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1話「婚約破棄された、しかし翌朝……」

 私カレッタは今日婚約破棄された。


 半年くらい前から婚約していた彼アポツティという青年がいたのだが、彼は「お前より良い条件かつ麗しく忠誠心もある素晴らしい女性と巡り会えた。だからもうお前は要らない。よって、婚約は破棄とする」などと言って私との関係を一方的に終わらせた。


 まったく……。

 どうして私がこんなややこしい目に遭わなくてはならないのか……。


 でも、これが運命なら仕方のないことなのかもしれないとも思う。


 だから私は婚約破棄を受け入れて家へ戻った。


 それから、家にいた両親にそのことを話すと、驚かれはしたものの理解してもらうことができた。そして、またしばらく実家にいることを許してもらえて。おかげで私は居場所をなくさずに済んだ。


 自室へ戻って。


 姿見に映る長い金の髪を目にすれば、かつてそれをアポツティが褒めてくれていたことを思い出す。


 ああ、あの頃は幸せだったな……。


 こみあげる寂しさと切なさ。


 私たちはどうして上手くいかなかったのだろう。どこで何を間違えたのか。もしも何か違ったことをしていたら、私たち二人の未来は何かもっと幸せなものへと変わっていたのだろうか。


 はぁ、と溜め息をつけば、その音は宙に溶けて消えた。


 ――だがその翌朝。


「カレッタ! 起きてる!?」


 母が自室に駆け込んできた。


「え……」

「良かった、ちょっと綺麗にしてから出てきて!」

「え? え?」


 何やら慌てている様子の母。


 ……これは一体何が起きたのだろう?


「取り敢えず、服着替えて出てきてちょうだい!」

「う、うん」


 何かあったのだろうか?

 よく分からないが……取り敢えず着替えれば良いのか。


 事情なんて分からないまま、寝巻きから家着に着替えてリビングへ。


 するとそこには一人の青年がいた。


 ……誰?


「初めまして、カルセドラと申します」


 高級そうな濃紺のベストが印象的な格好をしている。

 良い家の出であることを感じさせるような立ち居振る舞いだ。


「は、初めまして。カレッタと申します」


 カルセドラは軽く一礼してからその整った面に笑みを浮かべる。


「やはり、こうして近くで目にしてもお美しい」

「え……何ですか急に」

「以前、王家主催の晩餐会にて、貴女の姿をお見かけしたのです。それから気になっていて」

「王家主催……ああはい、確か、半年くらい前……」


 もう少し前になるので記憶は若干怪しい。でも確かに王家主催の晩餐会に出席はした。あれは、参加する予定だった親戚のおばさんが急に体調不良になったとかで、私が代わりに参加したのだ。


「しかし、貴女には婚約する予定の相手がいましたね」

「はい、そのちょっと後くらいに」

「なのでお声がけはできずにそのまま……だったのですが、婚約が破棄になったと耳にしまして」

「はい……昨日です、お恥ずかしい……」

「その情報を得て、最後のチャンスだと思い伺ったのです」

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