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❖ 不滅の花は月影に咲く ❖  作者: 大神 刄月
❀ 第壱部 第漆章 消えた英雄と不知火の光 ❀
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第捌話 【 白き英雄と機械神 】

 満月が、両腕からプラズマのブレードを出し、

 向かってくる怪鳥の群れを、次々と切り落とす。




「どうした。毒が効かぬ鋼の体が相手では、手も足も出ないかッ!!」

『キエェェェェェェェッ!!!』


「おぅおぅ、暴れてんなぁ。俺も負けてらんねぇッ!!!」



      <<< 幻影呪術(げんえいじゅじゅつ)幻影晶壁(げんえいしょうへき) >>>



 灰夢がグッとしゃがみこみ、そのまま一気に空へと舞い上がる。



    <<< 幻影大剣(げんえいたいけん)壱ノ型(いちのかた)地獄車(じごくぐるま) >>>



 灰夢が両手で大刀を握りしめ、自らに遠心力をかけながら、

 グルグルと回転し、一列に並んだ鴆を一気に切り捨てていく。


「──満月ッ!」

「──おうっ!」


 満月が背中から空を舞うスケートボードのような板を取り出し、

 灰夢に向けて飛ばすと、灰夢はそれに乗って敵を切り捨て始めた。



    <<< 自動補足射撃オートシステムクリア破壊開始(バースト・オン) >>>



 満月が敵を切り捨てながら、ミサイルを次々と空へと打ち上げる。

 そして、落ちてくるミサイルが、怪鳥を空から撃ち落としていく。


 その人間離れした、圧倒的な戦闘力を見て、

 真希と恋白は、口を開けたまま固まっていた。


「いったい、何者なんだ。あいつらは……」

『あの白いロボットは、なんなのでしょう』

「外部の人間が操縦してるらしいが。まるで、あれが生きているようだな」

『あれが、人間の力……』

「白き英雄が、蘇ったみたいだ……」


「……大、丈……夫?」

『えぇ、大丈夫みたいです……』

「えへへ……」


 安心したように微笑む恋白を見て、白愛も笑みを浮かべる。


「ふっはははははッ!!! まだまだ、こんなものでは無いぞっ!」

「殺戮マシンの姿で、その笑い方はどう見ても悪役だろッ!!!」


 くだらない冗談をいいながらも、敵を切り捨てていく二人。

 二人は五分も経たないうちに、半数以上の怪鳥を倒していた。


 そして、空から舞い戻るように、揃って真希たちの前に降り立つ。


「ったぁ〜、結構倒したか?」

「なかなか暴れたな。ミサイルも、全て使ってしまった」

「老人に、あまり無理をさせるもんじゃねぇぞ。ったく……」

「どこが老人だ。全世界の老人カテゴリーに属する人々に頭を下げろ」

「メタルボディには言われたくねぇよ。人間の体にはしんどいんだぞ?」


 灰夢と満月が冷静に、残りの鴆の数を確認する。


「そろそろ、走り抜ければ帰れるんじゃねぇか?」

「この数なら、何とかなりそうだな」


『──キエェェェェェェェッ!!!』


「キエキエキエキエ……うるせぇなぁ、お次はなんだ?」

「突然、揃って鳴き出したな。何かする気だぞ、コイツら……」


『あ、あれは……』

「……まさかっ!」


 島の外れの方から、もう一体の怪鳥が姿を見せ、

 それを見た恋白と真希が、青ざめた顔で見つめる。


「おい、まだ外にもいんのか?」

「距離感がつかみにくいが、あの距離であのサイズは大きくないか?」

「……まさか、親玉ってか?」



『──キエェェェェェェェェェェェッ!!!』



 他の鴆よりも数倍大きな、左目に傷が付いた怪鳥が、

 灰夢たちを威圧するように、大きな羽を羽ばたかせる。


『……目に、傷……。こんなに、大きくなって……』

「……コイツが、あの時の……悪魔ッ!!!」



 ──その鴆は、十五年前に村を襲った怪鳥だった。



『人間無勢が、下等な人間が。(ちん)の縄張りを、(ちん)の配下たちを……』


「おぉ……。他のと違って、ボスは滑舌よく喋るんだな」

「一人称が『 (ちん) 』なのかよ。ややこしいな、コイツ……」

「……(ちん)だけにな」



 ※ (ちん) = 天皇などの高貴な者が使う一人称。



『貴様ら人間如きが、抗う資格も持たぬ愚か者共が……』

「……あ?」

『弱き者は朕に従い、朕を敬い、朕の為に命を捧げよッ!!!』

「ちんちんちんちん、うるせぇぞッ!!! ぶっこr──」

「灰夢、それぐらいにしとけっ! 放送禁止用語が出てるからっ!」


 好き勝手に喋る怪鳥を、灰夢が不機嫌そうな顔で睨む。



(ねむ)るな、(はたら)け、(よみがえ)れ。(ちん)忠実(ちゅうじつ)配下(はいか)たちよッ!!!』

「……ブラック企業かよ」



  <<< 神鳥奇術(しんちょうきじゅつ)虚空に生きる不死鳥(ボイド・フェニックス) >>>



『──キエェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!』


 その鳴き声と共に、龍脈の力が溢れ、

 切り捨てた怪鳥たちが、一斉に蘇った。


「……復活しただと?」

『朕の力を持ってすれば、我が一族は不滅だ……』

「ったく、いつから不死鳥に転職しやがったんだ」

『力無き弱者は喰われる定め。所詮は人間、雑魚に過ぎない』


「よし、コロス……。絶対に殺す、死んでも殺す……」

「死なないだろ、お前は……」


 本気でイラつき始める灰夢に、満月が冷静なツッコミを入れる。


「だが、相手も蘇るとなると、不死身同士の泥仕合確定だな」

「チッ、最悪のシナリオだ……」

「さすが、鴆の親玉と言ったところか。これでは、(らち)が明かない」

「まずは、アイツから片付けに行くぞ──ッ!!!」


 二人が同時に駆け出し、再び空へと舞い上がった。


『──キエェェェェェェェェェェェッ!!!』



   <<< 鳥獣演舞(ちょうじゅうえんぶ)緑扇乱羽(りょくせんらんう) >>>



 それを見た親玉の怪鳥が、鳴き声と共に、

 二人に向かって、巨大な羽を大量に飛ばす。



  <<< 幻影大剣(げんえいたいけん)弐ノ型(にのかた)心燈牙(しんとうが) >>>


   <<< 機神撃・紫電双刀乱舞(エクレール・ブレード) >>>



 それに立ち向かうように、二人が刃で応戦していく。

 他の個体とは違う、巨大なサイズの羽を切り落とす。


 その瞬間、突然のバンッという爆発音と共に、

 灰夢の横にいた満月が、羽に貫かれ砕け散った。


「……な、満月ッ! しまっ──」


 灰夢がよそ見をした隙に、鴆の親玉が動き、

 巨大な翼を使って、灰夢を地面に叩き落とす。


 真希たちの目の前には、砕けた満月の残骸が落ち、

 その横に打たれた灰夢が、勢いよく落下してきた。



 ──それと同時に、真希たちを包んでいた幻影が消える。



『なっ、そんな……』

「あの二人が、負けた……」

「……き、かい……さん、おに、ぃ……ちゃ、ん……」


 バラけた満月の姿と、砂埃に包まれた灰夢を見て、

 親玉の圧倒的な強さを知り、三人が言葉を無くす。


『後は、貴様らだけだ。下等な人間共……』

『そんなことは、させません……』


 恋白が残りの霊力を使い、少しだけ蛇の身体を大きくする。

 そして、大蛇の姿で地面を滑り、白愛と真希を体で包み込む。


『彼らの残した命は、わたくしが必ず守りきるっ!』

『生きていたか、白き手負蛇(ておいへび)よ。再び姿を見せるとは、何とも愚かだな』

『わたくしは例え何度でも、この子たちの為なら立ち上がる』

『所詮は喰われるのが定めだ。それが、弱肉強食の世界なのだ』



「……だ、め……かぞ、く……たい、せつ……」



 恋白の体を掴んで、白愛が涙を流しながら必死に声を上げる。


「……たす、け……て、き……かい、さん。お、にぃ……ちゃ、ん……」

『……白愛』


「灰夢、満月……。すまない。私が、巻き込んだばっかりに……」

『……真希』

「私が、この手で……。みんなの仇を討たなきゃいないんだッ!!!」


 真希も涙を流しながら、手元のマシンガンを怪鳥に向ける。


『全く、黙って食事になっていればいいものを……』

「家族の仇、村の皆の仇、二人の戦友(とも)の命も、無駄にはさせないッ!」


『──キエェェェェェェェッ!!!』



    <<< 鳥獣演舞(ちょうじゅうえんぶ)緑扇乱羽(りょくせんらんう) >>>



 周りの怪鳥たちと共に、親玉が巨大な翼で羽を飛ばす。

 その羽が、槍の雨のように、三人に向かって降り注ぐ。


『真希、白愛、伏せて──ッ!!!』

「……い、や……だよ……た、す……けて……」



( 私の十五年間は、無駄だったのか…… )



























      「 ……き、かい……さん。お、にい……ちゃ、ん…… 」



























      ──その瞬間、落ちていた満月の頭から低い声が響いた。



























            『 灰夢、あと三秒だ…… 』



























 再び巨大な影狼が、大きくなった恋白ごと包み込むと、

 大きな呪力の玉を放ち、向かってきた羽を全て蹴散らす。


「こ、この影は──」


 驚いた三人が、灰夢の落下した場所に目を向けると、

 砂埃の中からゆっくりと、上裸の灰夢が姿を見せた。



























      「 俺に、男の化粧直しを待つ趣味はねぇぞ。満月…… 」



























   そして、バラけたパーツから出た転送装置が起動すると、


          ビリビリと電気を放ちながら、巨大な光の柱を作り出した。



























   「 そう言いながらも待ってくれるのが、お前の優しいところだよ 」



























      そう告げる声が、光の柱の中から響き渡ると、


            自分の部屋にいた()()()()()が、姿を現した。



























         【  ❖ 機神撃・超電磁熊重砲ハード・ベアー・レールガン ❖  】



























 満月が出てくると同時に、巨大な怪鳥に向かって、

 自分の変形させた機械の腕から、大型の電磁砲を放つ。


『グハッ、コイツ──ッ!!!』


 それを顔面に受けた怪鳥の親玉が、怯んで地へと落ちていく。


「……き……か、い……さん、おに、い……ちゃん……」

「大丈夫だ、約束は必ず守る」

「俺らは絶対に負けねぇから、安心しろ。白愛……」

「……えへっ、うんっ!」


 灰夢と満月がグッドサインで、少女に笑顔を送る。

 それに応えるように、少女の不安な顔が笑顔に変わった。


「灰夢、満月、生きていたのか……」

「あぁ……。残念ながら、お迎えは遠分先らしい」


『新しい、黒い機体……』

「壊れたパーツも、リサイクルしないとな」


 平然と前に立つ灰夢と満月を見て、真希と恋白が目を疑う。

 そして、真希が二人の背中を見て、小さな声で呼びかけた。


「灰夢、満月……」

「……あ?」

「……なんだ?」

「お願いだ。奴を……。あのバケモノを、倒してくれ……」

「それは、お前の復讐の話だろ」

「私じゃ、もう……。歯が、立たないんだ……」

「…………」


 灰夢と満月が振り返ると、真希は悔し涙を流していた。


「お前らが死んだ時……。私は一瞬、諦めてしまった……」

『……真希』

「これは、私の勝手な復讐だ……。図々しいのも分かってる」

「…………」

「それでも、もう……。お前らしか、頼れないんだ……」

「…………」

「渡せるものは何でも渡す。この命だって、差し出す覚悟は出来てる。だから──」



























   「  だから、お願いだ……。絶望から、私たちを救ってくれ…… 」



























 真希は初めて、二人に頭を下げ、心から涙を流して願いを告げた。

 それを見た恋白も、真希に並ぶように、灰夢と満月に頭を下げる。


『灰夢さま、満月さま……』

「「 ……? 」」


『崇められる身でありながら、願いを告げることをお許しください』

「…………」

『白愛は、わたくしの大切な娘であり宝物なのです』

「…………」

『けれど、今のわたくしには、この子を守りきるだけの力がありません』

「……白蛇さま」

『無礼は重々承知の上です。どんな罰でも、謹んで、お受けいたします』

「……お、ねぇ……ちゃ、ん……?」

『ですから、どうか──』


























    『 どうか、報われない白愛(この子)に、明るい未来をお与えください 』



























 そう告げる恋白の瞳から、一筋の雫が流れ落ちた。


「……だ、そうだ。……どうするんだ?」

「はぁ……。こんなの、選択肢がねぇようなもんだろ」

「ここで逃げたら軽蔑するよ。オレも……」

「いや、お前がすんなよ……」

「するだろ。普通に……」

「まぁ、ガキの笑顔を守んのは大人の役目だかんな」

「なら、話は決まりだな」


「灰夢、満月……」

「真希は少し、その人を敬う気持ちを大切にしとけ」

「時には誰かと協力し、言葉を交わして生きていくんだ」

「憎しみに飲み込まれっと、人は心と視野が狭くなる」

「常に心に余裕を持って、今を笑える人生を生きろ」


「「 それが、俺ら…… 」」



























       「「 無駄に歳食った流浪人からの、


               恩着せがましいアドバイスだ 」」



























    その言葉に、真希は浜辺で出会ってから、初めての笑顔を二人に見せた。



























            「 あぁ、ありがとう…… 」



























「あと、恋白……」

「……はい」

「俺から二つ、条件を出す」

「なんなりと……」



























     「 白愛を残して、一人だけで死ぬんじゃねぇ。


             それが、俺から出す、一つ目の条件だ── 」



























              「 ……灰夢さま 」



























     「 それと、白愛の横でお前も一緒に笑ってろ。


            そいつが、俺がお前に出す二つ目の条件だ 」



























        「 ……はい。心より、感謝致します…… 」



























      灰夢の告げる言葉を聞いて、恋白の瞳から涙が溢れていた。



























「てか、満月……。お前は自分の意見はねぇのかよ」

「オレは技術者だからな。お前が戦うなら、それをサポートするだけさ」

「それを世の中じゃ、『 責任転嫁 』って言うんだよ」

「元々、オレがここに来たのは、お前がオレを呼んだだけだからな?」

「そういうところだぞ、お前……」

「まぁ、さすがに、『 逃げる 』と言ったら、お前に電磁砲を放つがな」

「怪鳥より先に、テメェをバラしてやろうか。クソサイボーグ……」


 緊張感の無い二人が、再び立ち上がる怪鳥を見つめる。


「んにしても、流石にあれは一筋縄じゃいかねぇな」

「だな。遠隔操作のロボットじゃ、さすがに限界だった」

「普通にバラけたしな、お前……」

「バッテリー切れだ。プラズマの出力が落ちてしまってな」


「お前、その姿でも死ぬとか無しだからな?」

「安心しろ。例え死んでも、部屋にある機体から蘇る」

「……は? そんなこと出来るのか?」

「自分で作った機体にしか移れないがな」

「いやいや、自分で作ったやつに出来れば申し分ねぇだろ」

「意識のバックアップ機能があるから、設定した機体に自動で心が移る」

「不死身じゃねぇかよ。なんだそれ……」

「お前が言うなよ……」


 一度やられても尚、微塵も緊張感無い二人を見て、

 恋白と真希が言葉を無くし、目を丸くして見つめる。


『愚かな人間共め。いい加減、葬り去ってくれるっ!』


「喜べ、ブラック企業の会長(怪鳥)さんよ。今から焼き鳥にしてやっから……」

「それなら、真っ黒になるぐらいには、こんがりと焼かなくてはな」

「任しとけ……。ウルトラ上手に、焼いてやらぁ……」




 灰夢と満月は怪鳥を見て、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

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