第100話 だからなんでしょうねぇ、これ…ふて寝ですよねぇ?
『そいやウチの師団は?』
『第01080802師団ですか?』
「でっかいどうの?」
「身内認識なんだな」
『うんそう、ウチに駐留してる赤いきつねさんトコ』
『プリサイス・レッドフォックスウォリアートライブ准将ですよ』
『せめてプリサイス准将と呼んでおこうや』
『またきつねうどんを集られやすよ』
「赤いきつね?」
「赤狐族の戦士氏族だからか?」
『赤くてちんまい狐っ娘と食べるきつねうどん、ご褒美だと思わないか?』
『それが5杯でなければでやす』
「……なるほど」
「5杯ですか…」
『そんなちんまい狐っ娘率いる第01080802師団通称赤いきつね師団だけど?』
『ブロック受け入れ地区の遊撃隊、その後端や』
『殿ですかぁ』
「うん?結構な重要ポジでは?」
「たぶん…その筈…」
『あの方…あぁ見えて古参信者ですからねぇ』
『驚きの4桁ナンバーなんでしたねぇ』
『第1軍集団の信者筆頭であらせられます』
「あれっ?」・
「まさか…猛者なのか?」
『門番さん?なんですよねぇ?』
『そうですよ…第1軍集団内でウタに挑戦するにはどんなカタチであれ』
『あの方に勝利しなければならんてことや』
「門番…」
「ちんまい赤い狐っ娘が…門番…」
『ちなみにグレイシャーさんは?信者筆頭殿に勝ったんだよな?』
『ちょいまちや…確認したら師団全力で辛勝したらしいな』
『1個人に師団で苦労するレベルですかぁ』
「えっ?盾ナグール同士ですよね?」
「そうだぞ?頭がおかしくなりそうだが…そうなんだ…」
『その上、各軍10師団にそれぞれ1師団ある人種特化師団でやす』
『2種と火力中隊以外が全員狐人種なんでしたかぁ』
「そうなのか?」
「うむ、人種特性を活用するためだ、
白兵戦闘力とタフネス、敏捷と隠密性、火力で特化だ」
「工兵中隊と補給中隊を精鋭歩兵中隊扱いにするのか」
「そうだ、それらの程度が多少落ちるのを前提に特化している」
「なるほど」
『狐人種特化師団は遠中距離特化師団だな』
『なのに信者率95%なのよねぇ』
『補充兵以外は信者だからな…』
『その補充兵もすぐ信者になるという…』
『結果として白兵戦距離を最も得意としてやす』
「……それは……」
「な?おかしいだろ?火力特化したら、
白兵戦距離火力が爆伸びしたんだ…」
『2種のいない精鋭第1軍集団第1軍団第1軍10個師団と並ぶ』
『第1軍集団の切り札扱いだな』
「精鋭扱いになっとる…」
「なんかもう…万能なんだよ…隠密以外…」
『替えがきかない師団なのでウチだな』
『第161艦隊で最古参なのに3番艦、その理由でやす』
「そんな理由があったのか…」
「宇宙戦では無力だからな…その筈だ…」
「不安げになるな…こちらも不安になるだろ…」
『あの姿からは想像つかないですよね』
『そうなんだよねぇ、だからつい再確認したくなるんだよねぇ』
『その第1軍集団が?』
『そうだ、遊撃隊担当だ』
『砲弾迎撃は特に問題ないでしょうし、その戦いぶり見てみますか?』
「おっそういう展開か」
「直協支援でもない限り見ないからな」
「なるほど、確かに」
「それにこの要塞建造中は殆ど直協支援する必要性がなかったからな」
「あ~、それでこの映像になったんだな」
「うむ、少しイレギュラーかもしれんがな」
「少しなのか?」
「…その筈だ…」
「不安げになるな…こちらも不安になるだろ…」
『そうですね、艦隊増勢で砲弾迎撃に余裕が出てくれば?』
『直協支援任務もあるだろうからな』
『見ておいた方がよいでやすな』
『師団長が信者門番や』
『2種運用の一般師団なのに精鋭扱いです』
『白兵戦距離が最も得意な遠中距離特化師団でやす』
『異彩を放ちすぎですわねぇ、ウチの駐留師団わぁ』
「…少しの筈なんだよな?」
「…その筈だ…今となっては」
「やめろ…意味深発言やめるんだ…」
『ほな、プリサイス准将の盾ナグール視点を出すで』
”『待機だ、私も寝る、寝ろ』”
『寝ようとしてますね…』
『そやな…』
『盾ナグールの現況表示は…』
『仁王立ちでやす…』
「初登場のセリフ…」
「仁王立ちでそのセリフ…」
『迎撃計画はどうなんかなぁ?』
『第11から第20軍集団で止めて』
『第1と第2軍集団で横殴りや』
『第4356から4361が右翼と第4362から4367が左翼で布陣やな』
『あー第4368はライン追加1個目ですかぁ』
『そうでやす、隣接は左右の間4361と4362、
その真ん中に降下で180度正面戦でやす』
「そうか、構造上そうなっていくのか」
「こういう戦闘を想定してるからな」
『ブロック側壁幅20km高さ5kmに約500万が布陣よぉ』
『1ブロック2辺で1個軍集団ですね』
『赤いきつね師団は最右翼4356ブロックでやす』
『その最上階1000階だな』
「もろ城壁じゃないか」
「それも高さ5000mで…」
「むぅ、胸壁も1000階層分あるのか」
『狙いは第4368要塞ブロック、エレベーター降下シーケンスや』
『その最終盤に4368ブロックに取りつく』
「狙いはそれなんだ」
「なんでまたそんなタイミングで?」
『降下中はマナ転化起動した後は、
遠隔操作するから無人のブロックなのよねぇ』
『そこに1個軍集団を詰め込むのはリスクが高すぎるでやす』
「あぁ確かに」
「一緒に1000万はキツイですね」
『降着後に第4368要塞ブロック内で白兵戦や』
『とはいえ、それを前提に設計されたブロックですからね』
『5m20層構造と20m5層構造に100m1層構造だな』
『幾重にも交互サンドイッチになってますからね』
『防衛自体は容易だ』
「内部白兵戦自体も?」
「そうだ、当然前提とされている、
中央に在る制御室周辺には、
1万もの短距離転移装置がある」
「それはまた…」
「そこが重要なのだと思い知らされたからな」
『だがあちらさんにとってはぁ?』
『数少ない白兵戦機会やな』
『1辺500万の迎撃ラインが2本』
『その間だけ無くなるでやす』
「あぁ、だからか」
「そうだ、降着したブロックそのものが障害になる」
『とはいえその内部も4000を超える多層空間により?』
『白兵戦以外の非マナ事象のみに絞った、
マナ転化フィールドを展開されるわねぇ』
『こちらはいくらでも撃てるのに?』
『あちらさんは自爆すら意味がないからですねぇ』
「なるほど、トゥーロンみたいなことにはならないわけだ」
「うむ、対策済だ」
『それでもするしかないわけだな』
『まともに戦闘できる数少ない機会やからな』
「それでも野戦よりはマシだと」
「うむ、そう判断してくれた」
『地上軍の錬兵に程よいというわけでやす』
『地上軍も実戦未経験師団を大量に抱えているからなぁ』
『こちらで時と規模を選べるというのも大きい』
『練兵高めの軍集団の時は同時複数ブロックとかもしてますからねぇ』
『ここで備蓄資材を消費してもらわんとな』
「あえて襲撃させていると?」
「そうだ、完成するとどうにもならんと判断しているだろうからな」
「コマインもかなり必死であると?」
「重要星系に不落の要塞が生まれようとしているわけだからな」
「なるほど」
『今回は正面中央配置が第19と20だからやな』
『だからなんでしょうねぇ、これ…ふて寝ですよねぇ?』
『そうでしょうねぇ』
「…ふて寝…」
「ふて寝する切り札…」
『おっそろそろや?』
『さて?赤いきつね師団の実力は如何ほどなのでしょうなぁ?』




