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5:信じられない事は連続して起こりがち

 カイトが起こした虹色の光は消えたが、その興奮は冷めないまま2人の周りには、人が多く集まってきている。春の日差しは心地よく、暑さなんて感じなかったが、人の熱気で温度が何度か上がっている気がする。


「さ、次はユウの番だよ。がんばって」


 自分は終わったからと、いつもより余裕ぶってカイトが言う。元来、飄々とした男だがそれに輪がかかっているように感じるのはカイト本人の安堵感からなのか、もしくは柄にもなく自分が緊張しているからなのか。


「では次の人、手を出して魔力を入れてください」


 教員がそう口にする。ゆっくりとした動作で手を差し出したため、ローブもそれに合わせるようにゆっくりと揺れた。その醸し出す雰囲気がより一層空気を高めていく。


(こいつさっきから何もしてなくないか)

 

 そんな事を思ったが、口には出さずユウも大人しく石に向かって手を伸ばす。その時、視界の端に黒髪の女子生徒が見えた。人は多くいるが、彼女だけ目立ってみえるその姿は、単純に綺麗とか美しいとかそんな表現では表しきれない何かがあった。

 その女子生徒は、元々大きな目をさら見開き、驚いているようにも見える表情でこっちを見ている。


(どっかで見たことあるような……?)


 そんな事を思い、一瞬動きが止まると、なんかあった?とカイトが声をかける。

 ユウははっとして、なんでもないと言いながら意識を石に戻す。今はこっちに集中しよう。そう思い、一息置いて両手を差し伸ばした。


 その瞬間、キンっと言った高い音とともに金色の光が爆発したかのような現象が起きた。ユウはもちろん、その場にいた全員が目を覆ってしまうほどの光が一帯に広がり、周りにいた女子生徒などからは小さな悲鳴が聞こえる。

 

 視界が元に戻った時、時空でも歪んで世界が入れ替わったのかと思うほど、目の前の風景が数秒前とは様変わりしていた。


 学園中の木々は一面芽吹き、空中には真っ白な花びらが舞っている。その光景は、これが天国だと言われたら誰もが信じてしまう程綺麗でとても澄んでいる。


「……なんだ、これ」


 その現象を起こしたであろう張本人のユウがぽつりとつぶやいた。それを皮切りに、動揺と騒めきが周囲に広がる。これは光魔法?いやでも、こんな光景ってあるか?さすがにこれは……そんな事を口々に言い合っている。それに答えるかのように教員が口を開いた。


「……これは、間違いなく光魔法だ、しかも私が見た中で、いやもしかしたら歴代最高になるかもしれない」


 周囲にどよめきが起きる。カイトも、ユウすごいよと興奮気味に話しかけているが、当の本人は今の光景に唖然としている。

 

(歴代最高だと?しかも光魔法の?どうしてよりにもよって自分が?)


 別にユウとしてはなんだって良かったのだ。水だろうと土だろうと、適当に3年間過ごそうと思っていた。ただ正直なところ、どうせ兄達と同様に闇魔法だろうと思っていた。そんなところに、この俺が光魔法。柄じゃない。


「……この機械、さっきの衝撃で壊れたんじゃないんですか?」


 そう思いたいユウは、そんなわけないと分かりながらも一筋の望みをかけてそう言ってみる。


「いや、これが壊れるわけがない!万が一壊れたとしても、その時は魔法自体が発動されない。この現象が起きたと言うことは、これがあなたの実力ですよ」


 そんな馬鹿な。森山家の三男が歴代最高の光魔術師になろうとしてるなんて。笑い物だ。自分に一族としてのプライドがあったわけではないけれど、滑稽すぎて嫌になる。


「ユウ……同じクラスだね!俺としては嬉しいよ」


 カイトは満遍の笑みで言う。同じクラスになれた嬉しさ3割、残り7割は、柄にもなく今後光魔法を使わなければならない俺を面白く思っての笑顔だ。ああ、こんなはずではなかったのに。

 今だ消えることなく舞っている花びらと、学園中に咲き乱れた花を背景に、ユウは愕然とするのだった。

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