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第四話

 ネッドがいまだにエドガーと一緒にいられる理由。


 それは魔物討伐だろうが戦場だろうが、補佐として一緒に駆け回ることができているからだ。


 聖女のモアは治癒魔法が使えるだけではなく、結界を張ることができるから、敵からの攻撃を遮断することはできる。防御が完璧なのでエドガーと一緒に戦場にいたとしても自己防衛は問題ない。だから今まで困ったことはなかった。


 ではネッドはどうか。


 モアのような魔法が使えるわけでもないのに大怪我もせず、ずっとエドガーのそばにいる。

 それはすなわちエドガーと同等に力を持っているからに他ならない。


 エドガーは子供の頃からネッドだけには、力の加減をしたことがなかった。


 ハーレム要員を集めたときも勇者の力で思いっきり左頬を張り飛ばしている。

 それでもネッドはぴんぴんしていた。


 だから、エドガーは自分が勇者だと言われてもピンとこなかったのだ。



「あれだけのことをされても一緒に行くってことは、エドガー様はネッドさんが心配なのでしょう? なんだかんだ言いながらもやっぱりネッドさんのことが大切なんですね」


 モアの言葉にエドガーは、何故か左側の口角をあげ不敵な表情をつくる。


「それをおまえが言うか。モアも難儀だな。あんな奴に惚れちまうなんて」


「な、な、何を言っているんですか。私、ネッドさんのことなんて何とも思っていませんから。何度言っても、私とは親しくする気がなくて聖女様呼びする人を好きになる訳ないじゃないですか」


 顔を真っ赤にしながらモアは必死に否定する。

 これほどわかりやすくても、ツンデレのツンの割合が多すぎて、残念なことにネッド自身には嫌われていると勘違いされていた。


 しかも、モアはエドガーを好きだと思われているから、二人の邪魔をしたらいけないと、モアにしてみたら有り難くもない気を使って距離をおかれていることも知らなかった。


 ネッドに対しては、はっきり言葉で伝えない限り、『空気を読め』とか『雰囲気でわかれ』は明後日の方向で解釈されてしまう。

 付き合いも長くなってきて、モアもそれは十分わかっているつもりだが、まだまだ考えが甘かった。


「あいつ真面目で優しいからな。勇者なんてなっちまったらモテて大変だろうよ」


「いいえ、ネッドさんはちょっと変わったころがあるから、絶対にそんなことにはなりませんね。たぶんあの性格にはエドガー様と私しかついていけませんよ」



 三人で魔物討伐中、危なそうな冒険者を見つければ、自分の役目を後回しにして助けに行ってしまうし、魔族との戦いも好戦的な者以外はわざと逃がしていた。


 反乱の鎮圧時も領民への攻撃で、普通の人なら致命傷を負うかもしれない場合、それが目の前で起こっていることであれば、自ら間に入って身体を盾にした。そうやって領民への攻撃を邪魔をし続ける。


 戦場に不似合いな事務服を着た男がふらふらっと前に出て来ては、仲間からの攻撃を受けて倒れ、それをいつもエドガーが回収していたから、領兵からは『なんだこいつ』『何しに来たんだ』『足手まといだ』と言われていた。


 結局モアが領民の周りを防御壁で囲み(領民に怪我をさせないように)閉じ込めてしまい。これほどの力にはどうやっても敵わないと武器を置かせることができたのだが……。



「おまえもその性格を直さないと、いつまでたってもモアって呼んでもらえないぞ」


「うーん。仕事仲間として仲良くなりたいと思っているのが、私だけってのはちょっと癪ですね。お互いネッドさんには翻弄されていますけど頑張りましょう」


「本当だぞ。ネッドがまた変なこと考えないように見張っておかないとな。ついでにこのまま、いま依頼されている案件はすべてあいつに押し付けちまおうかな」


「エドガー様はそんなことを言ってやる気を見せないと、また面倒なことになりますよ。ほらネッドさんが戻ってきました」


 ネッドはエドガーたちに向かって大きく手を振っている。


 ぱんぱんになった背負い袋を担いだネッドはハアハアと息を切らしながら二人のところまで走ってきた。


「お待たせ。さあ、北の山までしゅっぱーつ」


 北の方向に指をさすネッド。


「行くか」

「行きますか」


「エドガーには希望通りドラゴンの肉を食べさせてあげるんだから、今度こそ仕事に精を出してよ」


 それを聞いたエドガーとモアは苦笑いをする。


「仕方ないから頑張るか」

「そうですよ。頑張ってくださいね」


 そう言いながらも、まんまとドラゴンの討伐をネッドに押し付けたエドガー。


 しかし、後でネッドがそのことに気がついてしまい「うーん、どうしたらエドガーのやる気は出るんだ」と頭を悩ませて、また、彼なりに知恵を絞っていたことを、エドガーはまったく気づかなかった。



『勇者へのファンレター募集。みんなで勇者を応援しよう。熱意ある素晴らしいものには金一封』


 今度はそんな依頼が張り出されていることを、勇者であるエドガー自身はまだ知らない。


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