閑話 フィカルトの願い
フィカルトの視点になっています。短めです。
それは、完全に一目ぼれだった。王宮に役目を果たしに来ているという、永久公爵家であるサンタリア家当主フランシア。
始めて見かけたのは王宮で、その次は舞踏会だったろうか。
綺麗な銀の髪やいつでも微笑んでいるその様子につい目を奪われてしまうのだ。僕は現王の実子であり、第三王子であったため、フランシアの正式な婚約者になれないことはわかりきっていた。
だが、それでも諦めきれなかったから、ついフランシアに声をかけてしまったのだ。
最初はフランシアも戸惑っていた。蒼の瞳を持つほど王に血が近い、僕に惚れられても困るだろうことはわかっていた。
だが、会って話をするたびフランシアのことをどんどん好きになっていったし、フランシアもまた会いたいと言ってくれた。
駄目なこと、わかっていても気持ちを抑えることなんてできなかったんだ。フランシアとしても、第三王子である僕が国王になるはずがないという安心感が少なからずあったようだ。
そうして、周りの目を盗んでフランシアとの逢瀬を重ねていった。
フランシアのことを知るたびに、彼女に惚れていった。時々悲しげに揺れる瞳を見るたびに、フランシアのことをつい抱きしめたことが何度あっただろう。
本当に愛していた、フランシアのすべてを。
そしてある日、ついに一線を越えてしまった。それからどれくらい後だろうか、フランシアは忽然と消えてしまった。どれほど嘆き悲しんだだろうか。
僕に何も言わずにフランシアは消えてしまった。フランシアと仲が良かった僕に父王は何か知らないかと何度も聞いてきたが、何も知らない。
何度もフランシアを探しに行ったが、見つからなかった。父王はその心労が原因でまもなく亡くなってしまった。
兄が王位に就くのであろうとその最近までは思っていたが、結局僕が王になることに決まった。父王が亡くなる少し前、突然兄二人の母の実家が没落したのだ。
なんでも、借金を貯め込んだあげく、王に反発したらしい。父王が亡くなったのはこれも原因だろう。
どうしてフランシアが消えてしまったか、わかったのは大分後になってからだった。
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あれからしばらく経ち、国は徐々に衰えていった。手は尽くしたのだが、土地が枯れていくのはとめられない。
これが当主が役目を果たせなくなった影響か、と誰もが焦り始めた頃フランシアの娘が見つかったという報告がきた。
その子は蒼の瞳を持っているという。
ああ、自分の娘だ、とすぐにわかったが、名乗れるはずがない。
今の自分は国を負う立場。その上、知らなかったとはいえ何年間も放置していた。
言えるはずがなかった。
フランシアとの仲を知っている者は始めから、僕が父ではと思われていたようだが、王には何も言えない。それを良いことに僕も何も言わなかった。
だが、ミレティアを見た瞬間我慢ができなかったんだ。抱きしめて、話をして、父様と呼んでくれた瞬間どれほど嬉しかったことか!
ミレティアはサンタリア家の当主という重役を負っている。でも、ミレティアに、愛娘に、どうか光り輝く幸せな未来が待っていることを願わずにはいられない。




