える負担は極小ですからね』
「あー2種の召喚システムのヤツか」
「慈悲なき断罪の揺り籠…ありましたね…そういう話…」
『ゆえに、大きくなりすぎてスーパーどんがらにも入らなくなったと…』
『艦船サイズになった結果、拠点艦で運ぶ羽目になり…』
「ありゃりゃ、雲行きが」
「怪しいですぅ」
『現地で設置座標に戦偵巡に曳航させると…』
『結局は拠点艦の転移で根源マナを消費すると』
「なんてこった」
「振出しに戻ってる…」
『まぁそれは今だけです、電磁波吸収を積んだ専用船が、
もうすぐ投入できますから』
『つまり、今敷設中の遮光結界設備は?』
「そうか、設置時に隠蔽が不十分なのか」
「過去の姿はその気になれば見られてしまうということか」
『当座用に使いはしますが、先は囮用です』
『超高機動砲艦1隻のコストで10基…これどうゆうことです?』
「やっす!大きさのわりに…」
「なんでまた、そんなに安いんですの?」
『簡単です、元はどこにでもある小惑星ですよ、
それをレーザー集塵採掘機でくり貫いて必要設備を押し込んだだけです』
『あぁ、なるほど最低限の周辺観測機器と結界装置に文殊通信設備に、
対消滅ジェネレーターと自壊装置に中身ががらんどうな虚空マナ収集装置、
これで大丈夫なんです?』
「めっちゃケチってる…」
「予想以上にちゃちぃな…」
『我らには戦偵巡、哨戒と強襲の独行艦がいますからね』
『なるほど、それに水鏡が在ると』
「あぁ役割被るんか…」
「なるほど、なら…ということですか」
『そういうことです』
『下手に機能豊富にして数を減らすより、
最低限の機能にして数を確保するつもりなのですか』
「なるほど」
「言われれば理にかなってるな」
『そうです、そして変わらず現地調達はしません』
『汚染対策ですか…』
「あぁその懸念があるのかぁ」
「制圧した星系でも油断はできないと…」
『なにが在るか、わかったものではありませんからね』
『確かに…ん?帝国本土領域外縁製のものが多いですね?』
「およ?久々に聞く場所が」
「なんでまたそんなとこで」
『あぁそれは帝国の経済対策ですよ』
『納得です、基幹輸送船の空き容積の為ですか』
「振興策にしてるのか」
「あぁ、確かに単純構造ですもんね」
「採掘のついでにってとこか」
『えぇ、今はわりと守護宮が空いてますからね、
基幹輸送船の空きが顕著な未成熟星系で作ってもらい、
守護宮から帝国門投射で0時第2星系にプールされます』
『0時第2は我らへの投射で大忙しですからね…』
「空いてるリソース有効活用か」
「大事なことだよな…そういうの」
『まぁ星系内に関してはこれで良いわけですが』
『要所…ですか…今、我らが位置しているような場所ですか?』
「周辺恒星の中間点だったか?」
「基本は暫くは見られないために…ですか」
『今いるこの位置は49年後には確実に露見しますから』
『次はそうならないように手が打てるわけですね』
「そうなるよな?」
「だな、そう考えて当然だな」
『とはいえ、ベース運用開始後の隠蔽は無理です』
『艦隊丸ごとは厳しいですからね…つまり分派運用で?』
「だった丸ごとは無理なんだった」
「本土艦隊とか考えると…確かにそれは厳しいです」
『そうです、我らは本格的遅滞戦時は、
少数をいくらか分派する、その予定です』
『拠点艦1隻もしくは2隻あたりですか?』
「そかそか、それならできると」
「なるほどですぅ」
『おそらくはそうなるだろうと予測して準備しているわけです』
『強襲独行艦ですか…』
『そうです、この遅滞戦は彼らの活躍次第な面がありますから』
『そして我らベース本体と本土艦隊は逃げ回らねばならないと』
『遅滞にはそれがもっとも効率が良いですからね』
『なるほど…』
「それが遅滞戦方針なわけか」
「ん?これ…少数の方…割と危険な任務じゃ?」
「敵の後背になるところに置いていく話じゃないか?これ?」
「そうだ、置いていく、これはそういう話だ」




