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マリアンナのお茶会

アレクが好きであがくマリアンナのお茶会

アレク目線

おれをちいさいアレクとみているリシアの目が、あの忌々しい事件をきっかけにかわり、やっと男としてみてくれるようになった。


あのときはおれの残忍さをリシアに知られないように細心の注意が必要だったが、それよりもギルバードがおれに似ていて驚いた。


ギルバードの年に騙されてはいけないとわかっていたが、油断してリシアを王太子のうちの子にしてしまった。


ギルバードが早くから手を打っていたとは・・・・さすがとしか言えない・・・あいつ子供の姿をしたおれだ。


今日もおれはリシアのもとへ王太子宮へやってきた。


リシアはいつものように笑顔でおれを迎えてくれる。そばにギルがくっついているのが最悪だがな。


兄上は即位の準備でいそがしく、執務をギルとリシアがやっている。ギルのやつひとりでできるのにリシアをそばに置いておきたくて手伝ってもらっている。


読んでいた手紙を黒い笑みを浮かべながらギルがおれに渡してきた。紋章をみていやな予感がしたが、やはり隣国からだった。あのうっとうしい女がやってくる。


おれが婚約したことを知っていながらシレっとした顔で纏わりつくだろう。


リシアをいじめないか心配だ。そうだ王太子宮はいそがしくなるだろうからリシアはうちに来てもらおう。


だが、リシアをうちに連れてくることはできなかった。


ギルの奴が結婚前の娘がなどと、どこぞのパパのようなことをグダグダ言いやがったからだ・・・


あっとこうしてはいられない、あの女、マリアンナが来る・・・逃げたいが・・・リシアをおいていけない。



マリアンナを歓迎するお茶会が仕方なく開かれ、仕方なく出席した。


リシアをおれとギルではさんで座り、おれの横には義姉上がすわってくれるというのでお任せした。


向かいの席にすわったマリアンナがリシアに話しかけている。


「学院はどうでしたか?この国の学院は水準が高くて、留学している貴族が多いですよね」


「わたくしは学院に、いっておりません」


「まぁおうわさの通りの方なんですね。なんでも平民出身とかってひどいうわさですよね。よりによって平民とは・・・」

「うわさがどんなものかたよく存じませんが、確かにわたくしは平民出身です」


「まぁ・・・」そういうとマリアンナはおれのほうを意味ありげにみてくる。


「やはり、アレク様のお相手はいやしい平民というわけにいきませんわ」


するとギルが立ち上がった。しまった先を越された。

「姉上、こんな不愉快なくそあ・・・いや、不愉快な存在と同じ空気を吸いたくありません。わがまま言って申し訳ないですが、席を外します」リシアに腕を差し出し、「よろしければわたくしと・・・」


すぐにかぶせておれも言った。

「大事なリシア、わたしも席を外したい」というと手をとって席を立った。


「いえ、アレク様」とマリアンナがあわてて言うが、


「あなたからそう呼ばれるほど親しくないが」というと


「あの、あの、そんなつもり・・・違います・・・」


「兄上お先に失礼します」

「父上お先に、失礼します。姉上のことはお任せ下さい」


こうしておれたちと邪魔者(ギル)は席を立った。


「ギル、仕事が立て込んでいるからおれたちは戻る」


そういうと返事も聞かずにリシアの腰にあてた手に力をいれた。


魔術師団へ行きながら、リシアが思いがけないことを言った。


「ギルとアレクの行動が早かったのでわたくしが反撃できませんでしたわ。あういう、周りがみえないオバカさんには、一言、言ったほうがいいわよね。あの方アレクを慕ってらっしゃるようですね。渡しませんわ」

次の瞬間、おれはリシアを抱きしめて、くちづけをしていた。


それはもう、熱烈にここが道の真ん中だということも忘れて・・・・



おれは力が抜けたリシアを抱えて、魔術師団に戻った。ソファにすわって続きをやっていたら激しくドアがノックされた。


知らんふりしていたら、もういちどノックされドアが開いた。


案の定、ギルだった。


ソファに横たわるリシアに向かってギルは


「姉上、もう安心です」とほざきやがった。


「ギル、大丈夫よ。ちょっと・・・あの・・・大丈夫なの」


「もう、姉上を守るのはぼくの役目ですよ。姉上戻りましょう」


少し押し問答をしたが、リシアは化粧室に消え、身仕舞いをして戻ってきた。


「さぁ姉上、父上も母上も気にしてらっしゃいます。家にもどりましょ」


こういってふたりは戻っていった。



それからというもの。リシアが魔術師団にいるとギルが様々な口実で呼びに来た。


やれ、パレードの順番をどうしたらいいか?パレードのときの馬車の席はギルが右だと右の観客が不満をいいそうだからどうしたらいいか。リシアに一番似合う色はどう考えても白だとおもうが、などまぁいろいろ考えついてやってくるのだ。


それをリシアがやさしく相手してやるから調子に乗って・・・・


だが、マリアンナ一行の動きで気になることがあっておれはリシアの侍女を増やすよう指示をだした。


そして即位式とその後のパレードは当たり前だが、無事に終わった。


リシアはギルの懇願にもかかわらず、白いドレスは結婚式にとっておくと言って、そのかわりアクセサリーをギルの目の色の青にして青と紫のグラデーションのドレスと身にまとった。


ギルはリシアの紫のタイを締め上着の袖と襟に銀の刺繍を施していた。


ふたりが並ぶと美しく調和していた。王家の魅力にあふれた姿だった。


不覚にもふたりの姿に感動したが、結婚式のおれとリシアはそんなものじゃないと気をとりなおした。



即位式が終わったというのにマリアンナはいっこうに帰らず、名残のお茶会と称しておれとリシアとギルを招待してきた。


うれしくなかったが、これもお役目、おれたちは時間になると彼らが滞在している、離宮をたずねた。



席に着いたのは、式典に招待されたマリアンナと隣国の公爵令息、おれとリシアとギルだった。


あたりさわりなく、隣国で作られているワインの話しや、果物を使った酒の話をしていたが、マリアンナがお酒をごちそうしたいから、とりにいくといいだして、おれについてきて欲しいといいだした。


おれは断ったが、ギルが行ってこいといいやがって


「姉上にはわたしがついていますから、アレク兄様行ってあげてください。わたしもお酒を飲んでみたいです」


それでおれはマリアンナと一緒に酒をとりに行った。二人きりはいやだったので、侍女をひとり連れていった。


そしたらマリアンナがわざとらしく転んで、足をくじいたと言い出した。


しかたなく抱えて医者のところへ連れて行った。治療に随分時間が掛かり、戻ったらギルがいなくて公爵がリシアにぴったりとくっついてすわっていた。侍女のようすが少しおかしかった。


そしてリシアの髪が乱れ、ドレスがお茶で濡れていた。


マリアンナが

「どうしたんですか?公爵まさか?」

「申し訳ありません、リシア様をお慕いする気持ちを隠せなくて」

とこせがれが言うと、マリアンナは

「なにをしたの?無体なことを」

「侍女がいたのでは?」とおれが言うと

「その、お湯の沸かし方がわからなくて他の侍女をさがしに行ったのです。その間リシア様をひとりに」

と侍女が泣き伏しながら言うとリシアが

「あら、お湯の沸かし方はわたくしが教えたからあなたはずっと部屋にいたでしょ。そしてあなたが転んで、腕がわたしの髪にあたって髪がくずれたのでは?」

と言い、

「お嬢様、わたしが嘘を言ってるとでも」

「リシア、すまないことをしてしまった。わたしは責任をとりたい」

とこせがれが言うと

「この程度のことで責任なんて、必要ないですわ」

「リシア、女にとってこの程度ってことはないですわ」

「アレク様、このおんなの貞操観念はおかしいですわ。お気の毒にわたくしがお慰めいたします」

とマリアンナが大きな声で言っていると


ギルが戻ってきて

「どうしたんですか?」「あっ姉上、ドレスが火傷してませんか?髪が侍女はなにを?」

「大丈夫よ。それよりギルは忙しかったわね。もう済んだの?」


「はい、それが父上は呼んでないってことでしたが、顔をだしたせいで他のことを言いつけられて戻るのがおそくなりました。ですがなにかあったのですか?」


「はい、わたくしがリシア殿に無体なことをしてしまいました。責任をとって我が妻に迎えます」


「なにを言ってるんだ」こせがれを睨み、おれはリシアを抱きしめた。


「はい、責任を取ります」とこせがれはおれをみてふるえたながらもそう言った。


「その責任をとるほどのことってなにが起きたの?」とギルが令息に尋ねた。


「その実は、ふたりきりになった時にリシア嬢の魅力に負けてつい無体なことを」

ギルはそれを聞いて一瞬、怒りをあらわにしたが、

「姉上ほんとうですか?」と穏やかに聞いた。

「いいえ、ふたりきりになっていませんから」と答えた。

侍女にむかってギルが

「どうなの?」と聞けば、真っ青になりながら

「そのお湯の沸かし方がわからなくて、やり方を教えてもらいに他の侍女をさがしにお部屋をでてしまいました」


「お湯の沸かし方はわたくしが教えましたので、この子は部屋をでていません」


「ふたりの言い分が反対だね」とギルは言うと


こせがれにこっそりと質問をした。


こせがれは顔を赤らめながら、なにか答えた。


ギルは顔を赤らめながらおれのそばにくると


「アレク兄様、姉上の太ももに足の付け根のあたりにふたつ並んだほくろがありますか?」

そんなこと知ってるわけないだろ・・・


「いや、知らない」と答えるとギルはふっと笑うと


「困りましたね、どうやって証明しましょうか?」


「リシア付きの侍女を呼べばいいのでは?入浴の介添えをしている侍女を呼べばいいのでは?」

と俺が言うとギルはそうですねと言うと


「姉上は戻られたほうがいいでしょう。わたしがついていて差し上げたいが、この始末をつけなくては今、侍女を呼んでます。一緒に護衛も呼んでますので戻ってください」

「ううん、ギルそれでは過保護過ぎます。わたくしも知っておきたいですわ」

「姉上、今回はわたくしのわがままを聞いてください」


「アレク」とリシアがすがるように見てきたが、おれは顔を横に振った。




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