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役目を背負った少女は当主となる  作者: mio
当主継承
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侍女に連れられた先に、ひときわ豪華な造りの扉があった

 

「カトレア様、ミレティア様をお連れいたしました」


「入れ:


 侍女が声をかけると、すぐに返事が返ってきた。恭しく開けられた扉を通り、中に入ると大きな机の向こう側に、一人の女性がいた。


 少しくすんだ色に銀の髪に、リレイアンやフランシアと同じ紫の瞳。妹なだけあり、フランシアと容姿の特徴がよく似ている。しかし、それはあくまで容姿の話だった。


(これが、カトレア叔母様。

 何と言いますか、お母様とは似ても似つきませんわね)


 部屋に入ったきり、ミレティアが固まっていると女性がこちらに歩いてきた。


「初めまして、ミレティア。

 わが姪だというのに、今日まで一度もお会いしたことはありませんでしたね。

 このような日を心からお待ちしておりました。

 これからはどうぞ、よろしく申し上げますわ」


 カトレアの言葉はどこまでも丁寧で、それが逆にミレティアの恐怖心を増幅させた微笑んではいるが、目には憎悪の感情が揺らめいている。

 

「ミレティア?

 そなたの声を聴かせてはくれぬか」


 何も言わないミレティアに、カトレアは多少イラついたように声をかけてきた。ミレティアは慌てて、返事をした。


「初めまして、カトレア叔母様。

 今まで、ご挨拶申し上げませんでしたご無礼、どうかお許しください。


 どうぞよろしくお願いいたします」


 そんなミレティアの言葉によい、というと席を勧めてきた。向かい合って座ると、すぐに侍女が紅茶と茶菓子を持ってきた。


 カトレアに勧められ、口にするとどちらもとてもおいしい。ミレティアがほっと一息つくと、タイミングを見計らったかのように、カトレアが再び口を開いた。


「本当に、あの女に、フランシア姉さまに似ていらっしゃる。

 違いと言えば、その瞳くらいかしら。

龍神様の加護を賜っている、サンタリア公爵家の特殊な血、それも直系の血にこうも介入してくるなんて……。

そなたのその瞳はフランシア姉さまの罪の証ね。

 歴代の当主は皆、輝くような銀の髪に、紫の瞳と決まっていましたのに。

 それでも、その髪色は正当な当主でなくては、持ちえぬもの。

 全く忌々しい」


 ミレティアがカトレアの顔を見ると、すでに微笑すらしていなかった。急に容姿のことを言われ戸惑っていると、カトレアは訝しげにミレティアを見た。


「もしや、そなた何も知らぬのか?

 その髪や瞳の色が何を示しておるのか」


 そのカトレアの問いに、ミレティアはうなずくしかなかった。リレイアンも瞳の色について何か言いかけていたが、結局教えてはもらえなかったのだ。

 

「よいか、よく聞け」


 恨みのこもった瞳を向けてくるカトレアの口から、ミレティアはようやく瞳の色の意味を知った。



「まず、髪色についてじゃ。

 サンタリア公爵家は血が濃いほど、銀の髪をもって生まれてくる。

 そして、当主となる力を持つものは、特に輝くような銀の髪を持つ。

 それは純度の高い魔力を持っていることで、魔力が集まりやすい髪が輝いてしまうからだ。

 そして、その瞳」


 そこでカトレアはそこでいったん言葉をきると、ミレティアの方を忌々しそうに見た。


「それは、王族の直系かそれに近いものが持つ色。

 王族もまた、龍神による加護を賜っていらっしゃる。

 本来、我らの当主筋と王族の直系は交わってはならぬ決まりなのじゃ。

 それは互いの血筋を守るため。

 それを、お姉さまは!」


 ミレティアは息をのんだ。自分がサンタリア家の血筋というだけでも、十分驚きだったのに、加えて王族の直系でもあったことに、ミレティアの頭は混乱した。

 すっかり青ざめたミレティアの顔を見て、カトレアは満足げに微笑んだ。


「そなたは母の罪を償わなくてはいけない。

 二度と、逃げるでないぞ。

 当主の座など喜んで明け渡す!

 私など、どう頑張っても『代わりの当主』にしかなれぬ。

 私の頑張りなど、誰にも認められることはないのじゃ!」

 

 カトレアの激情を前にミレティアは固まった。カトレアは一つ息をつくと何とか自分の気を静める。


「とにかく、当主交代の儀は近く執り行う。

 それまでにそなたには当主となるにふさわしい教養を身に着けてもらう。

 以後はマリアンナを通して、連絡する。

 ……下がってよいぞ」


 カトレアは一方的に会話を打ち切り、奥へと入っていこうとする。カトレアの行動に、リレイアンのことが聞けると思っていたミレティアは慌てた。


「あの、カトレア叔母様!

 兄様は、リレイアン兄様はどうなさっていますか? 

 追手の方は、私がおとなしくサンタリア家へと参れば、兄様を助けてくださると言っておりました。

 兄様はご無事なのですか?

 お顔を見て、安心したいのです」


 ミレティアの言葉にカトレアは足を止めた。


「ああ、リレイアン、か。

 あの者はここにはおらぬ。

 サンタリア家が所有する別の場所の管理を任せることとなった。

 傷は癒え、元気にしておるから安心せい。

 あの者がそなたの近くにいては、何をしでかすかわかったものではない。

 場所は言えぬ」


 そういうと今度こそカトレアは奥の部屋へと入っていった。


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