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騒動

「……ニス!プルテニス!」遠くから聞こえていた声がだんだんと近づいてきた。目を開けるとそこにはカイロがいた。

「ウゲェ……気持ち悪……」

「あんな無茶するからだ」

「……あ!ムドゥルはどうなった!」

「お前が外にぶっ飛ばしたんだろうが」

「連れてってくれ」

「そう言うと思った。」その言葉と同時にカイロは俺を抱き抱えて破れた窓から外に飛び出していった。そこから30m程先に顔がグシャグシャになって倒れているムドゥルが月明かりに照らされた。まだ辛うじて生きているらしいがもって数分だろう。血と一緒に透明な液体、脳漿が奴の頭と耳から漏れ出していた。脳味噌がシェイクされたんだろう。

後ろに国王を連れてキュルキュロスも来た。

「おい、ムドゥル。最後に聞きたい事がある。まだ喋れるだろ」

「あ……と、僕は……あぁ、そうか……死ぬのか……これが死か……」かすれそうなを絞り出す。

「ああ、お前の負けだ」

「ま、け……?違うな……殺されるのと……負けるのは……ち、がうなぁ……油断はしたが……」

「……タネン先生の身体はどこにある」

「タネン……ああ、あの頑固親父か……彼の身体、なら……」と言いながら震える指を擦り合わせた。音はならなかったが魔法は発動したらしく、その場にタネンの物と思わしき首なし遺体が現れた。

「先生……」カイロが涙を流している。

「僕……からもひとつ……いいかい?」

「なんだ。」

「何故、最後の攻撃で……わざわざ拳を使ったんだい……?君の拳は……指はもう動かないよ……」

「なんでも何も、俺のカーボンファイバー製の鎧が酔拳の怪力に耐えられずにぶっ壊れたからだ。お前はどうせ防御魔法でも張ってるだろうと思った。拳に続いて足まで壊すわけにはいかねぇんだよ。なら、元からぶっ壊れてる拳を使った方がいいじゃねぇか。」

「最後まで……原始的な考え方だな……」

「ムドゥルよ……」国王のカーがムドゥルに近づいていった。

「お前が国の為を思っていたのはよく分かった、許してはやれないがお前なりの正義と私は受け取った。他人がなんと言おうとも私はお前のことを誇りに思う」

「正義……?国の、為?分かって……ないなぁ。僕はそんなことの……為にしたんじゃ…ないさ。ただ、人を無理矢理強化させるとどうなるか……知りたかっただけさ……」

「ムドゥル……」

「……陛下……生き絶えました……」キュルキュロスが声をかける。


「そういえばプルテニス。お前なんであんなに酔ってたのに動けたんだ?」

「それはだな…姉さんの方をムドゥルがむいている時にあらかじめ持ってきた酒をガブ飲みしてゲロしたんだよ。それでちょっと楽になった一瞬だけ動いて攻撃したってわけだ」

「ええ……」


次の日、国は大騒動。最初は国一の天才と言われたムドゥルアルギュエスが反逆者の第六討伐小隊に殺された。次にそれは訂正されムドゥルの野望と俺達の無罪放免。国民の声はそれぞれだった。ムドゥルを倒した俺達への称賛、本当にムドゥルはその場で殺すべきだったのか、裁判にかけるべきではなかったのか、ムドゥルの計画に気づかなかった国への不信感などなどだ。そういった世論を元に俺達の国を守ったという功績は無いものとされた。歴史上で言う知られざる戦いという奴だ。


俺の左手の指はもう完全に動かなくなった。お袋からは散々叱られたしカイロ達からも今度こそやめた方がいいんじゃないかと心配されたが俺もまだまだやれると言い、それからは特に何事もなかった。

国の騒動がある程度収まった頃、俺達第六討伐小隊は王宮へ呼び出された。

玉座を前に俺達7人は膝づいていた。

「コホン……先日の件についてだが…諸君らに感謝の気持ちがあるのだが、ムドゥルを殺さないで欲しいと思う気持ちも少なからずある。申し訳ないとは思うが…………さて、今回集まってもらった訳だが、今君達そのことについて議論が起きているのは知っているね」

「はい」一同が同時に答える。

「うむ、その結論として諸君らには活動休止が言い渡されることとなった。次の闘技大会までな。」これには俺も驚いた。次の闘技大会といえば実に半年後、6ヶ月だ。その間同士ようかと思った時、再び国王が口を開いた。

「そこで、私からの提案なのだが、少し我が国を離れて修行の旅に出てはどうかと思ってな」

「旅、ですか?」キュルキュロスが聞いた。

「いや、無理にとは言わんが、私からのせめてものお礼として受け取って欲しい。もし、旅に行くのであれば君達が行きたい場所を教えてくれたまえ。私が直々に手配しよう」

「そ、そんな、そこまでしていただけるのですか⁉︎」俺は思わず叫んでしまった。

「いいのだ。ただし今回だけの特別処置だということを忘れぬよう」国王は笑いながら言った。

俺達は顔を見合わせてアイコンタクトでガッツポーズする気持ちを伝えあった。


更に次の日、俺達は荷物をまとめて拠点の前に集合した。

「カー陛下の寛大なお心に感謝しろよ。」キュルキュロスが俺とカイロとホースに言いつける。キュルキュロスとアラマイヤは旅には出ずに拠点でゆっくりと過ごすらしい。シテナは自分が卒業した兵士学校で修行するらしい。

俺達は荷物を持ってそれぞれの旅団に同行することになった。旅団が出発の準備をしている時に俺達は少し集まってこれからのことを話し合った。

「カイロは何処に行くつもりだ?」

「俺はここから北東に位置する秘境、ディユ大陸だ」

「ディユ大陸⁉︎通称"幻獣の楽園"。並の人間だと五体満足じゃ帰って来られないと言われる超危険区域じゃあないか」

「そう言うホースは何処に行くんだ?」

「僕は西の南ユアンシ大陸、ギアス村に行くつもりだけど」

「お前、人の事言えねぇじゃん!南ユアンシって凶暴や原住民が潜む熱帯雨林地帯だろ⁉︎」

「うへぇ〜、お前ら勇気あるなぁ」

「プルテニス、お前は何処だっけ?」

「俺はセダン王国に行こうと思う。なんでも魔物退治の仕事をするギルドとか言う組織があるらしくてな」

「ああ、ここから真北の先進国だな」

「俺もこんな手だからな少しづつ慣らすつもりだ」

「お〜い、あんたら!そろそろ出るぞ!」商人の一人が呼びかける。

「そんじゃあ、半年後だな。」俺はそれだけ言って旅団と共に北へ向かう。あまり長く話してるとちょっと寂しくなるからだ。それと、今までドゥナッタから出た事がなかったんで新しい場所が楽しみだってのもある。

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