21
誰にも悟られないように、フィカルトと何度も会っていたことなど、日記帳には細かく書かれていた。ミレティアは思わず母を応援していた。
お互いに、自分の身分や流れる血に苦しみながらも諦めることはできなかった。このころから、日記帳にはところどころにじみがあった。
それはフランシアがこの日記を書いているとき、泣いていた証だった。そして、最後から二枚目のページには娘がお腹の中にいる、と書かれていた。
リュクドリーンがお腹の中に魔力の気配がする、と言っていたことがきっかけだったそうだ。
そして、その子からはサンタリア家とムンカレ家、両方の気配がする、とも言われたそうだ。サンタリア家とムンカレ家の直系の血を継いだ子供がどのような力をもって生まれるかわからないことや、もし、蒼の瞳を持っていた場合、周りがどのような反応を示すのか怖いということも書かれている。
そして、最後のページには家を出て、娘を隠して育てるという決意をしたことが書かれていた。
まだ年若い母がその決心をするのに、どれほど苦しみ迷ったかというと、ミレティアもまた泣きそうになった。
《ミレティア、そろそろ帰りなさい。
皆心配しているのではないか?》
リュクドリーンの言葉にミレティアははっとした。つい日記に夢中になってしまい、時間がだいぶ過ぎていたようだ。
「は、はい。
すぐに帰ります!」
ミレティアの慌てた様子に、リュクドリーンはゆっくりでいい、と微笑む。
《そうだな、次は三日後に来てくれ》
「三日後、ですね。
あ、あの、いつこの国の話をしてくださいますか?
そこから、色々と知りたいことがあるのです」
ミレティアの言葉にリュクドリーンは少し考えるようにした。
《まだ、病み上がりだからな。
そうだな……、一週間後ではどうだ?》
「はい!
よろしくお願いします」
約束をして、ミレティアはリュクドリーンと別れた。
自室に帰ると、ミレティアはベッドの上に転がる。こうして、少し考え事がしたかった。
(自分が生まれるまえのお母様など想像したこともなかったけど、自分が思っていたよりも、はるかに強い人だった。
私を産んだとき、お母様は確か二十一歳。
あと十年後に、そんな決心ができるかしら……
わからないわ。
それにしても、なぜ歴代の当主たちは日記をあの場所に、古代文字で残したのかしら。
後世に何かを残すため?
やはり、わからないことだらけだわ)
そんなことを考えながら、ミレティアはいつの間にか眠っていた。
ふと起きると、外はもう真っ暗だった。時計を見ると、午後十時を指している。おそらく、疲れているミレティアに気を遣って誰も起こさなかったのだろう。
ベッドの横の机には、上から布をかけた飲み物とサンドウィッチがおかれていた。
『起きたら、食べてください。
他に何か用があれば呼んでください。
マリアンナ』
と書かれている紙もあった。ありがとう、と言いながらサンドウィッチを食べるととてもおいしい。
紅茶は冷めていても、とてもおいしかった。




