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逃亡

天井に張り付いている黒い布を纏った連中は俺の悲鳴と同時に飛び降り、ナイフやら鉤爪やらの刃物を取り出し襲いかかってきた。あまりに一瞬の出来事で俺は反応しきれず近づいてくる刃物を眺めることしかできなかった。しかし、俺に1番近づいてきた奴は矢で頭を射抜かれ倒れた。俺と黒い連中が飛んできた方向を見ると寝巻き姿のホースが息を切らし弓を構えていた。隣には剣を構えているカイロがいた。


ホース「何をしている!早くこっちに来い!!」


その言葉に反応して俺は転がる様にホースとカイロの側に行った。


ホース「クソっ!奴らかなり頑丈だ!即死させられなかった!」


カイロ「とにかくやるしかねぇだろ!プルテニス!いつまで寝ぼけてやがる!早く構えろ!!」


プルテニス「お、おう!!」


急接近してくる黒い奴にカイロは真っ正面から剣で突き刺し、俺はカイロを踏み台にして真上からかかと落としを喰らわした。が、その瞬間、足に流れる激痛で顔を歪めた。奴らは布の内側に鎧を着ている様で俺の足には真っ青なアザができていた。

どんどんと迫ってくる敵に囲まれた俺達はなんとか隙を見て部屋に散った。


カイロ「チッ!黒布纏ってるからうまく鎧じゃねぇところが捉えられねぇ!」

迫ってくる敵を剣と足で押さえながら叫ぶ。


ホース「鎧じゃないところなんかないよ!所謂、完全武装ってやつだ!」

テーブルをひっくり返しその陰から矢を撃ち続けるホースが答える。


プルテニス「なら、追い出すか!!」

天井から吊るされているランプにしがみつき、体を揺らし勢いをつけて黒い連中の内2人を蹴っ飛ばし窓の外に落とした。

カイロとホースは2人で机を押し、残りの何人かを窓の外に押し出した。

更に俺はぶら下がっているランプから手を離し、残った3人の中の1人に蹴りを喰らわせてから馬乗りの状態になった。そこから相手の頭と顎を持ち上を向かせる様に首の骨を折った。その死体を後の2人に投げつけ窓の外へ吹っ飛ばした。


気づけば部屋はめちゃくちゃ。俺達は3人とも息が切れ切れだったが、すぐに顔を見合わせて俺はキュルキュロスの部屋へ、カイロとホースはイリスとシテナの部屋へ様子を見に行った。


キュルキュロスは驚いた様子だったが彼の周りには黒い連中の死体が転がっていて、当の本人は1人の頭を鷲掴みにし壁に押さえつけていた。


プルテニス「師匠!無事だったんすね!」


キュルキュロス「まあな。しかし、本当に面倒なことに巻き込まれたらしい。イリスとシテナの方は大丈夫だろうか…」


俺とキュルキュロスはイリスとシテナの部屋に向かった。扉の前ではカイロとホースが苦笑いして立っていた。部屋の中を見ると、イリスは黒焦げ死体の山の上に笑顔で座っていて、シテナはというと彼女が倒したであろう死体を鬼の形相で何度も槍で突いていた。そしアラマイヤは死体を前に逞しい様子で剣を肩に乗せていた。


プルテニス「大丈夫で何よりだ……」


キュルキュロス「茶番はいい。それより早くここを離れるぞ!」


カイロ「え!?」


キュルキュロス「こいつらはプロの暗殺者だ。私達の場所は割れている。ここにいたって寝込みを襲われるだけだ。」


アラマイヤ「そうですね。また襲ってくる前に荷物を纏めて離れた方が良さそうですね……」


全員頷きそれぞれ必要最低限の物だけ持っていく様にした。


プルテニス「くそ、まただ……!!」


ある記憶が蘇り思わず独り言が出た。


カイロ「何がだ?」


プルテニス「気にするな。まずはここを出るぞ。」


俺はヌンチャクと財布と酒用の瓢箪を持ち、ボロボロのフード付きマントを羽織った。これはこの隊に入ってから支給された物だが砂漠で任務をこなす内に色あせ、隊のマークは消えていった。今じゃ雑巾と間違える程だが取り敢えず持っていくことにした。


全員が窓から飛び降り、大通りに出るとキュルキュロスが指笛を吹いた。すると3頭の馬が駆けてきた。


キュルキュロス「近くにいた馬はこれだけか……1頭に2人で乗れ。私は走ってついていく。」


プルテニス「いえ。俺が走ってついて行きます。」


キュルキュロス「そうか……じゃあここは甘えよう。」


カイロとホース、イリスとシテナ、キュルキュロスとアラマイヤがそれぞれ馬にまたがり、キュルキュロスが再び指笛を吹くと馬は走り出した。

俺は走ってなんとか追いついていった。

キュルキュロスの乗っている馬と並走し質問した。


プルテニス「何故馬なんです?いく当てはあるんですか?」


キュルキュロス「一つずつ質問してくれ。まず前者だな。後ろを見てみろ。」


後ろを見るとさっきと同じような黒い連中がさっきより大人数で拠点を漁っていった。


キュルキュロス「もし後ろから襲われでもすれば不味いだろう。2人1組で馬を操る方と追ってを向かい打つ方に分かれた方がいいと思ってな。」


プルテニス「でも、馬がやられると不味いんじゃ。」


キュルキュロス「ふふっ………お前天才か!?」


プルテニス「こんな時に冗談はやめてください。」


キュルキュロス「そうだな。あと後者だが一つある。」


プルテニス「どこですか?」


キュルキュロス「着けばわかる。…………スピードを上げるぞ!」


いきなりキュルキュロスが叫んだ。それと同時に全員馬の走る速度を上げた。何か音がしたので後ろを振り向いて見ると黒い連中が屋根をつたって追いかけてきた。その内先頭にいた何人かが屋根を飛び降りてきた。それに気づいた俺は民家の壁を蹴り、飛び上がった。そして空中で1人向かい討った。倒す事はできなかったが転がり落ちた奴は失速し距離を離せた。ホースは矢を放ち、倒せないものの同じように追跡の妨害をしていた。

イリスも攻撃魔法で攻撃しているようだが、攻撃の瞬間が見えない。前から思っていた事だ。俺は彼女が攻撃している瞬間とそれが相手に当たるところを見たことがない。ただ彼女が何かしたと思った時には相手は転がっているか死んでいるかだ。


とにかく、なんとか追手を振り切り、町外れまでやってきた。キュルキュロスの言っていた行く当てが分かった時点で俺は「嘘だろ?」と思った。何故なら着いた場所は……

プルテニス「ウチの道場っすか!?」

俺の実家だった。


詳しくは知らないがキュルキュロスは俺の両親と知り合いらしく特に親父との縁が深いのだとか。


カイロ「へぇ……プルテニスの家って変な形だな。」


プルテニス「言うな!!気にしてんだから!」


俺の家はこのドゥナッタ王国から遠く離れたある国の伝統的な造りをしている。木造建築で赤と白、茶色を主とした色合い。露出した柱で囲まれていてその間には提灯が下げてある。なんでも両親がその国からやってきたらしく俺も厳密に言えばこの国の出身じゃない。


キュルキュロスが門を軽くノックすると俺の母親、リンが出てきた。


リン「オラァ!!今何時だと思ってんだ!?よっぽどの用事なんだろうな!?でなきゃ頭かち割って……」


キュルキュロス「すみません。リンさん。」


リン「え?あらやだ!キュルキュロスさん!さ、どうぞ中へ。あら、プルテニス!帰ったのね!?そっちはお友達?さあさあ、どうぞ!」


プルテニス「お袋ぉ……恥ずかしい……」


カイロ「お前の母ちゃん怖ぇな。」


馬を離し、中に入る。お茶を飲みながらキュルキュロスは事情を話す。


リン「そうですか……それはそれは。大変でしたね。まあ、ゆっくりして行ってください。」

と言って退出して行った。


カイロ「なあ、お前の母ちゃんも格闘術できんのか?」


プルテニス「まぁな。蛇拳と蛇鶴八拳(じゃかくはっぽのけん)の使い手だ。めちゃくちゃ強えぞ。」


キュルキュロス「それもここを選んだ要因だな。気の強い母は時にどんな殺人鬼よりも恐ろしくなりうる。あと、この家は表向きは薬屋だから場所もバレないだろう。」


アラマイヤ「それに中庭が道場になっているので修行にももってこいですね。」


ホース「あの黒い連中はかなり強かったからな。修行して損はないだろう。」


プルテニス「張り切り過ぎて家を壊すなよ?」


キュルキュロス「それとこれからどうするかだが。」


カイロ「決まってんだろ。奴らの情報を集める。」


プルテニス「俺もそれしかないと思う。このまま隠れてたっていつか見つかっちまうんだからな。」


イリス「そうですわ。あっちは暗殺者まで差し向けてきたのでよ。もう、他人事じゃすみませんわ。」


キュルキュロス「そうなんだが……せっかく振り切ったのに、尾行でもされてこの場所がバレるかもしれない。」


シテナ「あの……私に一つ提案が。」

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