1:プロローグ
今から500年前、長い長い戦争の時代があった。白魔術師と黒魔術師が、互いの魔力を争いのためだけに使用し、発展させてきた、そんな時代。
数えきれないほどの人が杖を人に向け、殺し殺され、お互いが憎み合い、再び争い、そして世界は消耗していった。
その間およそ300年。暗黒の時代と言われている。
もう誰もが何のために争っているのかも分からなくなった頃、このままでは世界が滅びると危惧した互いの首脳陣が集まり、数年がかりの話し合いを経て戦争を終結させた。
―国境も領土もなくし、互いに手を取り合って一つの国を作り上げよう―
そんな理想の下、世界国家『エデン』が建国された。魔術の隔たりをなくしたその国は、恒久の平和を願い新しくスタートを切ったのであった。表面上は。
たとえ戦争が終わっても、法律が変わっても、友人・家族を殺された憎しみや悲しみはそう簡単に消えるものではない。表立った争いはなくとも、元黒魔術師と元白魔術師は、お互いが積極的に干渉することはなく、自然に壁は作られていった。
しかし、それも昔の話。戦禍を知らない若者たちにしてみれば、歴史の1ページに過ぎない。何代も前の親族が殺し合ったのは理解しているが、それはほとんど自分達には関係のない話。
そんな、世代間で概念が違っている時代。新しい世代に移りゆく最中で、現代の若者が繰り広げるファンタジー学園生活が今始まる。
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