第8話、『最初の料理』
雨水が溜まった容器から水を、残骸の山から鍋を手に入れた。
そして、
「これよりサバイバル料理教室を開始しようと思います…………ごめんやっぱ料理番組風に作る元気もないわ……」
「──?」
「じゃあ始めるか」
テレビで見たことがある方法。
木の棒と木の板、そして少女からナイフを借りて、
1、木の棒をナイフで削り、細かい木クズを作る。
2、木の板に木クズを乗せて、棒を立ててドリルみたいに回転させる。
「…………つかない」
簡単に火が出ると思ったけど、力が足りないのか黒い焦げ跡しかできなかった。
「やばい。これは別の方法を探さなきゃなのか?──ん?」
チョンチョンと、少女が背中を突いてきた。
そして木の板と自分を指し示す。
「……これ、こうやって、できるか?」
ジェスチャーすると、少女は首を縦に振る。
そして木の棒を回転……ん?
「何この早さ?なんで人間の素手からモーター音を出せるの?」
グュイ〜〜〜〜ン!とシャレにならない音が鳴り響く。
「──!?」
バッと少女は跳ね退いた。
「ん?」
「────!?──!!」
「んん?」
少女は煙を上げている木クズを指差し、何かを強く言い放っている。
「え〜と……あっ、火が」
でも内容を推測するよりも先に、やらなければいけない事がある。
せっかく生まれた種火が消えれば元も子もないない。
「ちょっとすまん。先にこっちを」
種火を拾い上げて、溜めておいた木クズの山に導入。そして息を吹きかけて、火の勢いを大きくする。
石と鉄ゴミで作っておいた鍋の置き場に、強い焚き火ができた。
「よし!焚き火の完成だ!」
「──!?──────!!」
なおも少女は高い声を上げている。
そして分からない。火を起こすのがいけない事だったのか?
でも、摩擦熱で火を起こすことくらいは分かっていた筈だ。
なのに何故、
「…………とりあえず茹でさせて」
鍋の置き場に水を入れた鍋を設置。
そして沸騰した頃に、洗ったモヤシを入れる。
そしてグツグツと茹でて、
「そろそろ」
器にちょうど良い容器にモヤシを入れる。
「完成!」
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本日のお昼メニュー
・茹でたモヤシの山盛り
モヤシを茹でただけの料理。調味料を使わない自然の味が、舌いっぱいに広がる。
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「じゃあ君も」
「─?」
「ずっと動いてもらってたから、すごくお腹空いてるだろ」
少女にモヤシを入れた器を渡して、両手を合わせる。
「いただきます」
実食。
コールドスリープから目覚めての最初の食事。
その感想は、
「……美味しい……だけど」
モヤシだった。純粋なモヤシ100%の料理。
不味くはない。むしろ美味しい。だけど物足りない。
空腹が最高のスパイスと言うが、何かが足りないと思ってしまう。
「でも、食べられただけでも感謝だ」
モヤシの生命力に感謝を唱えながら、おかわりをする。
そして腹にそこそこ溜まった頃、
「ん?食べないのか?」
「…………」
少女は一口も食べていなかった。
そして異様なモノを見る視線で自分を見ていた。
「いったい何が……」
「──」
モヤシの入った器を返される。
そして、
「──」
「『どうぞどうぞ』か?」
そんなジェスチャーを見せられ、迷いながらモヤシを口に入れる。
「────」
「『うわぁ〜なんだコイツ』っぽい顔するのをやめてくれ。いったい何がおかしいんだ?」