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弱気な男爵令嬢と俺様生徒会長は実はお似合いです。

作者: 崎谷紫

よろしくお願いいたしますm(__)m

いつもありがとうございます。

ミシェット・ヒュイゼンは男爵令嬢として生まれた。

黒い髪の毛で赤い瞳の、自分でもカラスの様だと思っていた。

とても弱気で、幼いながらも地味に生きていきたいと思った。



だが8歳の時、母親の親友だというルチアーノ伯爵の奥方様にお茶会に招待され、

そういう煌びやかな所は嫌だと思い泣いたが、無情にも連れていかれた。

そのお茶会では、公爵の息子の婚約者選びも兼ねているらしく、

着飾ったお嬢様達で溢れていた。



これならばれないでしょう。



ルチアーノ公爵子息であるセイと他のご令嬢との顔合わせの時もこっそり木の陰に隠れていた。

選ばれたくない。

まあ、絶対に選ばれることは無いが。

こんな不気味なカラスを気に入るわけがない。

友達であるぬいぐるみのうさぎを両の手で持って、時間が過ぎるのを待つ。



落ちていたドングリを拾って「もぐもぐ。」とうさぎに食べさせる仕草をさせては遊んでいた。




「その兎、真っ黒で目が赤いなんて変なの。」

「ぴゃっ!!」



突然聞こえた声に、ミシェットはびっくりする。

恐る恐る振り返ると、知らない男の子がいた。



これはお母様が作ってくれたぬいぐるみだ。

「可愛いミシェットそっくりでしょう。」と言って、くれた時、大喜びをした。

大切な子なのだ。



すると男の子は大切なうさぎを掴むと、ミシェットが届かない頭上高くへと持ち上げてしまった。



「何だこれお前か。」

「か、か、かえして...っ!」



ぴょんぴょんと飛び跳ねるが、届かない。

耳を持ってゆらゆらさせられているうさぎのぬいぐるみが可哀想だった。

涙が出てくる。



「どうしようかなー。」

「ひっく...。」



お母様のぬいぐるみを取り返さなくっちゃ!

衝動的に思わず目の前の身体を突き飛ばしてしまう。

まさかミシェットがそうするとは思わなかったのか、男の子は簡単に転がった。

その拍子に放されたぬいぐるみを掴むと、一目散に走って逃げた。



「お前、面白いな!」



そんな声がしたが、一生懸命なミシェットには聞こえなかった。

そして次の日には何故か、ルシアーノ公爵子息の婚約者にミシェットが選ばれ、

挨拶にと公爵と共に家に来たのはあの意地悪な少年で、

ミシェットは幼いながら自分の運命を呪った。





いいえ、私に何かすぐに飽きる筈だわ!とミシェットは弱気ながらも気合を入れた。

物珍しくて構っているだけだと。

そんなこんなで気づけば17歳、シャルズ国国立学園3年生になっていた。

絶賛婚約中だった。

早く逃げなくてはと焦っていた。

地味に堅実に生きたいのだ。




「ミシェット、俺があげた髪飾りはどうした?」

「あっ、あれは...派手なので...っ。」



朝、学園の入り口で腕を組んだセイに声を掛けられ、びくりとする。

つけたくないからという本音は言わない。

そもそも黒い髪の毛には、何色の髪飾りでも派手なのだ。

ミシェットは二つに分けて三つ編みをして、髪紐で止めているだけで十分だった。

学園では目立ちたくない!

セイに話しかけられた途端、クラスまで走って逃げた。



セイは今や生徒会長をしている。

生徒の代表だ。

そんな人に近づきたくない。

ミシェットは地味に生きたいのだ。



以前は兄に、どうしたら婚約破棄をしてもらえるかと相談をしてみた。

真剣な悩みだった。

だが、兄は何分間も爆笑をした後。

お前がいちいち反応するから構うんだろうと言われた。



「あいつの好みの正反対の事をすればいい。ぎゃーぎゃーぴーぴー言わず、お淑やかで、刺繍が趣味で、静かな。」

「な、なるほど!」



そうして、ミシェットは苦手だった行儀作法や刺繍を頑張り、なるべく静かにした。

いつの間にか立派なレディになっていた。

セイのお父様やお母様は「さすが我が家のお嫁さん。」と喜んでくれた。

なんか違う。



兄に訴えたが、「お前素直だなー。」と誉め言葉にもならないことを言われて爆笑された。

セイにも「ミシェット自ら嫁入り修行をしてくれているとは。」と笑われた。






ミシェットはそのお姿を見つけると、ささっと物陰に隠れた。

学園の庭のベンチで、1年生のスノー・フィンデガルド伯爵令嬢が本を読んでいた。



きょっ、今日も麗しいわ!!!



まるでその場に凛とした白百合が咲いているかのようだ。

白い髪の毛を一つにまとめ、今日は淡い黄色のリボンをしている。

物語が楽しいのか、うっすらと頬が薄紅色に染まり、口元は微笑む。

その姿が見れただけで、ミシェットは今日は素晴らしい日だと思った。



ミシェットはスノー嬢の大ファンだった。




「このお話の続きが読みたいわ...。」



スノー嬢はぽつりと呟いた。

手にしていたのは今流行りのロマンス小説で、派手な展開のお話だらけでミシェットは読まないが、

お母様の趣味で家に続編が置いてあるのを知っていた。



どっ、どうしよう!?話しかけようかしら?

でも不審に思われたら!?

十分ミシェットは不審者だが。




スノー嬢は1年生だ。

この国の王太子殿下の婚約者であるため、入学当時も今も騒がられているが、

地味に生きたいミシェットには関係が無いと思っていた。



きっかけは、スノー嬢がミシェットの落したハンカチを拾ってくれたことだった。

母が刺繍をしてくれて、大切に大切にしていたものだ。

「愛しいミシェットそっくりよ。」と黒い、赤い瞳のうさぎを刺繍してくれた。



「失礼いたしますわ。ハンカチを落とされましたよ。」

「すっ、すみません!」



慌てて礼を言いつつ振り返ると、そこにはハンカチを差し出す、真っ白なお人形さんのようなスノー嬢がいた。

髪の毛を下ろしていて、ふわりと舞う。

ミシェットは見惚れてしまい、数秒動けなかった。



「?」

「あ、失礼しました!ありがとうございますっ!」



その白く細い手からハンカチを受け取る。



「可愛いうさぎさんですね。」



スノー嬢がそう微笑んだ時、あまりの神々しさに眩暈がした。

それからミシェットはスノー嬢の追っかけになった。




学園にはスノー嬢の悪い噂が広まっていた。

「私が男性だったら常にそばにいてお守りするのに...!」そう何度思ったことか。

それでも毅然とし、学園に通うスノー嬢は美しかった。

眼福だった。





「泣き虫ミシェット、まーたスノー様見てんのか?」

「ぴゃっ!!」



突然のセイの声に驚いた。

話しかけないでほしい。

今は、スノー嬢観察で忙しいのだ。

返事をすると、会話になってしまうのでセイの事は無視をする。



「くうっ、歯がゆいわ!私が男性なら噂をしている奴等を皆こてんぱんにするのに!」



ぐっと拳を握る。



「そうしてスノー様とすぐにでも結婚を...。」

「お前は俺の嫁だろう。」



何か言われたような気がするが、無視をした。



「でも、目の前にずっとスノー様がいらっしゃったらドキドキで倒れてしまうかも!」



想像をしたら、何て恐れ多い光景だろう。



「旦那になるなら早死にはいけないわ!スノー様をお守りしないと!」

「だーかーらー、お前は俺の嫁だって。」

「にゃっ!!」



左の三つ編みを引っ張られて変な声が出た。

思わず原因のセイを見る。




「やっと俺の事を見たな。そんなお前に朗報だ。」

「なっ、なんですの...っ。」

「スノー様にお会いできるぞ。ユイシア様に俺の婚約者をスノー様に紹介させてくれって言ってやったからな。」

「...っ!...っ!」



その言葉にミシェットは胸がばくりとした。



「セイ様大好きっ!!」



思わずそう叫んで万歳をしていた。

そんなミシェットには、セイの真っ赤な耳には気が付かなかった。





「は、初めまして。ミシェット・ヒュイゼンともうしましゅ!」



かっ、嚙んだー!!

あまりの緊張に、ミシェットは名前を噛んだ。

隣でセイが爆笑をしている。



すると、スノー嬢はにこりと微笑むと。



「ハンカチを拾って以来ですわね。スノー・フィンデガルドと申します。」



そう言ってくれた。



「おっ、覚えていてくれたのですか!?」

「ええ、可愛い刺繍がされていましたもの。」



スノー嬢がミシェットの事を覚えていてくれていたことに感激をした。

今だったら、苦手な人参も1本くらい食べられる気がした。

いや、やっぱり1口かも。



「わたくしも昔、ユイシアの名前のシアが難しくて、ユイシャと呼んでいたわ。」

「今だってそう呼んでくれてもいい。」



自分でつけたのにねと、ころころと可憐な声で笑うスノー嬢は最高だった。



「あっ、あのっ!これスノー様が探していた本ですっ。偶々家にあったので。」

「まあ。」



どうしてそれを?と言う言葉にどきりとした。

まさか庭でずっと見ていましたとは言えない。



「後編が読みたいと思っていたの。図書室に行ってもずっと持ち出し中で...。」

「言ってくれれば買うのに。」

「ユイシア、図書室でかりるのも本を読む醍醐味なのよ。」



ユイシア王太子殿下と会話を交わすと、スノー嬢はミシェットを見る。



「おかりしてもよろしいのかしら?」

「はっ、はい!何だったら貰ってくださいっ!!」



思わず「私ごと。」と言いそうになったが、セイがミシェットの三つ編みを引っ張ったので我に返れた。



「それは申し訳ないわ。」

「だったら俺に返してくれればいい。生徒会室にいつでもいるから。」



セイの助言で、無事にスノー嬢に本を渡すことができた。

それだけでも嬉しかったのに、「これからお茶でもしよう。」とセイが言ってくれて、

休憩室でお茶をした。

もう嬉しすぎてミシェットは爆発寸前だった。





「今日ほどセイ様の婚約者であって良かったと思った日は他に無かった...っ!!」

「はっきり言うな、お前。」

「スノー嬢が王太子妃になられたら、侍女としてお仕えしようかしら!!」



そう興奮気味に言うミシェットに。



「だから、お前は俺の嫁だっていうの。」



セイは決して痛くない加減で優しくミシェットの三つ編みを引っ張った。



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