表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/18

第8話、『最初の料理』

雨水が溜まった容器ゴミから水を、残骸の山から鍋を手に入れた。

そして、


「これよりサバイバル料理教室を開始しようと思います…………ごめんやっぱ料理番組風に作る元気もないわ……」


「──?」


「じゃあ始めるか」


テレビで見たことがある方法。

木の棒と木の板、そして少女からナイフを借りて、


1、木の棒をナイフで削り、細かい木クズを作る。


2、木の板に木クズを乗せて、棒を立ててドリルみたいに回転させる。


「…………つかない」


簡単に火が出ると思ったけど、力が足りないのか黒い焦げ跡しかできなかった。


「やばい。これは別の方法を探さなきゃなのか?──ん?」


チョンチョンと、少女が背中を突いてきた。

そして木の板と自分を指し示す。


「……これ、こうやって、できるか?」


ジェスチャーすると、少女は首を縦に振る。


そして木の棒を回転……ん?


「何この早さ?なんで人間の素手からモーター音を出せるの?」


グュイ〜〜〜〜ン!とシャレにならない音が鳴り響く。


「──!?」


バッと少女は跳ね退いた。


「ん?」


「────!?──!!」


「んん?」


少女は煙を上げている木クズを指差し、何かを強く言い放っている。


「え〜と……あっ、火が」


でも内容を推測するよりも先に、やらなければいけない事がある。


せっかく生まれた種火が消えれば元も子もないない。


「ちょっとすまん。先にこっちを」


種火を拾い上げて、溜めておいた木クズの山に導入。そして息を吹きかけて、火の勢いを大きくする。


石と鉄ゴミで作っておいた鍋の置き場に、強い焚き火ができた。


「よし!焚き火の完成だ!」


「──!?──────!!」


なおも少女は高い声を上げている。


そして分からない。火を起こすのがいけない事だったのか?

でも、摩擦熱で火を起こすことくらいは分かっていた筈だ。

なのに何故、


「…………とりあえず茹でさせて」


鍋の置き場に水を入れた鍋を設置。

そして沸騰した頃に、洗ったモヤシを入れる。

そしてグツグツと茹でて、


「そろそろ」


器にちょうど良い容器にモヤシを入れる。


「完成!」


────────


本日のお昼メニュー


・茹でたモヤシの山盛り


モヤシを茹でただけの料理。調味料を使わない自然の味が、舌いっぱいに広がる。


────────


「じゃあ君も」


「─?」


「ずっと動いてもらってたから、すごくお腹空いてるだろ」


少女にモヤシを入れた器を渡して、両手を合わせる。


「いただきます」


実食。

コールドスリープから目覚めての最初の食事。

その感想は、


「……美味しい……だけど」


モヤシだった。純粋なモヤシ100%の料理。

不味くはない。むしろ美味しい。だけど物足りない。


空腹が最高のスパイスと言うが、何かが足りないと思ってしまう。


「でも、食べられただけでも感謝だ」


モヤシの生命力に感謝を唱えながら、おかわりをする。

そして腹にそこそこ溜まった頃、


「ん?食べないのか?」


「…………」


少女は一口も食べていなかった。

そして異様なモノを見る視線で自分を見ていた。


「いったい何が……」


「──」


モヤシの入った器を返される。

そして、


「──」


「『どうぞどうぞ』か?」


そんなジェスチャーを見せられ、迷いながらモヤシを口に入れる。


「────」


「『うわぁ〜なんだコイツ』っぽい顔するのをやめてくれ。いったい何がおかしいんだ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ