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カルディナ 奇襲する

「それでは、カルディナ、後のことは手はず通りにお願いするわ」

「了解しました。お嬢様もお気をつけて」

 

 セドリック様と共にハーマンベルへ戻るお嬢様を見送るとすぐに横に待機していたノナン大佐へ顔を向ける。


「騎兵連隊から(いかだ)を作る者と鹵獲(ろかく)した砲と弾薬を集める者を抽出してください」


 その命令にノナン大佐は露骨に嫌な顔をした。


「筏を作りと砲兵の真似事ですか?

そんなのやったことありませんよ」

「木を伐って組むだけでしょう。

そんなの子供の頃にやったことがあるでしよう。ないんですか?

……作ったことのある者を選抜してください。一人、二人はいるはずですから。

実際に砲を運ぶのは、もうすぐ到着する予定の砲兵に任せます。あなたたちは手早く砲兵を案内できるように、使えそうな大砲や弾薬がどこにあるかをあらかじめ調べておくことです。

辺りが明るいうちにある程度場所の目星をつけておいて欲しいのです。

どちらもそんなに難しい話ではありません。

さあ、分かったらすぐに動いて!

時間はありません」


 ノナン大佐は少し不服そうな顔をしたが、何も言わずに任務を果たすために去っていった。

 一人になったので、右手を何度か握ったり開いたりしてみる。大分握力が戻ってきていた。肩より上にゆっくり上げてみると、刺すような痛みがあった。

 槍を扱うのは難しいけれど、手綱を持つぐらいはできそうだ。なんとかなりそうだ。少し安心した。

 北から身を切るような寒風がふきすさぶ。じきに日が沈む。

 さあ、寒くて長い夜の始まりだ。




「射程の長い砲を優先して運んでください。

最短、二日後にはハーマンベルで戦闘が開始されますからそれまでには戻れるようにしてください」

「6クラギー砲相当の奴だけを運びます。持っていけない奴はどうしますか。

地面に埋めて後で掘り出します?」


 砲兵隊長の問いに首を横にふる。


「時間がないので持っていかないものは全て河に破棄してください」

「了解しました。準備完了後出発します」


 空を見上げる。星の配置から夜の10時ぐらいかと当たりをつける。歩兵の足だとハーマンベルまでは休まず歩き続けて10時間ぐらいかかる。砲を牽引する馬だともう少しかかるか。ざっと15時間。陣地構築も含めてもなんとか戦闘には間に合いそうね。後は戦闘が早まらないのを祈るだけだ。

 そこへ伝令がやってきた。


「カルディナ大佐。筏の準備ができました」




 夜の闇。目の前にはミュゼ河が流れている。水の音と時折、星の光を反射させてることで辛うじてその存在を認識できた。灯火管制を敷いているので松明やランプ等の光はほとんど無く、作業は文字通り手探りの状態で行われていた。


「筏は何個作ったのですか?」

「5個ほどです」

「少ないですね。最低で20は用意してください」

「まだつくるんですか?!」


 まったく、この男は文句が多い。

 騎兵はプライドの高い連中が多いので本当にうんざりだ。確かにこの手の仕事をするのは工兵だけれど、いない以上、いる人間で何とかするのが戦場の掟だ。

 頭ごなしに怒鳴りつけてもよいのだけれど、新参のまして女の指揮官に対してただでさえ不満を募らせているだろうから、後々の指揮のことを考えると、ここは我慢する。

 ほんと。めんどくさい。

 

「必要な物を必要な分だけ作ります。20必要なので引き続き、筏を作ってください。

それとは別に今ある筏をつかって対岸の橋頭堡(きょうとうほ)作りを始めます。対岸の受け入れ設備の設営する部隊と斥候の編成をお願いします。斥候を優先させます。10人ぐらいですね。人選をおねがいします。

対岸の様子を確認してから設営隊の渡河の判断をします。

設営隊の編成は大佐に一任します。

私も斥候ででます。

筏の製作も忘れずに進めてください」




「さあ、おいでアベル。怖くないから」


 愛馬のアベルをなだめながら筏に乗せる。

 アベルはおっかなびっくり筏に脚をかける。自重で筏が沈んだ。ぶるる、といななくと乗りたくない、と私のほうを潤んだ瞳でじっと見てきた。


「大丈夫。怖くないから。勇気をだしなさい」


 アベルの鼻面を優しくなでて耳元でささやく。なんども嫌々と首をふるが、私の意志が固いのを理解すると観念して仕方なしに筏へ乗り込んだ。


「よし!いい子ね。しゃがんで。そうそう」


 筏の真ん中になるように位置を調整してアベルをしゃがませる。もう一度、具合を確認してから筏の船頭役の兵士に命令をする。


「いいわ。出してください」


 二人の兵士が懸命にロープを引っ張り始める。筏はゆっくりとミュゼ河へと進む。

 真っ黒な水からは震えるような冷気がじりじりと這いよってくる。

 これは思ったよりも厳しい作業だ。

 最初、シャルロッテお嬢様からこの構想を聞いたときは、本当に驚かされた。


 『ガンゼホンで敵を撃破したら、騎兵をミュゼ河を渡らせるの。

ミッターゲン軍が通り過ぎた後にね。そうすれば、私たちは労せず相手の後方に騎兵を配置することができる。

敵が正面である私たちに頭が一杯になっているところでカルディナが騎兵で後方から奇襲をかける。

騎兵の存在を相手に気づかれないのと、騎兵投入のタイミングがこの作戦の肝になるわ。

騎兵投入のタイミングは基本私のほうがしたい。でも、戦場ではなにが起きるか分からないから、最後の最後はカルディナの判断に委ねるわ。それからもう一つ、この作戦の隠し玉を用意しているのよ。それは……』


 誰も考えもしないことをさも当然のように淡々と語るお嬢様が恐ろしかった。

 やっぱり、お嬢様は天才だ。

 後は、その天才の構想を私が実現させる。そう思うと、胸の奥が熱くなった。


 およそ、5分ほどで筏は対岸へついた。

 往復で10分。20艘の筏だと、1時間で120人。2000人の騎兵を運ぶのにおよそ16時間ほど。今夜の夜半から渡河を始めて、ぎりぎり間に合うぐらい。

 頭の中で手早く計算をした。

 まあ、これも対岸の相手次第だ。

 私の後に、斥候隊が順次到着してくる。


「全員渡河完了するまで待機していてください。私はすこし周囲の様子を探ってきます。

アベルをよろしくお願いします」


 斥候隊の隊長にそういい置くと、槍を片手に周囲の様子を探りにでた。

 土手を超えると、なにもない草原が広がっている。お嬢様と一緒に確認した地図を思い出す。

 地図によれば、ガンゼホンの対岸側には特になにもない草原が広がっていた。そこをもう少しハーマンベル方向へ行くと森がある。さらにその森を抜けると小さな村落が点在していた。できればその村落まで騎兵を配置したいところだ。

 考えをまとめると一旦、元の場所へ戻ることにした。

 

「斥候隊10名。全員そろっております」


 戻ると斥候隊の隊長が敬礼しながら報告してくれた。


「隊を二つに分けて、まずこの周辺、およびこの先にある森のところまでの状況を確認します。

敵が警戒部隊を残している可能性がありますから行動は慎重に。決して相手に気づかれないように大きな物音を立てたりする行動は控えてください。くどいようですがくれぐれも慎重に行動してください。

もしも気づかれたら絶対に本隊に戻さないように、確実に仕留めてください」




 1時間ほどかけて、周辺から森までの街道沿いを偵察した結果、敵の警戒部隊はまったくいなかった。

 森のほうの偵察を引き続き隊長に命じて、戻ることにした。

 アベルは残して、筏で再びガンセホンにもどった。ノナン大佐に状況を聞くと、とりあえず筏20は完成したといわれた。上々。もうすっかり日が変っている時刻だった。


「対岸に敵はいません。予定通り、まず先遣隊の過渡させて対岸の橋頭堡を構築させます。

その後は順次過渡です。

こちら岸の過渡の指示はノナン大佐にお任せします。

私は再度、渡河してあちらで進軍の指揮をします」


 往復三度目のミュゼ河渡河。

 さすがに寒い。体が完全に冷え切った。

 渡り終えると氷のように体がこわばりうまく動かなくなっていた。

 死ぬ。と、とりあえず体を温めないとマジで凍死する。

 よろよろと愛馬の元までいくとひしっとアベルに抱きついた。

 あたたかーい。

 アベルの体温で暖をとった。

 抱きつかれたアベルが一瞬驚いた顔をしたがすぐに私のされるがままになる。

 

 ああ、優しい子。好き。

 お嬢様の次ぐらいに好き。まちがいなく、ミゼットよりは上。

 

 しばらくじっとしているとようやく落ち着いたので、もぞもぞとアベルから離れた。

 渡河状況を見ると、まだ、全然といったところだ。


「設営隊から数人集めて、まず体を温めるための焚き火を用意させてください。

ただし、遠くから見られないように遮蔽を入念にすること」


 近くの下士官ぽい騎兵を捕まえるとそう指示しておく。

 アベルに騎乗すると、追加の下調べをすることにした。今夜は徹夜だ。

 星空を見上げる。今頃、お嬢様も同じようにセドリック様と夜を徹してハーマンベルへもどっているのだろう。


 まあ、あの方のことだから、ルンルン気分なんだろうな

 ああ、なんか余計に寒くなった


 頬を叩き気合を入れると、任務に集中する。




 続々と渡河してくる騎兵たちを再編して、橋頭堡構築、防衛線確保、斥候隊、予備と次々と任務を振り分けているうちに東の空が白々と明けてきた。予備がようやく1個大隊ぐらいの数になったので、そろそろ先発隊を送る頃合だろうか。

 その辺の騎兵を捕まえて、大隊長の場所を聞いてみる。


「はっ! 私が大隊長のボナール・ドットハン中尉です!!」


 直立不動で、いきなり大声で敬礼をしてきたよ。なに、この暑苦しいの。

 ドットハンってどこかで聞いたことあるな。誰だっけ……、ま、いいか。


「中尉の部隊に先発隊の任を与えます「光栄であります!」……この先「はっ!」、の森「森ですか!」……この先の森まで進出して「はっ!!すぐに出撃します」いや、まちなさい。最後まで話を聴きなさい」


 なんだ、こいつ。黙って人の話を聞けぇ~!

 いちいち、合いの手を入れてくるなぁ!!

 いらっとするなぁ。こんなのに先発隊とか任せて大丈夫かしら……


「自分は、今回の戦闘が初陣でありまして、初戦におけるカルディナ様の見事な采配に、か、感動しております!!」


 すこし引いてしまって黙っていたら、なんだかわけの分からない話をべらべら始めたよ。

 う~ん、なんだか変なの捕まえちゃったなぁ。


「それに、そ、そ、そのカルディナ様の美しさにも感動しております」


 ドサクサに紛れてとんでもないこと口走っていないか? 

 右手が健在なら間違いなく槍で突いてるな。


「ボナール中尉「はっ、なんでしょうか!!」、まず黙って、私の話を聴いてください!「は、わっかりましたぁ!」……ふう、いいですか。まずこの先に森があります。その森を最初の進軍目的とします。

あなたの任務はその森へ進出して掌握することです。敵に遭遇したらまず、やり過ごすことを優先してください。ただし、もしも気取られたら確実に排除してください。決して本隊へ帰還させてはいけません。

分かりましたか」

「はっ!私の命に代えても必ずカルディナ様のご命令を達成いたします。私の愛を見ていてください」


 愛とか言ってるよ。まあ、いいや。めんどくさいからとりあえずスルーしとく。


「はい、よろしくおねがいます。以上です」

「はい。ところで、自分の中隊の名称を『ボナール中隊』から『ボナール・カルディナ中隊』へとしたいのですがよろしいでしょうか?」

「……あー好きに呼べばよいです。任せます」


 それだけ言うと、これ以上面倒なことにならないように足早に去ることにした。


 ふぅ。疲れた。どっと疲れた。

 まあ、昨日からずっと動き詰めだったのでさすがにつかれるわ。

 すこし休んだほうがいいかもしれない。

 草原にしゃがむと登ってくる太陽をぼうっと眺めた。

 ぐうと腹の虫がなった。そういえば夜半からなにも食べていない。渡河した部隊に食事を用意しないといけないことに思い当たるが食糧は対岸だと思うとがっくりきた。

 今から手配しても食事にありつけるのは昼ぐらいだ。

 お嬢様ならその辺の手配もちゃんと気を配るだろうに。やっぱり自分はまだまだだ。

 すこしため息をついて立ち上がろうとした時、腰にぶら下げていた包みに手が当たった。


「あっ」


 それは、シャルロッテお嬢様からいただいたビスケットを包んだ袋だった。お守り代わりに腰につけていたのをすっかり忘れていた。


 ああ、またお嬢様に助けられた。

 

 さすがにお嬢様もこんな状況になっていることまで読みきってビスケットを渡してくれたわけではないだろうが、それでもお嬢様のビスケットに助けられている事実は変らない。

 お嬢様に感謝をしつつ、袋の中からビスケット1枚とりだし口に含んだ。

 すこし湿っていたけどおいしかった。

 そして、なにより力が湧いてきた。




 それから、およそ一日半が過ぎ、私たちの騎兵隊はミッターゲン軍の後方へ秘密裏に布陣することができた。小さな村落から敵の動向をうかがっていた。要約すれば簡単だけど、ここに至るまでにはいろんなことがあった。

 同行していた特務部隊を斥候が敵と間違えて同士討ちというあわや大惨事、という事案から、例のボナール中尉から彼の兄が第1近衛師団の連隊長で父親は師団長だというとうでもよい無駄な知識を入手するというどうでも良い事案まで本当にうんざりするほどのことを次から次へと起きた。お陰で結局ミュゼ河を渡ってからまともな食事にありつけていなかった。


 始まった


 望遠鏡の世界では高地へ歩兵たちが攻撃を開始するのが見えていた。

 それに対して砲撃が開始される。遠雷のような砲声が聞こえてきた。

 ミゼットはうまくやれているようだ。


「攻撃はしないのですか? 今なら背後を奇襲できます」


 ノナン大佐がじれったそうに進言してきた。

 望遠鏡をお嬢様がいる私たちの軍の本隊へとむけた。特になにも動きはみえなかった。


「待機です。まだ、合図がありません」


 ノナン大佐の進言を退ける。本隊からの攻撃指示がでていない。まだ、時期ではないのだ。


 歩兵の攻撃が頓挫した。すると今度は騎兵が高地攻撃を開始した。

 すこしはらはらする。ミゼット……無事でいるかしら。泣いてないかしら。

 心配だわ。

 ノナン大佐がなにかいっていたみたいだけど、ミゼットのことが心配で聞き逃した。まあ、聞こえなかったことにしましょう。


 騎兵の攻撃も失敗したようだ。

 騎兵攻撃の合図はまだなかった。お嬢様はなにを考えているのだろうか? あの高地はこの戦場の要。掌握しているほうが勝つ、と言っても過言ではない要地だった。

 しばらくしてから騎兵による再攻撃が敢行された。今度のはかなりの大規模だ。

 ミゼット、大丈夫かしら。あの子、トロイから敵の攻撃を上手く避けれるかしら。

 お嬢様はなにをしているんだろう。

 援軍を出さなくてよいんだろうか?


「高地が危ないですよ。このままだと高地を取られてしまいます。あそこはは我々の重要拠点。むざむざ敵の手に落ちると一気に総崩れになってしまいます。すぐに援軍にいくべきです」


 再び、ノナン大佐が進言してきた。

 たしかにノナン大佐の言っていることも分かる。しかし、お嬢様からはなんの指示もでてこなかった。どういうことだろう。お嬢様はミゼットを見捨てるおつもりなのか?

 

「本隊からの指示がありません」


 私は頑なに答える。しかし、ノナン大佐も引き下がらない。


「本隊からの指示がなくても、ここは我らの判断で行動するべき時です」


 最後の最後は私の判断で動け、と言ったお嬢様の言葉が頭に浮かんだ。問題は今が、その『最後の最後』なのか? ということだ。

 ……正直、迷っていた。


「駄目です」


 少し迷ったが、それが答えだった。


「ああ……」


 ノナン大佐の驚きの声が漏れた。高地にボナンザンの旗がはためいたからだ。それと同時に歩兵による攻撃も本格的に開始されたようだった。


「我々がぐずぐずしていたためにてむざむざ高地がとられてしまったではないですか!

正面への攻撃も開始されています。今すぐ援軍にいくべきです。

でないと今度は正面も突破されてしまいますよ!」


 ノナン大佐が噛みかんばかりの勢いでまくし立ててきた。

 事前の打ち合わせでは、合図がするまで騎兵の突撃はしないことになっていた。しかし、それを待っているうちに高地をむざむざとられてしまったのも事実だ。

 なんらかの事情でシャルロッテ様が指揮をとれなくなっている可能性もあった。やはり今が『最後の最後』なのだろうか?

 私は迷った。


「ああ、見てください。我々の正面は戦う前から陣が崩れていますよ。あれでは左翼に集中攻撃を受けてたちまち総崩れになります!」

「うん?」


 ノナン大佐の悲鳴のような声に私ははっとなった。

 正面の私たちの陣に注目する。 

 方形の斜形陣。

 すーっと心の迷いが消えた。

 あんな陣形を採用するのはお嬢様以外に考えられない。つまりお嬢様が采配を振るっているのだ。ならばお嬢様を信用するだけだ。 


「いますぐ突撃しましょう!」

「いいえ。待ちます。一兵たりとも動いてはいけません」

「しかし……」


 私は腰の袋からビスケットを1枚取りだし、口に含む。相変わらず湿っていたが、やっぱり甘くて美味しかった。そして、なにより勇気が湧いてくる。

 そう。戦場ではお嬢様を、あの天才を信じてどこまでもついていく。そう私は誓ったのだ。


「おお、敵の陣形が崩れた」


 ノナン大佐が驚きの声をあげた。

 けれども私の注意はノナン大佐の声でも、その後にボナンザンの本隊が繰り出した歩兵と騎兵の増援でもなかった。ゆっくりとあがる一筋の煙だった。それは狼煙のろし)。お嬢様からの合図だ。

 やがて、幾つもの砲声が轟いた。

 それはおそらくはミュゼ河の対岸から放たれているものだ。ガンゼホン軍から鹵獲してはるばる運んできたものだ。一本の狼煙は、その砲兵の攻撃の合図だった。そして、ゆっくりともう一本目の狼煙が上がった。

 ハーマンベルに二筋の狼煙がゆっくりと空に向かって立ち上っていた。

 二本目の狼煙。

 それこそが騎兵突撃の合図だった。

 私は大音声で号令を発した。


「全軍、突撃準備」


 騎兵たちが一斉にサーベルを抜いた。


「目標、正面ガンゼホン軍。騎兵!突撃!!」



2020/08/01 初稿

2020/10/11 誤字修正


次話予定 『ハーマンベル攻防戦 Ⅲ』 です

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