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第三話

 始めのうちは珍しい物品や食べ物でエドガーを釣っていたネッドたち。


 実はエドガー、自分が納得できる仕事であれば、やる気がないわけでもない。だから、ネッドたちが普通に説得に当たればすぐにでも動くつもりでいた。


 しかしそれを理解していなかったネッドとモアはあたふたしながらいろいろと策を講じる。


 その姿が面白く、二人を眺めることを密かに楽しんでいたエドガーは、わざと仕事に取り掛からないことが多かった。


 そうこうしているうちに、ネッドがとんでもない方法を思いついて実行したのが『勇者のハーレム要員、募集』。


 今回の件、エドガーの自業自得な部分もないとは言えない。




「お金はもう有り余っていると思うし、食べ物は世界三大料理、三大珍味まで食べつくしちゃったでしょ。そうしたらあとは色欲しか残ってないよね。エドガーにやる気を起こさせるために真面目に考えたんだけどな」


「おまえは俺のこと、何もわかってないんだな」


「うん、エドガーの好みはよくわからなくって。ごめん、あの人はタイプじゃなかったんだね。だから一人じゃなくてハーレムだったら女の子を選び放題だと思うんだけど」


 ネッドの言葉を聞いたエドガーは嘆息をする。


「俺の好みとかそういう問題じゃない。誰がハーレムなんて欲しがった。それに万が一女に溺れてしまったら逆に仕事どころではなくなるだろうが。だから二度とこんなまねはするな」


「そうですよ。エドガー様にその気がないのに、女性たちを集めてしまうなんて、応募してきた人たちに対してもとても失礼です。特に鍵を渡した方にはそれ相応の補償と賠償をお願いしますね」


「あ? ああ、そうか、そうだね。二人には迷惑だったよね。ごめん」


 諭されたネッドは正座をしながら、二人の顔を交互に見つめたあとで素直に謝った。


「だったらどうすればエドガーはやる気が出るんだよ?」


「上層部に対してはまだ不信感の払拭はできそうにないから、やる気なんてでるわけないだろ――でも、またこんなことになったら俺も困る。だから、上の目を誤魔化す程度にちょっとだけなら仕事をしてもいいぞ」

「本当に?」

「ああ、その代わりその報酬として、ドラゴンの肉が食いたい」

「それならすぐに探してくる」


 ネッドはニコニコしながらその場で立ち上り、すぐにどこかに走り出しそうな勢いだ。


「いや待て」


 買い出しに行こうとしたネッドをエドガーは止める。


「市販の肉じゃなくて、おまえが狩ったドラゴンでなければだめだ。今なら北の山のドラゴンが旬だな。脂がのっていて旨いそうだ」

「北の山のドラゴン?」


 そう言われてネッドは少し考えた。


「北の山まで十日か。二十日で戻ってくるから楽しみにしてて」


「ちょっと待ってくださいネッドさん。ドラゴン相手では治療が必要になるかもしれませんよ。私も同行しますから」


 今度は、北の山に向けて走り出しそうなネッドをモアが急いで止める。


「それなら、俺も一緒に行くか。ほとぼりが冷めるまで王都付近からは離れていようと思っているからな。いまなら好都合だ」


 エドガーもそうネッドに声をかけた。


「僕ひとりならこのままでもいいと思ったけど、聖女様とエドガーもついてくるなら旅の準備が必要だね。用意してくるから二人ともここにいて」


 しびれた足もなんのその。ネッドはあっという間に町の中へと消えていった。


「エドガー様」

「なんだ?」

「北の山のドラゴン討伐って、もともとエドガー様のお仕事ですよね。ネッドさん、その事に気づいてないのでしょうか」

「さあ、どうだろうな」

「前から思っていたんですけど、神託は降りてないだけで、ネッドさんも絶対に勇者ですよね? 自覚はなさそうですけど」

「ああ、あいつもドラゴンを一人で倒せるくらい強いから、たぶんそうだろうな」


 実はエドガー、自分が勇者として選ばれた時にとても驚いていた。それは、小さな頃からすぐそばにネッドがいたせいで、自分が特別だとは思わなかったからだ。


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