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ミレティアが目覚めると、体はリュクドリーンに寄りかかっていた。
「す、すいません」
ぱっと体を起こすとリュクドリーンが心配そうにこちらを見ていた。
《すまない、つい魔力をもらいすぎてしまったようだ。
大丈夫か?》
はい、とミレティアが言うと、リュクドリーンはほっとしたように見えた。
「ここは、とても自然豊かな場所ですね。
どうして、このような場所が王宮の一角に造られたのですか?」
落ち着いたミレティアがリュクドリーンにそうきくと、リュクドリーンはおや、という顔をした。
《そうか、それも聞いたことはない、か。
今度、ここに泊まりにおいで。
その話はこの国の創設に関わるから、話すと長くなる。
寝物語に聞かせてあげよう。
ああ、ちなみにここに自然が豊かな理由は、我がそなたのような子がおらぬ時でも魔力を吸収するためだ》
なるほど、とミレティアは納得すると、先ほどから気になっていた家の中へと入ってみる。そこは一般的な一軒家だった。以前までミレティアが住んでいた家よりも広く、キッチンやベッドもある。そして、その中の一室が書庫となっていた。
入ってみると数え切れぬほどの本が置かれている。とても古そうなものから、新しそうなものまでいろいろある。そのなかで唯一、机の上に置かれていた本が妙に気になった。
表紙を見てみると『フランシア・サンタリア』と書かれている。思わずページをめくると中は古代文字で書かれた日記帳になっていた。
懐かしい母の文字に、ミレティアの目はうるんでいた。
(お母様は確かにここにいたのだわ。
日記など、なぜつけていたのでしょう)
本棚に目を移すと一角が歴代当主の日記を並べる場所になっていた。そして、並べられた本の一番右側に、ミレティアの名前が書かれた本があることに気がついた。
中身を見ると、一ページ目にのみ、何かが書かれている。
『わが娘、ミレティアがこれを手に取る日が来ることがないようにと願って、ここに娘の日記帳を用意する。
どうか、娘には自由で幸多き人生が待ち受けておりますように』
ぽたりと零れた涙が日記帳へとしみこんでいった。
《ミレティア、今日はもう帰りなさい。
また明日来てくれないか。
そういえば、ほかの者に決して我のことを話してはならない。
この場所のこともだ。
この場所に何があるか、何をやっているかも言ってはならない。
良いか》
「は、はい。
明日またくればよいのですね?」
リュクドリーンはゆっくりうなずく。もう少し日記を見ていたかったが、ミレティアはしぶしぶ腰を上げた。
入るときは、いろいろとあったが、帰りは何もしなくても扉を開けることができた。
「ミレティア様、お疲れ様でございました。
いかがでしたか?」
「え、ええ、無事に役目を果たすことはできたと思いますわ」
ミレティアのその言葉にまわりの者があからさまにほっとしていた。
「あの、ミレティア様。
次はいつお役目に行かれるのですか?」
そう聞いてきたのは、今日ついてきた衛兵だった。
「次は、明日ですね」
「明日、ですか……。
それはまた、短いですね。
普通ならば、もう少し空くのですが……」
衛兵はそう言うと物憂げな顔をした。
「あの、ミレティア様、お顔の色がすぐれないようですが、大丈夫ですか?」
マリアンナの言葉にミレティアは魔力をとられすぎ、気を失ったことを思いだした。しかし、大丈夫、とだけ答えると屋敷へと戻っていった。
「本日はおつかれさまでした、ミレティア様」
屋敷に着き、一息つくとと、マリアンナがすぐに紅茶を持ってきた。ありがとう、と言い飲んでいると、ついうとうとする。
「ミレティア様、どうぞお休みください。
お疲れでしょう。
夕飯をお持ちしましたら、お呼びいたしますので」
マリアンナがすぐに部屋を出て行くと、ミレティアは眠気にあらがうのをやめた。




