23 スタリーン王国の興り
リュクドリーンの語りです。
本来この地は荒れ果てて、とても人が住めるようなところではなかった。その地に辿り着いたのが、そなたらの祖先だった。
魔力という特殊な力を持った彼らは、里を追われてきたのだ。
逃げて、逃げてたどり着いたのは、このように荒れた地。そのことにどれほど彼らは絶望しただろう。元の場所に戻ろうとしても、迫害されるだけ。
持ってきたわずかな食料も尽きそうになっていたとき、彼らは死を覚悟したそうだ。そこに現れたのが、我の親に当たる龍神だ。
神に通じる力を持ちながら、馬鹿な人間どものせいでつらい思いをした彼らを救おうといたのだ。
《神に通じる力を持つものよ、我の声が聞こえるか?
我はそなたらを救うために来た》
と言っていきなり目の前に現れたために、初めはとても驚かれたそうだがな。だが、飢えて死ぬ直前だった彼らは、救われるならばなんの手を借りても構わないと考えていた。
迷わず、龍の手を取ったそうだ。
どうする気だと、様子をうかがっている彼らに龍は魔力をくれと言った。彼らのなかで、特に良い魔力を持っていたのが、そなたの祖先、銀の髪を持つ少女だった。
そのものから、魔力をもらった龍は、近くを流れる川に行くと、自分の中の魔力をそこに流し始めた。少女の魔力は特に自然にいいものだったため、ひび割れた大地は急に水分を持ち、わずかに生えていた木は伸び始めた。
その急な変化にその場にいたものは、とても驚き、喜んだ。これでこの地に暮らすことができる、と。
しかし、まずは食料がなくては話にならない。
大地を再生した後、龍はどこかへと飛んで行った。すぐ戻ってきた龍は食料を持っていた。
奪ってきたのか、そう思ったが何も言わず、彼らは無心にそれらを食べた。そして、元気を取り戻すと、同じく龍が持ってきた木を植え始めた。
ここを我らの国にしようと言って。
誰を王にしようか、と相談していると、そのものを王にすると永劫平和な国が作れるであろう、と言って龍が一人の青年を押した。それが現王家の祖先である、蒼の瞳を持つ青年だった。
その一言で王が決まった。 どうやら、そのものが持つ魔力の性質が人の心を穏やかにするものだったため、押したそうだ。その言葉どおり、現在まで王家は変わらず、戦のない国となった。
そして、龍は自分に魔力を分けてくれた少女に一つ願いを言った。その内容が、この国が続く限り、我や我の子孫が肥沃な大地を保証するから、そなたも子孫に至るまでずっと我に魔力をわけてくれ、というものだった。
その言葉に少女はうなずくしかなかった。龍は満足そうにすると、銀の髪の少女と蒼の瞳の青年に言った。
《そなたらの魔力は共に、ここに国を創り、続けていくのに必要なものだ。
血が薄まるとそれが失われてしまう可能性がある
そこで、二人の血に我の加護をやることで、保たれるようにしたいと思う。
それぞれの子孫はその銀の髪と、蒼の瞳を引き継いでいくことになるだろう。
良いか?》
これも二人に断るという選択肢はなかった。そうして国が興りはじめ、今の土台が作られた。
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始めは、わずかな人数しかいなかったが、数年でだいぶ増えた。様々な理由で、この地に逃げてきたものが多かったのだ。
この国の始まりが始まりなだけに、その者たちをこの国は心よく受け入れた。龍の力もあり、だんだんと農作物も安定して採れるようになって、余裕ができたことも受け入れることができた理由のひとつだが。
加えて、人の手があまり入っていなかったため、豊富な資源があった。それを掘り起こすためにも人手が必要だったため、受け入れはお互いにとっていいことだったのだ。
逃げてきたものが子供を産み、第二世代と言われるものが出始めたころ、王族以外に貴族位をつくろうという話になった。
そこで、まずは銀の髪の少女をその筆頭にしようという話になった。第一世代と言われる者たちは皆、龍との約束を知っていたからな。それには家名が必要となる、と誰かが言った。
そこで気が付いたのは、まだこの国にすら名前をつけていなかったこと。
そこで少女と王に家名と国名を決めてくれ、と人々は望んだ。どうしよう、と二人は何日も迷った。昼夜問わず、あれでもないこれでもないといいながら、話し合いは続いた。
そしてふと思いついたのは、太陽、月、星をそれぞれ使った名前にしようということだった。
次に、どう当てはめるか考えていると、龍がひょっこりと顔を出し、言ったそうだ。
《太陽は少女に、月は王に、そして星は国に例えてはどうだ》
少女は少し慌てたが、結局その案を使うことになった。まずは国名を二人で決め、のちに家名をそれぞれ考え民に発表した。
なるべく親しんでもらえるものにしようと、国名はスタリーン国となった。始めは困惑した民も決まったことならば、と納得した。
着実に国として整っていく中、他国の者たちは戸惑った。どうしてあの荒れた土地に人が住んでいるのか、と。調査してみると、そこは多くの作物が育つ肥沃な大地になっている。
しかも、そこに住んでいるのは自分たちで追い出したものばかり。
これに焦った国はより詳しい調査を進めていき、その地に龍がいることを突き止めた。それにいち早く気が付いたのが龍だった。
自分の存在を知ったものを消し、今後このようなことが起きないように自分の身を隠してほしいといった。この地を去るのが早く楽なのかもしれないが、そういうわけにもいかないから、と。
当時はちょうど王宮を建てようかという話が出ていたところで、そこに龍がいられる場所をつくろうという話になった。
そこならば、一般の人は入らないだろうし、龍の望みをかなえることができる、と。
そこで、龍はいくつかの条件を持ち出した。
《その場所に、川をいれてくれないか。
その方が、魔力を全体に行きわたらせやすい。
あと、その場にはあの少女以外は入れないようにしてくれ。
そうすれば、我の存在は完全に隠され、争いの火種となることはないだろう》
必死な龍の様子に皆すぐにうなずいた。
カギは何がいいかという話になったとき、二重にして血とものにしようということになった。そこで王がペンダントにしてはどうかと言い、すぐに決まった。
このころは王がいるといっても絶対的な存在ではなく、皆で国をつくっていくという形だったからな。
良い案が集まりやすかったんだ。そうして出来上がったのがこの空間だ。
代を重ねていくうちに、龍のことを知っているものはいなくなったが、龍を信仰する文化だけは残ったそうだな。国が大きくなっていくうちに、王の権力は絶対になり、サンタリア家は永久公爵家となった。
ペンダントには文字が彫られているだろう。それは初代が彫ったものだ。
自らを、そして子孫を戒めるものとしてな。
こうしてスタリーン王国は出来上がっていったのだ。




