第117話 これが50年堪え忍んだ成果なのだ
「667番星系侵攻軍その初動、
それは大いに満足できるものだった」
「確かに…損失はあれど…そこに希望がある…」
「そういう戦史となっていますわね…」
「ゲェリエイルとグレイシャー達が貫いた遺志は、
後続の者達にも確りと引き継がれた、
そして遺された者もそれに応え続けた、
その姿、続く者たちの道標となり続けた、
生後半年での実戦投入…そうやって確立したのだ」
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
「そしてそんな彼等だけでなく宇宙軍将兵、
そして地上軍将兵も魅せつけ続けられる事になる、
プリサイス・レッドフォックスウォリアートライブ、
地上軍にとっての白兵戦至上主義者の頂、
その先例、はるか遠い頂に着実に伸びていく階、
ウタが恒星であればプリサイスは彗星だ、
近づくごとにソレは光り輝く、
地上軍にとっての希望の星、
追いすがるべき目標、
そう、それはできるのだという証、
その尾を追いかける者、
それを戦場が育み、
増えていくのだ、
それを減らす為に、
次席と呼ばれていたルミナス・レッドフォックスウォリアートライブ、
後の第3軍集団門番長、
3席と呼ばれていたプラウドリー・レッドフォックスウォリアートライブ、
後の第5軍集団門番長、
それまで…ウタ教信者と揶揄されていた…
我らの白兵戦至上主義者達…
その通称を求道者と改められた…
その師団の名、通称求道師団、
数多の戦局の天秤を破壊し続ける地上軍の切り札。
軍制上、その師団は存在しない、
だが確かにそれが確立した時期でもあった』
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
「しかし、戦場はココだけではない、
そう4346番星系、3000光年先の戦場だ、
「あぁそうか、そっちもあるんだったな」
「667番星系が濃すぎて…」
「こちらは滑り出しは静かなものだ、当然ではあるがな?」
「これほど理不尽な奇襲のあとだもんなぁ」
「状況把握もままならないでしょうし」
「故に偵察行動からではあるが、我ら帝国には水鏡がある」
「3日前からその行動を察知できると」
「うむ、それに対し強襲独行艦が必要数にて待ち伏せを行う」
「水鏡の範囲外には?」
「それは時期尚早と判断され、
あくまでも水鏡範囲内での作戦行動に留めた」
「電撃戦を終えた本土艦隊は?」
「イーリングベースにて補給と修理に休息だ」
「休息か」
「その為の拠点艦400隻だからな、
まずは、その1幕からだ」
(((((((((こくり)))))))))
『イーリング司令、第10本土艦隊より寄港申請です』
『ふむ、確認しよう、ありがとうカーム』
『損傷艦は概ね道中で修繕しきったようです』
『損傷艦自体が少なかったのだな』
『水鏡さまさまですねぇ』
『そうだな、帝国門投射と水鏡がなければ…』
『到底不可能な電撃戦ですからね』
『その帝国門投射による補給も段取り済か』
『そのようですね、となれば休息となりますが?』
『当初予定通り第1統合艦隊91番艦から100番艦を』
『若い面々ですから喜ぶでしょうね』
『ふふ、そうだな、彼等にとってのおとぎ話の登場人物』
『それが大挙してやってきますからね』
『1個本土艦隊254588名』
『1隻あたり25400名を超えるお客様ですからね』
『!?水鏡よりです、4346番星系周辺に複数兆候あり警戒されたし』
『強襲独行艦司令部は?』
『対応を検討中、1時間以内に結論を出し対応するとのこと』
『寄港中の強襲独行艦は?』
『どんがら船格納区画を前後に二つ繋げた専用区画に1600隻、
周辺宙域に約800隻います』
『ふむ、彼らの休暇に影響ない事を願うしかないな』
『どんがら船格納区画を繋げて1000m以下級に対応』
『あぁ、しておいてよかった、どんがら船は元々太いからな、
二つ繋げるだけで概ねどの強襲独行艦でも入るようになった』
『厳しい任務が多いですからね、せめて休息くらいは、
艦の事を忘れられる環境にできてよかったです』
『追い出されたどんがら船8隻400個防人艦隊分3200隻は
どうせ仕事に追い回されているからな、
残る8隻400個防人艦隊分3200隻と2交代で廻せばよいだけだ』
『とはいえ、防人艦隊単位だと…』
『あぁ、さすがに無理だろうな、編成バランスが大きく崩れる』
『そう考えると完成されたバランスなんですね』
『そうだな、それゆえに後継艦構想は迷走し続けているらしいからな』
『えっ?そうなんですか?』
『500m級以下に縛られているのは対ホプル時代の名残だ』
『そうでした、元々そういう時代の艦でした』
『少々中途半端なサイズになりつつあるのも確かだ』
『さりとて有望な代案も?』
『いまのところないというわけだ、まぁ私の生きているうちに?』
『あるかないかというとこですか』
「これまたえらい平和だな…」
「667番星系とは大違いです…」
「戦略で大きく凌駕した結果だな、そうでないと困る、
これが50年堪え忍んだ成果なのだ」




