第9話 まじでバケモンの巣窟なんだな……
資料映像を見れば見るほど、
帝国の悪辣さと非情さがより鮮明になるなぁ……
「ふむ、今日はカツ丼に決まりだな、な?」
「あぁいいよ~それで~」
コイツも当時は既に魂魄式AIか……当時の当事者でもあるのか……
「なぁハム公、当時ハム公はなにしてたんだ?」
「ん?二度手間三度手間だから明日揃ってからな、そこらへんは?」
「む~つれない~」
ならアレを聞いてみるか。
「じゃぁさぁ~そこらへんじゃないとこで
気になることがあるんで聞いてよいか~?」
「答えるかどうかは内容次第だが構わんぞ?」
「各分隊長の容姿に妙に幅がある気がするんだが
そこに意味はあるのか~?」
「すっごいあるぞ?今は答えられるのはこんだけだがな
そのうちわかるから期待しておけ?」
「意味あるんかい!?この違和感と困惑の美少年ぼでぃにもか?」
「そうだぞ?あっそれで成人だからな?もう成長せんぞ?」
「はぁ!?身長145cm程度で今後の長い人生過ごせとぉぉぉお?」
「やむを得ない理由があるんだ、
その理由がわかった時には、きっと納得すると思うぞ?
むしろ感謝してくれるかもしれんな?」
「むぅそんなガチトーンで言われるとなぁ、わかったわ、その時を待つわ」
「ん、期待しててくれ」
「そいや~地球ってどうなってんだ?
初回練習航海の目的地ってことだが」
「雑談ネタにちょうどよいな、いいだろう、いくぞ?」
「うし!!こいやぁ」
「太陽系と地球」
ぬぅぅぅぅぅん!!
地球含む太陽系は、
採集し星系外に輸送すべき資源は既に枯渇しており、
マナ採集星系となっている。
その為、軌道上居留地も一つを残しもう存在しない。
惑星住環境としても、
西暦4001年魔導帝国歴401年あたりより問題がでている。
帝国の惑星開発は高濃度マナ生態系の保全のため、
地下を中心に整備されているのだが、
火星は西暦3100年帝国歴350年から開発されており、
地球に至っては西暦3200年帝国歴450年以降の
再入植後開発区域だけでなく、
西暦2122年統一歴26年からの開発区域まである。
惑星地表地下全域にわたるそれらの補修保全再開発より、
新植民星系の開発がコスト的にも圧倒的に優位でもあり、
西暦4600年魔導帝国歴1000年以降の
200光年内植民再開が契機となり、
区画ごと移民実施後に区画を放棄する施策が選択され、
西暦5108年魔導帝国歴1508年には地球火星金星ともに
全居住区画が放棄され無人となっていた。
なおこの経緯は良い反面教師として、
帝国の惑星開発の指針に影響している。
その後は人類発祥の地としての観光地として活用され、
その拠点として唯一の軌道上居留施設があるくらいだったが、
そんな地球に新たな変化があったのは、
西暦5951年魔導銀河帝国歴701年、
贖罪明け退役元贖罪兵居留地としての再開発終了
再入植開始である。
これは退役元贖罪兵からの強い要望もあり実施された。
過去の地下開発残土廃棄集積で生まれた新島に限り、
限定地表居住区域として入植が許可されている。
この種の新島周辺は由来から地下区画が存在せず、
大規模崩落の危険がないため許可されている。
地中海に2島、黒海中央に1島の3か所に入植都市がある。
退役した700万のうち非軍属の99%が居住している。
帝国人による星系政府と首班に皇族は配されているが、
都市計画から割と退役元贖罪兵の裁量にまかされ、
その運営も退役元贖罪兵が自治を担っている。
その結果いまや考古学と人類社会学の聖地であり、
生きている遺構観光地である。
このため新規防人艦隊の初回練習航海目的地となっている。
星系としては太陽ー海王星系のL1の位置にある、
星系唯一の宇宙港が入り口である。
ここに星系政府が置かれた植民星系艦隊が駐留している。
初回練習航海時の拠点艦の寄港地はここである。
帝国本国民間人が拠点艦を間近に目にする機会は此処ぐらいなので、
この海王星L1宇宙港も観光地である。
ここから退役元贖罪兵が操船する強襲降下仕様どんがら船で、
惑星降下実習として地球地表へと向かう。
なお帝国本国人向け、物資輸送向けには、
退役元贖罪兵が操船する定期便が出ている。
それ以外の民間船の航行は、
海王星L1宇宙港軌道内では認められていない。
この旅程でもって贖罪兵としての現実感を与えることが、
初回練習航海の最大の目的である。
「観光地なのか…」
「あぁそれも帝国有数のな?いくつか資料閲覧許可だしたぞ?見てみろ?」
「お~サービスいいな~どれどれ?これか?ふむ…ふぁっ!?ほわぁぁぁあ!?」
「ショータの再現元の出身地が九州だったからな
わりと地形が当時の面影を残しているんだ
どうだスゴイだろ?その大小の大穴は
霧島~阿蘇~九重地下都市の大規模崩落跡だ」
「あ~たしかにコレは有数の観光地になるんもわかるわ
崩落した階層都市の断面を無数の滝が流れ落ちながら
圧倒的な緑が浸食してるとかロマン溢れるにも程があるわ」
「だろう?穴の中に巨大な塔みたいなのがいっぱいあるだろ?」
「あぁ気になってはいたんだ、なんの名残なんだ?」
「あれは階層シャフトといってな?階層をささえる柱だったんだよ。
最初は最上層の天井を支える梁から崩落を始めてな?
上から順に崩落を始めて中頃で全階層が一気に連鎖的に落ちるんだ。
たまに折れている塔はその衝撃に耐えられず折れたんだ、
映像もあるはずだぞ?」
「どれどれ、これか?……ほぅわぁこれはすんごいなぁ圧倒されるなこれは」
「だろう?ここら辺の上層は人類連合成立前の大戦時に建造されていてな、
急造だったもんだから、構造から問題が多かったんだ。
補修補強しようにもそれ自体が致命的になりかねなくてな?
おかげで中層から下はその煽りを受けて、
早々に放棄する羽目になった、というわけだ。
その分、この地域は連合成立時の生存者が多かったんだがな」
「はえぇぇぇ、住環境としても問題が出ているってそういうレベルの問題か~」
「地表にはこんな情景が所狭しと溢れていてな
そこをそうなる前を生きた記憶のある元贖罪兵が案内するんだ」
「うっわ~そりゃ人気なるに決まっとるな~当然だわ~」
「そんなわけで割と勝手に上手く帝国に溶け込んでくれて助かっとる」
「激戦を生き抜いてきた人間の集団だから、
色々と嗅覚というか感覚というかそこらへん鍛えられてるんかね~」
「そうっぽいんだよな、こっちが何かを言う前に、
ほぼ満点の提案をだしてくるらしいからな?」
「どういった人が生き残るってお手本でもあるのか~」
「そうなんだ、こんな見事なお手本があるなら、
まずは最初に見せておこうってのが初回練習航海の本目的なんだ。
実際、ドンガラ船の乗員から土産物のおばヒィィィ…おっおねぇさん?まで?
戦績から見ると?一騎当千の化け物?ばかりなんだよ?」
「おい?どうした!?なっなにがあった!?」
「なっなんでこの種の人はみんな勘が……鋭いんだろね?」
「なんとなく察した……まじでバケモンの巣窟なんだな……」




