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第116話 その在り様、讃えずにはいられない


挿絵(By みてみん)


『ウタの戦闘スタイルは効率の追求です』

『うん、それはわかるんだが…なぁ?』

『えぇ、狂気の域よねぇ…あれ』

「あたまおかしですぅ」

「生身じゃないとはいえなぁ」


『門番長はその可能性に気付いたのです』

『どういうことや?』

「うん?」「何にだ?」


『辻斬りはアレでも探査機、そう探査機なのだと』

『んん?いや確かに探査機?だけどもぁ?』

「とてもそうは思えないが…」

「分類上は探査機でしたね…」


『そう、戦闘に特化されていないのだと』

『確かに特化してはいないけどもぉ?それが?』

「そういや、たしかに色々積んでたな…」

「戦闘には余計なもの…確かに積んでますわね』


『盾ナグールは戦闘に特化された存在、それも継戦に偏重した仕様』

『そうでやすな、数を相手にすることを念頭において開発されやした』

「だっただった」「そこらへんめっちゃ気にして開発してましたね」


『それをウタが使った場合…何人で同時にかかろうが…勝てないのです』

『まじかぁまじかぁ』

「あっ…」「戦闘特化…」


『当時の地上軍では1人も10個師団も…

ウタにとっては同じ雑魚なのです…』

『…10個師団を…1人で殲滅しきれるのか…』

「嘘だろう…」「同じ盾ナグールですよぉ…」


『そうです…苦も無く殲滅できました』

『いや…いくらなんでもマナ足りんやろ…』

「そうだ…」「足りる筈がない…」


『それが足りたのだ…足りてしまったのだ』

『どういう理屈や…』

「ホントだよ…」「なんでできるんだよ…」


『自マナ1%で99%の根源マナを運用、

それは憑依式であるがゆえに自マナ1%で希薄マナ99%に、

置き換えられていますが…出力に対し消費は1%、

それは変わりません、では効率化の先は?』

『まさか?その域にまで届いているのかぁ…』

「はぇ?」「うん?」「うっそだろおい」


『そうです、自マナの消費量が回復量を下回るのです』

『いやいやいや、アレは着ているだけで消費量が超える筈や』

「そうだ、それが活動限界の理由」「その筈ですわ」


『そう、その筈だった…だが…ウタはそうなる理由…

盾ナグールの存在理由…切っている』

『は?切っている?』

「ほぇ?」「へ?」「はぁ?」


『当てる当たると思った時にしか入れていない…

入れるときも必要な箇所のみだ…』

『まてまてまて、たとえそうだとしても身体強化分がある筈や』

「えっ基本無防備?無防備なの?」

「いやいやいや、いくら生身じゃないからって」


『其処もだ…そこも…その時その時の必用最低限に絞ってる…』

『…その状態で…10個師団が殲滅されるのか…』

『憑依式であるがゆえの発想ということかぁ』

「どんだけ効率厨なんだよ…」「いくらなんでも限度ってもんが…」


『対10個師団戦…その終盤にあたり…

ソレに気付いた地上軍は面制圧手段で…

味方諸共対処しようとしましたが…』

『そうでやす、それが弱点になる筈でやす』

「その状態なら…」「それで対処して当然…」


『その味方を利用され…いとも簡単に凌がれました…

ならばと…距離を取ろうとしても…引き離せないのです…』

『同じ盾ナグールな筈やないか…』

『ウタの方が常に初動が早いのです…』

『なんてこったぁ…』

「うわぁ…」「理不尽…」「理知外…」


『そして門番長は光明を見出したのです…できるのだと…』

『それを…生身で…すると…いうんか…』

「えっ?」

「はっ?」

「生身?」


『門番長は我々と同世代です…』

『あぁそうだったな…そうかそれはできてしまうなぁ…』

「えっ生身で同じことしてんの?」

「それはあまりにも狂気的すぎるでしょう…」


『それからはウタに相手して貰えない時は鬼軍、その最上位設定

つまりは最高位白兵戦至上主義者に相手して貰っていたそうです』

『最上級懲罰訓練を探求の礎にしたのでやすか…』

「あぁ、たしかにうってつけの相手だけども…」

「それをするのかぁ…」


『そしてウタと3合交えられたあたりで単機駆けが可能になった、

その時点で最低限確立したと判断して修行内容を…

くらいついてくるものにのみ開示したのです…』

『それがウタ教の始まり…』

「単機駆けラインが3合…」

「ものさしが打ち合い数…」

「宗教というより武道…」


『その時点で戦場で単機駆けする大隊長として、

地上軍では一躍有名になっていましたから…

布教機会は多かったそうです…』

『あぁせやったな…地上軍…

白黒つけるとき教練実習機使うん好きやったな』

「あぁそれは揉め事になるよなぁ…」

「それを模擬戦で全部かたづけたと…」

「そして拡がったと…」


『それがウタ教の布教の始まり…』

『その探求の結果が門番長の今の姿です』

『ソレはできるのだと示してしまったのかぁ…』

「たしかに…辻斬りに被る…」

「似ていましたわね…」


『そうです、自マナの都合上殲滅力には上限がありますが、

倒れない止められないは体現できてしまっています』

『まさか!?せや!やっぱりや!赤いきつね平均年齢がうちらと同世代!!』

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

『そうだ、白兵戦至上主義者の適正とは、

それは過酷な戦場で多くの戦友を失った者、

その絶望の淵から立ち上がった者、

先に逝った者達の遺志を継ぐ者、

天井知らずの覚悟をもつ者、

そこに最低限の武才…ということなのだ』

「「「「「「「「「あっ」」」」」」」」」


『それが…赤いきつねの強さの理由…』

『火力担当役回りが多いがゆえに生き残ることが多かったそうだ…』

『だからかぁ…だから狐特化師団ということかぁ』

『遺志継ぎ前に進む武の求道者、

それが師団員から贈られた師団徽章です』

「「「「「「「「「………」」」」」」」」」

「どうしてこうなったのか…オレにはもうわからないが…

その在り様、讃えずにはいられない」

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