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おしえて、研修生!  作者: きりぞら
第弐章 響け、届けよ。ウォロス
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第43修 おてほん


 体を回すようにねじり、伸ばし、屈伸して。準備運動を終えたアルムは笑みを浮かべ、ノルムとラルムを見据える。対する二人も構えの姿勢をとった。



「よし、オレは形式Cでいくぞ。

 形式Aでかかってこい、二人とも!」



 ──……一斉に張りつめる空気。真剣そのものといったそれに、ユースティとソルリアはすぐに三人から距離を置く。


 初めにラルムが懐から鈍く輝く銀色の塊を出し、上に投げる。光を放ちながら変形して現れたその取っ手部分と引き金に彼の指が添えられるころには、銀色の塊は立派な武器の一つとなっていた。



「ユース、あれ銃ってやつだよな。初めてみたっ」


「確かに銃だ。形ごと変わるなんて、風船斧くんとはまた違う仕組みだな……!」



 構えた銃口の向こうでは、既にノルムがアルムへと接近し、こぶしや蹴りなどの近接攻撃を放っていた。攻撃が単調にならないように角度やタイミングを上手くずらしてはいるが、アルムもすべてを避けて距離を取り続けている。それ以上は上手く踏み込めない。

 なんとかアルムの回避のペースを崩したい、ラルムは引き金を引く__ギュンッ。勢いのある音と共に放たれた白い閃光に、アルムは体を大きく反らすことを強制された。


 体勢が崩れた当人も嬉しそうに口を開く。



「今のナイスだぞ、ラルム!」



 これはチャンスだ。そういわんばかりにノルムが距離を詰め、黒い鉄を懐から出して。ラルムのものと同じように変形させてからアルムの横腹へ薙ぐように振りかぶる__二本の長さの違う棍が鎖で繋がれた武器、ヌンチャクだ。

 崩れた姿勢をそのまま後ろへ倒れ込もうとしていたアルムは咄嗟に片手側転へと切り替えて。雪解け水を散らしながら軽々と距離を取った。攻撃側に感情移入をしていたのであろうソルリアが唸る。



「あそこから体勢を変えられるのかよ……っ」



 アルムの柔軟性のある回避バランス。それを崩すため放たれるラルムの閃光のような銃弾と、僅かな隙も逃すまいとするノルム。お互いの読み合いと動きに、観戦している方も呼吸を忘れる程だった。



「うんうん、二人共上達してるな──よし、じゃあそろそろいくか」



 膝を曲げて弾みをつけ、再び跳ぶ。今度はアルム自身からノルムの頭上をとって。



「ちょっと痛いけど、我慢しろよっ」


「なっ」



 踏み込んできていたノルムへ、アルムはそのまま乗るように両足をその首に巻き付けて軽く捻る。姿勢のバランスが取れていない体は容易く重心を移動させられ、そのまま二人揃って横へ倒れた。



「ッ──……」



 水飛沫を浴び、転がされたノルムは足で首を挟まれ続け、息が出来なくなっていく。暫く暴れていたがとうとう逃げることは叶わなかったらしい、アルムの足をぺしぺし、と叩く。



「! ギブ、ぎぶじゃっ……」


「ノルム!」



 ギブアップを告げられた瞬間にその首を離し、起き上がったアルムが歩きだす。



「よっしゃ、あとはラルムだなっ」


「あわ……!」



 一歩ずつ近付いて来る彼へ閃光弾をかろうじて放つも、動揺からか精度は落ちている。そのまま接近を許してしまい、腕を伸ばせば届く距離に。



「わわわ、わっ────うべっ」



 撃つことを止めて後ろに下がろうとするが、アルムは一気に近付き足をひっかける。ラルムはバシャッ、と尻餅をついた。




「あぁっラルム!」


「まぁそうなるよなぁっ」


「へっへーん、オレの勝ちぃ!」



 ……やんわりと一段落した戦いに、ユースティたちもようやく息をつくことが出来た。アルムも得意気に勝利を宣言したあと、涙目で見上げてきているラルムたちを見て苦笑する。



「大丈夫か、お前ら?」


「ううぅ……」


「まだまだ……か……」



 ノルムとラルムは反省そこそこに起き上がり、横に並ぶとアルムの言葉を待つ。彼は二人の真っ正面にたち、講評を始めた。



「今回ノルムはスピードが良かったが、パターンが完全に分離しちまってたな。踏み込みも力みすぎだ。予備動作も出来るだけ無くせるよう練習すれば、もっとよくなるぜ」


「精進する」


「ラルムはタイミング、狙い共に筋がよくなってる。だけど最後また遠慮しただろ。せっかくの訓練なんだからもっと撃って良いんだぜ?」


「っでもやっぱり親分のことは撃てないよぉ……」



 一転して弱気になったラルムへ、アルムは笑いながらその肩に手を添えて覗き込んだ。



「それはだーめ。ちゃんと撃ってくれ。普段から本気じゃなきゃ、いつ本気になれるんだってよくいうだろ?」


「はぁい…………」


「よし、第一回戦終わり! ありがとうございました」


「「ありがとうございました」」



 そうして礼をするとノルムとラルムは二人で動きについて話し、早速練習を始める。アルムはそれを微笑ましげに見守ってから、ユースティたちの方へと振り返った。



「……とまぁ定期的に、こんな感じで実戦訓練をしてるんだよ」


「ごめん、聞きたいことがいっぱいある! 形式Cって何? ラルムたちが今使ってた武器、あれどういう仕組みなの、魔法?! あとアルム自身は普段どんな訓練してるの?!」


「形式は戦う時に何を意識するかの設定で、ABCに分かれる。Aから順番に攻撃、防御、回避とカウンターだ。こいつらの武器は各地を旅した時に手に入れた、魔法じゃないけどそれぞれ特別なもので……──あー、また出てきた時に一つずつ話すから落ち着け! どうどう!」



 好奇心の塊に食らい付かれたアルムは両手のひらを見せ、ストップの意を示す。ユースティがそれに大人しく引っ込めば、やれやれと笑った。



「とりあえず今見て貰った通り、三人だと一回戦局が傾いたらすぐ終わっちゃうんだよな。だから、パターンを増やすためにもお前らに是非加わってほしい」



 なんていって勧誘してきたアルムへ、ユースティは真っ先に頷いた。ソルリアもつられて一歩アルムの方へ進む。



「おれたち、ここに来る前もヤテベオっていう魔物に襲われるままだったんだ。ある程度は自分を守りながら、周りも守れるようにもなりたい」

 

「俺もユースと一緒だ、それにいつかは自分で魔法も使えるようになっておきたいから!」


「じゃあ決まりだな!

 ……って、あれ? ソル坊は魔法使えてたよな」



 疑問を浮かべたアルムに、ようやくといったようにユースティは答える。



「そうなんだよ。でも、使いたいと思った時には使えないんだ。並べた魔素を起動する所が一番の課題でね」


「へぇ、そうだったのか。

 ならまず、今のお前らの状態を知ることから始めるか!」




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